二重人格のプロデューサー   作:遊妙精進

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14話 迷子

 びっくりすることがあります。

 メグミさんから、左手の傷は一週間ほどで治ると言われていました。しかし、昨日見てみると、ほとんど治りかけでした。

 僕はいつからこんなに回復力高くなったのでしょう? あのカーターさんなら何か知っているかもしれません。僕より人生経験多そうですし。

「カーターさん」

 昼休み、カーターさんに話しかけました。

「何だ? 私に用か」

「はい。聞きたいことがあります」

 僕は真剣な表情をして言いました。

「そうか。場所を移動しよう」

 僕とカーターさんは人気がない場所に移動します。

「それで、何かとんでもないことか?」

「とんでもないといえばとんでもないかもしれません。これを見てください」

 僕は左手の包帯を取って、カーターさんに見せます。

「何かの治療をしたわけではなさそうだな」

「はい。包帯を巻いているだけなんですが、こんなに傷が早く傷が治るのは初めてなんです。カーターさんなら何かわからないかと」

「ふむ、そうだな」

 カーターさんはなにやら考え込んで、

「そういうやつに会ったことはあるが、そうなる理由はわからない。だが、私の推測だと貴様の身体能力の変化と関係があるんじゃないか?」

 身体能力の変化、僕の髪が白くなったというやつです。

「あれは今でもわからないんです。なぜそうなったのか記憶にないので」

 でもそうか、記憶にない身体能力の変化と回復力の増加、これは同じ時期に起こっているわけですので、カーターさんの言う通り関係があるのかもしれません。

「そうか。そういえば誰かが貴様に接触してこなかったか?」

「誰かって誰がですか?」

「その様子なら会ってないのか。あいつは興味がないのか……?」

「えっと、何の話ですか?」

「いや、すまん、忘れてくれ。こちらの話だ」

 そう言われると気になります。

 

 

 

                    ☆

 

 

 

 事務所で仕事をしていると、事務所の固定電話に電話が着ました。

 音無さんは今はいないので僕が取ります。

「はい、こちら765プロですが?」

〈あ、プロデューサー!〉

 電話を掛けてきたのは秋月さんでした。

「秋月さん、どうしたのですか?」

〈そちらの方にあずささんはいませんか?〉

 秋月さんの呼吸は乱れています。どうやら走っているようです。 

「いえ、三十分ほど前は事務所にいましたけど、今はいません。今日は何か雑誌の撮影では?」

〈そうなんですけど、まだ現場の方に来てなくて……はぁ、少しは方向音痴が治ったと思っていたんですけど〉

 そういえば亜美さんが三浦さんは方向音痴だと言っていました。

「電話の方は?」

〈電源は入っているようですが出ません〉 

 なるほど、それで秋月さんは三浦さんを探していると。

「あれ、あずさの携帯なの。プロデューサーさん、あずさ、携帯忘れていってるみたいなのー」

「…………」

〈…………〉

「そういうことみたいです。今から僕もそちらの方へ駆けつけます。一人より二人でしょう?」

〈……そうですね。お願いします〉

 僕は三浦さんの携帯を受け取り、秋月さんのもとへと向かいます。

 

 

 

                    ☆

 

 

 

「手伝うと言いましたが……」

 僕は撮影現場の近くを走って探します。しかし、三浦さんの姿はどこにもありません。そもそも撮影現場の近くに来ていない可能性が高いです。

 とりあえず周りの人たちに聞き込みをしますが、それでも見つけられません。

「うわーん、うわーん!」

 道端で四才くらい女の子が泣いていました。

「…………」

 いえいえ、今は急ぎの用事なのです。765プロの少ない仕事は失われそうになっているのです。

「うわーん! うわーん!」

「…………」

 でも、もしかしたら変質者襲われる可能性もあります。

「……うーん」

 しょうがありません。

「どうしたのですか?」

 僕は女の子に近付き、話を聞きます。

「お兄ちゃんと、ひぐ、はぐれちゃったよ~! わーん!」

「大丈夫ですよ、僕も一緒に探しましょう」

 女の子の頭を撫でます。  

「う、うっ、本当?」

 女の子は少し泣き止みました。

「ええ、本当です。さぁ、行きましょう」

 僕は女の子の手を握って歩き出します。

「お兄ちゃんとはどこに行くつもりだったんですか?」

「おうちに帰るって、でも猫を追いかけてどっか行っちゃった」

 うーん、これまた難しいなぁ。

「おうちはどこにあるかわかりますか?」

「わかんない」

 女の子は首を振って答えました。

 これは絶望的です。女の子をここに置いとくわけにもいかないし、三浦さんを探さないといけません。交番に送った方がいいでしょうか?

 歩いて十分ほど、

「あ、お兄ちゃんだ!」

 女の子は指を差します。

 見ると、小学生一年生ほどの男の子と髪が長い女性がいました。

「えぇ……」

 その髪が長い女性は三浦さんでした。

「あらあら、プロデューサーさん?」

「三浦さん、聞きますが、ずっと男の子に付いてあげてたんですか?」

「ええと、道に迷ってしまって、そしたら男の子が妹が迷子になったと泣いてたんです~」

「…………」

 怒る気にはなれません。

「君たち、後は自分たちで家に帰れますか?」   

「「うん!!」」

 男の子と女の子は元気に返事をしました。

「三浦さん、急ぎましょう。撮影に遅れてしまいます」

 あと三十分で撮影が始まってしまいます。

「プロデューサーさんは私を探していたんですか?」

「はい。次は迷わないようにさせますよ」

 僕は三浦さんに携帯を渡し、手を握りました。 

「さあ、行きましょう」

 

 

 

                   ☆

 

 

 

「あ、プロデューサーにあずささん!」

 僕は秋月さんに電話をして撮影スタジオで待機させてもらっていました。

「ごめんない、律子さん。道に迷っちゃいました」

「とりあえず化粧を早く済ませますよ。時間がありません」

 秋月さんは三浦さんを引っ張ってスタジオの中に入っていきました。

「……疲れました」

 

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