魔法少女リリカルなのは〜vividと初代な夜天の王〜   作:かぴばらさん32号R

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Q:遅かったじゃない?

A:ちょっくら3000m級の山に研修とか行ってたんだ。


今回はそんなにネタがないよ!


古代ベルカ神話

その29

 

 月日の流れは早い。

 私が生き返ってから三ヶ月。七月の頭の今はどんどん暑さを増していっている時期だ。

 暑くなっていいことなんてヴィヴィオの夏服が拝めることぐらいしかない。ほんのり朱色に染まった頬、汗をかいて透けた純白のシャツ。その下にある桃源郷....いいよね!うん!すっごくいいと思う!

 

「そうとは思わないかい、お嬢さん」

 

「えっと、思いません....」

 

 無限書庫のお嬢さん(勝手に命名)に共感を求めてみたところ、けっこうあっさり否定されてしまった。

 学校が終わって放課後、ちょっと気になることがあったのと、涼しさが欲しかったということもあり無限書庫に来ている。

 そこで探し物があると思われるエリアに入ったら、ツインテールがふわふわしてるのを見つけたので話しかけてみて今に至るというわけだ。

 

「そうか、残念だ....。ところでお嬢さんはなにを?また創成魔法についての資料探しでもしてたの?」

 

「いえ。今回は古代ベルカの歴史とかについての本を探してるんです。こんな感じのを」

 

 お嬢さんが手に持っている本は『古代ベルカ歴史名場面集百選』というなんて怪しい雰囲気がぷんぷんする歴史?書だった。

 もしかしたら私が探している資料をお嬢さんが見ているかもしれない。可能性はかなーり低いと思われるけど。

 

「お嬢さんお嬢さん。スモークチーズはないのかい」

 

「えっ、す、スモークチーズ?も、もってないです......よ?」

 

 にょろーん。

 お嬢さんが困り果てている。これ以上ふざけてるのもなんなので、本題に入ることにする。

 

「歴史好きなお嬢さんにお一つお願いがあるんだけどいいかなー?」

 

「お願い?いいですよ」

 

 お嬢さんは私のお願いを嫌な顔一つせずに聞きいれてくれるようだ。この優しさに全ユーリが泣いた。

 ならばさっそくお願いしようではありませんか!

 

「『イア』、『エレミア』、『グラシア』、『ゼーゲブレヒト』っていう人についての資料探しを手伝って欲しいんだよん」

 

「....ゼーゲブレヒト?それってオリヴィエ陛下のことですか?」

 

「誰じゃいそれ」

 

 オリヴィエ?あいつの名前は確かそんなのじゃなかった気がする。もっと男らしかった、男だし。

 もしかすると子孫かな?あの戦いで死んだのは私とイアの二人だけみたいだし....。

 

「オ、オリヴィエ陛下を知らないんですかっ!?聖王教会の信仰対象にもなってる『ゆりかごの聖王』ですよ!?」

 

「知らんなぁ。私にとっての信仰対象はヴィヴィオだし。いやぁ、なんであんなに可愛いんだろうねぇ」

 

「だ、だめだこの人......!」

 

 ものすごく失礼なことを割とまじな顔で言われたので少しは自重しよう、ということを考えておこう。お兄さん悲しいよ。

 でもなんだかんだて手伝ってくれるみたいなのでその好意はありがたく受け取っておくことにする。

 

「調査年代は今の時代から約八百年から七百年前。時代は....そうだね、古代ベルカ初期くらいだと思う」

 

「古代ベルカの初期、ですか....大変な作業になりそうですね。頑張りましょう!」

 

 さっそく読書魔法で検索をかけ始めるお嬢さんの素直さといい人っぷりに感動しながらも、私は読書魔法を発動させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 みなさんお久しぶりです。神様です。

 そろそろ他の神々に送る御中元に悩む時期なんですよ....めんどくさい。あ、あの人にも送らなきゃ。

 

 まぁそれはさておき。今から少しだけ昔話をしようと思います!なんでか?気にしないでください。

 

 これは、とある英雄達のお話。

 

 

 

 

 むかしむかしあるところに、一冊の魔導書と、五人の守護騎士を従えた騎士王が大陸をまったりと旅をしてました。

 喧嘩して、笑って、泣いて。それはとても充実したもの。

 しかし、平和な旅は長く続きませんでした。

 

 とある王家の武力による大陸統一。

 

 百万の兵を持つ王家はまたたくまに大陸全土への侵攻を開始。わずか一ヶ月で大陸の五分の四を制圧してしまったのです。

 残ったのは小さな地方都市ただ一つ。戦いに敗れた騎士達は、みなそこへ避難しました。

 戦力差は絶望的。誰もが諦めていたとき、騎士王はその光景を見て、こう言い放ちました。

 

 私は戦う。

 

 皆は彼を嘲笑いました。馬鹿か、勝てるはずない、と。ですが騎士王の目には諦めの色がありません。

 そんな彼に力を貸す存在が現れます。

 

 名をイア、エレミア、グラシア、ゼーゲブレヒト。大陸中に名の知れた騎士です。

 そして彼ら五人の騎士は、

 

 攻めてきた王家の兵およそ五千を壊滅させました。兵力差一千倍をひっくり返したこの戦いは後に『英騎士の奇跡』と呼ばれます。

 

 これはほんの始まりにすぎない、英雄達のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ないです....」

 

「ないねー」

 

 二人して困る。資料がまったく見つからないのだ。

 三百年前ほどならばエレミア、グラシア、ゼーゲブレヒトの資料は見つかったのだが、七百年から八百年前の資料の中からは一切発見することができなかった。

 あの三人が一応、子孫を残していたことはわかったからいい....のかな?

 それにしてもおかしいなぁ。まるであの戦が最初から無かったかのような記録のなさだ。あれだけ大きな戦だったのだから資料として残っていても....。

 

「こんなに本があるのにまさか一冊も見つからないなんて......。お力になれませんでした、ごめんなさい」

 

 しょんぼりした顔で申し訳なさそうに謝ってくるお嬢さん。なんか私、すごく悪いことしたみたい。

 このままじゃ雰囲気が悪いのでうつむくお嬢さんの顔をあげさせる。

 

「そんなことないよ。お嬢さんのおかげで資料探しがはかどって短時間で終わったんだから。ほら、シャキッとする!」

 

「は、はひっ!」

 

 びっくりして声が裏返るお嬢さんを笑ってしまう。顔を真っ赤っかにして「笑わないでくださいぃ!」なんて言う姿はちょっとみーさんに似ていた。

 そんなことしてるたら、ふと腕時計が目にはいる。針はもう五時近くを示している。

 早めに帰らないとクロハネが心配するから大変だ。

 

「ふーむ。私はそろそろおいとまするよ」

 

「あれ?探し物は....」

 

「また今度さ。早く帰らないと家族が心配するんでね。お嬢さんはどうする?」

 

 お嬢さんは「うーん....」と、天井を見つめて唸り、一言こう言った。

 

「....私、もうちょっと歴史本を探したいので残ります」

 

 あぁ。そういえば歴史本を探してる最中にお願いをしたんだった。これは悪いことしたかも。

 クロハネには心配かけるけど、せっかくだから今度は私が手伝ってあげよう。そう思い、お嬢さんに話そうとしたが––––

 

「あれ?いない....?」

 

 ほんのちょっと目をそらした間にお嬢さんはどこかへ消えてしまっていた。

 やはり彼女も本の虫というやつなのか、本に飢えて探しに行ったのだろう。

 自分の中でそう考え、私は八神家に帰宅することにした。

 

 今日の夕食なにかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......やっぱりない、か」

 

 初代が八神家へ帰って行ってからすでに一時間。お嬢さんことコロナ・ティミルはずっと無限書庫にこもっていた。

 時刻は六時。連絡はいれたものの、七歳の子を持つ親ならば我が子を心配する時間である。

 コロナは歴史本を探していた---わけではなく、初代の探していた資料を探し続けていたのだ。

 

(私の力になってくれたあの人に、恩返しもできないのかなぁ)

 

 かなり変な人だが難しい創成魔法についての資料探しをしてくれ、なおかつ魔法の練習まで面倒を見てくれる。借りばかり作っていた。

 けれど時間は時間。今日は諦めてまた明日にしようと区画から出ようとした。

 だがコロナは足を止める。

 

「本?」

 

 彼女の視界に入ったのは無重力の海で流木のように漂っている一冊の本。

 近くまで寄り、優しく本を手に取る。

 保存状態は良くない、表紙すらかなりボロボロになっていて手荒く扱えばくうちゅうぶんならぬ無重力分解してしまうだろう。

 コロナは初代から教わった古代ベルカ語の知識をフル活用して表紙に書かれている金色の文字を読む。

 

「古代....ベルカ、神話」

 

 ただならぬ雰囲気を醸し出す本をそっと開き、ページをめくる。

 最初のページには大きく三対の黒翼が描かれていた。ギリギリ読めた文字は『自由の翼』、なんのことか分からないコロナはページを進める。ページは二、三十ページと薄い。さらに中の状態も悪く、コロナではなにが書いてあるかわからない。

 所々のページに挿絵があった。たくさんの鎧を着た人が馬に乗り、戦っているその絵からこの本は戦争についてのものだとコロナは判断する。

 

「..........これって」

 

 開かれたページの挿絵には、黒い騎士甲冑を纏った騎士が剣十字の杖をかかげ、頭上に黒い球体を発生させているのが描かれている。

 球体はなにかの魔法なのだろう。

 それは関係ない。コロナが気になったのは、騎士の手元で開かれている本。杖と同じように剣十字の装飾が施されている。

 

 そっくりだった。たまに無限書庫に来る、今日も一緒に探し物をした少年の持つ魔導書に。

 

(....司書長ならなにか知ってるかも)

 

 この無限書庫を管理する司書長は、とても優秀な人物であると有名だ。おまけに人柄もいい。

 彼ならなにか知っているかもしれない。

 残念なことにもう時間がおしている、相談はまた今度にしよう。そう思いボロボロの本を、わずかな隙間がある棚にしまう。

 

 場所をしっかり端末に記憶し、コロナは無限書庫を後にする。

 

 

 これが初代の生きていた時代の歴史を解明する重要な手がかりになることを、彼女は知らない。

 




『汗をかいて透けた純白のシャツ』
高校生男子には目の毒である。


『スモークチーズ』
作者は食べたことがない。どんな味だろ?


『イア』
初代とともに戦った戦友。癒しの力を持つ。


『エレミア』
初代とともに戦った戦友。初代エレミアでもある。


『グラシア』
初代とともに戦った戦友。予知の能力を持つ。


『ゲーゼブレヒト』
初代とともに戦った戦友。ある王家の分家の人間。


『英騎士の奇跡』
戦力差一千倍をひっくり返した奇跡の戦い。


『古代ベルカ神話』
謎の本に書かれた神話。内容は不明。


『自由の翼』
三対の黒翼のことをそう呼んでいたようだ。


『司書長』
どこぞのフェレットのことである。


今回は初代の過去についてのお話だった。

そろそろアインスとのデートフラグを!

意見、感想をくれても、ええんやで?

次回→バルムンク・息抜き
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