二重人格のプロデューサー   作:遊妙精進

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13話 先輩

「ねえ、レント」

 移動教室のとき、女の子が話しかけてきました。

 黒髪のストレートヘアで美少女の彼女は、香月 麗奈(かつき れいな)ちゃん。僕と幼なじみで、有名な会社の令嬢です。

「はい。何でしょうか?」

「リョウくんは大丈夫かしら? メールを送ったのだけど返事がなくて」

「あ、それなら大丈夫です。怪我も無いようですよ」

 レイナちゃんが心配するのも当たり前です。昨日、どうやら兄さんと妹のしおりちゃんは強盗事件に巻き込まれたようで、しおりちゃんは夜中に帰ってきました。しおりちゃんの話では兄さんには何の怪我も無い……というか、その強盗事件を解決したのは兄さんのようです。

 この強盗事件は朝のニュースで持ちきりでした。多数の被害者も出ているようです。

「そう、それなら良いわ。ありがと」

 レイナちゃんはそう言って教室に戻りました。

 前から知っていたのですが、レイナちゃんは兄さんのことが好きなようです。しかし、兄さんは鈍感なのかレイナちゃんの気持ちに気付いてあげられません。罪づくりな人です。

「おいおい、レント! お前、レイナちゃんと知り合いか!?」

 福井さんがいつものように動揺します。

「はい。幼なじみなんです」

「お、幼なじみ!? あの社長令嬢のレイナちゃんと!?」

 あ、まずいこと言ってしまいました。

「妄想も大概のしとけよ……」

「…………」

 何か、嫌な気持ちに……。福井さんには言われたくありません。 

「いや~、それにしてもレント、昨日の強盗事件大丈夫だったか?」

「え?」

「え? じゃないだろ? あの強盗事件を解決したのはお前だよな。黒髪に赤目のイケメン高校生」

 なぜそんな情報が!? ですが、イケメンだけは僕と一致していません。

「今はインターネットが普及してるからな。Twitterとかやってたらすぐに情報がおりてくんだぜ?」

 え、現代怖い。  

「すみませんが、それは僕ではなく、僕の兄さんです」

 面倒なので嘘をつこうと思いましたが、常識で考えてみれば昨日強盗事件に巻き込まれた人が学校に来ているわけがありません。

「ええ!? ということは双子!?」

「はい、一卵性の双子です」

「マジか。美女で天才の生徒会長が姉で、強盗事件を単独で解決する男が双子の兄……だと……。お前の家族はバケモノか」

「……まぁ、そう言われても仕方がないというか」

 ちなみにしおりちゃんは中学校の副生徒会長です。僕は……何もありませんね。

「あれ? でも双子だから歳は同じだよな? この学校にはいないのか?」

「はい。兄さんは条東商業高校に通ってます」

「へぇ、生徒数が千人越えてるところか。兄ちゃんなのにお前の方が頭が良いんだな」

「いえ、同じくらいですよ。ただ兄さんがその高校を選んだだけです」

「変な兄ちゃんだな」

 それは僕も同感ですが、僕も兄さんと同じ学校に行けば良かったです。この学校の生徒は、休み時間だろうが昼休みだろうがほとんどの人たちが勉強をしていて、逆に、話している僕たちが変な目で見られます。偏差値だけが良く、活気があまりありません。姉さんもそれを何とかしようと頑張っていますが難しいようです。

「そういえば福井さんは勉強は大丈夫ですか?」

 福井さんは暇さえあれば女の子に告白をしに行く人です。

「もちろんだ。オレを誰だと思ってんだよ。福井様だぞ?」

「うげ~」

「そういうお前はどうなんだよ」

「僕は中学生のときに高校で習うところは全てしましたので大丈夫です」

 例え今から五教科の中学から高校の内容の抜き打ちテストをすると言われても全て満点を取れる自身があります。

「マジかよ。そんなこと出来るのはレントと長谷だけじゃねえの?」

 確かに長谷くんも出来そうです。あの人は東大に余裕で首席合格が出来ると言っている人ですから。

「こんな高校ですし他にもいるんじゃないですか?」

「そりゃねえだろ。他の奴等は今の勉強に追いつくのにいっぱいいっぱいだからな。それプラス予習復習しないとヤバい連中でたくさんだろ」

 福井さんの言う通りでしょう。この学校の授業のスピードは洒落にならないくらい早いです。他にも毎朝行われる復習テストに授業中行われる抜き打ちテストなどなど。エリート高校と言われるだけはあります。

 

 

 

                    ☆

 

 

 

「なあ、レント。久しぶりにどっかで遊ぼうぜ」

 校門を過ぎたすぐ、鬼崎さんから遊びに誘われました。

「すみません。用事があるのでまた今度でいいですか?」

 放課後は仕事をしなければいけません。

「んー、用事があるんなら無理か。埋め合わせはちゃんとしろよな」

「はい。では」

 僕は近くの公園へと向かいました。  

 

 

 

                    ☆

 

 

 

 僕はスーツに着替えを済ませ、公園のトイレから出て、道に出ます。

「あ、プロデューサー」

 背後から聞き覚えのある声が聞こえました。

「……こんにちは、如月さん」

 青がかった黒髪の彼女は、如月 千早(きさらぎ ちはや)さん。765プロの所属アイドルですが……

「え?」

 如月さんは、僕と同じ高校の制服を着ていました。

「どうしたんですか、プロデューサー?」

「いえ、何も……」

 まさか如月さんと僕と同じ高校だとは思いもしませんでした。そもそも765プロに同じ学校の人がいること自体考えもしませんでした。

「プロデューサーはどうしてここに?」

「アハハ、仕事を探し終わってそこの公園で休んでいたんですよ。如月さんは?」

「この道は事務所の近道なんですよ。今日はボイストレーナーさんが来てくれるので早めに事務所に顔を出しておこうかと」

「そうなんですか。では僕も如月さんと事務所に帰ることにします」

 心臓がバクハツしそうです。同じ高校の先輩を後輩の僕がプロデュースしているわけですからバレたらどんな仕打ちをされることやら。

「プロデューサー」

「はい?」

「私のことは、千早と呼んでくださって結構です。変な遠慮はしないでください。それに私、名字で呼ばれるのは嫌いですから」

「そうですか。千早さん……これで良いですか?」

「はい。大丈夫です」

 自分の名字が嫌いな人はいるもんなんですね。

 僕と千早さんは事務所へ向かいます。

「千早さんは歌が好きと聞きましたが?」

「そうです。私には歌しかありませんから」

 確かに星井さんや四条さんのようなルックスはありません。

 ……あれ、女の子ってこんなに胸がないものなの? …………失礼な思考はやめておいて、

「では取ってくる仕事も歌の方が?」

「いえ、そこはプロデューサーに任せます。迷惑は掛けられません」

「そうですか」 

 千早さんとまともに話したのは今日が初めてですが……話しにくい! 敬語同士だからでしょうか?

「千早さんのその制服は?」

 会話が続かないため、わかりきっている質問をしました。

「ここから近くにある高校に通っています」

「偏差値が高いところだと聞いていますが、楽しいものなんですか?」

「楽しくはありません。学校で友達もあまりいませんので」

「…………」

 完全に質問をミスってしまいました。

「だ、大丈夫ですよ! あの学校の生徒は友達を作りたがらない人が多いので! あ、もちろん噂ででしか知りませんが」

 ほとんどの生徒は休み時間、勉強をしていますからね。ときどき思うのが、勉強のし過ぎでおかしくならないのかが心配です。僕も勉強をしますが、教科書に目を通すだけ全部覚えることが出来ますので勉強という勉強はしたことないです。

「プロデューサー、今から変な質問をしますけど、プロデューサーっていくつなんですか?」

 765プロではこの質問は定番になっているのでしょうか? 

「秘密でお願いします」

「何やらやましいことが?」

「断じてないです! 女の子だって年齢や体重を聞かれたくないでしょう? それと同じですよ」 

 全然違いますが。 

「ふふ」

 千早さんが少し笑いました。

「プロデューサーって面白いんですね」

 何か、照れます。

 

 

 

 




今回の話で出てきた強盗事件は、『とある妖刀使いの物語』の14、15、16話に詳しく書かれているのでよろしければそちらもご覧ください
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