二重人格のプロデューサー   作:遊妙精進

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遊妙精進です。
この物語はあらすじにも書いてある通り、『とある妖刀使いの物語』と深く関係しています。よろしければそちらの方もご覧になってください。


1章 新人プロデューサー
1話 今日から高校生


 僕は、夢を見ました。

 僕が、自分の体から遠ざかっていって、自分が自分じゃなくなる夢。

 遠ざかっていく僕の体を、僕はずっと見つめていました。

 

 

 

                   ☆

 

 

 

 

 目が覚めると、僕の目にはいつもの天井が映っていました。

 右にある時計を見ると、針は六時をさしています。

 僕は立ち上がって、体をうんと伸ばし、いつものように布団を畳みます。

 なんの変哲もないただの和室。机があり、押し入れがあり、棚とクローゼットがある。そんな感じです。

 布団を畳み終わると、クローゼットを開け、中からいつもと違う服を取り出します。

 それは白いシャツと上も下も真っ黒の長袖の服と長ズボン。今まで着ていたのとは違う制服です。

「今日から高校生か」

 パジャマを脱ぎ、新しい制服、学ランに着替えます。

「学ラン……目立ちますね」

 東京では、今時学ランは珍しいのです。ほかの学校では、ブレザーがほとんどです。僕も二週間前の中学生だったときはブレザーでした。

「お兄ちゃーん、ご飯出来たよー」

 遠くから、妹の呼び出しの声が聞こえました。

 そういえば、今日は妹が朝食の当番でした。

「はい、今行きます」

 と、返事を返します。

 この声が妹に聞こえたかどうかは不明ですが、多分聞こえていないでしょう。

 今日、必要な物を全てスクールバッグに入れて、僕は障子を開けました。

 障子の先は、廊下が続いています。大体五十メートルぐらい。

「……はぁ」

 僕は短いため息をつきます。

「なんでこんなに広いのでしょう」

 いつも思います。この家は、広い。広すぎるのです。しかも、僕はこの家で玄関まで一番遠い部屋で過ごしています。

 この家は昔の大きな武家屋敷を現代用に改築したものです。とはいいましても全て和室で、洋風といえばトイレぐらいなんですが。

 そもそも部屋なんてたくさん空いているのに、なんで僕は一番遠い部屋で過ごしているのでしょうか?

 とまぁ、自分で疑問を抱きますが、この部屋で過ごし始めて三年経ちました。三年前に言っておけば良かったのですが、今日言おう、明日言おうと思い、三年が過ぎてしまいました。いまだにこの長い廊下を歩くのはめんどくさいです。

 まぁ、寝起きには良い運動になりますが。

 僕は、長い廊下を歩いていた途中でトイレで用を済ませ、洗面所で顔を洗います。

 鏡を見ると、いつもの自分の顔がそこには写っていました。

 黒髪にクセッ毛、妙に濃い赤色の目に、黒縁のメガネ。男なのに白すぎる肌。

 身長は平均以上ですが、制服ごしでもわかるほどのやせ気味です。食べても食べても太らないのですが、筋肉もつかず、見た目通り、運動は苦手です。

 居間に着くと、部屋にはすでに二人いました。

「あ、お兄ちゃん! おはよ!」

 エプロンを着た妹が料理を運んでいる最中でした。

 彼女は黒瀬しおり。僕の一歳下の妹。現在中学三年生です。

 黒髪のボブカットで頭のてっぺんにはピョコっとアホ毛がはえています。

「おはようございます。しおりちゃん」

 僕はしおりちゃんにぺこっとお辞儀します。

「もう、何回も言ってるでしょ!? 敬語は使わないでって」

 朝から妹からの説教されます。いつものことですけど。

「すみません、その、努力します」

「言ったそばから!?」

「アハハ、しおりちゃん、もう無理だと思うよ。レントくんは物心つくときには、もう敬語を使ってたからね。しおりちゃんが注意してもなおらないよ」

 と僕を弁護してくれるのは、僕の従弟、黒瀬メグル。長い黒髪は腰にまで届いており、僕のように黒縁メガネをかけています。

 メグルくんは、女のような高い声に女のような顔つきをしていますが、一応性別は男です。女装が趣味のようですが。

「別にお兄ちゃんの言葉づかいのこと、諦めてもいいのよ? その代わり、メグルくんの髪切るから」

「アハハ、いやだなぁ。ボクは冗談は嫌いだよ?」

「わかったわ。冗談じゃなとこ見せてあげる」

 しおりちゃんは棚から何かを取り出しました。その手に握られているのははさみ。まさか、それで髪を切るのでしょうか?

「うわわ、それじゃボクはこれで!」

 メグルくんはすごい勢いで朝食を食べ、居間を飛び出していきました。

 これもいつもの日常で、メグルくんとしおりちゃんは仲がとっても悪いのです。

「まったく。ほら、お兄ちゃん、早く食べないと冷めちゃうよ」

「は、はい」

 僕は座布団にに座ったところで、いつもいる人がいないことに気が付きました。

「しおりちゃん、姉さんは?」

 姉さんも今頃はここで朝食を食べているはずですが。

「お姉ちゃんは、ついさっき学校に行ったよ。生徒会の仕事があるんだって。今日は入学式だしね」

 姉さんは僕が今日から通う高校の生徒会長なのです。生徒会長として色々な仕事があるのでしょう。今日は入学式という大事な行事があることですし。

 僕は、これからの高校生活のことを思い浮かべながら、朝食を食べました。

 

 

 

                     ☆

 

 

 

 

 電車に乗って二十分、歩いて十分で僕は目的地へと着きました。

「やっと着きました」

 中学生のころは、自転車に乗って十五分で学校に通っていたものの、電車を使うとなると変な感じがします。なんというか……新鮮な気分。

 もちろん目的地というのは、僕が今日から通う高校、西明館高等学校です。

 西明館高校は、名門エリート進学校と呼ばれるほどで、全国から頭が良い人ばかりが集います。

 そんな高校に僕は首席合格してしまったわけですが。

 校舎は四年前に立て直されたばかりで、全体的にきれいです。

 桜はまるで新入生を歓迎するかのように散っていきます。

 僕は校門をくぐり、クラス発表の紙が貼られている掲示板のもとへと向かいます。

 体験入学や受験のときにも来たので、大体の場所はわかります。

「お、アンタも新入生だよな?」

 隣から話しかけられました。

「はい、そうですけど」

 見ると、青色の髪に水色の眼鏡をかけた僕と同じ制服の男性がいました。

「俺も新入生なんだよ。いっしょにクラス発表見に行こうぜ」

「は、はぁ」

 なんか慣れ慣れしい人だな、と思いますが、高校生とはこういう感じなのかもしれません。

「俺は福井 ワタルだ。よろしくな」

「え、えっと、黒瀬煉斗です。よろしくお願いします」

 歩きながら自己紹介をし合います。

「なぁ」

 福井くんはぐいっと顔を近づけてきました。

「わ!?」

 少しびっくりしましたが、福井さんはすぐに顔をひっこめました。

「うんうん。やっぱりイイネ。その中性的な顔。髪伸ばしたら絶対美少女だぜ。いや、今のままでも女物の服を着たら普通に女に見えるな」

 福井さんはニヤニヤと笑みを浮かべています。

 ……気持ち悪いです。

 え~と、こういう時どういう反応をすればいいのでしょう? 

 僕は、こういうとっさの反応が苦手なのです。

「え~と」

「あ! 別にお世辞じゃないからな。本当のこと言ってんだぜ!? 正直俺の好みだ」

 ……何この人。さすがにちょっと……

「お、見えてきたぜ。あれだろ?」

 福井さんが指を指した方向には、けっこうな数の生徒やその保護者が立っていました。人だかりの向こうに、クラスの紙が貼られた掲示板があるのでしょう。

 僕たちも人だかりを抜けて、掲示板まで行き、クラス発表の紙を見ました。

 その紙には、知っている名前もちらほらありましたが、自分のクラスはというと、すぐに見つかりました。

「B組……か」

「お、ほんとだ。俺もB組だぜ」

 と福井さんが言いました。

「…………」

 今、嫌なことを聞いたような気がします。

「同じクラスのやつと早速友達になれてよかったぜ。さぁ、さっさと先輩のとこに行って、クラスまで案内してもらおう」

 ああ、この人と同じクラスだなんて……僕は運が悪いのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ずっと敬語だとおかしな文になっちゃいますね

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