テイルズオブベルセリア 世にも珍しい樹の聖隷 作:メガネ愛好者
特に関係の無い話ですが……アルトリウスの長剣の柄の先がモンスターボールに見えてしまう不思議
今回はオリジナル展開です
それでは
「俺が相手だ。全員でかかってこい」
そう言い放った強面の男――改め”死神”は独自の構えを取り、ルィーン達に向けて殺気を放ってくる
肌を刺すような鋭い殺気にルィーン達は気圧されかけるも、殺気で戦意を失うほどルィーン達は軟な心を持ち合わせていない。すぐさま気を取り直せば各々武器を取り出して臨戦体勢に入っていく
因みにマギルゥは後退し、その傍には一応とでも言わんばかりにダイルが護衛としてついていた
それに関しては何も言うつもりはない。今更マギルゥに何かを期待する気はないし、ダイルは貴重な航海士だ。失う訳にはいかない
よって、死神と戦うのはベルベット、ロクロウ、ルィーン、二号の四人となるのだが……
「……」
そんな状況で一人、ルィーンは未だに武器も取り出さずに突っ立っていた
顔を少し俯かせ、微かにだが口元が動いている。周りからは何かを呟いているように見えることだろう
また、白衣のポケットに手を突っ込みながら直立するルィーンの姿からは戦闘する気配を一切確認できないのだ。そもそも戦う気事態が元から無いということだろうか?
「……ルィーン? 何ボーっと突っ立ってるのよ。早く構えなさい」
「……」
「ちょっと、聞いてるの?」
そんなルィーンの様子に気づいたベルベットが呼びかけるも、ルィーンの耳に届いていないのか一切の反応を示さなかった
ベルベットの呼びかけで周囲の者達もルィーンの様子に気づいたようで、海賊達から怪訝そうな視線が送られてくる
しかし、そんな周りの雰囲気にも気がつかない程、ルィーンは思考を巡らせるのであった……
まずルィーンが感じたものは違和感だった
不可解なのだ。死神の……いや、海賊達の様子が
周囲にいる海賊達は、ルィーン達を取り囲みはするものの襲いかかってくるような気配が全く感じられなかった。ただこちらを警戒するだけ……いや、警戒というよりも
唯一戦う姿勢を見せている死神も四対一である状況だというのにも関わらず、その表情には焦りや不安が一切見られない。あちらから誘ってきた事とは言え、流石に四対一は手練れでもきつい筈だ。その筈なのに……その男は妙に落ち着いている――
こちらを圧倒するほどの自信があるのか、それとも何か思惑があるから焦らないのか……周囲の海賊達の様子を考えると、おそらくは後者じゃなかろうか?
情報が少ないながらも周囲の状況を冷静に見て判断することで、ルィーンは海賊達の思惑を導き出そうとしていた
何故俺達を襲撃して来たのか?
何故この場所に誘い込んだのか?
何故業魔相手だと知って挑んできたのか?
それらの要因を繋ぎ合わせていく。ほんのわずかな可能性も視野に入れ、相手の思惑を看破しようと思考の海に意識を沈めていく
その間ルィーンは無防備になるものの、それさえ気にならなくなるほど推測を建てるのに没頭していた
最早周囲の言葉など耳に入っていない。完全に意識は外に向いていない
ただただルィーンは感じた違和感を解消したいが為に思考を巡らせ、そして——
「……あぁ、そっか」
ルィーンは数分かけることでようやく一つの答えに辿り着いたのだった
疑問が解消したことで思考の海に沈められていた意識は浮上し、ゆっくりと俯かせていた顔を上げる。そんなルィーンの表情は、心にあった引っ掛かりが消えた事で何処か晴々としている
そしてルィーンは周囲の状況も気にせずに、彼――死神と名乗った聖隷に問いかけるのだった
「なぁあんた、戦闘前にいくつか聞いていいか?」
「……いいだろう」
先程までのルィーンを見ていた死神は、戦闘する気がなさそうなルィーンを訝し気に睨みながらも質問を許すのだった
そんな死神の鋭い睨み付きの返答に「おーこわ……」などと少し委縮して見せるルィーンだったが、次の言葉を発するときにはその委縮した姿も何処かに消え去っていた
「結論から聞くけどさ。あんたが喧嘩売ってきたのって……俺達がヴォ―ティガン攻略に足りうる実力かどうかを判断する為のもんだろ?」
そのルィーンの一言に、海賊達が固まった
それは目の前の死神も同様で、先ほどまで冷静に事を捉えていたであろう澄ました表情が驚愕に変化している
雛鳥を乗せた男なんて動揺を隠そうともしていない。明らかに図星を突かれたかのように戸惑っている
それとは別に、ルィーン側でも何かしらの変化が現れている
戦闘に備えていたベルベット、ロクロウ、二号は何の事だかわかっていないみたいで虚を突かれ、その一方で戦闘に不参加のマギルゥとダイルはルィーンの言い放った言葉の意味を全てではないものの理解していた
ルィーンの言葉の意味を理解してかマギルゥは愉快そうに怪しげな笑みを浮かべ、ダイルは「そういうことか……そういうことなのか?」と本当にわかっているのか判断がつきにくい呟きを漏らしている
周囲の変化、特に海賊達の動揺にルィーンは満足そうにしていた。自身の推測がどうやら的外れではないことが分かったからだろう
そんな中、ルィーンの真意が分からなかったのであろう者がルィーンに詳しい説明を求めてくる
その者とは……心が未発達だった事で驚くことはなく、ただ純粋にルィーンの言葉に疑問を感じた二号だった
「ヴォー、ティガン?」
「ん? ……あぁそっか。ヴォ―ティガンの事を言ってなかったな。俺の知ってる範囲で教えてやっからよく聞いてくれな?」
「うん」
二号の純粋な疑問にルィーンは丁寧に返答を返していく
自分達が向かっていたミッドガンドに行くためにはヴォ―ティガンをくぐらなければいけない事
ヴォ―ティガンは王国の警備兵がと少数の対魔士が配属されている海峡を塞ぐ要塞である事
その守備は鉄壁で、海から攻めても陸から攻めても落とせない難攻不落の要塞だという事
これらの事をふまえ、ルィーンはヴォ―ティガンの簡単な説明を二号に説いたのだった
ルィーンの説明を聞き終えた二号は、反応が薄いものの内容はきちんと理解したようだ。聞き返すこともなくさっきまで自分が立っていた場所に戻っていった
そして、二号への説明を聞いていたベルベットもヴォーティガンの事を一通り把握し、その内容の中で気になったことをルィーンに問い始めることとなる
「ヴォ―ティガンの事はわかった。あのまま進んでたら不味かったこともね……ただ、それで海賊に狙われる理由がわからないんだけど?」
ベルベットが気になる点はそこだった
ヴォ―ティガンが生半可な事じゃ攻め落とせないことは十分に理解した
今思えば先程二号を任せてダイルの元に向かったのもそれが理由だったのだろう。ルィーンに聞けば海賊の襲撃が来る直前にベルベットに相談しようと考えていたようだし
しかし、それで何故自分達が海賊に襲われることになるのかがベルベットはわからなかった
海賊であれば王国の兵や対魔士とは敵対しているのだろうから、その敵である業魔と無理に戦う必要はないだろう
海賊達はこちらに業魔がいることを知っていたのだ。下手に犠牲を出す可能性があるんだったらわざわざ敵対する意味が無い
海賊達の行動に疑問が浮かぶベルベット。そんな疑問もルィーンが導き出した推測で解消されることになる
「そりゃーあれだ。海賊流の”腕試し”ってやつじゃねーの? 知らねーけど」
「腕試し?」
「そ。さっきも言ったけどヴォ―ティガンの守備は固いからな、強行突破するにはちと無理がある。——それが人間だったらの話だが」
「……どういうことよ」
「例え鉄壁だろうが何だろうが、それを守っているのは王国の警備兵……要はただの人間だ。人間相手の対処は出来ようとも……
「……! 業魔の相手が出来ない以上、私達みたいな理性を持った業魔が味方に付けば……」
「そういうこった。対魔士っつー敵はいれど、ヴォ―ティガンの主要戦力は王国兵だ。いたとしても片手で数えられるぐらいしかいねーだろうし、その程度だったらヘラヴィーサで大勢の対魔士を相手に大立回りしたベルベットやロクロウの敵じゃないさ。……ま、一等対魔士で固められてなければの話だけどな」
ようやく海賊達の思惑に気づき始めたベルベットは海賊達に苛立ちを抱き始めた
言ってしまえば、自分達は相手の思惑に乗せられるところだったのだ。結果的に利害が一致しようとも、
最早戦闘する雰囲気も霞んでしまい、両者共に構えを解いてしまう
死神も先ほどまで放っていた強烈な殺気をその身の内に隠した事で、戦闘開始直前だった空気は一変して静まり返るのだった
そしてルィーンは死神に向けて語り始める。ここまでの流れで得た情報を元に導き出した推論……
「前提として、あんたらは俺達がヘラヴィーサで暴れていたことを知ってるだろ?」
「……何故そう思う?」
「何故そう思ったかは、ザックリ言っちまうと……その隣の奴のおかげだな」
そう言ってルィーンが指差したのは——雛鳥を乗せた男だった
突然自分が話題に出てきたことで混乱する男だったが、死神に睨まれた事でとりあえずは大人しくなる
そして死神はその理由を追及する為か鋭い視線をルィーンに向けなおす
その視線にまたもや委縮しつつも、ルィーンはそれに堪えて自身の推論の述べ続けるのだった
「そいつが頭に乗せてる雛鳥、それって”シルフモドキ”の雛だろ? 雛がいるってことは親であるシルフモドキもいる筈だし、そいつを伝書鳩代わりに遠くの仲間と情報のやり取りをしてると思ったんだわ。―—それこそ、ヘラヴィーサにいるだろう仲間とさ」
雛鳥を乗せた男の図星を突かれたかのような反応から、まず間違いなくこの理論はあっているだろう
シルフモドキはしつける事さえ出来れば頼もしい存在だ。人が放つ波長を記憶し、判別した上で特定の相手の元に飛んでいく特性を生かすことで、遠くの者に情報を伝えることが出来るのだ
つまり、ヘラヴィーサでベルベット達が対魔士達と戦っている現場を目撃した仲間の者が、自分達の思惑に利用出来るかもしれないと考えた事で、その者からの情報を頼り今回の件が始まった……そうルィーンは考えたのだ
「それを決定づけるのもそいつがさっき言ってたしな……”本当に業魔の集団だ”って。これ、”仲間の送ってきた情報通りだ”って意味に取れるぜ?」
「そ、それは……」
「因みにだが、その言葉にみんなは意識が言ってて気に留めなかったのかもしれねーけど……その後に言った”使えるかもな”って言葉、もう俺達を利用する気満々ですって言ってるようなもんだろ」
「ベンウィック……」
「すんません……」
俺の証言を聞いた死神は片手を顔に当てて溜息をついている。その事で雛鳥を乗せた男――ベンウィックと呼ばれた男が申し訳なさそうに誤っていた
そんな二人の雰囲気を見て「そこまで悪い奴らじゃないっぽい?」と考え始めるルィーンは、一旦間を置いてから説明の続きを話し始めるのだった
ここからはルィーンが長々と推論を語っていくことになる。その間、誰一人としてルィーンの推論に口を挟もうとしなかった
「結論から言うと、あんた等の目的はヴォ―ティガンの先に進むこと……だろ? だから俺達をこの海岸に……ヴォ―ティガンの正門前に繋がってるラバン洞穴まで誘導した」
「海門がある以上、海と陸のどっちが攻めやすいかって聞かれれば断然陸だからな。そもそも門を開けるには結局内部に行かなきゃいけねー訳だし、そうなると陸から攻める方が効率がいい」
「更に言えば、ヴォ―ティガンの警備兵に極力感づかれないよう近づくにはラバン洞穴から進むのが手っ取り早い。正門はウエストガンド領側にしか設けていなかった筈だから、そのすぐ近くに出られる”
「勿論相手側の警備体制もあるだろうな。下手すれば”
「だからこそ、襲撃をより確実なものにする為に俺達……いや、業魔であるベルベット達をあんた等は目を付けたんだ。警備体制を調べた結果に、対魔士が少ない事が確認できたからこそ業魔の手が借りたかったとかじゃねーかな?」
「だが、あんた等は仲間の情報を疑う訳ではないものの、本当に使えるかどうかが分からなかったんだ。戦力として十分だったとしても扱いに難があったら利用出来ねーからな」
「だからあんたは俺達が使えるかどうかを確認する為に襲いかかってきた。本気で戦わせようとするために全力で殺気を放ってな……」
「因みに、周りの連中が手を出そうとしなかった理由としては……実力を測るとはいえ殺気を放ったんだ、こっちが手加減する訳がない。殺すか打ちのめす気で戦う俺達のせいで無駄な犠牲を出すのを避けたかったんだろ」
「そして、ある程度戦うことで実力と共に人格を探ろうとしたんだろうけど……それは俺のせいで確認する事が出来なくなった。——そして現在に至るって感じだ」
「……と、まあ……俺の推論はこんなところだな。何か間違いがあったら言ってくれ」
長く続いたルィーンの推論。しかしそれは、まるでこちらの事情を聴いていたのではないかと疑ってしまうほどに的を射すぎていた
海賊達は自分達の思惑を悟られてしまった事で焦燥感が沸いてくる。まるでルィーンに今までの行動を監視されていたんじゃないかと思えるほどに正確な内容は、一部の海賊達の心臓を鷲掴みにしたのだ
ベンウィックに到っては自身の発言のせいで作戦が失敗してしまったと後悔の念に苛まれていた。彼らにとって失敗することが許されない今回の作戦を、自身の油断と驕りで見破られてしまう原因を作ってしまったのだと深く後悔する
そんな彼を責める者などアイフリード海賊団にはいないのだが、それでも責任を感じてしまうのがベンウィックという男だった
自身らの思惑を見破られた事で海賊達は次々に意気消沈していく
―—しかし、その中で一人……動揺せずにルィーンと相対する者がいた
「……どうやら俺は、お前等の事を見誤っていたようだ」
そう、死神と名乗った聖隷だ
ルィーンの推論を聞いた後、死神は何かを考えるように瞳を閉じつつ腕を組みながら沈黙していた
そして沈黙から数秒後、考えがまとまったのか死神は静かに言葉を口にする。そこには最早敵対の意思は全く感じられなかった
「見事だ。ベンウィックが多少口を漏らしたとはいえ、よく気がついたものだ」
「気になる事は些細な事でも解消したくなる質でな。今回は最初から不可解だった分、余計に気になったってだけだよ」
「悪い事ではない。寧ろ些細な点をも見逃さず、追及する事で真実に辿り着くことが出来る者は貴重だ」
死神はルィーンの推論を高く評価していた
聡く、頭の回る者ほど敵に回すと厄介この上ないが、味方であれば頼もしい存在に代わる
だからこそ、死神は無駄に敵対する事をやめたのだった。自分達にとって不利益になる原因を作らない為にも
「こちらの思惑が知られた以上、最早隠す意味はない。だからこそ単刀直入に言わせてもらおう……海峡を進む為に力を貸せ、ヴォ―ティガンを落とす」
上から目線な物言いではあるものの、その言葉には強制させるような威圧感はない
寧ろ、ルィーン達が了承さえすれば全面的に協力する姿勢を見せている。周囲の海賊達も真剣な表情でルィーン達の返答を待っていた
そんな死神の提案に、ルィーンは……
「それはベルベットに言ってくれ」
「——はあ!?」
―—ベルベットに丸投げした
さっきまでルィーンが中心となって展開を進めていたからか、ベルベット達は事が終わるまで様子見に徹することにしていた
勿論こちらに不利益な要求があれば会話を遮ってでも反論していたところではある。もしこちらの意思を無視してまで強制してきたとしても、”自分達は関係ないからあんた達で勝手にやれ”と言って別れる事も出来るからこそ、そこまで話し合いに入ろうとは思っていなかった。このままルィーンと死神で話を進めてもらっても構わないまであったのだ
何故ベルベットがそこまで協力的ではないのか?
それも仕方が無い事だ。ベルベットとしては海賊達をそう易々と信じる気が無かったのだから
どんな思惑があれど、海賊達がこちらを襲撃したことには変わりない。そんな相手をすぐさま信用する事なんて出来る筈がなかったのだ
更に、信じられないと言えばルィーンも同じである
ルィーンとあの死神は聖隷だ。今のやり取りを見ても、もしかしたら襲撃の前から結託していたかもしれないと疑う事さえ出来るのだ
ベルベットとルィーンは”利用し合う関係”であり、”信用できる仲間”ではないからこそ、ベルベットはルィーンと海賊を信用できなかった
故にルィーン個人と海賊達が勝手に協力する分には、別にこちらとしてはどうする気もなかったのだ
しかしそれもルィーンの一言で状況が変わってしまう
何せ、ルィーンの言葉はベルベット達を巻き込むような言い回しだったのだから
”ベルベットに言ってくれ”……この言葉は、捉え方によっては”俺はベルベットの判断に任せる”と解釈できる
それが意味する事は——ルィーンがベルベットの仲間であり、決定権はベルベットにある……だから要求を呑むかはベルベットの意思次第だ——と、そう言っているのと大差ない意味を秘めていた
これでは海賊達に”ルィーンはベルベットの手駒”と認知されてしまう。ルィーンの仲間だと認知されてしまえば、自分達には関係無い事だと断言できなくなってしまうのだ
つまり今、ベルベットはルィーンに利用されそうになっていた
ルィーンがベルベットの仲間だと認知させることで、ベルベットを作戦の一部に組み込ませるかのように……
実際のところはベルベット達もヴォ―ティガンを抜けなければいけない為、海賊達に協力するのは吝かでもないのだが……相手の思惑に乗る形になる事がベルベットは許せなかったのだ
何よりルィーンに利用されることが気に食わない。確かに”利用し合う関係”とは言ったものの、こうも目に見えて利用しようとする姿勢を見せられるのは気に入らなかった
ある意味堂々と利用しようとする姿は清々しくもあるのだが、その外見上小憎たらしくて仕方がないのも事実だ
「……はぁ……少し考えさせて……」
「いいだろう。ゆっくり考えると言い」
ルィーンの思惑を察したベルベットは二つ返事で了承する気になれなかった為、とりあえず苛立つ心を落ち着かせてから返答しようと時間をもらうことにしたのだった
そんなベルベットがロクロウ達を連れ、海賊達から少し離れた場所に向かう中……未だにルィーンは死神の近くに立っている
そんなルィーンに、死神は呆れたような視線を送りながら話しかけた
「見た目の割に、随分と腹黒いもんだな」
「あ、気づいた?」
「あの業魔の反応。そして一瞬だが……あの業魔が目を逸らした時に見せた意地の悪い笑みを見れば自ずと、な」
「利用できるもんは利用する。それはあいつも同じ考えだし、今回は俺に分があったってだけさ」
「ふっ……恐ろしい限りだ。せいぜいこちらも気をつけるとしよう」
「あーらら、そりゃ参ったわ。あんた等も利用する気だったっていうのに……」
「面と向かってそう言えるんだ。どうせ、何かしらで利用する気ではいるのだろう?」
「
自身の黒い一面を一切隠そうとしないルィーンに、癖のある奴と関わりを持ってしまったと頭を抱える様な気持ちになる死神
おそらくは利用されることになるのだろうが……それが一体どんな場面でなのかが分からない以上、気を抜くことが出来なくなった死神であった
「とりあえずベルベット達の返答を待ってる間は話し相手になってよ。……あ、俺はルィーンっていうんだ。今後からよろしく!」
「……アイゼンだ」
そんな死神――アイゼンの気も知らないでルィーンは己がペースで話し、途中で今気づいたと言わんばかりに名乗り始めるのだった
そんなルィーンに簡素に名乗り返しつつ、作戦とは全く関係の無い内容の話を交わした事で、アイゼンはルィーンに”面倒な奴”という印象を新たに加えるのだった……
スキットEX6 強面のアイゼン
ルィーン
「そういえばさ? アイゼンはなんでさっきからそんな不機嫌そうなんだ?」
アイゼン
「……この顔の事を言ってるのか?」
ルィーン
「そうそれ。眉間にしわを寄せてるし、ずっと睨みつけてるのはなんでなのかなって。……正直ずっと睨まれんのはきつい」
アイゼン
「……素だ。別に睨んでない」
ルィーン
「え、あ……マジ?」
アイゼン
「マジだ。目つきが悪いのは自覚しているが、生まれつきのものだからどうしようもない。無理に笑顔を作りでもすれば……周囲は阿鼻叫喚となる」
ルィーン
「うわぁ……なんか、悪い。気に障った、よな? ……ホントごめん」
アイゼン
「気にするな。いつもの事だ」
ルィーン
「……因みにだけどさ、さっき俺がベンウィックって人から情報を得たって言ったときに、そいつの事を睨んでいたのは……」
アイゼン
「あれも睨んだつもりはない。本当かどうかを伺っただけだ」
ルィーン
「……その事はベンウィックって人も……」
アイゼン
「わかってはいる。だが……未だに慣れてはいないそうだ」
ルィーン
「…………」
アイゼン
「……行き着いた街で転んだ子供を助け起こした時に泣かれたこともある」
ルィーン
「いや聞いてないから」
アイゼン
「また、警備兵に暴漢だと勘違いされて一悶着あったこともある」
ルィーン
「ホント聞いてないから!? 何急に不幸談議に入ってんの!? それ以上言わなくていいから!!」
アイゼン
「更には通りすがった民家の住人に借金取りだと思われ、手に金を握りしめながら命乞いをされたこともある。……その光景を見た警備兵にまたもや暴漢扱いを——」
ルィーン
「もうやめろよぉ!! 聞いてるこっちが辛くなるから!! あんただって辛いだろ!? 辛いなら無理に言わなくていいからぁ!!」
アイゼン
「そんな周囲の反応から、いつしか俺は……”死神”と呼ばれるようになっていた」
ルィーン
「……まさか、死神って名乗ってるのはそこから――」
アイゼン
「いや、別の理由だ」
ルィーン
「違うのかよっ!? それなら今までの思わせ振りな流れは何だったの!?」
アイゼン
「死神ジョークというものだ。……言っておくが、今言ったことは全て事実だ」
ルィーン
「笑えねージョークかますなや……」