合言葉は卑劣だ 作:奈良くるみ
俺は、オカルト研究部室の隅のほうで壁に背を預けながら頭を抱えていた。
普段の俺ならば部室のソファーに腰かけて学校近くにある書店で適当に買ってきた小説を、部活動時間終了直前まで熟読しているところだが今日の俺は違う。というかそんなことをするわけにはいかなかった。
俺の特等席にオカルト研究部の長たるリアス・グレモリーが座っていることもそうだが、その彼女の目の前に二人の女がいるからだ。
片方は数日前、俺の家で木場祐斗が見た俺のアルバム写真に俺と共に写っていた幼馴染みの栗色髪のツインテールの紫藤イリナーーー原作と変わらずアホっ娘だったのは言うまでもない。
もう片方の緑のメッシュが入った青髪ショートカットの女はゼノヴィア・クァルタというーーー彼女自身は下の名前まで名乗ってはいなかったが、これは俺が前世で得た知識によって知っているということで勘弁してくれ。
その女二人の膝の上には悪魔にとっては猛毒とされている聖剣があった。木場祐斗が殺気を込めた視線で、その聖剣二つを睨んでいる。
まぁ原作を読んでいるから気持ちはわかる。が、今は話し合いの最中だから少し落ち着け。
そうこうしているうちにリアス・グレモリーたちの会話は進む。
「…つまり、貴女たちは教会から盗み出された聖剣エクスカリバーを取り戻しにこの町に来たのね。それで私たちがそのことに関与しているのではないかと?」
「そうだ。貴様ら悪魔はそのくらいのことをやりかねないからな」
ゼノヴィアのその言葉を聞いたリアス・グレモリーは足を組みかえながらきっぱりと言い返す。
「有り得ないわね。私達は悪魔…で、聖剣を盗み出したのは堕天使よ。協力関係なんて万に一つの可能性もないわ。そもそも私たちと堕天使なんかと一緒にしないでもらえるかしら?不愉快よ」
リアス・グレモリーがキレかかっているようだな。滅殺の魔力が滲み出ているぞ。
そんなことにも気づかず、ゼノヴィアは言葉を続ける。
「ふん、どうだろうな。悪魔も堕天使もただの化物という点においては同じことだと思うが?」
「ゼノヴィア!それ以上は流石に言い過ぎだわ!」
「そうだな、イリナの言う通りだ」
とりあえず、俺はイリナに加勢することにした。すると、ゼノヴィアの視線が俺のほうへと向く。
その目は初めてライザー・フェニックスと対面したときに感じたものと同じーーー相手を見下す目だ。
「なんだ貴様は。イリナの知り合いだかなんだか知らないが部外者は引っ込んでいろ」
「ふん、そういうわけにはいかないな。幼馴染みが貴様のせいで困っているのだ。すぐに止めろ。それに俺は部外者ではない。ちゃんとここのオカルト研究部員として正式に認められている者だ。実力で言えば…俺は貴様なんかより強いぞ?」
「はっ、それは私を愚弄しているのか?ただの人間ごときが私に敵うとでも?」
「それはこちらの台詞だ。貴様こそ俺に勝てるでも?」
俺とゼノヴィアの間で火花が散った。
しばらく睨み合い、ゼノヴィアのほうから親指で窓の外のほうを指し示しながら提案してくる。
「そこまで言うんならちょっとそこらで私と戦え」
「いいだろう」
「ちょ、イッセー!?」
リアス・グレモリーが慌てていたが知らん。
俺とゼノヴィアがそそくさと部室を出ようとしていると、背後から待ったと声がかかる。それは今までずっと一言も喋らなかった木場祐斗だ。
「僕も参加していいかな?断られてもするけど」
「祐斗まで!?」
「構わん」
「好きにしろ」
「あーもう勝手にすればいいわよ!ただし、お互いに殺すとかはナシだからね!」
俺とゼノヴィアは模擬戦をすることになった。何故か木場祐斗とイリナまで。
…今になって思うがどうしてこうなった。
というか巻き込んでしまってすまんイリナ。
イリナは犠牲となったのだ…