合言葉は卑劣だ 作:奈良くるみ
転生者…それが俺の正体だ。
一度その生涯を終えて、神というご都合主義の塊のような存在と邂逅し、別の世界で別の存在としての新たな人生を与えられた者のことを言う。
俺がそれに該当する。
ちなみに転生者には転生特典というチート能力を渡すことが決まりだと神が言っていた。なんでも過酷な状況下でも生き残れるように、だとか。
で、俺はその転生特典とやらを受け取っている。
そして、今まさに使用せざるを得ない状況に直面しているところだ。
「死んでくれないかな」
こいつの名前は
その目的は至高の堕天使になるために俺が邪魔になるかもしれないから今のうちに始末しておく、という事らしい。この世界の基となっている原作を読んでおいてよかったな。おかげで余計なことを考えなくて済む。
言ってなかったが、俺が転生した世界はハイスクールD×Dというラノベの世界だ。人外と死亡フラグが跋扈している世界である。その上、主人公に転生してしまった。これでは確実に原作に関わることになる。
…神よ、あなたに訊ねたい。どうしてこんな物騒な世界に俺を送ったんだ?
内心頭を抱えていると、目の前にいる堕天使レイナーレが嘲笑を浮かべながら口を開いた。
「恨むのなら、その身に
この女は、俺がここで絶命することは確定しているとでも言いたいのか?ま、原作ではここで主人公は一度こいつに殺されたからあながち間違っちゃいない。
「あぁ、そうだな。確かに俺と君がこうして顔を会わせることはもうないだろう」
「えぇ、そうよ」
口元の笑みを深める堕天使レイナーレ。
俺はそれを真顔で眺めると、はっきりとした声音で告げてやる。
「しかし、間違っているぞ。ここで死ぬのはお前だ、レイナーレ」
「あはは、貴方は何を言って…えっ?何よこれ?」
俺の言葉を笑い飛ばそうとしたところでレイナーレの表情が固まった。当然だろう。
彼女の右腕にはいつの間にやら見覚えのない札が貼られていたからだ。その札には文字が書かれている。
『爆』という文字がくっきりと。
その文字がどういう意味を示しているのか気がついたようで先程まであれほど余裕綽々というような表情をしていたレイナーレが焦り始めた。
なんとかその札を引き剥がそうとするが、剥がれる気配はない。フン、無理もないだろう。
その札の裏側にはべっとりと瞬間接着剤を塗っておいたのだからな。
俺は今も必死に札を剥がそうとしているレイナーレに話しかける。
「無駄だ。お前はここで死ぬ。その反応からしてどうやら死因については理解しているようだな」
「ま、待って!お願い!助けて!本当はこんなことしたくなかったの!でもドーナシークからやれと言われたから…私は自分の意思であなたを殺そうとしたわけじゃ」
お前の話に耳を貸す気はない。大人しく死ね。
次の瞬間、彼女の腕に貼られている紙札から火花が散り、閃光が瞬いたかと思うと、凄まじい轟音と共に爆発した。土煙に包まれるレイナーレの体。土煙が晴れると、そこにレイナーレの変わり果てた姿があった。いや、肉片だな。
地面にぶちまけられたレイナーレだったモノを手に取ると、俺はニヤリと口元を歪めて笑う。
「さて、これを再利用することにしよう。生贄は…よし、あそこのベンチで熟睡しているホームレスでいいな」
気付かれないように公園のベンチで眠っているボロボロの服を着た老人へと近づくと、とある術を発動させるために俺は印を組んだ。
「口寄せ・穢土転生ッ!!!!」
意識がない老人の体を、塵芥が少しずつ包み込んでいく。それはやがて全身を覆い尽くして、老人の姿は完全に見えなくなった。
そして、そこに現れたのは老人ではなく先程爆死したはずのレイナーレだ。が、その目に生気は宿っておらず、瞳は黒ずんでいる。理由は知らん。
口寄せ・穢土転生とは、生贄を使って死者を現世へと転生させる術だ。ある程度、術者の意思が反映されるのがこの術の特徴である。
だからこそ俺はこの術を使った。
「よし、とりあえず教会にいるはずの聖女アーシア・アルジェントを救い出した後、この女の頭に埋め込んだ起爆札を発動させて教会を跡形もなく吹き飛ばすことにしよう。念のためにこの女の意思は奪っておくか。先程のこいつのように、少しでも油断すれば足元を掬われる可能性があるからな」
レイナーレの頭へと突っ込んでいた手を引き抜くと、俺は彼女に短く命令を下す。塵芥が集まっていき、頭に空いた穴が少しずつ修復していく。
「行け」
元通りの姿になったレイナーレは無言のまま、背中に黒い翼を生やしてこの場から飛び去った。
さて、と…俺は
連載したいけど…