魔法少女リリカルなのは〜vividと初代な夜天の王〜 作:かぴばらさん32号R
A:十一月中だよ!
その33
「さぁ、夏休みだぞお前らっ!」
「いぃぃぃやっふぅぅぅぅ(棒)」
「にゃいんはるとさん、ぱんつみえてるよー?」
「ヴィヴィオさんもう少しオブラートに包んでください・・・・」
「(あれ、なんで私ここに居るんだろう?)」
一学期の締めくくりである終業式を終え、初代、アインハルト、ヴィヴィオ、ミウラ、コロナの五人が八神家に大集合。初代のテンションがMAXでアインハルトがぴょんこぴょんこ跳ねてミウラがツッコミを入れたりと恐らくはここ一番で混沌とした状況が作り出されていた。
そんな少年少女を見る目が一つ、八神家キッチンにあった。
「(・・・・・・見事に女性ばかりだ)」
夜天の魔導書管制融合機リインフォース・アインス。初代が友達を連れて来るというので気になってしょうがなく、はやてに無理を言って仕事を休ませてもらっている。その結果がこの女の子パラダイス、またの名をハーレム。アインスは危機感を感じていた。このままでは初代が取られてしまう、と。
ぐぬぬと陰で小さく拳を握りしめてリビングにいる女の子を観察していく。相手をよく観察することは戦場で重要---かつてのシャマルの言葉を思い出す。ならば観察、ということだ。
最初に目をつけたのは初代と一緒に謎のダンスを踊っている壁銀ツインテールの女の子。
「(あの髪に虹彩異色・・・・シュトゥラ王国のイングヴァルト家直系だな。初代はmy soul sisterとまで言うほど相性がよいのも手強い。凛々しくも美しい・・強敵)」
次にあわあわしているピンク髪の女の子。
「(初代の初めての学友。あの守ってあげたくなるタイプは騎士である初代の心を掴んで離さないだろう・・強敵)」
次は苦笑いしてる灰色髪のツーテールな女の子。
「(噂に聞く本の虫。同じ本好きの初代とは気が合いそうだな。おまけに影で人を支えれそう・・強敵だ)」
そして最後は・・・・無邪気な笑みを浮かべて初代にくっ付いている金髪虹彩異色な少女。
「(タカマチ・ヴィヴィオ。主の話によればかのゆりかごの聖王女オリヴィエ・ゲーぜブレヒトのクローン体・・・・つまりシュテュアスの直接子孫。もしもシュテュアスの持っていたモノを受け継いでいたとすれば----彼女は天然悩殺マシーン。きょ、強敵じゃないか)」
アインスはあの天然爽やかイケメンの笑顔を思い出して息を飲む。あれがヴィヴィオにもある---空調がきいているはずの室内で一筋の汗がアインスの頬をつたった。
初代はヴィヴィオが大好き過ぎ、自分と関わる時間が減っている。これはまずい、非常にまずい。アインスはそう思わざるを得ないのだ。
だがそれ以上に、アインスは重大なことに気づいてしまった。
「(全員・・・・強敵っ!)」
皆が自分にはないものを持っていてなおかつ美少女。対して自分はどうだ。万人受けする容姿で作り出されたものの、あるのは師団を相手どれる戦闘能力と数多の魔法知識くらい。アインスは自分には全然魅力がないのではないかと疑い始める。恋色沙汰も何もなかったのでその手の知識は疎い。
アインスは思わずフローリングに手をつく。それは自分の無力さ(恋色沙汰全般)に対する絶望、初代の騎士という立ち位置の消滅の危機を表していた。
「クロハネー、ジュースのボトルとってー。・・・・・・クロハネ?どしたのさ?」
みんなでジュースを飲もうとコップを出し、冷蔵庫に一番近いアインスにジュースのボトルをとってもらおうとキッチンまで来た初代が絶望しかかっているアインスを発見する。
「うぅっ、うっ、あるじ!わた、わだじには、なに一つ魅力が、ありまぜんでしたぁッ!」
「ファッ!?」
なぜか急に涙をポロポロ流して自分に抱きつくアインスに初代は驚き、変な声を出す。
何か悪いことでもしてしまったのか、と思いちょっと慌ててしまう。
そこに、ヤツがやって来る。
「ユーリさん。なにかお手伝いすることは・・・・」
この上ないタイミングでアインハルトがひょっこり現れる。礼儀正しく同年代よりも色々大人びたアインハルトは人様の家に来ている以上、何かしらの手伝いをしようとしたのだろう。
初代とそれに泣きつくアインスの二人を交互に見て、アインハルトは少しばかり首をひねったが、直ぐにぽんっと手を叩いた。
「そういうことでしたか。この状況から察するに-----ユーリさん、ゴムを付けませんでしたね?」
「この状況からなにを察したのかはあえて言わないけど、たぶんニャインハルトの思ってることじゃないから」
「ヤり逃げ・・・・!?」
「みーさーん。ちょっとこの淫乱覇王引き取ってー」
リビングでWiiをしていたミウラに妄想全開の覇王を引き取ってもらい、初代はしゃがんでアインスに「どうしたの?」と優しく問う。ストレートに言ったら恥ずかしさで死んでしまいかねないのでアインスは言葉を濁して言う。初代がまた自分の前からいなくなってしまうのではないか、そう思ってしまったと。
初代は目を数回ぱちぱちさせた後、「そういうことねぇ」と言い、一つ息をつく。
「クロハネよ。私がそんな簡単に死ぬと思う?これでも結構数の戦場で生き残ってきた騎士ですぜぃ」
「そういう意味で言ったわけではないのですが・・・・。しかし初代、あの時、あなたはそう言って帰って来きませんでしたよね?」
単純に側にいて欲しいというのを生死の問題で解釈してしまった初代。その言葉でアインスの中の記憶の一部が、鮮明に浮かび上がる。
◆
“我が主!なりません!騎士団長どころか我ら騎士すら連れて行かないのは危険すぎます!いくらあなたでも無茶です!”
“私は大丈夫だよクロハネ。それに騎士団長にヴォルケンリッターはうちの騎士団の貴重な戦力なんだから、こっち作戦に参加させることはできない”
“なら!せめて私と融合してください!そうすればあなたをお守りすることが---”
“だーめ。クロハネには首都の魔法障壁破壊っていう重要な任務があるでしょ?私がいない以上、戦略級魔法を使えるのはクロハネだけなんだから”
“ですが、ですが・・・・ッ!”
“こっちも丸腰でアレに挑むわけじゃないんだから。最初から全力のトリニティモードで行くし、最悪ブラスターシステムがある。なーに!いつも通りパパッと墜としてくるよ!”
“・・・・・・『ゆりかご』を侮ってはなりません。あの対地対空砲火能力に魔法物理障壁。我が主、魔法が通用するのかすら怪しい艦です”
“通用しないならするまで撃つから問題なし。一応、切り札だってあるわけだし、ね”
“・・・・主”
“大丈夫!私がそんな簡単に死ぬわけないでしょ?私を信じて!”
“・・・・・・・・・・承知しました。なら、必ず、必ず、我らの元へ生きて帰って来てください”
“まっかせろい!”
◆
「あぁー・・・・うん。なんていうかさ、ごめん」
当時の自信満々な自分の発言を思い出し、ばつの悪そうな顔になる初代。結局、初代は出陣したその戦いで命を落としてしまったのでなにも言い訳することができなかった。
頬をぽりぽり掻いて謝る。なお、目は泳いでいる。バタフライしている。
「許しません」
「ごめんなしゃい」
「許しません」
「なん・・・・だと・・・・・・!?」
今までの経験上、許してもらえると確信していた初代は予想外の返答にギョッとする。頬を膨らませ上目遣いでじっとこちらを見るアインス。
こうなってしまっては初代はどうすればいいか分からない。さてどうしよう、と考え始めたとき、無言の訴えをかましていたアインスが再び口を動かす。
「私は主が約束を破ったことを許しません。主が全てだった私に対してのこの仕打ち。これは罪と言っても過言ではないのです。・・・・ですから、罪を償ってもらう必要があります」
「お、おう」
ものすごく真剣な顔つきで初代を見つめ、熱く語るアインス。初代はその熱に押されてつい言葉を詰まらせる。
「簡単なことです。ずっと・・・・・・ずっと側にいてください」
人より肌が白いアインスは赤くなればよく目立つ。ゆえに顔がゆでダコのごとく真っ赤っかでよくわかる。もしもこんな美女に言われたならば大抵の男は落ちるだろう、落ちないはずがない。だがしかし、相手は初代夜天の王。さらっとプロポーズまがいなことを言われたことに初代は?マーク浮かべ、アインスに言う。
「昔も今もずっと側にいるでしょ?なに言ってるのクロハネ」
アインスは 家を飛び出した!
◆
「なんだったんだろ・・・・?」
「鈍感系オリ主ここに在り、ということですねわかります」
初代が開け放たれた玄関への扉を見ていると、後ろからぬーっとアインハルトが生えてくる。
「いやいや、まったく意味がわからんよ。てかいつからそこに」
「あなたが銀髪ボインさんにプロポーズまがいなことを言われた辺りからです」
「あれがプロポーズぅ?クロハネならもっとロマンチックにすると思うよ」
八百年ほどの空白があったとはいえ、長年主従関係でいた初代はアインスの性格をよく理解している。泣き虫で寂しがり屋で人一倍責任感があり、なかなかのロマンティストであることも。
アインハルトはチッチッチと人差し指を左右の振らして「あまいですよユーリさん!」と言った。
「まったく、そんなことも理解できていないとは情けない。世の中には色々な告白やプロポーズ、夜の営みのサインがあるのですよ?」
そう言うと自らのスカートの中に手を突っ込みなにかをもぞもぞ漁り出す。五秒もたたないうちに目的の物があったのか、手を引き抜く。その手には小さめなホワイトボードとペンが一本。
「(四次元パンツでも履いてんのかこいつ)」
「例を出してあげます例えば----
注文いいかい?マックシェイクのバニラと---君のスマイル、二十年分、お願いできる?
-----とか」
「マックシェイクと一緒に注文すんな」
アインハルトの頭に一発チョップをかます初代。どうやらお気に召さなかったようだ。痛そうにチョップされた頭のてっぺんをさすりアインハルトは初代をちょっと睨む。私なりに真剣に考えたのにこの扱いとはなんだ。アインハルトの怒りのボルテージがちょっぴり上がる。
そんなことは気にせず初代はアインハルトに「戻るよー」とだけ言ってわいわい騒がしいリビングに行こうとする。
「・・・・・・なーに?」
ジャージの袖を引っ張られ足を止める。引っ張ったのはもちろんアインハルト。早く遊びたい初代はため息混じりに振り向く。
「ユーリさん。そこまで私の最高のプロポーズ方法を馬鹿にするならあなたのプロポーズを見せてください」
「・・・・やだよ。恥ずかしい」
自分の最高のプロポーズを見せてくれ。なんて言われても普通ならしたくないのは当然だ。ましてや異性の前ならなおさら。初代も多少の恥じらいがあるのか、首を横に振る。
予想通りの答えだったのか、アインハルトは奥の手を出すことにした。
「言わないと体育館倉庫の件を徹底的に捏造してヴィヴィオさんのお母様に報告します」
「オーケーオーケー、落ち着こうかニャインハルト。話せばわかる」
「具体的にはユーリさんが私を体育倉庫に誘導してSランクの封鎖領域を展開、混乱する私に対してバインドをかけ強制M字開脚。抵抗のできない私の服を脱がせ下着姿にして写真を撮影、これを脅しの材料に。さらに濡れていない秘部に無理やり肉棒を」
初代はとりあえず土下座した。彼女を怒らせると社会的な意味で怖いと悟ったのだ。
アインハルトはそれを見て満足そうに微笑むと、再びプロポーズの要求をする。一般人から見ればほぼ完璧美少女にプロポーズの要求される男なんて幸せだと思うだろう。男はこれほど恥ずかしいことはないが。
「うぬぅぅ・・・・本当にやらなきゃだめかね」
「もちろんですとも。さぁ、どきがムネムネするようなプロポーズを!さぁ!」
期待の眼差しを向けるアインハルトを見た初代は覚悟を決める。数回咳払いをして喉の調子を整える。
「この求婚の方法は、一応私の生きt・・・・私の国で騎士が正式にやるものにアレンジを加えたものだから、期待しないで」
「ほほう、騎士ですか。これは期待できそうですね」
期待するなと言っても期待する妹分に若干呆れつつも、やることだけは真面目に全力投球。緊張をほぐすのに大きく深呼吸し---目つきが変わった。
まずは片膝をついた。顔を浅く下げ、両目を閉じている。想像以上に本格的な出だしにアインハルトはさらに期待を膨らませる。
次に右手でアインハルトの右手を手の甲が上にくるように、小川を流れる水をくみ上げるかのように、静かに持ち上げた。
そしてアインハルトの右手の甲そっと口付けをする。
「っ!!」
手に感じた柔らかく、暖かい感触にアインハルトは身体を強張らせる。「大胆ですね」と冷静を装うが内心では心臓がバクバクと大声を上げているのがアインハルトの体全体に伝わっていた。
まだ求婚の儀は終わっていない。最後に初代は求婚の『言葉』を呟く。
「----------」
たっぷり三十秒ほど互いに無言になった。初代は儀を終えたので普通にしていればいいが、アインハルトがあまり無反応なのでどうすればいいか分からない。一方、アインハルトは初代の言葉にどう返せばいいか分からない。
双方固まって動けない。だがそこに、状況を打破する存在が現れる。
〈Machten beide Personen das was?(お二人ともどうなさいましたか?)〉
夜天の魔導書だ。
「へ?あ、い、いやー!なな、なんていうか・・・・こういうのはふざけてやるもんじゃないな!ね、アインハルト!・・・・・・(なんか違和感がないのはなんでだ?ニャインハルトだから?あれ、なんでニャインハルト?)」
「そそそ、そうですね!こういうのは、お互いがしっかり愛し合っているときこそ言うものですね!・・・・(全然有りですね。ユーリさんに言われるなら・・・・あれ?なぜユーリさん?)」
二人ともほんのり顔を赤くしていそいそとキッチンの陰から出て、リビングへと戻る。
その様子を見て夜天の書は一言。
〈Ein Scheck verlangte und......(要チェックやでぇ.......)〉
◆
「我が主ぃ!!!」
「あーはいはい。よしよし、泣かんといてー。・・・・・・しかしこれはまずいかもしれへんなぁ」
「はやてちゃん!例の作戦を実行に移すです!」
「せやなぁ・・・・これしかないやろ」
泣きつくアインスを撫でているはやてのもう片方の手には一枚のチラシがあった。
『時空管理局開催 ミッドチルダ大夏祭り!』
なんか最近アインハルトのからみが多い。大須ギィー!
そしてちょろっと過去のお話。キーポイントは『ゆりかご』ですね。はたしてどんな因縁が?
意見、感想をもらえると嬉しくて頑張れます。
次回→作者の頑張りしだい、だけど期末テストの後