魔法少女リリカルなのは〜vividと初代な夜天の王〜 作:かぴばらさん32号R
A:そんなことはある。 ごめんちゃい。
Vividアニメ化おめでとう! これでやる気が満ち溢れてくるハズだよ!
あ、お気に入り登録2000件突破しました。 こんなクソ更新速度の作品見ていただいてありがとデース。
連載開始から一年過ぎてるという真実。
その36
週末の休日の八神家は賑やかである。八神はやてをはじめとする守護騎士四人とユニゾンデバイスに加え、最近は十年前に消滅したはずの管制融合機リインフォース・アインスが、さらには(自称)八百年前に死亡したはずの夜天の魔導書の主––初代夜天の王の二人が加わり、八神家はいっそう忙しく、そして笑顔溢れる家庭となった。
そんな明るく愉快な八神家の休日だが、本日はアインスとはやての二人しかいない。近頃は管理外世界への派遣が多く、実力のある守護騎士は引っ張りだこになってしまい、家を開けることがしばしばある。
はやてとアインスは魔導師ランクや立場上の問題としてこの手の派遣任務に着くことは滅多にないため、ちょくちょく暇が出来るのだ。
「んーあー....ほんま眠いわぁ。久々に積みゲーをやっとったらまさか朝とは....ふぁぁ〜....」
「我が主! 女性であるあなたが下着姿で歩き回るものではありません! どうか衣服を!」
「シャツ着とるし別にええやろぉ....。どーせ騎士のみんなはお仕事、リインは近所の子と遊びに行ってて、初代はアインハルトと一緒にミウラの家やで? たまにはのーんびりするのもええやないか」
暇があると言え、さらなる昇格を目指しているはやてに休みは少ない。自ら進んで大きな仕事をこなし、偉い方々にアピールするのはもはや基本中の基本。上級キャリアも楽ではない。
気の張った職場から離れ、はやてが自宅でリラックスするのにはアインスとしても大変喜ばしいことなのだが、二十歳を越えた女性が自宅とはいえ下着姿で生活するとはいかがなものかと思う所存だ。
朝っぱらからダルダルなはやてになんとか着替えてもらおうと、アインスが説得をしている真っ最中、玄関のチャイムがリビングに鳴り響く。
「....我が主、お話はまだ終わっていませんので、そのつもりで。出来れば何か羽織っていてください」
「あーん、いけずぅ〜」
口を尖らせブーブーと文句を垂れ流すはやての将来を考えて若干心配になりながらも、ここ訪ねて来た客人を迎えるためにやや急ぎ足で玄関に駆ける。
「はい、どちらさまで......しょう、か」
アインスが玄関まで辿り着いたときには、既に客人と思わしき人物は家の中に入っていた。
背丈ははやてと同じくらいで、スラリと長い足を際立てるデニムを履き、明るい雰囲気を印象付ける赤いTシャツには黄色い文字で『NEEEET!』と印刷されているのが目に入る。 ショートカットに切り揃えられた濃い栗色の髪に白いハンチングをかぶり、右手には大きなエナメルバッグを担いでいた。
アインスは目の前の客人––少女のことを知っている。 いや、忘れるはずがない。 かつて初代夜天の王と共に戦場を翔け、永き眠りから醒めたとき一度は自分達と敵対したこともあった。
「こんにちわんっ」
––––––『星光の殲滅者』シュテル・ザ・デストラクター。 夜天の魔導書のブーストシステム兼フルドライブシステムの一部『紫天の書プログラム』の管制人格の一人。 『アカ』の愛称を授かり、初代夜天の王を守護した戦友がそこにいた。
◆
「––––んっ? なんだろこの懐かしい感じ....まるで実家のような安心感」
「有 情 破 顔 拳」
「次、アインハルトさんの番ですよ。 早くサイコロ振ってください」
何かの気配を感じ取った初代。 アインハルトはそれに素早くセリフを加えるも、誤魔化すなと言わんばかりにミウラにゲームの順番で急かされる。
今日はミウラの家で同級生チーム三人が仲良くマリオパーティ(ミッドチルダ語吹き替え版)をプレイしている。 はやて秘蔵のマリーさん改造ゲームシリーズの一つである。
アインハルトの操るキャラクターはルイージ。 そしてルイージが進まなくてはならないマスの先には甲羅の形をした建物が建っている。 通称『ノコノコバンク』、このマスを通ったキャラクターは強制的にコインを五枚徴収されるルールとなっており、アインハルトの二十枚のコインはここを通ると十五枚になってしまう。 ゲーム勝負の勝敗を決める『スター』というアイテムはコイン二十枚で入手可能なので、足りない計算だ。
「この亀畜生は私の大事なコインを奪って、スターを取れなくするんですよ? 亀〇の分際で、生意気言ってんじゃありませんよって。 なにがノコノコバンクですか、この〇頭バンク風情が」
「亀〇バンク?」
「みーさんそれ以上はいけないっ!? みーさんにはまだ早すぎるっ」
ちっ、と舌打ちをしてノコノコと呼ばれる二足歩行の亀をこれでもかと罵るアインハルトの一部の言葉に反応し、首を傾げるミウラ。 だが言葉が言葉なので初代は必死になって話題を逸らそうと努力する。 同級生チームで唯一変な色に染まっていない貴重な癒し要素を失うわけにはいかないのだ。
相変わらず二人揃うとやかましくなる同級生チーム。 それを思い出の一つとして記録する係りに任命された夜天の書はアインハルトの膝の上に鎮座しながら、クラナガン全域にスキャンをかけていた。 理由は明白で、初代が感じた"なつかしい"気配の詳細を確認するためだ。
〈Magischer Reaktionsscheck .... Es ist Entscheidung.(魔力反応確認....確定ですね)〉
「こうなればミニゲームで....うわっ、叩いてケツドラムじゃないですか。 暗記ものは少々苦手......? どうしました?」
〈Der Freund eines Meister's -- ein kleines(マイスターのご友人について少々)〉
「......ユーリさんって、僕たち以外に友達っていましたっけ?」
「待ってみーさんその発言は私の心を『殲撃(ガイスト・ナーゲル)』するんだけど」
ミウラの的確で真っ黒な発言に、初代はエレミアの奥義で心抉られた気がしてならない。
「そういえば私たち以外の方と遊んでいるところは見たことありませんね....百歩譲って異世界人であるのを考慮しても、その世界での友人について語ってもらったことが......ぼっちっち?」
「ユーリさん、妖怪のせいにしちゃダメですよ?」
大親友二名の連撃に世界最高峰の防御能力を誇る初代のハートがフルボッコにされる。 夜天の書が完成してすぐに旅に出て戦争に巻き込まれた初代に同年代の友人などほぼいないに等しい。
唯一の同年代はユーリ・エーベルヴァインくらいのものだ。 本家の方の顔を思い浮かべ、初代は久々に会いたいなぁと思ったりする。
「し、失礼極まりないね君たちっ!! この初代夜天の王、友人の一人や二人ちゃんといたんだからねっ!!」
「同年代の方はどれほど」
「......数より質だよ、ニャインハルト」
「やっぱりぼっちじゃないですか(呆れ)」
「でもアインハルトさんも....」
「いえいえ、それを言うならミウラさんも....」
「「「..........」」」
なんだか悲しい空気に包まれた。 トリプルぼっちの爆誕である。
「そ、それよりっ!! 僕、ユーリさんのお友達について聞いてみたいですっ!! ねっ、アインハルトさんっ!?」
「そそそそうですね。 ユーリさんのおっともだちを知ーりーたーいーなー!!」
割と悲しい現実から目を逸らそうと、二人は強引に初代の友人についての話しに持っていこうと必死に初代に頼んでみる。 アインハルトに至ってはどこで学んだのかは不明だが、腕を組んで胸を押し付けるという高度な技能を披露している。 だが、たかだか十歳のペッタンコではなんの意味もない。
しかし、これだけ懇願されれば語らないわけにはいかない初代。 誰から語ろうか少し迷う。 『破壊神エレミア』、『予知騎士グラシア』、『癒天使イア』、『閃光のシュテュアス』、どれも現実味の無い夢のような力の持ち主で話したところで信用するか非常に怪しい。
そこで初代に電流走る。 そうだ、ユーリ(本家)がいるじゃないか、と。
「ふふふっ....そこまで言うなら紹介しようじゃぁないか。 我が友、ユーリ・エーベルヴァインをっ!!」
堂々と言い放った名はユーリ・エーベルヴァイン。 その名を聞いて二人は一瞬、目の前にいるユーリ(分家)のことかと考えたが、「ただの同名じゃよ」と初代が答えたのでそういうことかと納得する。
「ユーリ・エーベルヴァイン....なんだかいいとこのお嬢様ってかんじの名前ですねぇ。 憧れちゃいますっ」
「うん、まぁ、実際に私の世界では名門エーベルヴァイン家なんて呼ばれてたしそれなりのお嬢様だよ」
「そんな名家のお嬢様とお友達なユーリさんの素性について私は気になりますけどね....?」
アインハルトの向ける何とも言えない視線からさっと顔を逸らす初代。 初代にとって自分の素性なんてそれこそ夢どころか神話に新たな一ページを刻んでもおかしくない代物だ。 一国の軍隊の総火力に並ぶほどの魔導騎士など誰が信じようか? 加えて数百年の時を越えて転生しましたなんて作り話もいいところだ。
だが、いつまでも秘密にしておくわけにもいかない。 いつかタイミングが来れば話さなければならないのは初代も重々承知している。 今はまだその時ではないだけだ。
アインハルトの鼻先五センチまで顔を近づけ「ひーみーつー」と言って笑って誤魔化す。
急なことに少し驚いたアインハルトだったが、直様自分の額を初代にコツンとぶつけ、さらに近い距離で笑う。
「いつか....話してもらいますよ? たとえ他の人には秘密でも––––私だけには」
第三者視点のミウラは耳まで真っ赤にして両手で目を隠しながらも指の隙間からチラ見。
第三者がこの反応、すなわち当の本人は––––
「..........ちょっと、反則じゃぁないかと....初代さんは思うんですが」
熟れたトマトより真っ赤っかである。
夜天の王と言えど人の子で年頃な男の子には変わりない。 可愛い女の子にはときめき、綺麗な女性には惹かれる。 攻めるのはいいけど攻められるのは苦手––ある意味、アインハルトは天敵の中の天敵。 おまけにいくら初代が金髪フェチでも碧銀フェチになってしまうほど可愛いと綺麗を両立してるからたちが悪い。
ふと、初代は胸の内に湧き上がる熱い想いに気付く。 ヴィヴィオと初めて会ったときと似た想い。
(もしかして、この気持ち––––)
「––ねぇねぇ今どんな気持ちwww? 美少女におでこコツンされてどんな気持ちwww? ときめきました?ときめき––あ、やめてユーリさんエビ固めはらめぇぇぇぇっ!?」
「ちょーーーーっとでもドキっとした私がおバカさんだったよニャインハルト。 やっぱニャインハルトはニャインハルトだ」
アインハルトをベッドへ投げ、はやて直伝のエビ固めをかましてお仕置きをする初代を見て、ミウラは一人ぽつりと呟く。
「また話し逸れてる......」
初代とニャインハルトだからしかたない。
◆
「ハーヤーテーのくっち癖〜、うーがい手洗いニンニク––––」
「いや、手洗いは初代によく言うてるけどニンニク卵黄はないわ。 サプリメントに頼り出したら終わりってのが八神家の家訓やし」
「......主、先日ヴィータがそれらしきものを口にしていた気が....」
「アインス。 それサプリメントちゃう、ミンティアや」
八神家に突如訪問して来たシュテルに驚きを隠せなかったはやてとアインスだったが直ぐに歓迎ムードへと移行し、現在はリビングで紅茶とクッキーを食べながら談笑していた。
彼女の訪問目的はただ一つ、初代夜天の王の生存確認。 本当はみんなで来たかったらしいが、いきなり大勢で押し掛けるのは失礼だという家長ディアーチェのお言葉があり、代表してシュテルが来たとのこと。
「貴女が今ココにいるということは、ほぼ初代の生存を裏付けているようなものです。 まさか禁忌兵器の直撃を受けてから一度死んで生き返るとは......あの方は本当人間なのでしょうか?」
「一応そのはずだ。 初代が生き返った経緯は私も闇の欠片の最深部にいたからよく分らない....どうやら突然高町なのはの家に現れて、ヴィヴィオとスマブラなるもので遊んでいたらしい」
「......はて、なぜ数百年前に死んだ初代がスマブラを遊べるのでしょうか? 聡い方でしたが、反応型兵器の可能性がある全く未知の機械などに手を出すことは無かったはずです。 そんなことすればエレミアが殴り飛ばしそうですし」
「そういえば、こちらの言語を一切知らないはずなのに様々な物の名称を知っておられたな......まさか、別世界で生存し続けて....?」
真剣な顔付きで初代のことを語り合う二人を見て、はやては取り残されたような雰囲気になってくる。 どうやらスマブラで遊んでいたことが初代の謎を解く鍵になるらしいが、ぶっちゃけ、旧夜天一家を詳しく知らないはやてにとって『昔』がどうだったかより、『今』初代をどうすべきかを考えた方がいいと思っている。
二人の話を聞く限り、初代の最期はあまりにも悲劇的なものだったらしい。 騎士達に別れの挨拶一つ出来ずに禁忌兵器の毒に身体を蝕まれて死ぬなど想像もしたくない。
彼にとって本当の幸せ––––旧夜天一家の皆とずっと一緒に暮らすこと。 叶えられなかった家族との生活、誰もが望むであろう当たり前の願い。
彼は今、本当に幸せなのか。 『八神はやて』という存在は、もしかしたら彼の中で––––
「––––『いらないと思っているかも』。 なんて考えるならば、今直ぐその考えを改めてもらいますよ、ハヤテ」
シュテルの言葉にビクッと肩が揺れる。 いつの間に話しを中断していたのだろうか、シュテルとアインスは視線を真っ直ぐはやてにむけていた。
シュテルは大きくため息をつき、しょうがない人だと言わんばかりに続ける。
「我らが創主、初代夜天の王はまだ幼い。 数万の騎士を指揮しても、地図を書き換えるほどの魔法が使えても、言動が子供らしくなくても......彼はまだ、ひどく脆い心の持ち主です。 自らの作り出した戦場を見て発狂し、廃人一歩手前になるほどには人間らしさもあります。 ハヤテ、守護騎士達が彼のこと覚えてないのは知っていますか?」
「....うん。 なんか、『ぬわぁんですとぉっ!?』って感じで驚いとった」
「......あの方らしい。 かつて家族として接してきた人物がいつの間にか赤の他人になる....これほど辛いものは無いでしょう、自分だけ覚えていれば尚更。 まぁ、孤独というわけではなさそうですね、アインスがいるので。 それに、いいご友人が出来たとの話しを伺いました」
「アインハルトにミウラ、ヴィヴィオにコロナやな。 みんな初代と仲良くしてくれとる、優しくてええ子ばっかや」
思い浮かべた初代の友人達の顔に思わず笑みがこぼれる。 引っ張る子、引っ張られる子、みんなまるで青春小説の登場人物達のように仲睦まじく、トラブル無く日々を過ごしている。
ハヤテの頭の中に浮かんだのは友人達の顔だけではない。 初代も初代で可愛いところがある。 早めに帰宅して夕飯の支度をしているとき、後ろからひょっこり現れて背中に飛びついて『今日ごはんなんですかっ?』と聞いてくるのなんて、まるで母親と子供の––––
(––––あっ)
「ハヤテは察しがよくて助かります。 彼には両親がいません、ある意味愛に飢えてるんですよ。 守護騎士を統べる騎士王は常に皆を見守る立場でなければならない、臣下に甘える王など当時ではいい笑いものです。ですから、初代にとってハヤテは初めての『母親』と言っても過言ではないでしょう....ね、アインス?」
「..........主と従者の関係がある限り、私は初代の母親にはなれません。 私の愛情は『騎士の優しさ』程度にしか捉えてもらえないでしょう。 ......我が主、初代が身も心も強く成長されるのには貴女の『愛情』が不可欠です。 どうか、初代のお側にいてあげてください」
そう言うとアインスは大きく丁寧に頭を下げる。 さらに「私からも」とアインスに続いてシュテルも頭を下げたため、さすがにはやても慌てふためく。
「ちょっ、二人ともそんなに頭下げんといて!! ....正直、守護騎士のみんなの『おかん』はやってきたつもりやけど、『お母さん』は意識したことなかった。 私自身、物心ついたときにはお母さんはおらんだから、お母さんがどうやって子供に接するのとかはよぉ分らへん」
「ハヤテ....」
「でも、うん、そーやなぁ。 どーせしばらく結婚して子持ちになる予定なんかないんやから、いっちょ全力でやってみるのもええかも。 ノウハウはなのはちゃんとフェイトちゃん、あと....師匠にでも聞こか!!」
その人は父親では、とツッコミを入れたい思いもあったアインスだが、それ以上に嬉しくて、どこか寂しくて、「ありがとうございます」と小さく言うことしか出来なかった。
その表情に確かな笑みを浮かべて。
「さぁ〜って、そうと決まれば今晩は家庭の味の代表、カレーライスの出番や!! 気合い入れて作るで〜!!」
「ハヤテ、私も微力ながらお手伝いさせていただきます。 ここにあるディアーチェ特性のレシピも参考にするとよろしいかと」
「我が主、初代のは甘口でお願いします」
今夜の晩御飯は、八神家特性カレーライス〜母の味〜に決定した。
「で、結局ユーリ・エーベルヴァインさんはどんな方なんですか?」
「そだねぇ....金髪ふわゆるウェーブに私と同じくらいの背丈、比較的おっとりした性格で––––星の生命活動に影響を及ぼす力を持ってる人?」
「......それ本当に人間なんですか?」
なんか書きたいこと書いてると文字数が増えるようになってきた(ようやく)。
てか、アインスとシュテルとアインハルトの口調似すぎィ!!
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次回→召喚師の方の後かも