紅蓮のフラグメンツ   作:にょきにょき

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Prologue

.

 

 

 

 

 

 

あるところに――――ひとりの女の子がいました。

 

 

その女の子は無色透明―――何色にも染まらない真理…その物でした。

すべてを成せるその器は、望めば何でもできる。そんな存在でした。

世界は彼女と繋がっていて、彼女は世界と繋がっていた。

 

彼女はおよそ全能でした。

 

不可能な事などひとつもない。すべてを操って、崩し去ることが出来る。

そんな機能をもってしまった故に何事にも楽しみが無くなってしまいました。

しかし、そんな彼女に突如、入る筈のない異物が入ったのです。器から生み出された魂では無い、別の世界からやってきた魂。

なぜかその魂は器にとてもよく馴染むものでした。

だからこそ、無色透明だった彼女はその魂を払いのける事は無く―――寧ろ、その魂を受け入れました。

受け入れた理由は簡単です。

すべてを見通し、すべてを有し、すべてを理解してしまう先に待つのは、世界と自分が溶け合ってしまうような在り方―――それは一種の女神のようなもので、ヒトのままでいる意味が無く、生命活動を続けられない。

いずれ、死んでしまう………けれど、彼女は思いました。

 

 

――――生きていたい。

 

 

故に、その魂に己の人生を託したのです。

純白の煉獄を辛うじて耐えてきた…けれど、入ってきた魂に自分の人生を代わりに生きさせれば、耐える必要が無い。

自分は眠りにつくことが出来る。

そうして、器は安心して眠りにつきました。夢を見る様に、俯瞰するように、もう一人の自分の人生を面白おかしげに眺めることにしました。

自分では感じ取ることが出来ないものを、もう一人の自分から感じ取りながら―――。

満足して――――深い、深い眠りにつきました。

けれど、その女の子はただ一つだけ、間違いを犯しました。

 

 

 

――――善意でその魂を自分と同じように世界と繋げてしまったことです。

 

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

――――人理継続保障機関フィニス・カルデアへ向かう列車にて。

 

沙条愛歌は不機嫌だった。

列車に揺られながら、気を紛らすため愛しの妹が作ってくれたサンドウィッチと紅茶を口に運び、窓辺を眺めるものの、ほぼ地下である事やたまに外の風景を視れても、何の面白みのない雪原のみ。全く持って気が紛らわない。

幾ら、転生し前世の記憶のお蔭で精神年齢が高かったとしても、我慢できないものがある。

なにせ、相席してきた男が愛歌にとって、厄介な人物だからだ。

 

「そんな不機嫌な顔しないで下さい、師匠」

「むむ…ファルデウス…何んでお前が此処に居るんだ…」

「偶々、任務で此処に配属されただけです。貴女を狙うために此処に来た訳じゃありませんよ、安心してください」

 

手をヒラヒラさせながらそう答える青年————ファルデウス・ディオランド。

彼の一族は代々人形を使う魔術師の家系であり、かつて『冬木の聖杯戦争』————第三次聖杯戦争に参加した魔術師の縁者でもある。と言っても、この世界線では第三次聖杯戦争は起こっていないため関係無いが、共通しているのは、彼の一族はアメリカ合衆国の政治家と手を組み、自らの土地で聖杯戦争を起こそうとしている事だ。

理由は簡単、第三魔法を魔術の位に引きずり下ろすためである。

そんな彼に師として慕われているのは、理由がある。一つは私が純粋に蒼崎橙子を師として持ち、彼女から人形作りの技術を完璧に継承しているので、その技術や魔術を学ぶため。

 

二つ目は、彼の一族は私が持っている大聖杯(●●●)―――東京に設置される筈だったものを、口から手が出る程に欲しいがために、弟子として彼を送り込み狙っていたのだ。

ぶっちゃけ、返り討ち出来ると調子乗って彼を弟子として受け入れ、利用してやろうとした自分を殺したくなるぐらい、ヤツの所為で酷い目にあったのである。米国の特殊部隊やら傭兵、殺し屋に狙われたり、某プレラーティに遭遇してしまうなど碌な目に遭わなかったのだ。

 

結局の処、戦いを挑んで来た変態やら人間たちを単独で潰したものの、自分を一度だけ半殺しにしたファルデウスに対しては彼のことを認めて、とある魔術礼装の資料を与える事で彼の一族との戦争―――いや、殺し合いは手打ちになった。

そんなこんながあった所為か、愛歌はファルデルスの顔を見ると嫌な思い出をまざまざと思い出す為、関わりたくなかったのだ。

ファルデルスはそんな事を気にすることなく愛歌に対して、以前と同じ様に話しかける。

 

「にしても、師匠はカルデアについて、ちゃんと知ってるんですか?」

「基本的な事しか知らないなー、人類のためと謳いつつ所詮は魔術師の一族……非人道的な事は普通にしてるだろうよ。」

 

カルデア――――人類の未来を語る資料館。国連の傘下に入っている組織だ。しかし、それは表向きであり、実情は時計塔の天体科を牛耳る魔術師の貴族であるアニムスフィア家が管理する機関であり、標高6,000メートルの雪山の地下に作られた地下工房。デミ・サーヴァントを生み出す為に非人道的な実験も多々行われ、その結果、マシュ・キリエライトが生み出されたりしている。

 

「にしても、あの(●●)アニムスフィアが良くここまでデカくなったもんだ。私が時計塔に居た頃は唯の天文台だったのにな」

「えぇ、全くです。今まで机上の空論に過ぎないと言われていたアニムスフィア家の理論が2004年になった途端、立証できるようになっていますし…ね」

「2004年…?」

 

2004年と言えば、確か第五次聖杯戦争が起こった年だ。

だが、それはFate/stay nightの世界線であって、この世界での冬木の地で行われた聖杯戦争は2004年が最初(●●)最後(●●)の開催。何せ、その聖杯を設置する儀式にゼル爺と共に立ち会ったのだ。

儀式を立ち会った後、愛歌は時計塔のエルメロイ教室に所属することとなり、そんな時期にエルメロイ二世が参戦しようと画策していたが、誰かに参戦権を取られ、ふて腐れていたのを思い出す。

 

もとより、彼の征服王の聖遺物を盗まれた所為で、グレイと共に使い魔のような扱いで魔眼蒐集列車(レール・ツェッペリン)に乗る事になったりもしたものだ。色々とごたごたはあったが、とりあえず碌な事しかなかった。

一応、エルメロイ二世から報酬が払われていたため、仕事を全うしたが、愛歌からしてみれば自分に降り掛からなければ、聖杯戦争なんてどうでも良い。故に、係わりもせず、勝者が誰かは知らなかった。

 

「マリスビリーって、もしかして…聖杯戦争に勝ったのか?」

 

独り言のような物だったが、その言葉にファルデウスが反応する。

 

「良く知ってましたね…その通りですよ。冬木で行われた聖杯戦争の勝者はマリスビリーです。参加した六人の魔術師は全員、死亡してます」

「…そうか………彼が聖杯戦争に勝ったのなら、辻褄が合う。聖杯にアニムスフィア家の理論を立証できるよう願ったんだろな…其処から奴は魔術師として大成したが―――」

「―――マリスビリーは自殺した」

 

愛歌とファルデウスは暫くの間、口を閉ざした。互いにそれなりに頭の回転が速いので、色々と察したのだ。

 

「………何があったのかは知らんが…何かをやらかした可能性が高いな…。あぁ~嫌な予感がするぞぉ~」

「師匠がそんな事を言うとは…非常にまずいですね…例のお守りくれません?12人分ほど」

「どうして、そんなに必要なんだよ?!」

「部下に配ります。現代兵器を軽く防ぐ結界を張るお守りは非常に便利ですからね…例え何もなかったとしても、心強いですから…」

 

互いに危機察知能力―――主にファルデウスは愛歌の所為で、愛歌はファルデウスの所為で高くなっているため、嫌な予感がしたのならば即座に対策を取るのだ。良くも悪くも師弟である。

 

「あぁ、それとカルデアの医療部門のトップを務めるロマニ・アーキマンという男が居るんですが…」

 

ファルデウスはスマートフォンをだし、一人の青年の写真を表示させる。

―――ロマニ・アーキマン。

FGOでは主人公のサポートキャラとして登場する人物。物腰の柔らかい好青年だったと記憶している。だが、何やら主人公たちに隠し事をしていたり、少々、キナ臭い部分がチラホラあった。彼がどうかしたのだろうか。

 

「彼の事はあまり信用しない方が良いですよ………正直、何処を探しても彼の経歴が見つからないんですよね…聖杯戦争以降は兎も角、聖杯戦争以前がの事が一切わかりません。不気味な程に…」

「ほう……お前が経歴を漁れないとは…かなりキナ臭いな……」

 

ファルデウスは魔術の腕はそれ程では無いが、そのことをカバーするかのように情報収集能力は長けていた。バックにアメリカ合衆国があるから当然だが、その収集能力は愛歌が戦いの際に出す癖などを精確に読み取り、弱点になる処を見抜くことが出来る程、凄まじい。そんな彼が経歴の探れない人間など、死人か何かと言っても差し支えないかもしれないのだ。

 

「それと、彼はどうやらマリスビリーと共に助手として聖杯戦争に参加しているようですしね…」

「へぇ…、そうか…聖杯戦争以前には存在せず、以降には存在してる…まるで―――受肉した英霊みたいだな」

 

そういった瞬間、ファルデウスが固まる。何かが腑に落ちた…そう納得した表情になったため、すかさず愛歌は言葉を続ける。

 

「真に受けるなよ?そうとは限らないだろうし…まぁ、似たような存在の可能性はあるが…」

「分かってますよ…けど、監視させてもらいますがね……」

「まぁ、それが順当だな」

 

ファルデウスも愛歌もそうだが、二人はカルデアをあまり信用していなかった。不審な点が多く、真に信用に値するとは現時点では考えられない。冷めた紅茶を口に運びつつ、愛歌は此処に来るまでの事を思い出していた。

 

 

―――時を遡る事、数週間前。

 

 

魔法使いの弟子としてゼルレッチに師事してたが、ある日、行きつけのカフェで紅茶を奢って貰った時、彼の口から『カルデアでマスターになれ』と言われたのだ。

―――その言葉を聞き、愛歌は苦虫を潰したような顔になる。

何故ならば、愛歌はなるべく聖杯戦争に関わらない様に生きていた。何かの弾みで某男版騎士王が召喚される可能性を畏れてだ。あの男は己にとって死亡フラグだからである。故に彼女は冬木で一度だけ行われた聖杯戦争以降、偽の聖杯戦争であっても起らない様にしていた。

 

東京に設置されかけた大聖杯も、聖堂教会を襲撃して阻止し、奪い取っている。しかし、大聖杯の中身である黙示録の獣を棄てるのは惜しかったので、橙子師直伝『匣』の中の怪物にし、切り札として残していた。その所為で聖堂教会と戦争になったが単独で返り討ちにしたあと、枢機卿を潰して戦いを物理的に終わらせたのだ。

だがそれを、聞きつけたどこぞの米国の組織やら変態に絡まれ碌な目に遭わなかった。

故に愛歌にとって〝聖杯〟という単語は忌むべき存在なのである。争いしか呼ばない忌まわしいモノ。そもそも、自身が聖杯に匹敵する願望器(●●●)なため、どうでもいいのだ。

 

正直、可愛い妹の綾香と美人な母と親父で幸せに暮らしていければいいのだ。

だからこそ、平行世界の自分が欲しがっていた、白馬の王子様など要らない。恋愛感情(●●●●)など感じたくもない。そんな感情が無くても人は生きて行けるのだから。

もとより、英霊を使い魔として使役するのもフラグ満載で嫌だったため、わざわざ、なろうとも思わない。絶対に聖剣で後ろからアゾられるに決まっている。

そう思った愛歌はゼルレッチに文句を言う。

 

「嫌だぞ、爺さん。聖杯戦争とか私にとっては死亡フラグでしかない。絶対、後ろから刺されるって!小生、時臣師みたいにアゾられるの嫌だ!聖剣に刺されるのも嫌だ!綾香の顔が見れなくなるのはもっと嫌だ!」

「背後を警戒しておけば平気じゃ。そもそも、お前なら刺されても生き残るじゃろ」

「ないです。流石に死にます―――もうね、わたし、にげる」

 

どこぞのピネガキを彷彿とさせる発言をしてその場から逃げようとしたが、すかさずゼルレッチに釘を刺される。

 

「逃げ場はないぞ…もとより、この世界線での一時的な人理焼却は決まっている」

「ファッツ!?」

「そもそもだ、お前の生きる軸でのカルデア…例のマスターが人理修復するまで生き残ると誰が決めた?必ず人理修復できるとは―――限らんぞ?」

「う…ウソダドンドコドーン」

 

漸く愛歌は師の言葉で現実を理解したのだ。

自分の生きている世界で例のマスターが特異点にて生き残ると限らない。もしかしたら、途中で死んでしまう世界線かもしれないのだ。

それに気が付いた愛歌は渋々、師の言葉に従いカルデアに所属する事を決め、腹を括った。根源の力を使っても流石に人理焼却を元に戻すのは難しい。出来ない事はないが、非常に面倒なのだ。もとより、私自身が人間では無くなる。

 

某魔術王と全面対決不可避だ。魔法を使えばワンチャンあるがリスキーな真似はしたくない。だったら、カルデアに所属して真面目に特異点を直した方が楽である。

そうこう考えていると、列車はカルデアへと無事に到着した。

手荷物以外の衣服や魔術礼装などを入れたスーツケースなどは、荷物を運搬するスタッフの手で自室に運ばれるようになっている。ファルデウスは部下を引き連れて、愛歌とは別の入口へと案内されていた。

 

「私はカルデアの軍事部門の職員として配属されますから…師匠はマスターなので、施設の入り方は別々みたいですね。では、また後で会いましょう。ちゃんと『例のお守り』代は口座に振り込んでおくので」

「あぁ、了解した。また後で会おう」

 

ファルデウスと別れた後、カルデアの職員に案内され、マスター専用の入口よりカルデアに入館した。入館時の戦闘シュミレーションを終えると、職員より軽いカルデアの紹介を受け、自室のカードキーを受け取り、スーツケースが送られているか確認したあと、直ぐに食堂に迎いファルデウスと落ち合う。

夕食時ということもあって、大勢の人数が食事できるよう解放された食堂は、デザインした人間の思い通りに賑わっていたが、ファルデウスが陣取っていた席はまるで人が少なかった。

恐らく人避けの魔術を気付かれない具合でしているのだろう。ファルデウスの座っている席の周囲には彼の部下が何食わぬ顔で座り食事をとっていた。料理は既にファルデウスが頼んでいたようで、愛歌の好物であるうな重が用意されている。

 

「大丈夫か?ファルデウス?このうな重…高くなかったか?」

「…職員なんですから、食事は無料ですよ」

「それは本当か!?後でおかわりしよ……」

 

ファルデウスは呆れた様にため息を吐いたが、気にすることなく席に座ると愛歌はうな重を口に運ぶ。中々、良いウナギを使っているようで、自然と頬が綻ぶ。

そうこう食事を取っていると、とある人物が此方に近寄ってきた。

 

「食事をとる前にすべきことがあるんじゃなくて?――――沙条愛歌」

「君は―――…」

 

愛歌は箸を置き、話しかけてきた人物を見やる。

三つ編みをした癖のある銀色の髪を靡かせた少女――オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィア。彼女と初めて会ったのは魔眼蒐列車(レール・ツェッペリン)での事件の時だ。あの頃は年相応の幼さと弱さ、それでも尚、貴族として気高く強く振舞っていた。今にもヒステリーを起こしそうな彼女の顔を見ると、あの頃と違って余裕はあまり無いようだ。余裕が無いのは当然だろう…急にアニムスフィア家の当主になったのだから心労は半端なものではない筈だ。

 

「久しぶりだね、オルガマリー…元気そうでなによりだ」

「えぇ、ご生憎さま!にしても、このカルデアに着いたのなら、真っ先に私の処に来て挨拶すべきじゃないの!?エルメロイの魔術師である貴女がマスターとして選ばれたのは私と貴女の師である魔道元帥ゼルレッチのお蔭なんだから!これで、あの時(●●●)の貸しは無しよ!」

 

口を開けば罵詈憎音の嵐―――とは言わないモノの、相当、鬱憤が堪っているようだ。

 

「了解した…にしても、申し訳ない…後で挨拶に行こうと思っていたんだが…。マスター候補として呼んでくれたことには感謝している。それにしても、あの頃とは見違えるほど立派になったね…会うのは魔眼蒐列車(レール・ツェッペリン)以来か…」

「感謝してくれてるなら良いわ……。あれから数年以上経っているもの…成長しているのは当然よ。それと、分かっている筈だけど、此処の所長は私だから命令には従ってもらうわよ!」

「あぁ、安心してくれ。私は報酬がきっちり払われている限り、絶対に裏切ることはないし、命令にも可能な限り従おう」

「そう…なら、良いわ。忙しいから私はもう失礼するわね」

 

絶対に裏切ることはない――――その言葉を聞いた時、オルガマリーは何処かホッとした表情をした後、彼女は足早に食堂から去って行った。彼女が去ったのを見計らってファルデウスは口を開く。

 

魔眼蒐集列車(レール・ツェッペリン)って…師匠!魔眼蒐集列車(レール・ツェッペリン)に乗ったんですか!?」

「おう、ちょっとした仕事…いや、事件に見舞われてな…その時に乗ったんだ…話も長くなるから此処では止めてくれ…」

「分かりました…此処では問い詰めませんが、後できっちり話は聞きますからね……」

「べ、別に構わないが…」

 

そうごたついていると、オルガマリーとは別の人間が此方に迫ってきた。

人避けの魔術を避けて来たと言う事はそれ相応の実力を持った魔術師なのだろう。

 

「相席しても構わないかな?」

「………えぇ、別に構いませんよ。どうぞ」

 

ファルデウスは間を置いた後、快く返事をする。

愛歌も相席を頼んできた男を眺めた。モスグリーンのタキシードとシルクハットを着用した少々、時代遅れな魔術師らしい服装をした青年。手には料理を乗せたお盆を持っている。彼はファルデウスに許可されると、静かに席に着いた。一見、人の良さそうな顔をしていたが、かなり胡散臭さがあった。まるで、藍染惣右介のようだ。

 

「うーん…どっかで見たことが…」

「パンフレットに載ってる人ですよ…師匠…大丈夫ですか?」

「ハハッ、気にする事はない。パンフレットなんて深く読まないだろしね。お初にお目にかかるよ…沙条愛歌さんにファルデルス・ディオランド君。私の名前は、レフ・ライノール…このカルデアの顧問をしている魔術師だ。これから宜しく頼むよ」

 

レフと言う青年は穏やかな、人の良さそうな笑みを浮かべながら自己紹介してくるが、どうにも胡散臭さが拭い切れていない。そもそも、『匣』の怪物と似た臭い(●●●●)が彼の身体から微かに臭う。その臭いで愛歌はレフに対する警戒レベルを引き上げ、無表情になる。彼女自身、あまり気が付いていないが危険だと認知した人間に対して愛歌は無表情になって、相手を観察するのだ。愛歌が無表情でレフを眺めるのを見て、ファルデウスも顔色何一つ変えないものの、レフに対し警戒していた。

 

「食事中に話しかけて、すまないね。君らの事はカルデアでも噂になっていたから、是非、話がしてみたくて来てしまったのだが…迷惑だったかな?」

「いえ、全然平気ですよ。互いの近況を話していただけですから」

 

レフに負けず劣らず人の良さそうな笑みを浮かべながら答えるファルデウスを見て、愛歌は曖昧な表情になった。彼の顔はブサイクでもなく、近寄りがたいほどカッコイイ訳でもない。だが、親しみやすい顔をしているので、女性をひっかけるのは容易いのである。言いかえれば、潜入任務に向いている顔と言えるだろう。潜入任務は目立ってはいけないので、ファルデウス程度の顔が丁度良いのだ。レフはファルデウスと暫く話した後、愛歌に話を振った。

 

「愛歌さん、君の事はオルガから聞いている。以前、彼女が魔眼蒐集列車(レール・ツェッペリン)で世話になったと言うのを…その時は、気が動転していて礼を言うことが出来なかったと気にしていたよ」

「仕方ありませんよ、なにせ腑海林(アインナッシュ)の仔を掠めていきましたからね……」

 

お互い談笑しながら愛歌はレフとの会話をしつつ、料理を口に運ぶモノの折角の美味しいうな重から味はしなかった。そうして、レフと別れた後、ファルデウスと共にカルデアの私室へと移る。

 

「レフ・ライノールが人間じゃないって…本当ですか?」

 

ベッドの上に座り、冷や汗をかき目を見開きながら呟くファルデウスは、信じがたいと言うより、これから先の事を考えて頭を抱えていた。壁にもたれかかりながら、そんな弟子を後目に愛歌は言葉を紡ぐ。

 

「恐らくな、奴から『匣』の中の怪物と似た臭いがした…」

「…最低最悪ですね…あぁ…奴が事を起こしても、未然に防げませよ。例の所長は彼にベッタリみたいですし…此方の意見を言ったとしても邪魔されるでしょう…立場も何もかもあちらの方が上ですから…」

 

先ほどの会話にてレフはオルガマリーの事を話題にし、彼女が如何にしてカルデアの所長になったかや、アニムスフィアを継いだ際の騒動のこと、レイシフト適性の無い彼女を舐めているマスター候補の魔術師に対する愚痴など。彼の言葉の節々からオルガマリーがレフに依存しているということが手に取るように分かっていたからだ。

 

「全くだ…実力行使で暴いたとしても、カルデアが戦場になり大半の人間が犠牲になる…もとより、奴に目を付けられているようだしな…下手な行動も出来まい」

「反対に暗殺される可能性が高くなりますしね…そもそも、顧問が裏切り者だと分かれば外部の組織が黙っていない…」

 

打つ手がない訳では無いが、前途多難なのは事実である。

もし、何かが起こる前にレフの正体を暴けたとしよう。無論、レフが暴れカルデアが戦場になる。その事実は避けようのない出来事であり、レフを鎮圧できたとしても、多数の犠牲者が出るだろう…それは仕方ない。残念なことだが、どうしようも無いのだ。だが、レフ以上に厄介なのは、外部勢力。

このカルデアには数多の組織と手を結んでおり、有名どころは魔術協会や聖堂教会、アトラス院などなど本来は仲の悪い組織の人々が、人類の危機の前に協力し合っていると言う建前的には素晴らしいが、何か問題が起こればすぐに崩壊する。

 

カルデアの顧問であるレフが裏切り者であったと外部に漏れれば、彼らは手のひらを返しカルデアを非難し、挙句の果てにはカルデアの功績等を奪いとり、最終的に解体されるのが落ちだろう。彼らは虎視眈々とそういったことを狙ってるのだ。人類を救う前に破綻する。それは何としてでも避けたい。故にレフを泳がせるしかないのだ。そも、そんな問題を越える業績を作れば何とかなるのだが、残念なことに今のカルデアは彼らを納得させるほどのモノは無い。

 

人類の危機の前でも権力闘争―――全くお気楽な連中だと言える。人類が滅べば権力もクソもないと言うのに…。

にしても、転生したのが数十年前だった所為で、FGOのストーリーなどほぼ忘れかけだったが、ファルデウスとの会話やレフに逢った事によって徐々に思い出して行った。確か特異点にレイシフトする際に爆発テロが起こった筈だが…定かでは無い。そんな不確定要素をファルデルスに言っても、混乱させるだけなので、言わない方が良いだろ。

 

「奴が事を起こすのは、このカルデアにとって重要な出来事の時だろう…未だにカルデアの上層部は何かを隠しているしな…それまでは、『匣』の怪物に監視させるが、お前もカメラを配置しとけ、後々に重要になるだろう…」

「言われずとも即急に、このカルデア中にカメラを配置し、ヤツの動向を監視します…」

 

 

 

 

そうして、静かに、細やかではあるが、少しでも状況を好転させるよう二人は動くことにした。

 

 

 

 




初めまして!にょきにょきと申します!よろしくお願いします!

ファルデウス君はstrange Fakeに出てくるぜ!
ちなみに、ファルデウス君にとって愛歌氏は危険探知機。愛歌氏が無表情になったら、相手が大抵ヤバい奴だと察知するのだ!
ちなみに、主人公である愛歌氏の性格は複雑怪奇です。いずれ、深く書いていきたいと思っています。

某語録を主人公が使いまくるのは主にフラット君やカウレス君からミーム汚染…インストールされたのだ。元からでは無い。
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