魔法少女リリカルなのは〜vividと初代な夜天の王〜 作:かぴばらさん32号R
「突然ですが私、列強の王達をしばく使命に目覚めました」
「こいつはいきなりなに言ってんだ」
「やろうと思って簡単にできることじゃないですよ?」
アインハルトのいつもの唐突なビックリ発言を初代とミウラはポッキーをかじりながら聞く。この辺、冷静に返せるようになってきてるあたりミウラも中々染まっている。
「こう、なんといいますか・・・・・・覇王だかクラウスだかの記憶がなんちゃらほいという感じでビビッと脳にきちゃいまして、今朝からすっごく覇王流の強さを証明したくなったんです」
迷惑な話である。
「それを私達に言われてもなぁ。クラウスさんの時代はちょっと専門外だし・・・・・・みーさん、なんかわかる?」
「えっと、覇王クラウス・イングヴァルトがいたの時代の王でしたら、やっぱり聖王女オリヴィエ・ゲーゼブレヒトとかが有名じゃないでしょうか」
その時代には既に存在しなかった初代が尋ねると、ミウラの口から聞き覚えがある名前が返ってきた。
聖王女オリヴィエ・ゲーゼブレヒト。かの有名な『ゆりかごの聖王女』にして初代らの友人である高町ヴィヴィオの複製母体となった女性だ。その実力は国を越え、大陸全土に勇名を馳せていた。まさしく列強の王と呼ぶにふさわしい一人と言えるだろう。
「オリヴィエ――――はうわっ!!」
オリヴィエの名を耳にした瞬間、アインハルトは突然立ち上がり、拳を力一杯握りしめながら、わなわなと震えだした。
おかしいのはいつも通りだが、あきらかに普通とは違う異様さを見て、心配した二人は側に駆け寄る。ついでに夜天の書も出てくる。
「ア、 アインハルトさん!どうしました!?」
「ニャインハルト、大丈夫?なんならシャマル呼ぶけど・・・・・・」
〈Sランク級の治癒魔法も備えています〉
ミウラは小さな手で優しく拳を包み、初代は騎士の強制招集、夜天の書は大規模治癒魔法の展開準備を行う。
そんな二人には目もくれず、アインハルトは目を見開き、
「きききっ、きました!ピーンときちゃいました!オリヴィエです!オリヴィエこそ私の倒すべき存在!すなわちそれはヴィヴィオさんを倒すこと!」
力強い声と覚悟。その裏打ちをするように、全身から美しい碧銀の魔力が溢れ出る。
アインハルトの明らかな戦闘態勢に初めて出会った時以来の危機感を覚えた初代は、夜天の書から拘束系魔法の項目を引っ張り出し、ひとまず動きを止めようとするが、
「こんにちはーっ!」
「ヴィヴィオ、玄関から入らないとダメだよ・・・・・・」
リビングと庭をつなぐ大窓が開け放たれ、ヴィヴィオとコロナが現れる。二人揃って健康的に焼けた小麦色の肌がまぶしい。
アインハルトは一瞬でヴィヴィオの前に移動する。速度に追いつけず、拘束魔法が空を切る。あんまり使われたことのない古武術の歩方が遺憾なく発揮されてしまった。
「ヴィヴィオさんッ!」
「はい!」
アインハルトの魂が籠もった声に、ヴィヴィオは元気よく返事をし、
「決闘を申し込みます!」
「はい?」
首を傾げる。
◇
「――――くっ」
奥歯をかみしめながら、アインハルトは一歩後ろへ下がる。
その直後、目の前を炎熱付与打撃が通過する。凄まじい変換効率によるものか、炎の色は赤を通り越して黒が混じっていた。掠っただけでも小さくないダメージが及ぶのが直感でわかる。
「まだまだいっきますよぉ!」
攻撃を放った本人であるヴィヴィオは続けて攻めに入る。右手に炎を燻らせ、力強い踏み込みとともに一気に距離を詰める。そのまま首めがけて炎の魔手が迫るが、
「あッ、まいッ!」
間一髪のところで障壁を展開し、難を逃れる。
攻撃を弾かれ、バランスを崩したヴィヴィオにアインハルトの蹴りが決まり、後方へ吹っ飛ばされる。すぐさま体勢を立て直すも、既に自らの間合いまで到達したアインハルトの猛烈な連激が繰り出される。蹴りを主体としたその攻撃はひたすらに『速さ』が追求され、ヴィヴィオに防御の隙を与えない。
「んっ、むむぅっ」
蓄積していくダメージに危機感を覚え、ヴィヴィオは大きく後ろに飛び、距離を置く。更なる被害を防ぐため、本来ならば正しいと評価されるであろうこの行動。
だが、この時ばかりは悪手だった。
「――――それは甘えです」
アインハルトの動きは早かった。ヴィヴィオが距離をとった瞬間、嵐のような光弾射撃を放ち始める。一撃は確かに小さく、ダメージは微々たるものだ。しかし、それを補う圧倒的な速射性がアインハルトの光弾射撃にはあった。
しのぎの削り合いような攻防戦が始まって五分。互いにダメージの蓄積は小さくなく、集中力も切れ始め、正常な判断をし辛い状況になっていた。
だからこそ、
「なっ・・・・・・!くっ!」
――ヴィヴィオが駆け出す。
「・・・・・・・・・・・・!」
彼女は、
――アインハルトも続く。
「はぁあああッ!」
選択を、
――ヴィヴィオは炎を纏い、右手を突き出す。
「――――!」
間違えた。
――アインハルトはCスティックを上に弾く。
ノァァァァァァァァァァァァアアアアアアアア
「あ、あああああああああああっ!」
ヴィヴィオ――――の、操作キャラクターのキャプテン・ファルコンが画面の遙か彼方に吹き飛び、決着がついた。
「どうですか私のフォックスの上スマ・・・・・・命を刈り取る形をしているでしょう?」
「きれいに決まりましたねぇ」
「芸術的だったな」
「えぇ・・・・・・何この展開」
ドヤンハルトと化したアインハルトの上スマとそれに感心するミウラと初代。それらの展開がコロナにはイマイチ納得いかなかった。
◇
「やりましたよクラウス・・・・・・私はあなたの悲願であったオリヴィエに打ち勝つことができました」
アインハルトの表情はゲームをしていた時のギラギラとしたものから穏やかな淑女のように優しいものになっていた。どうやら満足したらしい。覇王クラウス・イングヴァルトの悲願ここに完結。
「それでいいのか覇王様・・・・・・」
「さ、三百年近くも引きずってた記憶がゲームのタイマンで解決しちゃうんだ・・・・・・」
それなりに事情を知っていた初代とミウラはあまりにもあっさりとした解決に本当にそれでいいのかと疑問や困惑といった感情が入り交じるが、本人がいいならいいかと割り切る。もうアインハルト検定一級をとれるくらいには扱いに慣れている。
「だがしかし、まだちょっと問題があります」
「まだ何かあるの?」
「ええ、せっかく聖王女を倒したのですから・・・・・・もう一人くらいいけるかなぁと」
「アインハルトさんが調子に乗ってる・・・・・・!」
列強の王の中でも最強クラスのオリヴィエを倒した。ならもう一人くらいいけるんじゃね?と、アインハルトは言いたいようだ。この慢心にはミウラもつい口を滑らせてしまう。
「というわけで、誰か王を紹介してくださいヴィヴィオさん」
無茶ぶりである。
「おうさま?それならコロナの方がくわしいですよー」
「えっ、私!?」
急な振りにコロナは自分を指さして目をぱちぱちと開く。
「さぁ、コロナさん。聖王女を倒した私に相応しいとっておきの王を紹介してください!」
アインハルトは目をキラキラと輝かせ、期待に胸を膨らませてますと言わんばかりのオーラを放出する。とっても断りにくい雰囲気にである。
仕方ない、とコロナは腹をくくって脳の引き出しからすごそうな王を探してみる。雷帝、英雄王、征服王、騎士王、様々な名前が出てくるが、アインハルトの求めるようなインパクトにはそぐわないとし、頭の隅へ追いやる。
たっぷり三十秒ほど頭を悩ませると、ふと、一人の王の名前が浮かぶ。
「・・・・・・冥府の炎王イクスヴェリア」
ぽつりと呟かれたその単語に、
「イクスヴェリア・・・・・・ふふふふふ、あの悪逆非道悪鬼羅刹と有名な冥王ですか。おもしろい、燃えてきました!」
握りしめた拳に碧銀の魔力を込め、アインハルトは不適に笑う。そして高らかに宣言する。
「相手は決まりました!冥王を倒すことで私は完全な勝利を手にしますッ!」
全身から魔力を放出し、スカートが捲れてライトグリーンのパンツが見えているのも気にせず、アインハルトのやる気は有頂天に達する。
そんなやる気満々なアインハルトを見て初代は一言、
「でもさ、どうやって見つけるの?」
チーム初等科ズのイクスヴェリア探検隊が発足するまでに時間はかからなかった。
最終更新履歴を見て震えたかぴばらです。
実に三年ぶりの更新になりますね。なお文は上手くなっていないもよう。
昔のようなその場のテンションはなく、時間が立ってストーリーを忘れかけてるような残念な状況ですが、ぼちぼち更新していきたいです。改めて読んだらかなり恥ずかしい。
夜天はなんとか完結に持って行けそうな気はしますがもう一つはちょっと実力以上に風呂敷を広げてる感がすごいですはい。対処は可及的速やかに考えます。
行き当たりばったりすぎる小説ですがもうちょっと続くんじゃよ。