魔法少女リリカルなのは〜vividと初代な夜天の王〜 作:かぴばらさん32号R
A:遊んでばっかだったごめんなさい
その34
第一管理世界ミッドチルダと第九十七管理外世界地球では時差が発生する。特に管理世界と管理外世界での時差は大きい。その差約五ヶ月。ミッドチルダの方が早く月日が過ぎている。
ミッドチルダは現在七月中旬。本格的に夏も始まり、大人達は皆滅入っているところだ。だが、初代など子供達は夏休み間近でスーパーハイテンション状態で夏を満喫する気だ。だから子供時代に戻りたいと現実逃避する大人が後を絶たない。なにも考えずただただ友と無邪気に駆け回ったあの一夏の思い出。そんな思い出話を同僚と語りながら大人は職務に励むのだ。
そんな大人達を嘲笑うかのように、自由を謳歌する『子供』が、ミッドチルダ----ではなく、海鳴のとある公園に訪れていた。
「......着いたな」
「ええ」
「ひっさしぶりーーー!」
「半年ぶりですねー」
ディアーチェ、シュテル、レヴィ、ユーリ(本家)。通称マテ娘一家。その正体はかつて初代夜天の王が組み込んだ夜天の魔導書のブーストシステム紫天プログラムの管制人格と無限の魔力を発生させるロストロギア級の代物、永遠結晶エグザミアを取り込んだ『元』人間。外見だけでは人間か否かはほぼ判別不可能なほど人間らしい上に、本人達はそれを気にしていない。
四人はそれぞれミニスカートやらワンピースやらデニムなど、夏を想定した服装で海鳴に訪れている。そう、夏服で、だ。
ディアーチェは微笑を浮かべ、ふう、と息を吐く。吐息は白いゆげを上げて空へ昇る。吐き出した酸素よりも多くの酸素を肺いっぱいに取り込む。そして、王は叫ぶ。
「な・ぜ・コ・コ・は!雪が積もっておるのだぁぁぁァァァァっっ!!?」
怒りのあまり放出された紫色の魔力がディアーチェを中心に広がり、降り積もった新雪を空へ舞わせる。美しい雪のシャワーにレヴィとユーリはキャッキャと喜び、ディアーチェとシュテルの周りをぐるぐると走って遊びだす。
肺の中の空気を全て使いぜぇぜぇ息を切らす君主を見て、シュテルはどうにか落ち着かせようと考える。自分達の王は冷静さを欠けば熱血美少女さながらの無茶な行動をする。レヴィやユーリでは出来ないだろうが、八百年近く側にいた右腕的存在の彼女にとって王を冷静な判断が出来る状態に戻すことは朝飯前。
シュテルは今も微量に魔力を出しているディアーチェの側まで近づき、肩を叩く。
「うぬぅぅ!!寒いぃぃ......。っと、む?シュテルか!これはどうなっておる!この時期、海鳴は七月では------ほむっ!?」
闇統べる王、ロード・ディアーチェに対して臣下であるシュテル・ザ・デストラクターは足元ですくい上げた新雪をもふっととぶつけた。なぜか顔面に。
「..........テル」
「こなゆき、それはもっふもふの至高の存在で」
「シュゥゥゥテェェェルゥゥゥゥゥッッッ!!!」
「きゃー(棒)」
軽やかなステップを刻みながら逃走する臣下を陸上競技の選手さながらの走りでその君主が追いかける。もちろんそんな楽しそうなことに残った二人が加わらないわけがなく、四人での追いかけっこが始まった。
「............」
「ん?イア。どうしたの?」
ちょっと大きめな黒いブーツに明らかにサイズの合わないたぼだぼな茶色のダッフルコート。真っ赤なマフラーをぐるぐる巻き、顔の半分を隠した少女、イアはふと立ち止まり自分の進むのとは別の方角を見る。いつのまにかイアの保護者であるアリサ・バニングスも足を止め、イアと同じ方角を見る。
「なつかしいにおいがする」
「懐かしい?あの方角には山しかないけど。......あ、でもたしか古びた公園があった気がしなくもないわね」
「たぶんきのせい。あとさむいからかえりたい」
「帰りたいって、今からすずかの家に行くんでしょうが....。それにあんた、下にたしか五枚は着込んでたわよね。なんでそれで寒いわけ?」
アリサはイアとお揃いの茶色いダッフルコートのポケットに手を入れてブルブルと震える。いくら下にセーターや天下のヒートテックを着ていても寒いものは寒いようだ。背中を小さく丸めてしきりにその場で足踏みをし身体を温める。
「こっちからいいにおいする」
「それに前から気になっていたけど、イアはどこの国の----って、どこ行く!?そっちはすずかの家じゃないわよ!ちょっとイアーーーーっ!!」
アリサは目的地とは明後日の方向にトコトコ走りだす同居人を追い、月村家から遠ざかっていった。
◆
場所は変わって雪の積もった寒い公園から暖房のついた温かいマテ娘マンションへ。
「....随分と綺麗だな。とても半年ほど空けたとは思えぬ」
半年前、猛暑日が続く八月に遊びに来て以来、予定が合わず部屋にも海鳴に訪れていなかったにも拘らず、ディアーチェたちのいる部屋は、埃がほぼ無いに等しいほど美しさが保たれている。
「アミタとキリエが定期的に来て、掃除してくれているようですから。二人ともいい仕事をします」
「..........その話、初耳なのだが」
「おや?私はレヴィに伝えるように言ってあったはずですよ」
「伝言をレヴィに任せるのが間違いだ....」
アミタとキリエが設置して行ったであろう、『こたつ』の中にユーリといっしょにスッポリ収まっているレヴィに目を向けつつ、二人は今後の予定を調整することにした。
「桃色たちには後で礼を言っておくとして、問題は小鴉への連絡だな。シュテル、ミッドの時間は?」
「ミッドチルダと地球では月日としての違いは大きものの、二十四時間単位で見ればほぼ変わりありません。現在こちらが午後一時なので、あちらもほぼ同時刻かと」
「やつは管理局に勤める身....この時間は職務を全うしているだろうから、個人端末に繋げるよりかは、自宅の端末に連絡をするのが吉だな。盾の守護獣あたりが居るはずだ」
「休日なら在宅の可能性もあります」
「それもあるな。ま、とにかく連絡してからだ」
そう言うと、ディアーチェは壁
に設置されている電話機のような端末を操作する。すぐ横にあるメモ書きの通りに番号を入力していき、通信開始のボタンを押す。
ピリリリ!と高い電子音が数回鳴り、五秒もしないうちに、通信が繋がる。
「あ、八神さんのお宅でしょうか?....はい、クローディアという者ですが、八神はやてさんはご在宅ですか?」
◆
「はやてさん、ですか......?」
八神家に備えられている端末の通信を取り、アインハルト・ストラトスは困っていた。夏休みが始まって一週間が経ち、いつものように友人、八神ユーリの家に遊びに来て、いつものようにゲームをする、実に充実した夏休み。
本日も連日続く、仁義無き一千連戦スマブラ対決。途中休憩で、ジュースを買いに自販機までダッシュするユーリを見送ったタイミングでの通信を、つい自宅感覚で受けてしまったアインハルト。
誰もいないと言って切るのが一般的な対応と考えたが、アインハルトには疑問が一つ。
「(八神はやて....『歩くロストロギア』の?)」
八神はやてと言えば、二年前に発生したジェイルスカリエッティ事件、通称JS事件を解決に導いた伝説の部隊、機動六課の部隊長。
間違いではないか?という考えが真っ先に脳裏をよぎったが、すぐその考えは消える。
アインハルトは、ユーリのフルネームを思い出す。
「ユーリ、ユーリ....八神、ユーリ......おぉ」
『八神』なんて変わった苗字を持つのはミッドチルダを探したってクラナガンのこの家くらいだろう。
趣味や性癖を分かち合える親友との出会いから三ヶ月。今頃になって、八神ユーリは八神はやての家族の一人だというのに気が付く。
「(似ていないような気もしますが......そもそもどういう家族関係なんでしょうか。姉弟......いや、もしかして..........ま、まさかっ!?----------お、おおお親子ッ!)」
アインハルトの頭が徐々にピンクに染まり始めた。
「(ユーリさんは十歳。八神はやてさんは雑誌で二十歳前後と紹介されていたはず....つまり、約十歳での出産っ!?法的にアウト!法的にアウト!)」
『あの......もしもし?』
「(いえ、考え過ぎですアインハルト・ストラトス。彼女は管理外世界出身......そこでは十歳でも妊娠していいという法が整備されている可能性が..........はっ!)」
法が整備されている可能性を信じかけていたアインハルトの脳に、とどめの一撃を刺すかのように現れたのは、雑誌のインタビューコーナーの記事のある単語。
背中に冷やりとしたものを感じざるを得ない事実。自分でも驚くほど目を見開いているのがわかるほどの衝撃。
「(彼女は....独身ッ!)」
導き出される答えは。
極悪非道な男にチョメチョメされる→捨てられる→悲しみを背負い養育費を稼ぐため管理局入り→〜そして復讐へ〜
「......失礼ですが、八神はやてさんとはどのような関係で....?」
『?......昔、いろいろ『夫婦です』こらシュテルっ!あらぬ誤解受けることを言うな!』
「こ、ここここの外道っ!!」
『......へ?』
突然の怒声に通信相手の謎の人物は理解が追いつかず、どこか抜けた声を出してしまった。
怒りの炎を瞳に灯し、拳を握りしめてわなわな震えるその姿はまさに『覇王』と呼ぶのに相応しい威圧を放っている。
「どうやって幼気な少女を騙くらかして性交に至ったかは知りませんが、十歳前後の少女を妊娠させて蒸発するとは、見上げた根性をしているではありませんか....!」
『え、あ、いや、ちょちょちょっと待て。貴様は何かとてつもない勘違いをして』
「八神はやてさんもその子供も貴方なんか忘れて元気に、立派に生きているんです!何が目的ですか!お金ですか!」
『なにぃっ!?子鴉のやつ、子を授かっておったのか!?聞いておらぬぞ!』
お互いにだんだんズレてきた。
「いいですかっ!八神はやてさん本人もですが....その子、私の親友に手を出そうものなら、覇王の名にかけて、貴方を討ちます!」
『あ!ちょっと待て!詳しく話しを----』
「はァッ!」
殴りつけるように通話終了のボタンを押し、相手との会話を強制的に終わらせる。
アインハルトは激怒していた。まさかあんな下衆な人間がいたとは、許せなかった----が、同時に深い悲しみにも包まれた。まさか自分の親友があんなに暗い過去を持っていたとは、と。あの明るさは、過去の悲しみに溺れた自分自身を隠す演技だったのか、と。
だからこそ、決意した。
「たっだいまー!見て見てニャインハルト!冷製いちごおでん零式だって!いやぁ、いくら赤字続きだからってキ○ンもそこまでやらなくていいのにねー......って、どした?」
奇抜な飲み物を自販機で見つけ、意気揚々と帰ってきた初代は、浮かない顔のアインハルトを見て少し真剣な顔つきに変わる。問題があったなら騎士として、親友として解決に導く気に溢れている。
初代が帰宅したのに気が付いたアインハルトは、真っ直ぐ初代へと歩み寄り、その肩に手を添える。
「......安心してください、ユーリさん。ハイディ・E・S・イングヴァルト、覇王の名にかけて、貴方を必ず幸せにしてみせます」
「お、おう。幸せに?」
「はい」
困惑する初代夜天の王の前で、覇王ハイディ・E・S・イングヴァルトは誓いを立てた。
記憶にはまだ戻らぬ聖王女に誓うように。
「私と最後のさん?たしか戸籍上では姉弟だったかなぁ....。実は血が繋がってないんだよねー!」
「..........まじですか」
「うん」
「..........」
冷製いちごおでん零式をつつきながら初代によって知らされた真実。
ソファーから立ち上がり、強い日差しが差す青空を見上げる。
謝ろう。
そう決意したアインハルトだった。
アインハルトちゃんはちょっと正義感が強いだけ。
そして海鳴に戻るマテ娘、察知する電波オリキャラ。
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次回→作者の頑張り次第