テイルズオブベルセリア 世にも珍しい樹の聖隷 作:メガネ愛好者
今のうちにお伝えしておくと、これから先、原作とは異なる会話文や言葉が出てくると思います
私なりに詳しく補足させているような感じではあるのですが、大部分の理由は原作とまるっきり同じ会話文って言うのも味気ないかと思いまして……ようは気分の問題です
それでは
——ヘラヴィーサ・聖堂前——
「なあマギルゥ。俺な? お前さんの連れ……来ない気がしてならないんだ」
「奇遇じゃのー。儂もじゃよ」
ルィーンとマギルゥは腕を縄で縛られた状態で聖堂前に立たされていた
ルィーン達の周囲にはテレサとその契約聖隷らしき少年二人、そしてテレサ率いる対魔士達が十数人ほどで陣形を取っていた
そこにつけ入る隙はあまり見当たらず、二人を救出するには空からでも来ない限り簡単に突破することは出来ないだろう
「まさか一晩経っても来ねーとは……マジ見捨てられたんじゃね?」
「そーんなばかなー! あやつ等が儂を見捨てるなど……大いにありおるのう!」
「人望の無い魔女ほど哀れな者はねーな」
「人望なぞ必要ないわい。魔女は孤高の生き物なのじゃよ~」
「つまり永遠ボッチってわけだ。ぷぷぷ」
「コラー、笑うなー! 笑っていいのは儂の渾身ギャグの時だけじゃてー!」
周囲の対魔士がベルベット達の襲撃に備えて警戒している中、最早助けに来る可能性など考えていないのか、自身等の立場など全く気にしていないような緊張感の無い態度で二人は談笑し合っていた
本来であればその談笑も注意するところなのだが……注意したところで聞く耳を持たないのだ、注意するだけ無駄である
それに、助けが来る可能性を捨てている彼女等を見ると……なんだか哀れに思えて仕方がないのだ
何せ公開処刑の告知をしてから一晩経って尚、ベルベット達は助けに来ていないのだから
ワザと正確な処刑時刻を告知しなかった事で相手を焦らせて早期救出を誘おうという策をテレサは打っていた
——しかしその策は脆くも崩れ去る
告知したその日、ベルベット達はテレサ達の前に姿を見せる事は無かった
怪しげな人影も見当たらず、業魔特有の不穏な気配さえもない。そもそも全く来る様子を感じられない
助けに来るなら夜襲をとも考えていたテレサであったが、そんな動きもありはしない
これではこの二人の利用価値が無い。やはり業魔故に仲間意識など無いのだろうか?
今も尚姿を見せないベルベットに、テレサは上手くいかなかった事に対して多少の苛立ちを抱きつつ、己が策を見改めようかと考え始めるのだった
まあ一人は人質の価値皆無であるのだが……
——それからしばらくしてからの事——
「——ギャアアアアア!」
街の外からではあるものの、それでもハッキリ人の断末魔とわかる叫びが門の方から響き渡ってきた
その叫びを耳にした対魔士達は各々が理解する。——来たのだ、件の女業魔が
対魔士達の間に緊張が走り、慌ただしく迎え撃つ準備を始める。そこにはどうにも無駄な動きが目立っていた
「静まりなさい。自身の役割を思い出し、汚らわしい業魔を打つ瞬間まで警戒を怠るな」
しかしそれは、テレサの一括により規律正しい動きへと変化する
流石は二等対魔士の上を行く一等対魔士、その中でも上位に入る実力を持つテレサの一括は周囲を鼓舞するには十分なもののようだ
——そんなテレサなのだが、実は自身の策がうまく行っていたのだと人知れず安堵していたりする
そしてテレサが周囲に指示を送りながらベルベット達を待ち受けている間、二人は先の叫びを聞いて——
「今の叫びって……お宅の連れ、対魔士殺したんかね?」
「じゃろうの。あやつは血も涙も無い冷血極悪鮮血散らす非道な業魔、下っ端対魔士なぞ羽虫同然じゃろうて」
「おーこわ。哀れ対魔士、無駄死ににならない事を祈ってますザマァ」
「最後本音出てるぞえ~」
「しゃーねーじゃん。こちとら無実の罪で処刑されかかってんだぞ? ルィーンさんは怒り心頭ですぜ」
「そかそか~。……案外根に持つんじゃな、お主」
何処か楽しそうに話し合っていた
その話の内容に数人の対魔士が怒りやら苛立ちを抱いたのだが、今から来る業魔を前に気を緩める訳にもいかない為、今は無視することにしたのだった
最も、テレサが自身の持つ錫杖で二人の頭を殴り黙らせる事で、その場は一旦静まり返るのだが
それからすぐに、わざわざ正面から二人の人間……いや、業魔が対魔士達の前に現れた
その業魔達——ベルベットとロクロウは悠々と対魔士達の元に歩いてくる。そこには余裕なのか油断なのか、焦りの表情は一切無かった
ベルベット達がある程度近づいてきた辺りで、対魔士達はベルベット達を取り囲むよう後ろに回り込む
そしてベルベット達を中心に取り囲み終われば、同時にベルベット達も一旦歩みを止めるのだった
「おお、まさか助けにきてくれるとは~! お主、意外にいい業魔だったんじゃな~♪」
(いや、いい業魔は人を殺さんて)
こんな罠同然の誘いに乗ったベルベット達にマギルゥはいつもの調子で軽口を叩いている。その内容に内心ツッコみたくなるルィーンなのだが、とりあえず場の雰囲気的に部外者である自分は黙っていることにした。今更部外者面するのも無理そうではあるが、それでも黙ってることにしておく
そうすれば、勝手に物事は進むのだから
「あなたが監獄島を脱した業魔ですか?」
「だったら?」
「オスカーを傷つけた罪……貴方の死を持って償ってもらいます! 楽に死ねると思うな!」
テレサの問いかけにベルベットは否定せず、それを受け取ったテレサは一気に怒りを噴出させる
そして、手に持つ錫杖をベルベットに突き出す形で指示を送り、周囲の対魔士はベルベット達へと襲い掛かるのであった
そんな中、ルィーンは「いやオスカーって誰だよ」と隣のマギルゥにしか聞こえない程度の小声でツッコミを入れていた。急に話題に出てきた聞き知らぬ名、そしてテレサの言動に驚いてつい言葉を漏らしてしまったのだ
ルィーンが驚いたのも無理はない。彼女が街で聞いた噂を聞く限り、テレサは常に冷静沈着であまり感情を表に出さない人間だ。それが今、テレサは激情を顔に浮かべてベルベットを憎々しげに睨んでいる
噂通りの人間ではなかった……とは言いきれない。周りを見渡せば、少数ではあるが対魔士も多少の戸惑いを見せていたのだから
テレサが言ったオスカーとは誰なのか? そもそも何故そこまでベルベットに怒りを向けているのか? そこがルィーンには分からない
ルィーンは連行された後に見たテレサと対魔士のやり取りを思い出す。その内容は、このヘラヴィーサの街を騒がせているダイルについてだ
その時のテレサの態度と今のテレサを比べると、それはもう目に見えて違うのだ
ダイルに対しては噂通りの冷静沈着っぷりを発揮して見せていたのに対し、今のテレサは怒りで冷静さが損なわれている
何故そこまでの差があるのか? たんに業魔だから憎いという訳ではなさそうだが……
それらの事が気になったルィーンは思考を巡らせ始めるたのだった
”気になる事は追及する”、それがルィーンという聖隷なのだ
そしてルィーンはとあることを思い出す
それは先日、連行されて聖堂前まで来た時にすれ違った少年……片目を負傷した美少年対魔士の事だ
今思えば、彼とそこにいるテレサは何処となく容姿が似通っている
そこから考えるに、彼はテレサの弟か何かなのではないだろうかと思い至るルィーン
そうなればテレサが言った”オスカー”と言うのはあの少年のことであり、その少年オスカーを傷つけたのがベルベットだとすれば、テレサの怒りも頷ける。身内を傷つけられたとなれば怒りを抱く理由にもなろう……
「——あ、なんだ。一等対魔士もただのブラコンか」
ルィーンは何故テレサはそこまでベルベットを敵視するのか考え、そして答えに辿り着く。その答えに至った瞬間、自身でも無意識のうちに言葉を漏らしてしまったのだった
ルィーンのよく響くソプラノボイス故か、その言葉は辺りによく響き渡っただろう。それはもう……周囲の人間達に良く聞こえるような透き通った声で
『……………………………………………………』
その一言で場の喧騒は止み、辺りに静寂が訪れる
先程まであった剣吞とした雰囲気は霧散し、誰もがその言葉にどう反応すればいいのかわからなくなってしまう
その雰囲気に気づいたルィーンは、状況をよく理解していないような顔で隣のマギルゥに問いかけるのであった
「……ん? あれ? 何この空気?」
「ルィーンよ……今から殺伐とした殺し合いが始まると言うんに、そんな状況下で”ブラコン”などと緊張感を削ぐ言葉を発するでない。気が抜けるじゃろうて」
「……あぁ、確かにそうだわ。でも事実なんだろうし別によくね? 弟思いなのはいい事さね。——例え街を荒らしたダイルって業魔の対処よりも弟を傷つけた業魔への仇討ちを優先しても——」
「口を閉ざしていなさい。さもないと今すぐに処刑しますよ」
「すいませんでした」
ルィーンの戯言を冷たい口調で黙らすテレサ。流石に対魔士達のモチベーションを崩されるのは我慢ならなかったようだ。……それ以外の理由もありそうではあるが
因みにこの時、ベルベットはルィーンの言葉に何か思うことがあるのか苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていたのだった
それからルィーンとマギルゥは黙り込み、業魔と対魔士の殺し合いを眺めていた
その両者の殺し合いを見ているしかない……訳では無いが、とりあえず観察することにしたルィーンは思う
……ベルベット達は、何か企んでいる
まぁそれも当たり前か、無謀に特攻を仕掛けるような馬鹿ではないだろう
確かにベルベットとロクロウの動きを見れば、二等対魔士達の上を行く実力があるのは確かだろう
ベルベットは右腕や足に仕込んである刺突刃を上手く使って、まるで獣のような動きで対魔士達を蹂躙していく。時折包帯が巻いてある左腕が肥大化し、まるで悪魔の様な腕で対魔士達を切り裂いたり喰らったりとやりたい放題無双だ
ロクロウの二刀小太刀にも目を引くモノがある。リーチ差を埋める為に瞬時に懐へと入り込む足運びに、自身のペースに持ち込んでいく体捌き、一朝一夕では身につかないであろう熟練の動きはまさに圧巻の一言
強い。流石は聖寮を潰すと豪語するだけのことはあると、ルィーンは静かに納得する
しかし、この世には”質”と”量”という言葉がある
ベルベット側はいわば”質”だろう
二人は周囲の対魔士よりも飛び抜いた強さを持っているのは明白だ。二等対魔士が数人いたところで蹴散らしてしまうことだろう
しかしながら、ここに集まる対魔士の数は数人では収まり切らない
故に”量”。対魔士達は数十人単位で連携し襲い掛かる事で強者との差——ベルベット達との差を埋めているのだ
これにはベルベット達も疲労を隠せない。いくら強いとはいえ、必ず体力の限界と言うものはある
現に、今のところベルベット達はまだ余裕そうにしてはいるものの、少しずつ疲労が顔に浮かび上がってきている
このまま物量で攻められればジリ貧だろう。それはルィーンだけではなく、マギルゥの目から見てもわかる筈だ
だからこの調子で押しこめば、おそらくテレサ側に軍配が上がるだろう
もしも二等対魔士を振り切ったところで、その後に控えるは一等対魔士のテレサだ
いくら手練れのベルベット達だとしても、疲れている相手であればテレサが負けることは無い。彼女とて二等の上を行く一等、それも一等の中でも上位の者に送られる”ゼロナンバー”という称号を受け持つものなのだから
テレサはベルベット達の様子を見て追い込みをかける。動きが徐々に鈍くなってきている相手を確実に追い詰める為に……
だからこそ、勝利を目前としたテレサは気づかない
テレサの指示によりヘラヴィーサ全域から集結する対魔士を見たベルベットが……怪しく微笑んでいる事に
それに気づいているのは事前に”作戦”を知っているロクロウと、拘束されている……いや、ベルベット達に気を取られている間に腕に縛られた縄を解いたルィーンとマギルゥだけだった
スキットEX2 聖隷二号との出会い
聖隷二号
「……………………」
ルィーン
(——ん? あれは……テレサって奴の聖隷かな。なんで契約者から離れてんだ?)
ルィーン
「どうしたよ君、迷子か?」
聖隷二号
「……………………」
ルィーン
(やけに物静かだな……当たり前か。心を封じられてる今、あの子は何も感じない、感じられないんだろうし……にしては)
ルィーン
「おーい」
聖隷二号
「……?」
ルィーン
「やっぱりなんでもなーい」
聖隷二号
「……………………」
ルィーン
(完全に自分で考える力を奪われている訳ではなさそうだな。……こうして心の無い聖隷と直接話すのもそんな無い機会だし、少し話しかけてみっか)
ルィーン
「……あれさ、君の名前って何て言うん?」
聖隷二号
「……なま、え……?」
ルィーン
「そうそう名前。マイネームさ」
聖隷二号
「……二号」
ルィーン
「それ名前じゃねーだろ、ナンバリングじゃねーか」
聖隷二号
「……テレサ様が、つけた名前……」
ルィーン
「それをガチで名付けたとなれば、お前のご主人、相当センスねーな。それか趣味が悪い」
聖隷二号
「趣味……悪い……?」
ルィーン
「悪いだろ。だってそれだと、自分が飼ってるペットに”一匹”とか”二羽”って名付けるようなもんだぜ? 頭おかしーだろ」
聖隷二号
「頭、おかしい……」
ルィーン
「そ。”お前のご主人頭おかしい”だ」
聖隷二号
「お前のご主人、頭……おかしい……」
ルィーン
「それかセンスが無い以前に、自分で己がセンスを壊してるようなもんだから”センスブレイカー”とでも名付けよう!」
聖隷二号
「センスブレイカー…………カッコイイ」
ルィーン
「……へぇ、カッコイイって思う気持ちはあるんだ」
聖隷二号
「……?」
ルィーン
「ああ、別に深く考えなくたっていいさね。とりあえず今はそのままの君が思うがままに動けばいいよ」
聖隷二号
「……そろそろ、戻らないと……」
ルィーン
「ん? そっか。お勤め頑張れよー」
聖隷二号
(コクン)
精霊二号はテレサの元へ去っていった
ルィーン
「……必ず、心を戻してやるからさ。それまで耐えてくれよ、アホ毛君」
テレサ
「二号、何処に行っていたのですか?」
聖隷二号
「……………………」
テレサ
「全く貴方は…………? なんです? 私の顔をジロジロと見て……」
聖隷二号
「……お前のご主人頭おかしい」
テレサ
「……は?」
聖隷二号
「センスブレイカー」
テレサ
「……二号、それはなんです?」
聖隷二号
「……白衣の人に……教えてもらった」
テレサ
「……ほう……」
ルィーン
「待って!? 悪気は無かったんです! だから許し——」