何故か毒怪竜になった件について   作:キョロ

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お久しぶりです。三か月かかってのあけましておめでとうございます、ですよ!
……うん、ちょっとさすがに遅すぎたなって反省してます。


24、凍土らしい遊びもたまにはしたい件について

『ねえねえ見て見て! ゆっきだっるまー!』

 

『……ヨカッタデスネー』

 

 一人はしゃぐ人間……ボルアさんを私は冷めた目で見つめた。

 ここは私の住んでいる洞窟から離れたところにある森。もっと分かりやすく言うなら、人間に変身するための泉がある森、って言うべきかな? ともかく、そこに人間さんに見つからない程度奥のほうに入って遊んでいます。

 今いるのは私とリオとボルアさん。つまり子供組です。……あ、ボルアさんは頭が子供とか、決してそんな酷いことを言っているわけじゃないよ? ボルアさんは私とリオの子守をしてくれているような感じなのです。

 大人組はハンターさんと絶賛戦闘中のようです。いつもなら洞窟に篭っててもいいんだけど、なんでか今回は避難令が出ました。もしかしたら、この前サヤさんが洞窟に来たのが一因かもしれません。まあ疑問はあるけれど、大人の言うことには素直に従ったほうがいいよね。特に命にかかわる場合は。人生経験、基、モンスター生経験豊富なモンスター生の先輩なわけですから。……すごく言いづらい。

 そんなこんなで私たちはその間、この森の中で時間を潰しているわけです。

 

『おー! 人間って器用な身体のつくりをしているんだなあ』

 

『やっぱり俺が思うに、人間の指ってすごいよ。五本だよ? 五本もあるんだよ?』

 

『なんなんですか指フェチですか』

 

『違うよ!? すっごい便利ってだけだよ!? 本当だよ!?』

 

『そこまで懸命に否定しなくても』

 

 ボルアさんにとってそこまで指フェチは否定したいことなんだろうか……。でもまたの機会にからかうことはできなさそう。主に私の記憶力的な意味で。

 今回は私も久しぶりに人間状態です、メタモルフォーゼです。どうでもいいけど、メタモルフォーゼって絶滅危惧種の動物の力を借りて変身する五人の女の子を思い出すね。それとも変な生物にいきなり変身することを余儀なくされる女の子たちかな? ……こんなこと考えるのは私だけか。

 リオは人間状態にはもうなれないらしいので普通に私たちの様子を見ているだけって感じです。え、私? 私は小さい手で頑張って雪玉を作ってます。それでリオにぶつけてやります。てーい。

 

『うわっ!? なな、何するんだよ!?』

 

『暇なの。構ってー』

 

『構うこと自体は別に構わないんだけど雪玉やめろ! 地味に痛い!』

 

『雪の下から発掘した小石入りだよっ』

 

『なお性質が悪いよ!? 何してんのお前!』

 

 嫌がらせするのに小石入りってすごく有効だと思うんですよね。良い子のみんなは真似しちゃ駄目だよ! ただし嫌がらせしたかったらカッチカチに固めると凶器になるからおすすめだよ! 私は中学のスキー旅行の時に男子に顔面に投げつけられたことがあります。本当あの子地獄に落ちればいいと思う。

 さて、男子の話はどうでもいいとして、カッチカチに固めた雪玉をリオにお見舞いしてやります。あはは、精々私のストレス発散になればいいよ!

 

『雪合戦? なら俺もやるー! とりゃああああ!』

 

『ボルアさん、それは反則な気がするぞ!?』

 

 ボルアさんは瞬時にモンスター、ボルボロス亜種の姿に戻るとぶるぶると頭を振って雪を落とし始めた。それからまた人間姿になり、それを投げつける。モンスター形態を利用するとかそんなの反則にも程があると思います!

 だけど生憎この場には審判がいない。そして正式なルールもない。つまりルールを作ったもん勝ち。ルール何それおいしいの、です。だからボルアさんの行為もルール違反にはならないのです。だって違反になるルールがないんだから。……さあさあ、盛り上がって参りました!

 

『必殺! 毒玉!』

 

『おいいいい!? なんで毒液含んでんだよこの雪玉!』

 

 え、駄目? 結構いいアイデアだと思ったんだけどな。

 だって折角今の私は人間でモンスターなわけだから、ただの雪合戦をするのはつまらないと思いません? あ、そうそう、発見したんですけど、私は人間形態でも毒を吐くことができるみたいです。勿論自分の毒で死ぬなんてことはないよ? 例えるなら、蛇みたいな感じですかね。

 出し方は至って簡単! というより簡単すぎてどう説明していいか分からないよ! ……ほら、呼吸って自然にするじゃないですか。一分間に何回呼吸するか数えろって言われたら、途端にやり方を忘れるじゃないですか。私にとって毒を吐くとはつまりそういうことです。かろうじて説明するとすれば、タンを吐くみたいに、んぺっ、って感じですかね。

 ともあれ私は毒液をカッチカチに固めた雪玉の周りに満遍なく染み込ませています。たぶん、紫色してるんじゃないかな? 毒々しいー。

 

『奥義! 大人げない雪玉連射!』

 

『痛い痛い痛い!! 連続で投げないでください! というか標的俺だけなの!?』

 

 何を思ったのか、ボルアさんは生成した雪玉を口の中に詰め込むと、器用に一発ずつぷぷぷっと発射していた。まるでマシンガンのように吹き出される雪玉はカッチカチに固めていなくてもその速さのせいで相当な威力を生み出しているように見える。

 それにしてもその発想はなかったなあ。漫画にある、スイカの種みたい。あれって自分でやろうとすると上手くいかないよね。……無理だって分かってても、スイカが食べたいです。

 

『それにしても、二人ともはしゃぎすぎじゃあないか……?』

 

『物珍しいんだよ』

 

『は? だって雪なんて毎日見てるだろ?』

 

『あ……。ほ、ほら、踏み固まった雪しか見てないから!!』

 

『ふーん』

 

 あ、危なかったあ! そうだよね、よくよく考えたらここでは雪なんて珍しくない。

 前世の私は東京という都心にいました。だから雪なんて相当冷え込まない限り降ることがないんです。そんな私にとってここまでたくさんの雪というのは、やっぱり珍しいわけでして。

 降っても積らないのが一般だったしね。まあ積もったら積もったで交通網が麻痺して散々な目に遭ったから、雪遊びなんて本当に小さい頃しかやってないんだけど。私の背丈よりも大きい雪の壁を作って、近所の子を誘って雪合戦したっけ。……いけない、懐かしくなっちゃった。

 

『よーし、ボルアさんにも毒玉をお見舞いしちゃいますよー』

 

『よしこーい!! ……あ、』

 

『……今、飲み込まなかったか……?』

 

『……飲んじゃった』

 

 ぽーい、と放った私の毒玉が見事にボルアさんの口の中へとゴール!! 私は一点を獲得した! ……いやそんなボケをかましてる場合じゃなくてええええ!! 入っちゃったよどうするの!?

 あわあわと慌てふためく私を他所にボルアさんは自身の身体を見下ろしている。

 

『特に異常はないみたい』

 

『サヤの毒がまだ未熟だってことじゃないか?』

 

『貶された気がするけど今回は切実にそれでよかった』

 

 寒さを感じない私でも、さすがにヒヤッとしましたよ……。今度から気をつけよう。

 そうか、私の毒はまだ未熟なのか。これでも一応何回か繭タイムを迎えて、ようやく自分で毒を生成できるようになったって言うのに。……熟練度みたいに、使い続けていたら成長していくとか? いやいや、さすがにそんなゲームみたいなシステムはあるわけがないか。現実にまで持ち込むのはやめましょう……うん。

 でも使い続けてたらお母さんがやってる毒液ビームみたいに、何かいい感じの必殺技みたいなものも作れるようになるかもしれないよね。よし、これから頑張ろう。

 

『どうしようか……。俺、雪合戦飽きちゃったー』

 

『ちょ、早くないですか』

 

『俺は飽き性だから!』

 

『何ですかその今とってつけたみたいな設定』

 

『……うん、ごめん、嘘』

 

 まあ私もちょっと飽きたのは事実です。だって雪合戦は大勢で楽しむものですから。三体で遊んだってちっとも楽しくないんですよ。強いて言えば、二体のリアクションが面白いって事なんだけど……。ずっと一緒と言うのも、ちょっと飽きる。

 今更ながら、ボルアさんとミラさんって二体きりで奥の洞窟にいるのってさびしくないのかな、と思ってしまいますよ。特にミラさんは気軽にこっちに来れない訳ですから。

 

『ボルアさん。ミラさんは大丈夫なんですか?』

 

『ミラちゃん、暫くお出かけしてるみたいで、いないんだよ』

 

『……ミラさんがお出かけ? 俄かに信じがたいですね』

 

 ミラさんは隠居生活をしているっていう話だったから、まさかお出かけするなんて思っていなかったよ。……よくよく考えたら、お出かけくらいはしますよね。だってそうしないと体が鈍っちゃいますし。モンスターにとって体が鈍るのは致命的なのです。

 あの最奥だって、結局のところいつ見つかるかもわからないわけだからね。今気付かれていないのはミラさんがこっちに出てこないこと、更にお母さんたちの存在を大きく見せていることで成り立っているわけだから。もしここが突破されれば、ミラさんが危ないわけです。

 

『どこに出かけたとかは……?』

 

『さあ、分からないよ。ミラちゃん、いろんなとこにお出かけするから』

 

 ちなみにボルアさんがミラさんと初遭遇したのは砂漠だったそうです。どちらも人間姿で、ミラさんが干からびて死にそうになってたんだとか。何してんだあの古龍。

 とまあそういうわけで、冒険家なミラさんはどこにふらっと出かけるかは誰にもわからないんだそうです。それにしても人間姿で出かけるなら湿布とか大丈夫なんでしょうか?

 

『非常薬でも持ってるんですかね?』

 

『というよりも、ミラちゃんは戻るときに副作用が来るから。戻らなければいいんだよ』

 

『……時間制限は?』

 

『ないんじゃないかな? 人間姿が短いほど副作用での痛みが軽いみたい』

 

 さすが同棲しているだけあってボルアさんはミラさんのことをよく知っていますね。私はボルアさんのことだけでなく、ミラさんのことももっと知らないといけない気がします。同じ凍土に住まうモンスターとして、ゲームとは違うおかしな世界の住人として。

 きっと人間においてもモンスターにおいても、必要になってくるのは絆なんだろうな、と思う今日この頃です。そのくらい、ここのモンスターたちは仲がいいですから。

 

『まあ、ミラちゃんのお土産に期待しようか』

 

『お土産も持ってくるんですか……』

 

『サヤー、ボルアさーん。母さんが戦闘終わったってー!』

 

 いつのまにやら私たちと離れた場所にいるリオは、嬉しそうにベリィさんに飛びついていました。誰かカメラ持ってませんかね。この大自然に生きる親子の絆を写真に収めればきっとお金儲k……。ゲフンゲフン、きっとモンスターに対する意識が変わると思うんですけど、どうでしょう?

 

『ん、それじゃ行きましょうか』

 

『そうだねー。今日はサヤちゃんのところに泊めてもらおーっと』

 

『え……?』

 

『なんでそんなに嫌そうなの。俺、一人ぼっちは嫌だよ!?』

 

 冷気に覆われるこの凍土では、いつも心がポカポカなのです。

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