テイルズオブベルセリア 世にも珍しい樹の聖隷   作:メガネ愛好者

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メガネ愛好者です

おそらく今回でヘラヴィーサ編は終了です
ルィーンの術技が少しずつ公開されていきます
一応簡素な説明を後書きに載せます。後日ルィーンのプロフィールを作る予定ですので詳しくはそちらで

それでは


六話 ルィーンの”信念”

 

 

 まず、最初に動いたのはベルベットだった

 右腕に仕込んだ刺突刃を手を振りぬいて引き出し、その切っ先をテレサに向けながら駆け抜ける

 しかし、ベルベットがテレサに迫る間にも片割れの聖隷二人——一号と二号が聖隷術の詠唱を始めている。詠唱速度からしておそらくはベルベットがテレサへと辿り着く前に発動してしまう事だろう

 ——しかし、勿論の事相手の行動を妨害する者は現れてくる。何せ今は3対3の状況なのだから

 

 「左の方頼むよ」

 

 「任せろっ!」

 

 「あ、でも殺しちゃダメな? もしも斬ったら……殺すぞ♪」

 

 「お、おう……」

 

 一号と二号の聖隷術を妨害する為にルィーンとロクロウが行動に移るのだった。その時にロクロウへと警告したルィーンの表情は、ロクロウが少し委縮するほどにゾッとしたとかしなかったとか

 ルィーンはテレサの右にいる二号の詠唱を妨害する為にクロスボウに装填したボルトを放ち、ロクロウはベルベットに矛先が向かわぬよう一号へと急接近した

 ルィーンが放ったボルトを二号は反射的に体を捻る事で避けるのだが、避けたことで詠唱が中断され術を発動することに失敗してしまう

 一方、一号は聖隷術を問題なく発動し、光と闇の球が交じり合いながら直進する攻撃術”シェイドブライト”をベルベットに向けて放つのだが……

 

 「……!?」

 

 「ま、まじか……」

 

 ”シェイドブライト”は一号とベルベットの間に割り込んだロクロウによって防がれてしまうのだが……その時に見せたロクロウの防ぎ方に一号とルィーンは驚きに目を疑ってしまった

 

 

 ロクロウはなんと、一号が放った”シェイドブライト”を両手の小太刀を十字に振るって切り裂いたのだ

 

 

 流石は業魔……なのであろうか?

 普通は聖隷術を斬り裂こうなどと考えるような奴はいない。聖隷術はいわば霊力の塊であり、エレルギー物質とも言える力の源だ

 それを目視することは出来れど触れることは容易ではない。簡単に例えるのなら空気を掴めと言っているようなものなのだ

 しかしそれをロクロウは——

 

 「おお、案外やれるもんだな」

 

 ——初の試みで成功させてしまったようだ

 これには心を閉ざされている一号も反応を示してしまい、次の術を発動させるまでの間に僅かな怯みが生じさせてしまうのだった

 

 

 

 

 

 「はあっ!」

 

 「くっ……!」

 

 そして、聖隷二人を妨害したことでベルベットの刃はテレサを捉えるのだった

 しかしそこは一等対魔士、すぐさま自身が持つ錫杖を自身と相手の間に滑り込ませることでベルベットの斬撃を錫杖の柄で防ぐ

 

 だが、流石に接近してしまえばベルベットの方に分があるようだ

 

 ベルベットは右腕の刺突刃が防がれたことを瞬時に確認した瞬間、錫杖につば競り合う刺突刃に力を込めて無理矢理弾き返す

 更に、弾き返したときの勢いを生かして今度は蹴りを放つのであった

 

 「飛燕連脚(ひえんれんきゃく)ッ!」

 

 「あうっ!?」

 

 蹴り上げ、蹴り落としによる二連撃の蹴りはテレサの懐に深く入り、二連撃目でテレサを大きく後退させた

 そしてテレサが後退した隙も逃すまいとベルベットは再び距離を詰めて追撃しようとする

 

 「舐めないでください!」

 

 「ちっ……!」

 

 しかし、テレサは錫杖に霊力を流すことで追撃を阻止する。霊力操作によって自由自在に操る錫杖を高速回転させ、それをベルベットに向ける事で迎え撃ったのだ

 さながらそれはブーメランのような動きをしてベルベットに襲いかかり、その隙にテレサは一旦距離を置く

 テレサの得意とする戦術は聖隷術による後方射撃だ。接近戦闘も出来ないことはないのだが、接近戦を主にしている者達からすれば護身の域でしかない

 故に錫杖での攻撃は牽制に過ぎず、相手が怯んでいるうちに聖隷術を叩きこむ。それがテレサの戦闘スタイルなのだ

 

 だからこそ、今の状況は不利でしかなかった。何せ、テレサ側には近接格闘に秀でた者がいないのだから

 相手が理性の無い業魔であれば、本能的な行動の隙を伺って術を発動する事も出来るだろう

 しかし今の相手は知性を持っている。相手に付け入る隙などそうそう与えるわけがないだろう

 

 ベルベットの猛攻に、テレサは防戦一方になるしかなかったのだ

 

 

 

 

 

 その間にもルィーン達と聖隷達の攻防が繰り広げられていた

 

 「風迅剣(ふうじんけん)!」

 

 「ぐぅっ!?」

 

 「——あ! こらロクロウ! 斬っちゃダメだろーが!」

 

 「安心しろ! 峰打ちだ!」

 

 「突きに峰打ちとかあるんですかねぇ!?」

 

 一号が怯んだ隙を狙ってロクロウは一気に間合いを詰めながら鋭い突きを放つ。その突きにはどういった原理か真空波をまとっており、おそらくその真空波によって一号を吹き飛ばしたのだろう。だから斬ってない

 だが、周囲から見れば突き刺しているようにしか見えない訳であり、二号の相手をしていたルィーンはつい反応してしまう

 その間に二号は今度こそ術を発動させたのだった。一号と同じく詠唱時間の短い”シェイドブライト”をルィーンに向けて放ち、すぐさま次の詠唱に入り始める

 しかしその”シェイドブライト”にルィーンは気づいていたのだろう。何の苦も無くヒラリと交わせば、二号が再び聖隷術の詠唱を始めていたので……その聖隷術の魔法陣に目を向けた

 

 (次は火属性か……シェイドブライトが使えるんだし、無属性が混じってる可能性もある、か……)

 

 聖隷術には特徴がある

 主に無・火・水・風・土の五つの属性が存在しており、それぞれに白・赤・青・緑・黄の五色に分かれている

 また、他にも属性を混合させたことで色が変わる事もある為、五色だけとは限らない

 そんな属性の色なのだが、それが顕著に表れるのが発動時に展開される魔法陣なのだ

 それぞれ発動する属性によって魔法陣の色は決まり、そこから外れる事はまずありえない。色を偽り違う属性にすることは不可能なのだ。対応する属性の色を変えようなど構築式が成り立たず、不発するか……最悪、術が暴走するだろう

 だからこそ、下手に術式を弄ろうとしない限りは正規の色に合った属性で間違いないのだ

 その為、どのような聖隷術を発動するか知るのに一番簡単な判断方が詠唱中に展開される魔法陣の色なのだ。少なくともどんな属性の聖隷術が来るかは確実に判断できる

 だからルィーンは聖隷の相手をする場合、まず始めに相手の聖隷術によって展開される魔法陣の色を見るのだ。そこから発動される聖隷術を予測し対処する事で自身のペースに持ちこんていく。それがルィーンの戦闘スタイルだ

 それに聖隷術は相手の得意な属性で使えるものが決まってくる。判断方法は他にもあるが、相手が何の属性かを判断するにはうってつけなのだ

 今のルィーンの予想では、一号と二号はどちらとも無属性の聖隷だろう。彼らが最初に使おうとしていた聖隷術はどちらとも白色だったのだから、おそらくは合っている筈だ

 

 そして、勿論の事ではあるが……ルィーンは相手の詠唱中、事が終わるまで棒立ちしているようなことはしない

 

 「ランダムラプチャー!」 

 

 ルィーンは二号の魔法陣を見て判断するなり懐から握り拳ほどもある何かの種を取り出して二号に投げつけた

 その種は二号の方に向かって真っすぐ飛ぶのだが、飛距離が足りずに手前で落ちてしまう

 しかし、その種が地面に落ちた瞬間——

 

 

  ——パアァァァンッ!!

 

 

 「っ!?」

 

 ——大きな破裂音と共に衝撃が走った

 どうやら”ラプチャー(破裂)”と名付けるほどの事はあるようで、弾けた種はまるで空気の塊を詰め込んでいたかのような衝撃を辺りに解き放ったのだ

 手前に落ちたとはいえ、その衝撃は人を吹き飛ばすには十分な威力を秘めていたようで、直撃ではないものの二号は軽く後退するように吹き飛んだ

 そして、二号が吹き飛んだのを見てルィーンは追撃する

 破裂の衝撃に二号はなんとか立ち上がりはすれど、遠目からでもわかるほどに頭を押さえて体が揺れている。どうやら種の破裂音が頭に響いて平衡感覚を失っているようだ

 

 ルィーンは周囲を確認する

 ベルベットとテレサの攻防は未だに続いており、ベルベットの猛攻にテレサは後退しつつ応戦していた

 その時のベルベットの表情からは一切の慈悲を感じさせず、まさに相手を狩るだけの殺戮マシーンと化している。テレサはそんなベルベットに恐怖を抱いているのか少し怯えた表情をしていた

 そんな二人の距離は、テレサが放つ錫杖によってある程度の距離が保たれていた

 

 ロクロウの方は丁度一号を倒したところのようで、ベルベットの加勢をしようと介入するタイミングを見計らっていた

 仰向けに倒れている一号の様子を見るに、どうやら気絶させるだけに留めてくれたみたいだ。微かに上下する腹部から一号が気を失っているだけなのがよくわかる

 

 そして戦闘に参加していないマギルゥとダイルはというと、既に出港する準備を済ませて身を潜めていた。おそらくは全員が乗ればすぐに船は沖に出られる事だろう

 

 潮時か……そう考えたルィーンは聖隷術を詠唱しながらロクロウに合図を送る

 

 「——ロクロウ、ベルベットに撤退するよう言ってきて。そろそろ援軍とか来そうだし、少しデカいのぶつけて隙つくっから逃げるよ」

 

 「了解した!」

 

 ルィーンの言葉に頷いたロクロウはベルベットとテレサの戦闘に介入する為に駆け始めた

 あらかじめ頃合いを見計らっていたのもあり、すぐさま行動に移ったロクロウの刃はベルベットに集中して気を割くことが出来ないテレサを捉える——

 

 

 

 

 

  ——ガキンッ!

 

 「——まさかあなた達が業魔だったとは……ッ!」

 

 「あんたは……!?」

 

 ——ことはなかった

 テレサに接近したロクロウの前に一人の対魔士が現れる

 二股の槍を構える赤毛の髪の少女はロクロウの介入を拒み、更には聖隷を一度に二人召喚した

 一人は気を失っている一号の傍に駆けつけ、もう一人はベルベットの猛攻を止める為に聖隷術による火球を放つ

 ベルベットは咄嗟に火球を防いだが、テレサとの距離が離れてしまった。まあルィーンとしては丁度良かったことではあるが

 ロクロウも後ろに後退することで赤毛の対魔士から距離を置く、すると自然にベルベット達とテレサ達の間に距離が置かれることになったのだった

 

 テレサと赤毛の対魔士、それに聖隷が四人となった今、明らかにルィーン達の分が悪い……

 

 

 

 

 

 しかしルィーンにしてみれば

 

 (二対同時使役……一等対魔士か。まあそれでも——)

 

 少し駆けつけるのが遅かった事が否めない

 

 

 「苛烈なる蒸気、噴き焦がすは——『レイジングミスト』!」

 

 

 ベルベットとロクロウが離れた事でルィーンは気兼ねなく聖隷術を発動させた

 テレサと赤毛の対魔士達を中心に、その足元の大地から高熱の蒸気が噴き出し始める

 その噴き出す蒸気の熱にテレサ達は行く手を阻まれベルベット達に近づけない。それを確認したルィーンはベルベット達に撤退を告げるのだった

 

 「今は逃げよう? 別に、絶対対魔士達を殺さないといけない訳じゃないし……いちいち相手するのもアレだろ?」

 

 「そうね。よくやったわ……えぇと……」

 

 「……あぁ、そういえばまだ自己紹介がまだだったな。俺の名前はルィーン、さっき言ったように聖隷だ」

 

 「そう。……そっちは知ってるようだけど、ベルベットよ」

 

 「あぁ、口の軽い魔女から聞いてるよ」

 

 「やっぱりか……」

 

 テレサ達がこちらに来れないことをしり目にルィーンとベルベットは改めて名乗り合う

 更にベルベットがルィーンの言葉に出てきた魔女を忌々しげに睨んでいる間に、ルィーンはロクロウとも簡素に名乗りを済ませるのであった。名前を告げての「よろしく」だけだったが、今はそれだけで十分だろう

 

 そして、さっさとこの場から逃れる為にルィーン達は船へ乗り込もうとした時——それは告げられた

 

 

 

 

 

 「……一等対魔士の名において命じます。奴らを逃がすな! 行きなさい二号っ!」

 

 その命令が意味することは……特攻だった

 未だ気を失っている一号に代わり、テレサは二号へと命令を下す

 

 

 ——噴き出す蒸気を無視して突っ込めと

 

 

 「ぐぅぅぅぅぅっ!!」

 

 「……え?」

 

 高熱の蒸気に触れれば火傷する。それは常識だろう

 だからこそ攻撃手段として成り立つし、敵も下手に触れようとは思わないはずだった

 

 しかし、聖寮の対魔士からすれば聖隷は道具だ。怪我しようが火傷しようが構わない、目的の為ならなんだってさせる……

 

 だから二号を、火傷覚悟に蒸気の壁を越えさせたのだ

 

 そのことに船へ乗り込もうとしていたルィーンは呆けてしまい、足を止めてしまう

 そして蒸気によって少し焼け爛れた皮膚をチラつかせつつ、二号は掌に火球を生み出しながら突っ込んでくる

 そんな二号の行動に意図を察したマギルゥから声が上がった

 

 「ルィーンよ! そやつ自爆する気じゃぞ!」

 

 「な……っ! 何やってんだよお前っ!」

 

 マギルゥの声にルィーンは意識を戻し、瞬時に状況を理解する。おそらくテレサは二号に自爆を命じたのだ

 

 ——ベルベット達が乗る船を爆破する為に

 

 そうすればベルベット達は海へ逃げることが出来なくなり、逆に袋のネズミと化す

 いくらベルベット達が強かろうが一等対魔士二人の後ろには二等対魔士が数多く控えている。それら全てを振り切って逃走など現実的ではない

 それに、聖寮の本部があるミッドガンド領に行くには船を使わざるを得ない為、今ここで船を失うわけにもいかないのだ。他の船を燃やした以上、次の船を狙う機会がいつになるか分かったものではない

 その上で聖寮側の警戒も厳重になるだろう。それでは今度、思うようには動けない

 だから二号に自爆をさせるわけにはいかないと誰もが思う事だろう。現にルィーンもその思考には至っている

 

 しかし、ルィーンにはそれ以上の理由があった。爆破させる訳にはいかない理由があったのだ

 

 

 

 「俺の目の前で心にもない自爆なんかしようとすんじゃねえっ!!」

 

 

 

 ルィーンは聖隷を見殺しにするようなことをしない。救える可能性があるのなら救う選択肢以外はあり得ない……それがルィーンの”信念”だった

 

 

 

 

 

 今や多くの聖隷が心を消され、道具と化しているこの世界の現状にルィーンは納得していない。納得するわけがない

 ”あいつ”の”理想”から外れた今の現状を、ルィーンは認める気が一切なかったのだ

 ”あいつ”が求めた”理想”はこんな世界じゃない。”あいつ”の”理想”を汚すんじゃないと、ルィーンは心の内で密かに怒りを溜め込んでいる

 だからルィーンは目の前で明確に行われている聖隷の道具としての扱いに腹が立って仕方がない

 道具のような扱いをする対魔士への怒り。内に秘めるその激情の片鱗をルィーンは表に出しつつ——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「裂想蹴(れっそうしゅう)!」

 

 「——おぐぅ!?」

 

 (うわぁ……えっぐ……)

 

 ——自爆する為に駆け寄ってきた二号の腹部へとヤクザキックを放つのであった

 

 ……別に聖隷に暴力を与えない訳ではない。そんなこと一言も言ってないとでも言わんばかりの鬼畜の所業

 そんなルィーンの行動にドン引きするマギルゥ達なのであった……

 

 




術技紹介

 奥義

『射閃』(しゃせん)
・クロスボウから霊力を帯びているボルトを放つ。霊力の調整次第で非殺傷にも出来るらしい

『裂想蹴』(れっそうしゅう)
・所謂ヤクザキック。クロスボウに似た武器を持つ”彼”とは何かと共通点のあるルィーンだが、特に関係は無い。そもそもあっちは”翡翠色”でこっちは”深緑色”だし


 聖隷術

『レイジングミスト』
・高熱の蒸気を大地から噴き出す。範囲が広く、相手の行く手を阻むことにも役立つ上に視界を曇らせる事も可能


 ブレイクスキル『ランダムラプチャー』
ルィーンの力を宿した拳程の大きさの種を投げつける
その種にはスタンやマヒ、火傷、鈍足、猛毒、疲労、石化等の多種多様の状態異常効果が秘められており、その上効力が高い。当たれば確実に状態異常に陥るだろう
発現する状態異常の効果は完全にランダムだ
たまに回復効果を発揮する場合もあるため使いどころには要注意

……実は”ルィーンボム”と名付けたかった
眼鏡に緑色の髪、術特化型でボムに自身の名前を付ける女性と言えば……わかりますかね?

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