テイルズオブベルセリア 世にも珍しい樹の聖隷   作:メガネ愛好者

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メガネ愛好者です

遅くなってすいません。二週目やってました
コンプリートガイドの用語集が結構助かる件について
アイゼンの真名の意味が分からなかったから買って良かったです

それでは


五話 利用し合う関係

 

 

 ヘラヴィーサの港が燃えている……

 

 火災現場である港の倉庫からはもうもうと黒煙が立ち昇り、爆発の衝撃によって崩れた壁からは激しく燃え盛る炎が噴き出していた

 更には港に吹く海風によって噴き出す炎の勢いが強まり、周囲への被害は拡大していく一方だった

 港の方で次々に上がる黒煙は遠目からでも視認することが出来るほどに大きく、一時的に避難していた住人や組合の者達が気付くのも時間の問題だったことだろう

 街の、自分たちの生命線とも言える港が燃えている……それがどれだけこの街に影響を及ぼすのかを理解している住人達、特に組合の者にとっては気が気じゃない事は間違いない。すぐさま消火しなければ自分達の生活が崩壊しかねないのだから焦らないわけがないのだ

 だからこそ、事の大事さに避難していた住人達は次々と港へ消火しに集まるのだった

 

 ——しかし、こういった非常時の対応に慣れている住人なんてそうそういないだろう。寧ろ急な事態に効率よく対処できる人間など、普段から緊急時の事態を想定して備えている者達ぐらいだ

 ほとんどの住民は消火に来るもののどうすればいいのか判断できず、この状況に混乱するだけで動けないでいる人が後を絶たなかった

 そんなことでは消火もままならないだろう。混乱する者達の存在は対処に慣れた者達の足を引っ張り、焦りから生まれる苛立ちを周囲にぶつけていらぬ混乱を起こしてしまう

 火を消しに来た者達の間でつまらぬトラブルがあちこちで衝突する間にも火の手は広がり、最早住人達だけで対処するには間に合わない程に被害は拡大している

 その状況に組合の者達の一部が対魔士の力を借りようと救援を求めに向かうのだが……例え対魔士達の力を借りて火災を食い止めたところで手遅れであろう

 それほどまでにヘラヴィーサの港は絶望的なまでに被害が及んでいたのであった……

 

 

 

 それもこれも、おそらくはベルベットの協力者が港の倉庫に保管していた炎石を手当たり次第に爆破させたのが原因だろう

 自身が囮役をすることで対魔士達を誘い出し、港の警備を手薄にすることで協力者が事を成しやすい状況を作り出す。住民は避難していていないだろうし、裏で動くには絶好の機会だ

 そして港に対魔士達が戻らぬようにベルベット達が注意を引き付けることで時間を稼ぎ、協力者が倉庫の炎石を爆破させる事で混乱を生み出す。後は混乱に乗じて船を強奪、海へと逃げればこちらのもんだ

 これこそがベルベットの作戦だった。協力者である業魔ダイルの商船組合への復讐、ベルベット達の船の調達を両立させた事で互いに手を取り合うことができ、結果はベルベットの策略通りに事が進んだのだった

 

 周囲の被害を鑑みずに人の営みを滅茶苦茶にするやり方ではあるのだが……その策を練った者達が業魔となれば、ある意味業魔らしい作戦だなとルィーンは納得していたりする。こういった手段を択ばない手を難なく実行する気概を持ってこそ協力する気にもなれるというものだ

 何事にも諦めない強い意志こそが人の可能性を引き出すのであれば、元々人間であり、自身の欲に忠実である業魔は人間以上の可能性を秘めているというのは皮肉なものだろう

 そんなことを考えつつ、ルィーンは——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ははは、温かくていいじゃねーの。どうせこの街は寒いんだし、体を温める為にも全部燃えればいいんだよコンニャローめ」

 

 「自棄になるでない。どーせお主はベルベット達に協力するんじゃろ? ならばこれから先、様々な悪事を働くのは目に見えておる。——例え、”港を燃やした主犯”にされたとてどーということもあるまい」

 

 「燃えちまえよ! 燃えちまえよォ!」

 

 「聞く気ゼロじゃな……」

 

 ——何やら自暴自棄になりつつ被害の拡大を増長するような言葉を吐いていた

 

 港に出て未だに燃えていない船に向かう道中、周囲の状況を見て嘲笑うご機嫌斜めなルィーンなのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——話は数分前に戻る――

 

 ルィーンがベルベット達に協力しようと決めた直後に起きた爆発で周囲の状況は一変した

 倉庫の爆発にテレサを含めた対魔士達が気を取られ、その隙を狙ったベルベットがテレサを強襲したのだ

 不意を突かれたテレサは抵抗する間もなく文字通り一蹴され、対魔士達が動揺している間にベルベットは燃え盛る港の方へと走り出すのだった

 そしてロクロウとマギルゥもそれに続いて逃走し、ルィーンもその後を追おうとしたのだが……そのときにルィーンの機嫌を損ねる出来事が発生した

 

 「待ちなさい!」

 

 後を追いかけようとしたルィーンに背後から声をかけられる

 その声の主は……ベルベットに蹴り飛ばされて倒れていたテレサのものだった

 錫杖を支えにしながら立ち上がる姿にはまだ余力を感じられるものの、倉庫の火災によって生まれた焦燥感によって表情が強張っていた

 そんなテレサはまっすぐとルィーンを見据えながら—— 

 

 

 

 

 

 「——貴様! 倉庫の炎石を爆破させることがどれ程の被害をもたらすかわかっているのか!」

 

 「……はい?」

 

 ——倉庫の爆発を引き起こしたものがルィーンだと勘違いし、糾弾するのだった

 突然なことについ呆けた声で返事をしてしまうルィーン。その返事が自身の問いかけに肯定を示したのだとまたまた勘違いしたテレサは更にルィーンへと怒鳴り散らす

 

 「”はい”ですって……? 貴様っ、知った上でこのような悪行を働いたのですか!」

 

 「え、いや、違——」

 

 「最早貴様は業魔と何ら変わらない……人類の敵だ! その歪み穢れた邪心、貴様の死を持って抹消します!」

 

 「俺じゃない。俺じゃないから。何を根拠にそんな——」

 

 「今更命乞いをしても無意味です! 拘束を解き、人知れずいなくなっていたと思えば港へ通ずる道から戻ってきた。それからすぐに爆発が起きたのが何よりの証拠っ! 貴様が倉庫の炎石に自身が戻るタイミングで爆発するよう細工をしたに違いない!」

 

 「違いありだよ! なんだよその見当外れの推論は!? ——てかそんな豊かな発想力があるってのに、なんでベルベット達の策に気づけねーんだ!?」

 

 実を言うと、テレサはルィーンがいないことに後から気付いていた

 ルィーンが立ち去るときには気づかなかったが、テレサはベルベット達と対魔士達が戦闘している時に一度だけルィーンとマギルゥの様子を確認していたのだ

 何せ、あの無駄口を叩くのが義務とでも言わんばかりに喋るルィーンとマギルゥがあまりにも静かにしているのだ。先程だって戦闘開始直後に問題発言をしていたのだから、戦闘中に一切喋らないなんてテレサには想像できなかった

 

 そう疑問に思ったテレサが一度だけルィーン達の方に視線を向けることにした

 結果はマギルゥが暇そうに佇んでいるだけで、ルィーンの姿は何処にもなかった

 テレサはその事態に驚きはしたものの、今はベルベット達から注意を割くことが出来ない状況にルィーンの事は後回しにしたのだった。……それがいけなかったと悔いることになるのだが

 

 そして、ルィーンが身を潜めていた場所が”港への通り道側にある聖堂の側面”であり、その陰から事を伺っていたのが更に勘違いを加速させた

 ルィーンは爆発の音に虚を突かれたせいで反射的に体が飛び跳ね、その勢いで聖堂の陰から体を出してしまう。それと同時に驚きの声を出してしまったことでテレサが気付き、その姿を見られてしまったのだ

 

 

 ——ルィーンが港へ続く通り道から戻ってきましたと思わせるような配置に佇んでいる姿を——

 

 

 これがテレサに勘違いさせてしまった原因だ

 つまりはテレサが勘違いしてしまうような状況を、ルィーンは無意識のうちに作ってしまったという事になる訳である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——そして現在——

 

 

 

 テレサの勘違いに苛立ったルィーンはその場を後にしベルベットの後を追い駆ける

 テレサもすぐに追いかけたいところだったが、丁度その時に来た組合の者達から消火の救援を求められた事ですぐには追えなくなってしまう

 そしてルィーンは機嫌を損ねながら一隻の船の前に辿り着くのであった

 

 周囲の船は全て燃えているのにも関わらず、その船だけは何処にも損傷が見当たらない。つまりこの船がヘラヴィーサに残る最後の船というわけだ

 そんな船の甲板に一人の人間……いや、一匹の業魔が声を上げる

 

 「はっはっはっ! 盛大に燃やしてやったぜ! ざまぁ見やがれ、組合のクソッタレどもが!」

 

 その業魔を一言でいうのであれば——トカゲ男だろう

 緑色の鱗を持つトカゲの業魔。頭や腕、足は完全にトカゲのそれであり、何故かは知らんが尻尾が根元から切られている

 その事にも気にせず豪快に笑う姿は何処か晴れ晴れとしていた

 そんな業魔を見たルィーンは彼がベルベットの協力者なのだろうと瞬時に理解する。何より唯一健在の船にいる時点で察しが付くというものだ

 ……尻尾の断面の肉、なんか美味しそうだな……

 

 「……っ、な、なんだ……? なんか寒気が……」

 

 (なんか寒そうにしてるな……あ、トカゲって平温動物だから自分の体温変えないじゃん。だから景気よく燃やしたのかな? 自分が温まる為に)

 

 ルィーンはトカゲ業魔の事情にある程度の察しがついたので、特に嫌悪することもなく受け入れていた

 とりあえずこの場ではベルベットの協力者だと思っておけばいい。ある程度の経緯はこの際不要であり、今は逃げ果せることが先決なのだから下手に奇異する理由もないのだ

 そんな業魔——ダイルから再び声が上がる。それはベルベットに向けられた言葉だ

 

 「ベルベット! 出港準備はできてる——うおっ!?」

 

 準備が終わっていることを伝えようとするダイルだったが、その言葉は飛来してきた火球によって途切れてしまった

 火球を受けたダイルはその威力に吹き飛ばされたのだが……おそらくは大丈夫だろう。甲板の方で「あちちちちっ!?」という悲鳴が聞こえている以上、死んではいないだろうし

 

 そんなダイルにルィーンから一言

 

 「出落ち乙」

 

 「こらこらルィーンよ、いくら事実とてそれは心の内に秘め置くものじゃよ。いくら事実とて……な」

 

 「おいそこのガキども! 少しは心配の一つぐらいしろってんだ!」

 

 甲板から乗り出してルィーンとマギルゥを叱咤するダイル。やはり無事だった

 そんなダイルを攻撃したであろう者達は……もう分かりきっている事だろう

 

 「逃がさない……お前達は必ずこの場で討つ!」

 

 怒り心頭のテレサが聖隷二人を引き連れルィーン達の後方からやってきた

 おそらくだが、彼女の狙いはオスカーを傷つけたベルベットと港を焼いた(と勘違いしている)元凶であるルィーンだろう。最早テレサの視界にはその二人しか映っていないといっても過言ではない

 自身の大切な人を傷つけた、自身の統治する街を荒らされた……それによって、テレサが二人に対して強い怒りを露わにするのも無理はないだろう

 そんなテレサ達を前にルィーン達も臨戦態勢を取り——

 

 

 

 

 

 「——って、あんた誰よ」

 

 「今更ぁ!?」

 

 ——そこで初めてルィーンがついて来ていた事に気づいたベルベットであった

 流石に予想外だったルィーンはベルベットの方に勢いよく顔を向けて驚嘆してしまう

 

 「さっきからマギルゥと会話してたんだけど!? それでも気づかなかったんですかい姉御!?」

 

 「誰が姉御よ」

 

 「おぉ、さっきマギルゥと一緒に捕まってた子か。小さいから気づかなかったぜ」

 

 「例え俺が小さくても声は聞こえる筈なんだけど——って、お前も聞こえてなかったのかよ!?」

 

 「応! 全く聞いてなかった!」

 

 「耳にすら入ってない!? そんな堂々と言えるような事じゃねーよバァカ!」

 

 どうやらロクロウもルィーンに気づいていなかったご様子。案外影が薄いのだろうか?

 二人に何故気づかなかったのかと問い詰めるルィーンの姿は、どこか物寂しかったとかなんとか

 

 「……っ! いつまでふざけているつもりですか! 戦うのなら早々に構えなさい!」

 

 (……え? もしかして待ってたの? 戦う姿勢見せるまで待ってるのあれ?)

 

 (さっさと攻撃してこればいいものを……)

 

 ルィーン達のやり取りを見て我慢が出来なくなったのか、テレサがルィーン達を怒鳴り散らした

 それによってルィーン達の問答に終わりが訪れるのだが、わざわざ業魔と犯罪者相手に問答が終わるのを待っていたテレサにそれぞれ思うことがあるルィーンとベルベットであった

 とりあえずルィーン達は応戦する為にも武器を構えるなりして今度こそ臨戦態勢を取り始める

 ベルベットはいつでも戦えるように自然体に構え、ロクロウも己が得物である小太刀を敵に向ける。ついでと言わんばかりにルィーンも白衣の内側からクロスボウを取り出し応戦する意思を見せた

 そんなルィーンの行動を目にしたベルベットは問いかける

 

 「……あんたも戦うの?」

 

 「ダメかい? 俺にとってもあいつ等は敵だし、共闘した方がお互いの為になると思うんだけど」

 

 「急に現れた得体の知れないガキに背中なんて預けられないわよ」

 

 「ははは、そりゃそーだ」

 

 ルィーンが共闘する意思を見せた事にベルベットは怪訝な表情を浮かべながら警戒し始めた

 それも仕方がない。全く身に覚えのない他人が一緒になって戦おうとしているのだ。すぐに信用しろなんて無理な話だろう

 そのことはルィーンも自覚しているようで、カラカラと笑いながら返答する。その言動にベルベットの警戒が下がることはないのだが、ルィーンは全く気にしない

 そして、警戒するベルベットにルィーンは多少ずれている眼鏡をブリッジを押して定位置に直してから再び言葉を投げかけるのだった

 

 「信用しなくたっていいさ。信頼しなくてもいい。何せ俺は俺の目的の為にあんたを利用するつもりだからな。下手に信用されても困る」

 

 「あんたの目的? ……それが私の邪魔になるならあんたも敵よ」

 

 「そこは安心しとけ。その結果がどうあれ、聖寮をぶっ壊す事には違いないからよ」

 

 聖寮をぶっ壊す。その言葉にベルベットだけではなく、隣にいるロクロウや向かいにいるテレサも驚きに目を見開いた

 そんな突拍子の無い目的を聞かされれば驚かないわけがない。しかし、そんなことも気にせずルィーンは話し続ける

 

 「詳しい事はこの場を乗りきってから教えっけど、少なくとも……マギルゥから聞いたあんたの目的の手助けにはなっと思うぜ?」

 

 「だから仲間にしろとでも? いくらなんでも都合がよすぎるわ」

 

 「”理”から外れた者の目的なんて、大抵一致するもんだよ。それに……別に仲間だと思わなくったっていいさ」

 

 ルィーンは一度クロスボウを下ろし、ベルベットの方に顔を向ける

 その時のルィーンの表情は見た目不相応に大人びた雰囲気を感じさせ、鋭く光る眼差しから事の真剣さを伺えるだろう

 そんなルィーンの雰囲気に少し圧倒されるベルベットだが、続く言葉にベルベットは考えを改める

 

 「俺はあんたを利用する……だからあんたも俺を利用しろ。あんたの復讐の為に俺を使え。あんたが聖寮の対魔士どもに牙を向け続ける限り、俺はあんたを助力する。それだけだ」

 

 ”利用し合う関係”

 そこにはきっと信頼はない。信用もなければ仲間意識もあるかどうか定かではないだろう

 仲間じゃないから無下に扱っても構わない。裏切ったっていい、見捨てたっていい、とにかく利用するだけ利用しろ……そう言っているようなものだった

 しかしそれは、この場で共闘する理由としては十分なものだろう

 何せ、危なくなれば相手を囮にして逃げるという手段を手に入れられるのだから

 手を取り合うのもお互いの目的を成すまででいい。ルィーンから申し出た事である為、ベルベットが先に目的を成してしまえばそこまでの関係となろう。それまでの間はお互い協力し合えるはずだ

 それに、ルィーンは裏切るようなことをしないだろう。目的の為に聖寮を敵に回す意思を見せているし、スパイという可能性も薄い

 何故そんなことが分かるのか? それは……ベルベットだからこそわかることだった。何せ——

 

 

 

 ——今のルィーンがテレサに向ける瞳は……自身が仇に向けるそれと酷似しているのだから——

 

 

 

 ベルベットへのメリットが高い。デメリットとしてもルィーンが見限って離れていくぐらいであり、直接的な害はないだろう

 だからベルベットは、ルィーンの出した提案を……受け入れることにしたのだった

 

 「……いいわ。せいぜいこき使ってやるから覚悟しておきなさい」

 

 「お手柔らかに頼むぜー。例え俺が聖隷だからって理由で道具扱いされたとしても、流石に限度があるからよ」

 

 ベルベットとルィーンはお互いに不敵な笑みを交わし合う

 これで二人は”利用し合う関係”となった。この先の未来、この関係がどうなるかは定かでないにしろ、己が目的の為に動く彼女達は間違いなく聖寮の大きな障害となる事だろう

 

 そんな彼女達の初の共闘が、今始まろうとしていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……え? 聖隷?」

 

 「あぁ、俺は聖隷だぜ? ……因みに対魔士は殺してもいいけど聖隷はダメな? 代わりに俺が対処すっから見逃してくれ」

 

 「……はぁ!?」

 

 ……少し不安要素が残りつつも、大きな障害であることには変わりないであろう

 

 




スキットEX3 とあるトカゲ業魔の裏作業1



 港にいた対魔士達が招集された後

 ダイル
「……警備の連中は行ったみたいだな。よし、さっさと準備を済ませるか」

 倉庫に作られた抜け道からダイルが顔を出した

 ダイル
「それにしても、倉庫の炎石を爆破させるとはよく考えたもんだ」

 ダイル
「炎石の爆破は組合の連中に一泡吹かせるにはもってこいだ。ただ皆殺しにするよりも、奴らから船を奪った方が苦しむだろう」

 ダイル
「船を、港を奪われたあの野郎どもが絶望に顔を歪ませる……くははっ! なんか気分がいいぜ! それもこれもベルベット達のおかげだな!」

 ダイル
「……ベルベット達には借りが出来ちまったぜ。あのまま組合の連中に特攻を仕掛けたところで俺は死んでいた。対魔士達に無残に殺され、下手すりゃ一人も報復できねぇで狩られていたかもしれねぇ」

 ダイル
「それが今では復讐する事も出来て命も助かる。……こんな作戦、とてもじゃねぇが俺には思いつく事も出来やしなかっただろう」

 ダイル
「ホント感謝してもしきれねぇ。せめて恩を返してぇところだが……俺なんかに出来る事なんてそうそうねぇんだよなぁ……」

 ダイル
「……だからこそ、ベルベット達は必ず俺が逃がして見せる! これでも俺は航海士だ。業魔になろうと、トカゲになろうと変わらねぇ!」

 ダイル
「あいつ等は船を動かすことが出来ねぇから俺を頼ったんだ。頼ってくれたんだ。こんな不良船乗りを、しかも業魔になっちまった俺を……」

 ダイル
「——なら、期待に応えてこそ男ってもんだろう!」

 ダイル
「待ってろよベルベット! ロクロウ! さっさと仕掛けを済ませてあんた等を目的の場所まで連れてってやる!」

 ダイル
「それが、トカゲの恩返しだ! ……まあ、準備中に見られようが逃げやしねーがな。がははは!」

 意気揚々と準備に取りかかるダイルであった










 ダイル
「はあ!? なんで生餌の箱に俺の尻尾が入ってやがる!? 餌にでもするつもりだったのかあのクソッタレども!」

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