ついにあの人登場です。引っ張ったなー……。
おはようございます、サヤです。
今日でユクモ村滞在二日目になるんだけど、どうやって帰ろうか。
まだ私がギィギだということはバレていない。サヤさんには泉の存在をぼやかして説明しておいた。
「サヤ、村長がお前に客が来たと言っていたぞ」
「私に……ですか?」
帰る方法を必死に考えていた私にリオさんが声をかけてきた。
おかしいな、私を訪ねてくる“人”なんていないはずなんだけど。
ミラさんなら考えられるかもしれないけど……。そう思っていた私にリオさんは「客は男だそうだ。お前の父親か?」と更に告げた。いやいや、それ不審者です。
まさか人攫い? でもそこまで速く迷い子がいるっていう話を聞きつけられるものなんだろうか。なんにせよ、赤の他人に違いない。この前のミラさんの話を考えるとジョーおじさん、ティーおじさんは擬人化できないんだから。
とりあえず一度会ってみろ、ということで私は村長さんのいる場所までやってきた。リオさんは一緒に来てくれなかったけど、代わりにミキさんとスウさんが一緒に来てくれた。
「あっ、サヤちゃん!! よかったあ、やっぱりここにいたんだね?」
私の姿を視界に入れたらしい男の人はとても嬉しそうに言った。
えっと……あれ? 私は面識がないはずなのに、なんで向こうは私のことを知ってるんだろう。やっぱり不審者?
穏やかな雰囲気の男の人は常にニコニコしているのかほんわかとしていて、なんだかドジっ子のようにも感じられる。ますます知らないんだけど。
「よかったね、さっちゃん。お迎えがきて」
「……どちら様です?」
「えっ」
「えっ」
何この気まずい空気。原因は私ですか? 私は間違ったことを言ってませんよ?
私の発言に急にミキさんがオロオロしはじめて、咄嗟の判断と言った感じで私を後ろに隠した。スウさんも男の人に対して警戒しているように見える。
態度の急変に男の人が悲しそうに「参ったな……」と呟いて頬を人差し指で掻いた。ごめんなさい、でも本当に知らないんです!!
「俺のこと……知らないの?」
「全くもって心当たりがないです」
「そんな……! ミラちゃんの馬鹿! 話しておいたから大丈夫って嘘か! もうサロ〇パス買ってきてあげない!」
うわあああ、と泣きそうなほど情けない声を出して男の人はその場に
拒絶されたのがそこまでショックなのかな……。って、え? ミラちゃん? この男の人、ミラさんと知り合いなの?
「ミラさんを知ってるんですか?」
「え? あ、うん。……あっ! そうだ、俺だよ俺! 小童って聞いてない!?」
「小童……。あなたが小童くんですか!?」
「そうっ、それ! よかった、知ってた!!」
この人が噂に聞いていた小童くんだったのか。そういえば外見とかまったく聞いてなかった。……でもまさか人間だなんてね。
やったやった、とさっきとは違ってとても嬉しそうな男の人がなんだか子供っぽく感じて微笑ましくなった。もしかしたら私よりも精神年齢が低かったりするのかもしれない。時は金成だし。
でも見た目は普通にそこらへんにいそうな感じの男の人なんだけどなあ……。
「サヤさん、最初から警戒する必要はないんですよ」
「え? どうしてですか?」
「彼は以前、ハンターを生業としていた者でそれなりに有名なお方だからです」
「有名って……そこまでじゃないよ、村長さん。というかなんで知ってるの? 俺、ポッケ村なのに」
「あなたと共に戦っていたハンターさんが今、この村に滞在しているのですよ」
「……そうだったんだ」
速報、男の人はハンターさんでした。天敵いいいい!?
いやいや、だとしたら普通におかしいって! なんでハンターさんがミラさんと仲がいいのさ! 話の流れが読めないってこのことだね!
再び混乱する私を他所に男の人は「ガンナーやってたんだけどね、もう廃業しちゃった」と照れくさそうにまた頬を掻いた。
「結局、僕たちはあなたの名前が分からないんだけど……」
「あ、ごめんごめん。そうだよね、自己紹介って大事なことだよね、うん」
「なんか不思議な人が知り合いなんだな、さっちゃんって」
不思議な人……確かにそうかもしれないけど。
とりあえず私はミキさんの後ろから出てしっかりと男の人の目を見る。熱視覚だけど、ちゃんと話を聞いているという誠意は伝わるはず。
私の気持ちが伝わったのか男の人が私に笑いかける。私も笑い返す。
「俺の名前はボルア。前はハンターだったけど、今は辞めてミラちゃんのとこにいさせてもらってる」
「ボルア……? あっ、僕の前の
「そっか、君がミキちゃんか。みんな態度が悪かったよね、ごめんね?」
「あ、いえいえ、大丈夫です! 僕は全然、大丈夫なので」
どうやらボルアさんが前にいた
ボルアさんはやっぱりあの人たちの性格のせいでハンターを辞めちゃったのかな? 疑問に思ったので聞いてみると「単純にハンターの仕事に嫌気が差したんだよ」とだけ返された。性格は関係ないみたい。
確かにあの人たちがいくら性格が悪くてもボルアさんだったらニコニコ笑ってやりすごしてそう。世渡り上手ってこのことを言うのかな。
「で、ボルアさんはなんでここに?」
「決まってるじゃないか、サヤちゃんを迎えに来たんだよ! ギギィさん、心配してるよ?」
「うぐっ……ごめんなさい。でもなんでボルアさんなんですか?」
「やだなあ、サヤちゃん。ギギィさんやジョウさんが来れると思う?」
「思いません。むしろ来てほしくないです」
「でしょ? まあ、ジョウさんは本気で来ようとしてたんだけどね……」
ジョーおじさんいいモンスターだなあ。でも今回ばかりは来ないでくださいお願いします。人の形を取れないジョーおじさんたちが来たら人間さんたちにとってはただ攻めてきたようにしか思えないよ。
それにその原因が私だって知られたら私が晒し上げになりかねない。人間っていうのは恐怖に飲まれちゃうとなんでもしそうだしね。
「ミラちゃんが来てもよかったんだけど、またサロ〇パスを貼ってあげるのも面倒だし」
「そうですね……。ボルアさん、ありがとうございます」
「いやいや、お礼はいらないよ! 近々サヤちゃんにも挨拶したかったしちょうどいいよ」
ニコニコと笑みを絶やさないボルアさんはいい人なんだなあということを感じさせる。
ところでボルア、って何か意味があったりするのかな? でもボルア……何も意味がないかもしれない。
モンスターだったら話は別かもしれないけど、人間だから意味はないかもね。よし、この話終わり。
「あれ、そういえばリオさんたちは……?」
「あの二人はちょっとギルドに頼み事されたから出て行ったよ」
「大変ですね……」
「それがハンターだからね、仕方ないんだよ」
スウさんとミキさんがなんてことがないように言う。ハンターって、ゲームと違ってやっぱり過酷な職業なんだな……。できれば苦労しないためにも凍土には来ないでほしいな。私も成体になったら戦わなきゃいけなくなるんだろうか。
少し先の未来を考えてみて落ち込んでいると、ボルアさんが私の頭を優しく撫でてくれた。私が何を考えているのか分かったのかな。
「お腹減ってるんでしょ? もうちょっとだから待ってね」
そっちですか、そっちの心配でしたか!!
まあ血が補給できなかったからちょっと弱ってたけどね。サヤさんがそれを見てちょこっとだけ血液分けてくれたけどね。お腹すいてるのは事実だけど! そっちですか!
……やめよう、これ以上ツッコむと私の体力がどんどん削られていく。
「それじゃあ、保護してくれてありがとうございました」
「もう行っちゃうんですか……。なんだか寂しいな」
「さっちゃん、また来てくれたりするかな?」
「うーん、ちょっとここから遠いから無理かもしれないですね」
「そっか……。また、会えたらいいね」
「はい、そうですね」
できれば凍土では会いたくない。言いたいけど言えないその言葉を飲み込んで私は笑顔を保った。
それからボルアさんと一緒に村の人に挨拶をした。本当はサヤさんたちにも挨拶したいところだけど……
「元気でなー!」
「はいっ、スウさんたちもお元気でー!」
昨日と今日の朝は変える方法にすごい悩んでいたのに、随分呆気なくユクモ村脱出できたな……。なんだかずっと悩んでた私が馬鹿みたいじゃないですかーヤダー!
それから数時間、かなりの距離をハイペースで歩いて(私はその間ずっとボルアさんに担がれていた)ユクモ村から大分離れた所まで来ていた。
ここから凍土はあとどれくらいなんだろう。
「そういえば、ミラちゃんから俺のことは聞いてる?」
「小童くん、とだけですね」
「そっか……。じゃあ俺のことをちょっと話そうか」
ボルアさんは更に歩くスピードを速めながら少しずつ語ってくれた。
自分はボルボロス亜種だということ。最初はポッケ村の近くで倒れていて自分のことは名前以外分からなかったということ。しばらく恩返しのためにハンターをしていたら自分がモンスターということに気付いたということ。その後ハンターを辞めて彷徨っていたとき、人間姿のミラさんと会ったということ……。
なんか話がちょっと壮大だ。あとボルボロス亜種がポッケ村の近くにいたっていうのもなんだかおかしな感じがするし。
「それでね、俺、前世が人間みたいなんだ」
「えっ?」
「ぼんやりとしか記憶はないんだけどね。人間名すら覚えてないしね」
「……そうなんですか」
「ミラちゃんに相談したら即答されたよ、お主の前世は人間で間違いないだろうって」
その時のことを思いだしたのかクスクスと笑うボルアさん。
そうか、ボルボロス亜種だからボルアって言うんだ。でも名前しか思い出せないってどういうことだろう? それも人間名じゃなくてモンスター名だけ。
ボルアさんはモンスターになった後に記憶喪失になったってこと? でもそれなら人間名を思い出しそうな気もするけど……。モンスター名だけを覚えていた理由が分からない。
「あとね、俺、ミラちゃんみたいにいつでも人間になれるんだ」
「そうなんですか?」
「一時期ハンターやってたからね、後遺症もなーし」
「万能ですね」
「そうかな?」
首をこてんと傾げるボルアさん。まさかこの人も天然なのか……!? 是非とも正面から見たかった。あっ、正面でも私熱視覚だから見れないじゃないの。
というかまたボルアさん、スピードあげました? なんかちょっとした浮遊感があるんだけど。そうだね……、例えるならアニメとかでありがちなぽーんぽーんって一歩でかなりの距離を飛んでるような感じ。……うーん、説明しづらい。
まあ、うん。スピードが速くなったのよ、うん。
「さて、そろそろ凍土も近いし……」
「うわわっ!?」
『ごめんね、我慢して』
「が、我慢しても何も……」
『乗りづらいだろうけど』
急にボルアさんがモンスターの姿に戻った。私は乗馬のような要領でボルアさんの首元に乗っている。またボルアさんが加速したので落とされないように必死にしがみついた。
ボルアさんから伝わる冷気はやっぱりボルボロス亜種なんだなあ、と私に思わせるには十分なものだった。温泉を売りにしているユクモ村に一日とはいえ滞在していた私にとってそれは十分冷たく、そして懐かしさを感じさせてくれる。
段々と周りの空気もひんやりとしてくる中、少しこの温度に身を任せようと私はボルアさんの背中にそっと身体を預けた。
というわけで小童くんでしたー。
小童くんにはいろいろと設定がありますけど、割と後半あっさりと説明してしまった。
とりあえず小童くんのハンターとしての立ち位置は2ndGの主人公を想像している私です。
一応粗方終わってから小童くんはハンターをやめた、という感じですね。
〇ボルボロス亜種
サヤ、ミキと同じく前世人間。しかし記憶は曖昧。周りからはボルア、ボルアさん、小童と呼ばれている。
一時期ポッケ村でハンターとして活動していたが嫌気が差し活動を辞め、彷徨っていたところでミラに出会い現在はミラと共に生活をしている。
ミラ同様いつでも擬人化できるが副作用はなし。ただ本人は滅多なことがない限り(ミラのパシリなど)擬人化することは無いようだ。
いつもニコニコしているため感情や思考が読みづらい。