今回のお話は二話に分かれています、もう一話は私の都合上投稿が遅れる可能性がありますが。
どうも、私です。サヤです。
ただいま人間モードでガタゴト荷車の中に揺られています。
……ん? まったく話の流れが理解できないって? 実は私もなんだよ。
これはあれだね、久しぶりに状況整理しないといけないみたいだね!
じゃあまずはこれが起きたときのことを思いだしてみようか。
朝、私はお母さんに出かける旨を伝えて泉に出かけました。
なんとなくすることもなかったし、散歩がてらに行くのもいいかなーと言う感じで特に意味はなかった。
ついでに拾ってきたビンも持って(人間モードの時に斜め掛けできるように蔦で鞄を作ったんだ)出掛けて行きました。
そこまではよかった。泉にも無事に辿りつけたし、そこで水も飲んで人間モードになった。うん、そこまではよかった。
「嬢ちゃんそんな薄着でどこに行く気だ!?」
「はい?」
人間と遭遇しましたー。
どこかの行商人さんみたいでとってもいい人だった。ちゃんと人の声帯で話せるようになっていてよかった。それ以前に言葉が日本語で良かった。
というわかでその行商人さんから上着をお借りして、これから行く予定の村まで連れて行ってもらうことになった。私は迷い子と思われているみたい。
こんなところまで来る子供いないと思うけどねー、とはツッコまない。行商人さんの誠意が無駄になるから。
「あとどれくらいですか?」
「おー、もうちょっとよ! もうちっと我慢しな!」
まあでもこれってある意味で拉致されてるのと同等なんですがね……!
一応泉の水はビンに入れてあるからストックとして持っている三本のおかげで今日と明日は人間モードでいられる。問題は明後日。私はギィギに戻ってしまう。
人間がいるところで急に人間がモンスターになったらどうなるか。大きな騒ぎになるのは当然だし、それ以前に私は確実に殺されるだろう。もしかしたら同族としてお母さんや他のギギネブラやギィギにも迷惑がかかるかもしれない。
そうなったら私、何回死のうとも謝りきれないよ! それだけは絶対回避したい。
だからできるなら今日中にこの村を出たいところだけど……帰してくれそうにないよねー。あそこの近くに家があるんですとか信じてくれないよねー。
「嬢ちゃん、着いたぞー。長旅ご苦労さん」
「あっ、ありがとうございます。……そういえば場所を聞いてませんでしたけど、ここって……?」
「ん? ああ、嬢ちゃんは盲目だったんだっけか」
なんとなく熱を見て何があるとかは分かるんだけど……、なんだか奥の方の建物、すごい熱気があふれているような。
行商人さんには私が目が見えないことを伝えてある。周りの物は感覚で何があるかは分かると言っておいた。まあ間違いじゃないからいいよね。
ところでこの地形、どこかで見たことがあるような気がするのは気のせいなのかな。
「ここはユクモ村だ。ユクモ村へようこそ、嬢ちゃん!」
「……え」
もしや、3rdの拠点ですか。
――――――――――
行商人さんに村長さんのところへ連れてきてもらって、とりあえず私は保護される事となった。
行商人さんは他にお仕事があるようで取引や仕入れをして大体一週間後くらいにはユクモ村を離れるそう。行商ってやっぱり大変なんだなあ。
大変と言えば私もそうなんだけどね! さっきまで村の人にユクモ村の主な場所を案内してもらっていて、今は牧場にいます。アイルーに癒されてます。
「私死んじゃうのかな……」
「ニャニャッ!? ニャにがあったんですかニャ!?」
あー、可愛い。アイルーすごく癒される。ぬいぐるみのようにギュッと抱きしめてみるけど私の背丈が小さいせいで少し大きく感じる。
休憩中の指示を出されているらしいオトモアイルーと戯れてる私だけど、多分迷惑ではないはず。迷惑ではないと信じる。
「ニャッ? 旦ニャさん、帰ってきたようですニャ」
「え、本当? 挨拶しなきゃ」
「あ、でも彼は旦ニャさんの連れの人ですニャ」
「わあ、そういうのパートナーって言うんだよね?」
「そうですニャね」
普段からそう言うパートナーがいるなんて羨ましい。私は兄妹がいなかったから友達としかできなくて、ほとんど一人で行ってたんだよね。
前世のことを思いだして少しいじけながらアイルーのもふもふ具合を楽しむ。いいなあ、私もこれだけの毛並みがあったら……。私の身近なモンスターだとウルさんとメラルーAさんくらいか。
「ったく、オトモの確認くらい自分で行けよ……あいつめ」
「ん?」
「あ?」
ふと聞いたことがある声に振り返ると、そこには男の人がいた。この人がパートナーさんみたい。
でもどこかで見たことあるような……。Tシャツと短パンというラフな格好をしている男の人は私をじっと見ると「あー」と何かを思い出したように声を上げた。
もしかしたら会ったことがある?
「お前がサヤか。うちの相方と名前が同じの」
「? 同じかどうかは知りませんが、私はサヤですね」
「そうか。俺の名前はリオ。よかったら家に来るか?」
……ユクモ、村……リオ……。サヤさんのいる村!? えっ、どうしよう!?
それから私には拒否する言葉もなかったので、とりあえずリオさんの家に行くことになった。行く、と言っても半ば連行に近かった。とにかく来い、みたいな。
リオさんに手を握られているから、とにかく歩くしかない。しかもリオさんは歩幅が広いし歩くのも早いから自然に私が小走りにならないと引き摺られてしまう。
結果的に普段運動しない私は
「……お前、体力ないんだな」
「言わないでください……」
私が一番気にしているところを言わないでほしい。泣くよ。
というかハンターさんはもともとスタミナがあるしお肉一つで回復するんだから私みたいな運動不足のギィギと比較しないでほしい。みんながみんなあなたと同じじゃないんですよ。
リオさんに案内された一軒家に案内された。なんだか私がやっていたゲームよりもはるかに大きい気がするのは気のせいですかね。気のせいじゃないよね、縦に伸びてる。
「ここが俺たちの家だ」
「俺たち? 他にもいるんですか?」
「ああ。俺以外にもこの村には三人ハンターがいてな、部屋を分けて住んでる」
「じゃあ、あっちで歩いているハンターさんは?」
「あれは温泉目的でここに寄ったハンターだな。宿に泊まることでしばらくここで
「へえ……」
私が知っているユクモ村と微妙に違うんだなあ。これはこれで面白いけど。
これ以上の説明を外でする気はないのかリオさんはすたすたと家の中に入って行った。やっぱり私の手を取って。だから歩くの早いですってば。
一階の部分はゲームでの自室に似ているけど少し違った。調理場のようなスペースが出来ていて中央には椅子と机があり、ベッドが置いてあるはずの部分は代わりに階段が造られていて二階に上がれるようになっている。
二階部分がきっとリオさんたちの自室になっているんだろうなあ。そう思っているとトントンと音がして誰かが降りて来た。
「あっ……。リオさん、お帰りなさい」
「ミキか。他の二人はどこに行った?」
「お二人とも上でぐっすり寝ていますよ」
「よし、叩き起こして来い」
「えっ?」
「嫌ならやらなくていい。俺が起こしてくるからそいつをあやしてろ」
「私、あやしてもらうような歳じゃないです!」
リオさん酷い! 確かに今の私の姿は幼女ですけども! だからってそんな扱いは止めてほしいです。
ミキと呼ばれたショートカットの女の人は状況が飲み込めていないようで私とリオさんの交互に視線を泳がせていたけどリオさんの姿が見えなくなると諦めたのか私に視線を合わせた。
この人がミキさん。あのモドリ玉でトラブルを起こした人だよね。近くで見ると分かるけど、女の人か……。あの時は男の人だと思っていたんだけど。
「えーっと、はじめまして。僕はミキっていうんだけど、君は?」
「私はサヤって言います! よろしくお願いします、ミキさん」
「サヤ? え? サヤさんと同じ名前……。ああ、村長さんが言ってた子は君か!」
妙に納得したように何回も頷くミキさん。村長さんのおかげで私は一躍有名みたいだ。
しばらくミキさんと話しているとまたバタバタと上で音がして誰かが降りて来た。
降りて来たリオさん、そして二人は私が勿論見たことがある人だった。
「サヤちゃん? ……わー、さっちゃんだー!」
「お久しぶりです、サヤさん」
「サヤさん知り合いなんですか?」
「一回だけ凍土で会っ、」
「一回お話したことがあるんですよ! ええ!」
危ない。凍土で話したことがあるとか聞かれたら普通におかしいって思うよ! サヤさんたちが凍土に来るのは
とにかく遮ってよかった。案外サヤさんはおっちょこちょいなのかもしれない。
「んじゃ、自己紹介。俺はスウっていうんだ。よろしく、さっちゃん」
「私はさっちゃんで決定なんですか?」
「ほら、紛らわしいしさ」
「まあいいですけど……」
「リオもさっちゃんって呼ぶのー?」
「あ? 俺は呼ばねえよ」
全員の名前を聞いて、覚えようと心の中で何度も繰り返す。……よし覚えた。
どうやらリオさんたちはさっきまでお仕事に出ていたみたいで、スウさんなんかはお疲れムードが出ている。みんなそれぞれラフな格好をしていてとてもハンターには見えない。
ゲームの中じゃずっと装備着てたけど、さすがにそのままじゃ色々と不便だろうしね。仕事以外はいつもこんな格好をしているのかもしれない。
「じゃあリオはどうやって私とさっちゃんの区別をつけるのさ」
「簡単だ。ちっこいのはサヤ」
「じゃー、私は?」
「お前」
「……んー? 私の耳が悪いのかな、名前が呼ばれなかったよ?」
「お前」
「……」
「お前」
「もういいよ聞こえてるよ!!」
涙声でサヤさんが訴えた。たった一言で人の心ってあんなに傷付けることが出来るんだね……怖いな。
こっそりスウさんに聞いたところ、どうやら二人はいつもこんな感じらしい。逆にサヤさんがリオさんを振り回すこともあるらしいけど。お互い様ってやつなんだと思う。
「リア充爆発しろ」とスウさんは呟いていたけど、その隣でミキさんが照れくさそうにスウさんの手を取っていたのを私は見逃さなかった。あなたたちも爆発してください。
この家の人は全員デキているのかもしれない。サヤさんたちはまだ無自覚っぽいけど。
「そんなことよりあれだ。スウ、飯にしろ」
「そんなこと!? 私の呼び方ってそんなことで片付くの!?」
「相変わらず人使いの荒い……。はいはい、分かりましたー」
「ぼ、僕も手伝うよっ?」
「あ、じゃあ一緒に作ろうか、ミキ」
「……私は何をすればいいですか?」
「そこらへんでハイハイでもしてりゃいいんじゃないか?」
「そこまで年齢低くありませんから! 歩いてるとこ見てますよねリオさん!?」
リオさんの私に対する認識は何なの! これじゃあ向こうにいるときと変わらないよ、ジョーおじさんと同じくらい威力があるよ……。モンスターのリオはもうちょっと可愛げがあるのに。
そう考えてみたらリオさんとパートナーをやっているサヤさんって相当すごいってことなのかな。普通だったらそんなに続くとも思えないし。冗談だって笑って流せているのかも。
今だって「スウとミキちゃんのご飯だー」と嬉しそうにニコニコしているし。打たれ強い性格なのかな、復帰がすごく早かった。
割と辛辣でもこうやって冗談を言い合えるほどの仲ってなんだか羨ましいかもしれない。私の日本人ジョークはティガレックス亜種のミキさんじゃないと伝わらないからなあ。こういう点では前世が懐かしくなる。
まあきっと私があの時死んでなかったとしても、私は辛い辛いって嘆きながら生きていくんだろうな。今更死んだ人生に思いを馳せすぎてもよくない。私は今の人生を頑張らないとすぐ死んでしまうような過酷な環境にいるのだから。次も記憶持ちである保証はどこにもない。
「お前、迷い子だそうだな」
「はい、そうですね」
「一時的に俺たちが預かることとなった。部屋はミキと一緒だ」
「はい質問! なんで私の部屋じゃないんですか!」
「答え、お前の部屋は女の部屋かと疑いたくなるほど汚い」
「失礼な!」
「失礼だと思うならまず掃除しろ」
夫婦漫才か、とツッコみたくなるほど面白い二人の会話を聞きつつ凍土に帰りたいなと私は思うのでした。