学戦都市アスタリスク【六花に浮かぶ月と幻想】   作:観月(旧はくろ〜)

20 / 33
最近、PS4でPSO2始めました。2鯖でのんびりやっているので、フレンドになっても良いよって方がもし居ましたらツイッターのDMなんかで教えてください。フレンド一人も居ないんで寂しいんです……。


……で、はい。なんでこんな話をしたのかと言うと、主が想像以上にPSO2にハマってしまったからなんですよね。

つまり、この作品にPSO2要素が増えるかもというわけでして……本当に誰得?

なるべく詳しい描写をして、知らない人も困らないように致しますので、どうかよろしくお願いします。……あ! 今回は出てきませんのでご安心下さい。


それでは、どうぞ。





第十九話〜『なり損ない』〜

 

 

『丑三つ時、庭の四阿へ来られませ。

 

姿をお見せにならなかった場合、人形遣いの悪事を広めることと致します。勿論、その関係者のことも含めて。

 

 

 

―――最高の敗北を、教えて差し上げましょう。』

 

 

 

 

 

 

 

 

その手紙は、男が読み終わった瞬間に燃え尽きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅かったな。寮を抜け出すのに手間取ったか?」

 

午前二時。近付いてくる足音を聞き、聖夜は木に寄りかかり腕を組んだままそう言った。

 

返ってきた言葉は冷静だった。

 

「……二時を少し回った程度だ。遅れではないと思うが?」

「地球にはこんな言葉がある。……五分前行動、ってな」

 

聖夜がくつくつと笑うと、歩いてきた男は不愉快そうに顔を歪めた。

 

「呼び出しておいて何を言う。来てやったんだ、遅れたって文句は無いだろう」

「来ざるを得なかった、の間違いじゃないか? 別に無視したって良かったんだからな」

 

そう言っておきながら、それが出来ない状況だったということは聖夜もよく理解している。でなければ、あの手紙の脅迫は意味を成さなかった。

 

「貴様……!」

「アンタが怒る筋合いは無いと思うけどなあ」

 

もっとも、だからといって聖夜の挑発が緩むことはあり得ない。口元を不敵に歪めたまま、寄りかかっていた木からようやく離れる。

 

「むしろ感謝してほしいくらいだ。こうやって、口封じのチャンスを与えたんだから」

「……ああ、それに関しては有難く思っているよ。俺を舐めていたことを後悔させてやれるからな」

 

ふうん、と聖夜は面白がった。

 

「一回負けてるのに余裕そうだな。この前とは態度も随分違うし、何か策でもあるのか? ……なあ、丸木裕二サン?」

 

月明かりに照らされ、顔がはっきりと現れた男……裕二はハン、と鼻で笑う。

 

「あれが本気だったと思ってもらっちゃ困る。序列三十五位の地位だって、ある程度融通が利いて、尚且つ目立ち過ぎないようにした結果なわけだからな」

「そうか? 序列入り生徒って響きだけでも、俺からしてみれば結構目立つように感じるけど」

 

アンタとは違うのかな、と聖夜はわざとらしく付け加える。だが、裕二はこの挑発には乗らなかった。

 

「お前は目立っても良いんだろうが、俺は違う。目立たないからこそ、色々やって稼げるのさ」

 

滔々と述べる裕二。それを聞いて、聖夜はつまらなさそうに首を横に振った。

 

「実力があるなら裏でコソコソしなくても稼げるだろう。アンタの本気が大したものじゃないってことの証明にはなるかもしれないが、目立たないからこそ良いってのは基本的に言い訳だぞ」

「どうでもいいな、そんなこと。結果が出れば何だって構わない」

 

結果さえあれば、その過程で何をしようと気にしない。裕二が自分に対して、そして人に何かさせる時に求めるのがこの考え方だ。

 

だが、聖夜はこの考え方が好きではなかった。

 

「結果が全てって言う奴も、実力をしっかり備えているんだったらいいけど、そうじゃない半端者は総じて失敗するだけなんだよな。ひどく残念な事に、どこでも通じる摂理だ」

「――何が言いたい」

「アンタごときが持つには些か崇高な考え方だ、ってことさ」

 

過程なくして結果はない。それが分からず、ただ結果だけを追い求めて取り返しのつかないことに見舞われた人々を、聖夜はハンター生活の中で何人も見てきた。若手は言うに及ばず、時にはベテランでさえも。

 

とはいえ、それを理由に、聖夜が裕二を欠片でも心配しているかと言えば全くあり得ないことだ。ここに彼が来た以上、あとは仕留めれば良いだけなのだから。

 

「ま、今更言う事でもないか。どうせもう平穏に終わることはできないんだ、せめて今後の教訓にでもしてくれればいい」

 

「………」

 

裕二が無言でハルバード型煌式武装を展開する。それとほぼ同時に聖夜も懐から呪符の束を抜き、そして人形(ひとがた)を周囲に浮かべた。

 

 

 

―――敵を見据え、宣言する。

 

 

「名乗ろう。今宵の俺は陰陽師、月影聖夜(なり)

 

 

星導館の生徒ではなく、一人の陰陽師――そして、一人の人間として。

 

 

「――古式の術で以て、敗北を教えてやる」

 

 

友人に危害を加えた者を、始末する。

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

聖夜の宣言を聞くや否や、裕二は一気に距離を詰めた。相手が何をしてくるのかは分からないが、純星煌式武装など、それらしい武装を出していないのは事実。ならば、何か仕掛けてくる前に終わらせれば良い。

 

その動きは、以前の決闘の時とは大きく違う。本気ではなかった、という言葉の通り、裕二は実力を隠していた。この前見せたような力任せの突進ではなく、いかに素早く自分の間合いへ持ち込むかに特化した飛び込み。この手で、彼は油断していた相手を何度も下してきた。ましてやこの前の決闘で先入観を持っているであろう聖夜は、何かをする暇もなく倒されるだけのはず。

 

 

――そのはずだったのだ。

 

 

「なっ、」

 

 

だからこそ、視界の先にいる聖夜が口端を幽かに歪めたことの意味が分からなかったし、唐突に頭上から降ってきた()()()に対する反応も遅れた。

 

「くっ……」

 

とはいえ、それでやられるわけでも無かった。ギリギリのところで攻撃の気配を察し、足に無理をさせながらも横に跳んで、そのまま地面を転がって追撃の雷撃も回避する。

 

しかし、体勢を立て直そうとした裕二の先には、聖夜が使役する人形が五体、獲物が誘い込まれるのを待っていた。

 

聖夜が唱える。

 

「『凰火(おうか)』!」

 

聖夜から人形へと星辰力が伝えられ、火と風の術が発動。裕二の前方で炎が生み出され、それを旋風が呑み込み、小規模ながら強烈な火焔の竜巻が発生する。

 

「うぐあっ!」

 

無論、姿勢を崩していた裕二に避けられるはずもなく、炎が身体の表面を舐める嫌な熱さと痛みを感じたかと思えば、次の瞬間には大きく吹き飛ばされ近くの樹に衝突していた。しかし、さらなる追撃の可能性に思い至り、痛みを堪えながら、そのまま素早く起き上がって防御の姿勢を取る。

 

 

―――だが、追撃は無かった。ふっ、と笑う声が聞こえる。

 

 

「少し、見くびってたかな。ここまで動けるなんて」

 

裕二が見れば、聖夜は先程から一歩も動いていなかった。そのことに戦慄を感じながら、裕二は声を絞り出す。

 

「……お前、まさか『魔術師(ダンテ)』なのか?」

「まさか。だとしたらもっと上手く術の行使が出来るだろうよ」

 

 

この陰陽術は、聖夜が持っている――もっとも、こちらの世界では『幻想の魔核(ファントム=レイ)』起動時にしか使えないが――『属性を司る程度の能力』とは全く関係がない。能力に気付いた後、月影家に遺されていた文献や資料を漁り、努力の末にようやく身に付けたものだ。

 

だが、いかに陰陽師の血を引く聖夜であっても、もちろんそのための訓練など受けていたわけではない。それこそ、陰陽術が盛んであった時代に比べれば、聖夜の術式の発動速度は平均にも届かないだろう。

 

しかし、及ばないのはあくまで速度の話。聖夜は元々妖怪退治で使うために陰陽術を学ぶことを決めたが、そもそもそういった戦闘においては、既に自身の能力による攻撃と武具の使用がメインだったこともあって、牽制或いはとどめの一撃として、陰陽術を火力や多様性に特化させるという選択肢があったのだ。陰陽術は事前に呪符の用意をしておけば霊力消費が少なく済むということもあり、また火力を上げるのは彼にとって発動を速めるより簡単だったため、聖夜の陰陽術における火力はかなり高い。

 

それに加えて、聖夜は能力の都合上、様々な技を同時に制御する技術にも長けていた。そのため、水や風といった特定の属性に偏ることなく術を行使するのはもちろん、式神を多数使役したり結界を複数展開することに対する適性もあった。文献の豊富さも含め、一カ月と少しという普通ではあり得ないペースで陰陽師としての基礎を身に付けることが出来た理由はそれだ。

 

 

――しかし、結局のところ、聖夜は陰陽術を後天的に、自ら学ぶことで手に入れただけ。その点で大多数の『魔術師(ダンテ)』や『魔女(ストレガ)』とは違う。この陰陽術だって、いくら火力や多様性に長けているとはいえ、似たような技術を持つ界龍(ジェロン)道士(タオシー)と総合的に比べても見劣りするのは間違いない。陰陽術だけで勝負しようとすれば、どうやっても不利なのは聖夜だ。

 

こちらの世界で使える弾幕だってそう。やっていることは能力者じみているが、実際は自身の星辰力をそのまま使用しているに過ぎないので、能力者と比べて効率が悪く、かつて幻想の地に居た頃と同じ威力を出すことは叶わない。

 

 

――つまり、あえて言うとすれば。

 

 

「俺は『魔術師』のなり損ないみたいなものさ」

 

 

星辰力を弾幕という形に具現化することは出来ても、純星煌式武装(オーガルクス)抜きでは万応素(マナ)に干渉することが難しい。そもそも、その星辰力にしたって、総量は非常に少ない。『魔術師』のように能力を意のままに発動する力は、この世界の理に縛られてしまった。

 

『なり損ない』。誰が定義したというわけではないが、きっとそれが今の聖夜を指すのにちょうどいい言葉なのだろう。もっとも、こうして裕二を圧倒している通り、戦闘における強さまでが『なり損ない』というわけではない。技術も経験も、アスタリスクの学生レベルはとっくに超えているのが聖夜だ。

 

 

「――さて、無駄話はこれくらいにしとこうか」

 

 

その聖夜が再び呪符を構える。ただし、今度はそのまま術を発動するのではなく。

 

「纏依【(いかずち)】――」

 

両足に呪符を纏わせ、電撃を発生させて。

 

「――こんな技もあってね。アンタは受け切れるかな?」

 

 

一閃。

 

 

 

振り抜かれた右足に裕二が反応できたのは奇跡に近かった。気付けば目前に迫っていた聖夜に対し、ほとんど反射でハルバードを持ち上げ、辛うじて直撃を免れる。

 

しかし、その威力は圧倒的だった。蹴りはもとより、そこに電撃による衝撃も加わるのだ。裕二は再び大きく吹き飛ばされ、そのまま中庭から飛び出す――直前で、透明な障壁に叩き付けられた。

 

「う、く……」

 

「ああそうだ。言い忘れてたけど、一定範囲に結界を張ってるから外には出られないよ」

 

聖夜の言葉が世間話のような気軽さで聞こえてくる。それに構う余裕のない裕二は、自身を妨げた結界に向かって武器を振り下ろした。しかし強固な結界はまるで揺るがない。

 

「だから無駄だって。俺が自分の意思で解除しない限りは、ね」

 

背後から気配。裕二が急いで振り向くと、何かが()()を通り過ぎた。

 

「遅いな。――『光月(みつづき)(かえし)』」

 

咄嗟に振り向き直した裕二の胸部に、綺麗な円弧を描く踵落としが直撃する。予想外の攻撃に対応することが出来ず、彼は息を詰まらせながら後ろへ飛ばされた。

 

「かはッ、」

 

今度は受け身すら取れなかった。勢いそのままに地面を転がる裕二を、聖夜は悠々と歩きながら追う。

 

「くっ……」

 

――と、裕二が制服の内側に手を入れた。そこから取り出したのは、一見すると何の変哲もなさそうなハンドガン型の煌式武装。

 

聖夜の心臓に素早く狙いを定め、一発。裕二の奥の手である、実は内部に様々なカスタムが施されたその煌式武装は、ハンドガン型だとは思えないほどの威力と弾速の光弾を放つ。星脈世代であっても、普段通りに星辰力を防御に回しただけでは貫通してしまうような、ただ殺傷するための弾。

 

 

しかし、そんな渾身の不意打ちにすら、聖夜は対応してしまった。

 

「命を無くす恐怖に慣れてない、そう指摘したはずなんだけどな」

 

光弾が放たれたと同時に、聖夜は左手の人差し指を突き出す。その指先には、彼の星辰力が一切の無駄なく高密度に集まっていた。彼の並外れた星辰力操作能力がなければ実現不可能な芸当だ。

 

 

――光弾が、聖夜の指で弾ける。

 

 

「な、んだと……?」

 

 

裕二からすれば、それはあたかも、聖夜が何も特別なことをせずに指一本で高威力の光弾を防いだように見えた。

 

 

………何もかも、通用しない。

 

 

「バケモノかよ……」

 

「狙う相手を間違えたんだよ」

 

 

光弾を防いだ指で、聖夜はおもむろに裕二を指す。

 

 

「チェッカーだ」

 

 

 

 

 

次の瞬間、水針が裕二の背部を貫き、風の刃が彼を正面から切り刻んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらら。殺してないよね?」

 

「当たり前のように結界を越えないでくれない? ……致命傷になり得る臓器は外した。死なないと思うよ、多分」

 

 

血の海の中で裕二が意識を失ってすぐ、一人の少女が聖夜の傍らに飛び降りてきた。そんな少女に、聖夜は呆れ声をかける。

 

「……で? ()()()()見てたんだ?」

「そこの樹の上。……あなたが踵落としを決めた辺りからかな」

 

聖夜の質問に含まれていた意味を取り違えることなく、少女は聖夜が求めていた通りのことを答えた。

 

「そうか。……じゃ、これの後始末をしないと。もちろん手伝ってくれるんだろう?」

「ええ。こっちで処理させて欲しいからね。良いでしょ?」

 

聖夜は頷く。元より、この少女に任せておいた方が何かと都合が良い。彼女ならば、聖夜が多少の無理を言っても聞いてくれるだろう。

 

「治療はどうする?」

「あ、それはこっちで適当にやっとく。別に死ななきゃ問題無いからね」

 

靴の裏が血で汚れるのも厭わず、少女は倒れ伏している裕二に近付いた。

 

「なんか腹立ってきたなあ……私もちょっとやっていい?」

「程々にしとけよ。本当に死ぬぞ」

 

冗談冗談、と笑いながら少女が右手を軽く振り下ろす。小さな黒い刃が倒れ伏す影に突き刺さるのを、聖夜はやれやれとでも言いたげな視線で見ていた。

 

 

 

 

 




ワールドにPSO2にDIVAにグランツーリスモに……PS4楽し過ぎる。



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。