ちょっと間が空きましたがどうぞ!
「急に帰って来たと思ったら……」
「すいません、緊急事態だったので」
カチューシャと分かれた俺は学校に戻り、ヘリを借りて実家に帰って来た。
一応申請書は出したけど……授業中に出ていったから帰ったら怒られると思う。
仕方ない、ノンナの為だ。
それで今は実家に帰り、俺の母親であり西住流家元『西住しほ』と一緒にいる。
「急に帰って来て話があるとか言ったけど、仕事大丈夫?」
「無理矢理空けたのよ……戻って良いなら仕事に戻るわよ」
「すいません、大丈夫じゃないので話を聞いてください」
「冗談よ…………それで、大事な話っていうのは?」
鋭い視線で俺を見つめる母さん。
家元モードに入るとこういう目付きになるんだからな母さんわ。元々目付きが怖いんだよ
「一千万円、私に貸して頂きたい」
「……詳しく話してもらえる?」
俺は今日ノンナにあったことを話す。
……もちろんカチューシャや俺との会話については話してない
「そう……ですか。…………事情は分かりました。気の毒だと思いますが、お金を貸すことは出来ません」
だろうね。予想は出来てたよ
「…………撃てば必中、守りは固く、進む姿は乱れなし、鉄の掟、鋼の心……それが西住流ですよね母さん?」
「当然のことを言ってどうしましたか?」
「強きこと勝つことを尊ぶのが伝統……ですよね」
「…………何が言いたいの?」
「私は西住の教えに従い、私の"日常"を取り戻す為に母さんにお願いに来ました。
―――私に一千万円貸していただきたい!」
俺は母さんの前で土下座して頼みこむ
「……雪穂の覚悟は分かりました。ですがやはり―――」
「ちょっと待ってくれるかな、しほ?」
「あなた!」
「父さん」
襖を開けて部屋に入ってくる父さん。
……珍しい、連盟の仕事で基本的に家に居ないのに
「雪穂には悪いと思ったが、話はほとんど聞かせてもらった。一つ聞きたいことがあるんだがいいか?」
母さんの隣に座る父さん
「なんでしょう?」
「お前にとってノンナって子はなんだ?」
なんだよ、そんなこと話を聞いてたら何となく分かるだろう。……俺の口からはっきり言わせたいのね
「まほやみほと同じぐらい大切にしたい人。…………初めて心の底から好きになった大事な人」
「やっぱりか……」
「昔、お爺さんに聞きました。父さんも母さんの婿になりたくて頑張って有名な大学に入ったと。それで父さんはお爺さんに『好きになった奴の為に男が頑張る理由なんているか?』って言ったと…………だから俺も何だってしますよ。だって、好きになった奴の為に男が頑張る理由なんていりますか?」
「……ハハハハ!しほ、これは俺たちの負けだね」
父さんのツボにかなりはまったようで珍しく大笑いしている。
母さんは頬を赤くしてはぁ……とため息をついてる。
ため息ついてる割には顔は嬉しそうだけど
「……親子ですね、あなた」
「そうだな……」
母さんと父さんが微笑みながら俺を見つめる……でもなぜか少し悲しげな目をしている。
…………なんでそんな目をしてるんだよ二人揃って
「雪穂、今回だけは貸してあげます」
「ありがとうござ―――」
「ただし、条件があります」
感謝の言葉を言い切る前に真剣な顔の母さんが遮る。
「あなたが大学を卒業するまでに返しなさい。出来なければあなたには縁談をしてもらいます」
「分かりました」
大金を借りてこれくらいの条件なら全然問題ないだろう
「……惚れた女の為なら、これくらい出来るよな?」
「もちろんです。誰の息子だと思ってるんです?」
「よし!急いでるんだよな?三時間で用意するから待ってなさい」
父さんは小走りで玄関の方へ行く。
これで俺の今出来ることは終わった。後は待つだけだ。
マジで大丈夫かなカチューシャ……。ちょっと心配
……考えるのは止めよう。
そういえば、母さんと二人でしゃべるのなんていつぶりだろう?
「最近のまほやみほは?」
「特に何もないわ。二人とも雪穂のような優秀な車長になりたいって」
「優秀ねぇ…………。二人は気づいてないのか……車長として俺より才能があることに」
俺がどう頑張っても二人には勝てない。
俺はまほやみほと違って車長としての能力は高くない。高くないといって二人に比べての話。実力的には一流にはなれるがその上のレベルにはいけない
二人は……みほはまだだけど、いずれ一流のその上のレベルに到達するだろう。
だから俺は……家元にはなれない
「そうね」
「フォローとかしてくれないの?」
「雪穂はそういう気遣い好きじゃないでしょ?」
「流石母さん、よく分かってるね」
「でも、雪穂の砲手としての才能は日本で一番になれるほどの物を持ってる。そこは誇っていいものよ」
母さんは戦車に関しては冷静に見極めて嘘は付かない。だから母さんに褒められるのはすごく嬉しい
「ありがとう母さん」
「私は本当のことを言っただけよ。ごめんなさいね、仕事に戻るわ」
「時間を作ってくれてありがとう、仕事頑張って」
母さんは少し微笑みを浮かべると、自分の仕事部屋に戻って行く。
家には母さんしかいないからな…………ヘリの整備したら自分の部屋に行くか
「待たせたな」
自分の部屋で読書してると父さんがアタッシュケースを一つ持って帰って来た。
久しぶりに帰っても部屋は綺麗のままだった。
いつもまほかみほが掃除してくれてるらしい
……今度帰ってきたら二人にお礼してないとな
「ありがとう父さん」
俺は父さんからアタッシュケースを受け取ると、庭に停めてあるヘリに向かう。
「雪穂」
「母さん」
庭に着くとヘリの前に立っている母さんに呼ばれる。
あれ、仕事は平気なのか?
「西住の名を背負う者として……大事な人を守ってきなさい」
母さんは俺に近づき、数回頭を撫でる。
…………珍しいな母さんがこんなことするなんて。ちょっと照れくさいな
「いってらっしゃい雪穂」
「行ってきます母さん」
俺はヘリに乗り込み、実家をあとにする。
学校に戻ると、やっぱり先生に怒られた。
でも、『今後はしないように』っとだけ言われて解放された。
やはり日頃の行いが良いと得をする。
俺は学校を出てタクシーを拾いノンナの家へと向かう
「ちょ、ちょっとアンタ達!こ、これ以上ノンナに何かしてみなさい!こ、このカチューシャが許さないわよ!」
「うるせぇな……コイツどうします兄貴?」
「ほっとけ。それでどうするんだよ嬢ちゃん?」
病院から出たあと、ずっとカチューシャが私の側に着いてくる中…………とうとうお別れの時間が来てしまったようです。
「カチューシャ……。私なんかの為にここまでしてくれてありがとうございます。お別れです」
「ちょっと待ってよノンナ!せ、せめてユキが来るまでは!」
ユキですか…………カチューシャもユキに僅かでも期待している。彼ならこんな状況でもなんとかしてくれるのではないか…………さようならと言っておきながら、私もちょっとだけ期待している。
「悪いが、早く決めてくれねぇか。これでも忙しい身なんでな」
「こっちはお前か金が貰えればいいんだよ」
「うるさいわね!大体女の子二人に対して大人が三人でよってたかって恥ずかしくないの!?モテないわよ!」
「うるせぇぞ!こっちが大人しく待ってたらよ、いい気になりやがって!」
男の一人が頭にきて、私の前に立っているカチューシャを殴ろうと右腕を振り上げます。
「カチューシャ!」
私はカチューシャの腕を引っ張り私の後ろに隠します。
カチューシャは小さいですからね、大人の男に殴られたら大変ですから…………それに私の為にカチューシャが傷つく必要はありません
「俺の大事な人に触らないでもらえます」
私に何も届かなかった代わりに―――とても大好きな彼の声が聞こえます。
「ユキ!」
カチューシャを離して男たちの方を向くと、殴りかかろうとしていた男がユキに腕を掴まれ倒れていた。
「おい!何してくれてんだてめぇ!?」
もう一人の男が助けに行こうとした瞬間、ユキがその男にアタッシュケースを差し出す。
「お金を持ってきただけだが、なんだ?」
「お、おう」
突然のことに戸惑いながらもアタッシュケースを受け取ると、アタッシュケースを開けて数え出す男。
「大丈夫か二人とも?」
ユキが男たちを無視して私とカチューシャの顔を見る。
「お、遅いわよ!このカチューシャ様を待たせすぎよ!」
涙を浮かべながらユキを睨むカチューシャ。
「悪かったな」
「本当よ…………私は約束を守ったわよ」
「ああ、後は任せろ」
カチューシャの頭に手を置いてポンポンと数回叩くと、三人の男たちの方へ向く。
「お金あったでしょ?」
「……兄貴、ちょうどあります」
「そうか。さっきはすまんの、ウチの若いのが手を出しそうになって」
「……そういうのはいいので、ささっと借用書置いて帰ってもらってもいいですか」
「おう、言われなくてもそうするわ」
テーブルに借用書と思われる紙を置いて三人の男たちが家を出ようと歩き出しましたが、兄貴と呼ばれている一人が足を止めます。
「…………一つ聞いてもええか?」
「内容によります」
「兄ちゃんは誰だい?」
「そうだな…………美人を守るヒーローかな?」
「そうかい。そういう男……俺は嫌いじゃないぜ」
ユキの答えが良かったのかニヤッと笑みを浮かべる男。
「あ、じゃあ俺からも一つお願いしたいことがあるんだけど」
「お、なんじゃい。言うてみ」
チラッと私のことを見て小さく頭を下げ、再び男の方に向きなおす。
「今後、コイツの親父さんに金を貸さないでほしい。貸してもコイツとコイツのお母さんに請求しに来ないでほしいんです。もう…………この家族と縁を切ったので」
「……安心しな、今回のことで親父さんは俺たちのブラックリストに載ったから、どこ行っても貸してくれる奴は居ねえよ」
「それなら良かったです。……意外とヤクザの人も話せば分かるんですね」
「……嬢ちゃんたちも勘違いしてそうだけど、俺らはヤクザじゃねぇぞ。利息もきちんと法律を守ってる真っ当な金貸だ」
「「「えっ?」」」
てっきりヤミ金と呼ばれる人たちだと思っていました……。
「……でもノンナを連れていこうとしてたですよね?」
「それはただの脅しだ。娘を連れていこうとすればある金全部出すだろうし、本当に無くても娘を預かれば逃げた親父さんが現れるだろうと思ってな」
……黒ではないでしょうけど結構グレーゾーンなことをしてる気がしますが
「ま、金はしっかり貰ったことだし、俺たちと二度と会うじゃねぇぞヒーローにヒロインたち」
そういいながら私の家から出ていく。
えっと……これで私の借金は…………無くなった?
「ノンナ」
ボケッとしていた私の目の前にユキがいて名前を呼ぶ。
「おかえり」
ユキが微笑みながら言う。
ただの一言なのに…………胸の奥まで温かくなります。
「……ただいま雪穂」
そう言うと……なぜだか涙が溢れてきました。
そんな顔を雪穂たちに見られたくなかったので雪穂の胸に抱きつきます。
「よしよし、もう全部終わったからな」
雪穂も私が泣いているのが分かっているみたいで、子供をあやすように優しく頭を撫でてくれます。
……バカ、かっこよすぎです
「落ち着いたな」
「……はい」
ちょっと恥ずかしそうに返事をするノンナ
今更気にしなくてもいいと思うけどな
「ねぇユキ……これでノンナは大丈夫なのよね?」
「ああ」
「ならいいわ!ノンナ!このカチューシャ様に感謝しなさい」
「はい、ありがとうございましたカチューシャ」
いつも通りの微笑ましい光景に思わず笑みがこぼれる。
「何笑ってんのよユキ!」
「いや、悪い。さてノンナ、行こうか」
「「?」」
「もう一人心配してる人がいるだろう」
「…………あ!忘れてました」
「?」
カチューシャはいまだに分かっていないようで首を傾げてる。
ま、行けば分かるから放置
「ほら早く行くぞ」
「はい」
「ちょっと!どこに行くのか教えなさいよ!」
騒ぎながらも付いてくるカチューシャとノンナを連れてある場所へと向かう。
「そうですか…………」
ノンナのお母さんの病室に三人で行き、先程まであったことを説明した。
「すいません、色々勝手にやってしまいまして」
「いえ、助けていただいただけで感謝してます。…………ノンナ、ちょっとその子と一緒に飲み物でも買ってきてくれない?」
「……はい、分かりました」
お母さんの本当の意味を分かっているノンナは俺の顔を見てきたので、大丈夫という意味を込めて笑って頷く。
ノンナに意味が届いたようでカチューシャを肩車して病室を出る。
「それで二人を退出させて、何を聞きたいんですか?」
「貴方……ノンナのことどう思ってるの?」
「好きですよ、異性として」
「……借金を盾に交際を申し込もうとしてる?」
「そんなことしません」
俺を睨み付けて質問してきたノンナのお母さんに対して速答で答えを返す。
悪いがそんな屑じゃない
「借金は現金で返してもらいます。何年経とうが利子もつけません。ノンナはとても魅力的な女の子で、こんなことがあったばっかりだからお母さんが俺を疑うのは無理ないと思います。ただ、俺の望みは
―――ノンナに笑ってほしい。ただそれだけです」
「…………そう。……ノンナに告白はするの?」
「落ち着いたらするつもりです。振られたとしてもノンナの友達で居たいと思います」
俺の一番の望みはノンナの隣にいることじゃない。笑ってるノンナを見ていたいだけだ。
……でも、叶うなら、隣でその笑顔を見たいかな
「……ありがとう。ノンナのことよろしくね」
「はい」
「買ってきましたよ」
「このカチューシャ様が買ってきたんだから、感謝しなさいよ」
丁度話が終わったところで飲み物を買いに行っていた二人が戻ってきた。
「ありがとうなカチューシャ。さて、説明も終わったしご飯でも食べに行くか」
「そういえばまだ私ご飯食べてなかったわ……」
「では、カチューシャの食べたいものでも食べに行きましょう」
「ちょっと待ってノンナ」
俺達が今後の予定を決めるとノンナのお母さんがノンナを呼び止める。
おそらくノンナだけに話があるんだろうな
「用が済んだら電話して」
「はい」
「ノンナのお母さんお大事に。行くぞカチューシャ」
「私に命令しないでよ!じゃあまた来るからねおばさん!」
さて、何食べるんだろう?
「ねぇユキ……おばさんと何を話してたの?」
俺の隣で歩いているカチューシャが真剣な表情で聞いてくる。
別に隠す理由もないのでカチューシャに話したことを一部伝える
「借金は返してもらうって……。小さい男ね。返さなくていい、くらい言えないの?」
俺をバカにしたような口調でカチューシャが若干引いたような顔で見る。
「アホ、それを言ったら
―――告白したとき、ノンナは絶対拒否しないだろう」
「は…………ユキ、アンタ今『告白』って言った?」
予想していなかった言葉だったのか間抜けな顔をしているカチューシャ。
「ああ、言った。カチューシャも薄々気付いてるだろ。俺がノンナのことを好きって」
「……まぁね」
一年近く三人で一緒にいる時間が長かったもんな。鈍くない奴は分かるよな
「俺はノンナのこと好きだけど、ノンナの気持ちを無視してまで付き合いたくない。それに
―――お金を盾に交際を申し込むってカッコ悪いだろう?」
「…………ユキらしいかもね。ま、頑張りなさいよ。このカチューシャ様が応援してあげるから」
「おう、ありがとうなカチューシャ。それでカチューシャは何か食べたいものあるか?」
「そうね…………ノンナのボルシチが食べたい」
「それいいな。じゃあ俺の家か…………カチューシャ、材料買いに行くけどついてくるか?それとも先に家に行ってるか?」
この二人なら信頼してるから俺が居なくても家に入れられる。
……カチューシャはお菓子とか漁りそうだけど
「仕方ないわね、このカチューシャ様がついていてあげる。感謝しなさい」
「はいはい、一人で居てもつまんないからついてくるんだよな」
「なっ!何を的外れなことを言ってるのよ!そんなことはどうでもいいから早く行くわよ!」
早くノンナ帰ってこないからな……。俺にはこのちびっこの相手はしんどいよ
このあとの買い物でカチューシャのお菓子という全く無駄な物まで買わされた。
やっぱり家に行かせるべきだったか
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