テイルズオブベルセリア 世にも珍しい樹の聖隷 作:メガネ愛好者
平日故に投稿速度ダウン。すいません
とりあえずなるべく急いで、だからと言って雑な出来にならないよう気を付けて投稿します
それでは
——ヘラヴィーサ・聖堂裏——
ベルベット達が迫りくる対魔士達を相手に奮闘しているのを横目に、ルィーンは誰にも気づかれずにその場を後にしていた
テレサを初めとした対魔士達は、皆ベルベット達の対処に集中していたので結構すんなり逃げられたのは僥倖だろう
ルィーンは別にベルベット達を見捨てて逃げたとかではない。そもそも”まだ”仲間ではないのだから、ルィーンがその場から姿を消していても特に問題は無いのだ
そもそもベルベット達とは直接的な関係を持っていないルィーンが捕まってても意味が無い。寧ろ状況が悪化した場合、ベルベット達が無関係のルィーンを見捨てる可能性が否めない為、何かあった時の為にもあのまま捕まっている訳にはいかなかったのだ
故にルィーンはこの街に来た時、下手に警戒されぬ様にとある場所に隠した”得物”を回収しに行動に移ったのだ
因みに、ルィーンがその場からいなくなっている事に隣にいたマギルゥとテレサの傍にいた”聖隷二号”と言う少年は気づいていたりするのは……ルィーンには言わないでおこう
柵を越えて聖堂の裏手に回るルィーンは、周囲を見渡し誰にも見られていないことを確認する
別に今からやる事を人に見られたくないとかそういった事情はないのだが、そこそこ目立つ事をする為に対魔士に見つかったら不味いのだ。一応捕まっている身だし
そしてルィーンは直立したまま足元を見つつ、なるべく音を立てずに大地へと己が霊力を送り始め——詠唱する
「隆起するは——『ルートウィップ』」
静かな声で詠唱した瞬間に展開された深緑色の魔法陣、それは聖隷や対魔士達が使う”聖隷術”の発動紋だった
聖隷術とは、主に五属性を元に構築された術式であり、簡単に言えば魔法の一種である
炎を打ち出す、水が噴き出す、風が切り裂き、大地が割れる。そういった超常の力を操る
ルィーンが聖隷術を発動すると、程なくして目の前の地面に変化が訪れた
街の石畳が徐々に隆起し、何やら大地から這い出てくる
その正体とは……巨大な”木の根”だった
人間の腕程の太さを持った巨大な木の根が螺旋状に複数絡み合い、まるでドリルのようにゆっくりと回転しながら大地から生えてくる
本来は生えてきた木の根を鞭のように振るって敵を薙ぎ払う術なのだが、そこはルィーンの制御技術によりある程度の変化が加えられている為ここでは当てはまらなかった
そして、その絡まり合った木の根が石畳からある程度顔を出すと、その突き出てきた頂点部からゆっくりと
ゆっくりと木の根が
木の根の中から現れた得物とは、世間一般でいう”クロスボウ”という射撃武器だった
形状としては弓が縦に取り付けられているタイプのクロスボウであり、女性が片手で持っても問題無いほどに軽い。耐久度も十分あり、剣を受け止められるほどには丈夫な造りになっている
ルィーンはそのクロスボウを手に持ち、しばらくの間自分の元から離れていた愛弩に支障はないか動作確認をするのだった
「うーん……どこも壊れてはねーな。とりあえず装填だけして隠しておくか」
弦や引き金等を軽く点検し、確認が終われば一緒に出てきた小さな矢筒から
慣れた手付きでボルトを装填し、そのクロスボウを白衣の内側へと忍び込ませたルィーンは、ベルベット達が今どうなっているのかを確認しに静かにその場を立ち去るのであった
因みに、矢筒を取ったことで役目を終えた木の根は再び大地へと戻っていき、そこには掘り起こされた石畳のみが残されたのだった
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聖堂を挟んだ向こうの方では、いまだに剣や槍が激しくぶつかり合う音が聞こえる。まだベルベット達は戦っているようだ
ルィーンは聖堂の陰に隠れつつ様子を伺うと、肩で息をするベルベットとまだ余裕を持っていそうなロクロウの姿が視界に収まる
周囲を見れば、剣で切り裂かれたと思われる対魔士達が数十人倒れていた
(うわー地獄絵図だなこりゃ。俺の祈りは届かなかったようですザマァ)
倒された対魔士達を労わる気が一切無いことが分かるルィーンの心情であった
ベルベット達の猛攻に対魔士達は一旦体勢を立て直す為に距離を置き、お互いに睨み合うことで膠着状態が訪れるのだった
両陣営共に疲労が見える中、未だに一切手を出していないテレサがベルベットに言葉を投げかける
「大した生命力ですが……もう限界でしょう? 無謀にも仲間を助けに来たのは称賛に値します。……しかし、所詮は汚らわしい化物、暴れる事しか能のない貴方達に我ら聖寮が敗北するとでもお思いですか?」
テレサはまるで見下すように、ベルベットを見据えて語り掛けている
その言葉はベルベットに届いてはいるのだろう。しかし、テレサには返答を返さず周囲の対魔士達を警戒し続ける
別にベルベット達に余裕が無いため返事を返せないわけではない
彼女達は今戦闘の真っ最中なのだ。自身の命がかかった殺し合いの中、余計な話をして集中を途絶えさせるわけにはいかない
それに……テレサの性格上、ここは無視した方が”効果的”だとベルベットは考えたのだ。自分の都合がいい流れに持っていく為に
——そして、その光景を盗み見ているルィーンはというと
(あのブラコン、まだベルベット達が何か企んでいることに気づけていないのか? ……あの態度を見ると気づいてないだろうなぁ)
ベルベット達を軽視して油断しているテレサに呆れて溜息を吐くのだった
ルィーンは先程からテレサを観察して得た印象を元に判断する。——テレサは策士に向かないと
テレサは人を鼓舞するのに十分な素質はあるのだろうが、裏の読み取り合いに関しては向いていないだろう
自身の策を一貫して疑わず、搦め手などの相手の裏をかくような策には翻弄されるような愚直タイプなのではないかとルィーンは推測を立てたのだった
故にベルベット達が策を弄しているのにも気づけず、自身のシナリオ通りに進んでいれば油断して隙を生んでしまう
(人をまとめて秩序を保つ才能があっても、その裏で行われている非合法の企みには気づけない……この街の裏の顔に気づいてなかった時点で予想はしてたが、流石に勘が鈍すぎやしねーか?)
実を言うと、ルィーンはこの街の商船組合が密輸をしていた件を知っていた
何せ密輸の件は今に始まったことではなく、ルィーンが以前にヘラヴィーサを訪れたときには既に組合は密輸を行っていたのだ
別に自分には関係無いことだった為に関わるようなことはしなかったが、例えルィーンが何かしたところで結果は変わらなかっただろう
人は苦い薬よりも甘い蜜を啜るものだ。その後に迎える結末がどうであれ、楽な方へと足を進めるのが……ある意味”人間の理”というものだ
その組合の闇にも気づけなかったテレサには、相手の策を読み取るなどといった勘の良さはないのだろうとルィーンは考えたのだった
少なくとも、伏兵がいるかもしれないという危惧もせずに街全域の対魔士を呼び集めた時点で、彼女が場の流れを掌握することは出来ないだろうが……
そんなテレサは、自身の言葉に反応を示さなかったベルベットに再び言葉を告げ始める
「……まあいいでしょう。私が収めるヘラヴィーサに足を踏み入れたこと……そして、何よりもオスカーを傷つけたことを後悔させてあげましょう。——二号、やりなさい」
テレサは傍にいた使役聖隷”二号”にベルベットを攻撃するよう命令する
名前とは思いたくないその名に反応した二号はテレサの指示に何も言わず、何も思わずに行動する
二号は両掌を胸の前で向かい合わせ、己が霊力を集めることで聖隷術を発動するのだった
二号の足元に聖隷術の発動紋が展開され、展開と同時に二号の両掌で直径30cm程の火球が生み出される
(へぇ、結構展開速度が早いのな……あの子の今後の成長に期待が持てるぜ)
その二号の聖隷術の腕にルィーンは関心を示した
別に上から目線でものを言うつもりはないのだが、ルィーンから見てもあの少年の才能には目を見張るものがあったのだ
”二千年程”生きているルィーンとしては、生まれてまだそこまで経っていないであろう二号のこれからに楽しみを見出していた
これで心を持っていれば向上心を持つこともできよう。そうなれば二等対魔士ぐらいは軽く蹴散らせるぐらいには成長する筈だとルィーンは感じたのだった
「——ぐぅぅ……ッ!」
不意にルィーンの耳にベルベットの苦悶の声が届いた
どうやらルィーンが思考を落としている間に事は進んでいたようで、視線を戻せばベルベットが吹き飛ばされていた
おそらく二号は生み出した火球をベルベットへと向けて放ったのだろう。ベルベットは周囲の対魔士達に意識を向けていたことで反応が遅れたことで、火球を諸にくらったのだと予測する。彼女の服の一部が焦げているところからそう推測出来よう
しかし、そのぐらいでへこたれる様な彼女ではないようだ
「……対魔士を動かし、聖隷を使うだけ使って自分は見ているだけ……自分でとどめをさそうと思わないのか? 臆病者」
「挑発であれば無駄ですよ。お前の左手は油断ならない。下手に近づいて返り討ちに会うような愚を私は犯しません」
吹き飛ばされたベルベットはゆっくりと立ち上がり、テレサの行為を指摘する
目に見えた挑発であろう。現にテレサもそのぐらいは気づいたようで、ベルベットの言葉を軽く流すことで誘いを避けるのだった
そんなベルベットの誘いを、テレサはただの挑発でしかないと思っていることだろう
(——あぁ、なんとなくベルベットの狙いがわかってきた)
しかし、ルィーンにはベルベットの挑発から違う狙いが見えてきていた
確かにベルベットの言葉は挑発であるのは間違いない。——だが、それは
先ほどからもわかるよう、テレサはベルベット相手にわざわざ言葉を交わしている。聖寮が掲げる”
業魔であるベルベット達を早急に討つ事こそが”理”であるのだ
——故にテレサの今の行いは、聖寮の対魔士として間違った行動だ
オスカーを傷つけられたからという怒りに駆られ、ベルベットへ憎しみを向けるそれは最早”理”ではない
私利私欲。自身の想いを優先するその所業は聖寮が掲げる”理”ではなく……一個人の人間としての”感情”だった
——だからこそ利用される——
ルィーンが気付いたベルベットの狙いは——時間稼ぎだ
わざわざ話す必要の無いテレサを喋らせることで時間を稼ぎ、その間にベルベット達の協力者が裏で事を進めているのだろう
そうすればベルベット達の特攻も、”囮役”という立派な役割へと変化する
(戦うだけが手段じゃない。ベルベットは自身が置かれた状況を理解し、手段を問わずしてその場を乗り切る機転を持ってる。……ただ特攻するだけの脳筋だったら手を貸そうとも思わなかったが、ベルベットなら……)
マギルゥからの情報、そして実際に見たベルベットの動きから、ルィーンはベルベット達に手を貸そうと本気で考え始めるのだった
彼女の手助けをすれば、必ずとは言い切れないまでも目的の達成に大きく近づける……そういった確信をルィーンはベルベットから感じ取っていた
だからこそルィーンはベルベットの助けになろうと思った。それが結果的に、自身の助けになるだろうと予感して
これから先、ルィーンがどう動こうが様々な困難が待ち受けているのは確実であろう。だからこそベルベット達に協力すれば、このまま一人で事を成そうとするよりは確実性は増し、危険性は和らぐはずだ。彼女の協力者になることもそこまで難しくはないだろうから、この機を逃す気はルィーンにはなかった
先日マギルゥから聞いた事だが、ベルベットは”使えるものはなんでも使う”といった考えを持っているようだ。ならば自分を利用するよう仕向ければ共闘も出来よう。例え信用を得られなくとも、マギルゥの知り合いだと言えば信用されなくとも利用してもらえるだろうし
これらの事をまとめ、ルィーンはベルベット達に協力する事にしたのだった
……ここまでの彼女を見てわかるように、ルィーンは決して善良な心を持った聖隷ではない。ある意味ではベルベットと似たような考えの持ち主であろう
「利用できるもんはなんだって利用する。そうでもしなけりゃ……世界の”理”を曲げてまで成そうとする目的を達成出来やしないからな」
自身の手で成すべき事、成さなければいけない事の為にルィーンは人知れず暗躍する
そして、己が目的に辿り着く為の筋書きを頭に思い描きながら、ルィーンはそのレモン色の瞳を怪しく輝かせるのだった……
……そんなルィーンの言葉は……
——ドォォォォォォォン!!
「——うひゃっ! な、何事ぉッ!?」
彼女の後方から鳴り響いた爆発音によって、誰の耳にも入らなかったのであった
—プロフィール更新—
名前:ルィーン
性別:女性
年齢:2000歳(外見は12歳)
身長:148cm
武器:クロスボウ
戦闘タイプ:弩弓狙撃士
種族:聖隷
聖隷術
『ルートウィップ』
・大地から巨大な根を呼び出し相手を鞭のように薙ぎ払う。薙ぎ払う以外にも違う動きをさせる事も可能