身長175cm
体重52kg
黒髪でくせっ毛、目は赤色、黒縁メガネを掛けている
福井 ワタル曰く女装したら完全に女
大抵のことはなんでもできる
「おお、そういえばまだ自己紹介はしていなかったね」
「あ、そういえば……」
社長は、書類で僕の名前を知っていると思いますが、僕は社長の名前を知りません。
「私は高木 順二朗(たかぎ じゅんじろう)だ。よろしく頼むよ」
高木社長は、僕へ手を伸ばします。
「黒瀬 煉斗です。これからよろしくお願いします」
僕は社長の手を握り握手を交わします。
「ふむ。では次はみんなに自己紹介をしてもらおうか」
「も、もう自己紹介ですか?」
「ああ、そうだ。今日はみんなが集まるからね。今日のうちにしておいたほうがいいだろう」
社長は僕の肩を叩きました。
いきなり今日から働くようです。先ほど書類を済ませたばかりなのですが。
「では、私は彼女たちを並ばせておくよ。呼んだら出てきてくれ」
「はい」
と、冷静に答えましたが、心臓が爆発しそうなほど緊張しています。
声で確認できた人でも十人はいます。しかもその十人全員が女の子の声です。もしかしてこの事務所には男のアイドルはいないのでしょうか?
「おーい、いいぞ。来てくれ」
社長からの呼び出しの声です。
「は、はい」
しきりを超えたら女の子が大勢いるでしょう。その子達の誰かを僕はプロデュースしなければなりません。
僕はしきりを出て女の子たちの前に出ます。
女の子の数は十三人。一列に並んでいます。ほんの少し離れたところに社長と事務員らしき女性が立っています。
僕は女の子一人一人の顔を見ていきます。
「…………え?」
女の子たちの中に、一人、知っている女の子がいました。
茶髪、おでこを全開にした髪型。
「「て、えぇーー!?」」
僕と見知った女の子の声が重なりました。
「あふぅ、でこちゃん、どうしたの?」
「でこちゃん言うな! じゃなくて、な、なんでアンタがここにいるわけ!?」
それはこちらが聞きたいのですが。
彼女がアイドルになったとは彼女の執事の新堂さんや妹のしおりちゃんから聞いていましたが、まさかここの事務所の所属とは……
「おや、水瀬君は彼と知り合いだったのか」
知り合いといいますか、友達といいますか……
「紹介しよう! 彼は黒瀬煉斗君だ。今日から765プロのプロデューサーになってくれる」
『…………て、えぇーーー!?』
みんなが一斉に驚きました。
僕も驚いていますが、まずは自己紹介です。
「初めまして。ご紹介に預かりました、黒瀬煉斗です。わけあって今日から765プロダクションのプロデューサーを勤めさせてもらいます」
と、挨拶しましたが、僕の話を聞く人はあまりいませんでした。
「ちょっと社長!? 私、そんな話一切聞いてませんよ!?」
「お、男の人……だよね?」
「アンタが私たちのプロデューサー!?」
「あ、よく見たらさっきのスーツさんなの」
わいわいガヤガヤともう何がなんだか。
☆
「ぷ、プロデューサー、お茶ですぅ」
少女の一人が僕の前に出て、机にお茶を乗せました。
「ありがとうございます」
礼を言いますと、彼女はそそくさと逃げていきました。
「雪歩、どうだった?」
「だ、大丈夫でした」
「萩原さんは男の人が苦手なのでしょう? どうしてかしら?」
「やはりあのお方が女々しいからではないでしょうか」
何か、とても嫌なことを言われている気がしますが、まぁいいでしょう。
彼女は確か、萩原 雪歩(はぎわら ゆきほ)さん。
僕はお茶を手に取り、一口飲みました。
あ、おいしい。
「プロデューサー、それで私たちの仕事はですね……」
「あ、はい!」
そして僕は今、秋月 律子(あきづき りつこ)さんからプロデューサーとしての仕事の内容を勉強させてもらっています。彼女、秋月さんもこの765プロダクションのプロデューサーです。社長は未成年と言っていましたが、とてもしっかり者に見えます。
「それでは、僕の仕事はアイドルのプロデュースとマネジメントということですね?」
「そうです。プロデューサーはダンスの経験がありますか?」
「はい、一応は……」
小学生の頃に習わされました。とは言っても一年ほどで辞めてしまいましたが。ですが、そのダンスの先生は日本でトップクラスのダンサーでしたので、教えかたもよく、今でも習った内容をハッキリと覚えています。
あ、そういえば肝心なことを聞いていませんでした。
「秋月さん、僕は誰をプロデュースしたらいいのですか?」
とっても重要なことです。もしもあの子になってしまったら何と言われることか。
「全員ですよ?」
「……はい?」
全員て……えぇ!?
「うちには私とプロデューサーしかプロデューサーがいないのですから当然です」
えぇ、普通一人か一つのグループじゃないのですか? 人員不足ならしょうがないのですが……。いえ、アイドルの数に対してやはり少なすぎます。
「あの、秋月さん。僕はどういう仕事を取ってくればいいのでしょうか」
「そうですね……彼女たちはまだ売れていないのですし、プロデューサーもアイドルをプロデュースするのが初めてということもあるので写真撮影みたいな簡単な仕事でいいと思います」
写真撮影……。それならすぐに取ってこれる仕事です。
「彼女たちのスケジュールは……」
「それならあそこに」
秋月さんの指を指した方を見ます。
ホワイトボードが壁に設置されています。
「…………」
ホワイトボードはほとんどすっからかんでした。
「あんな感じで彼女たちはまだまだなんです。仕事を取ってこれない私にも責任があるんですが……」
その後も質疑応答を繰り返し、時間は十八時を過ぎていました
やっと解放されたと思うのも束の間、
「プロデューサーっていくつなんだ?」
「プロデューサーのこと兄ちゃんて呼んでいーい?」
「…………」
みんなから囲まれてしまいました。
「あ、あの、僕は……」
「プロデューサーさん、クッキーで――きゃあ!?」
どんがらがっしゃーんと僕の目の前で女の子が転びました。
「だ、大丈夫ですか!? 天海さん!?」
僕は床に膝をつき、天海さんが怪我をしていないか見ます。
見たところ、どこにも怪我はありません。
天海 春香(あまみ はるか)さんは髪の両サイドにしているリボンがトレードマークの765プロのアイドルです。
「は、はい。大丈夫です。て、あ~!? クッキーが……」
皿は木製でしたので割れてはいませんが、クッキーは無惨にもアスファルトの上で死亡していました。
「出た! はるるんの一発芸!」
「あらあら~、大丈夫~?」
「…………」
騒がしい事務所ですね……。でもみんなとても楽しそうです。
☆
「ふう、もうこんな時間ですか……」
外に出ますと、もう真っ暗になっていました。まだ四月の中旬、スーツを着ていても肌寒いです。
今日は行くところがありますので、電車に乗って目的地に向かいましょう。
「ちょっと待ちなさいよ!」
僕が駅に向かって歩き出そうとすると、呼び止められました。
振り向きますと、よく見知った女の子が立っていました。
先ほどの自己紹介のときに互いに、他の人たちとは別の意味で驚かされました。
「はい。何ですか、伊織ちゃん」
彼女は水瀬 伊織(みなせ いおり)。水瀬財閥のお嬢様。僕と彼女は幼い頃、よく遊んでいました。
「何で何も話しかけて来ないのよ!?」
「……はい?」
話しかけて来ないってどういうことでしょう?
「あの、話しかけた方が良かったのですか?」
「当然でしょ!? だって前からの馴染みがこんな関係を持つことになったのよ!?」
こんな関係って。
「じゃあ伊織ちゃん」
「な、何よ」
「僕の年齢をみんなにばらさないでください」
「…………は?」
「みんなのプロフィールを見せてもらいましたが、ほとんどが僕よりも年上です。やっぱり年下の僕がみんなに指示を出すためには年上という設定にしといた方がいいと思います」
「……ぷ、くふふ」
伊織ちゃんは笑いを堪えています。
「え? 僕、おかしなこと言いましたか?」
「おかしいに決まってんじゃない。別の事務所はわからないけど、アンタが年下ってことで、みんながアンタの言うことを聞かないってことはないわ」
「で、でも」
「私はわかるのよ。アンタもみんなと過ごしていればわかると思うわ」
「そうでしょうか」
「ま、アンタがそう言うなら黙っておくけど」
「い、伊織ちゃ~ん」
数ヶ月ぶりに伊織ちゃんに会いましたけど、伊織ちゃんは全然変わっていません。
☆
「うぅ~、やっと帰ってきました~」
僕は用事を済ませ、へとへとの体で家に帰ってきました。
「お兄ちゃん! 連絡もしないでどこに行ってたの!? 心配したんだから」
玄関のマットに転がっていると、妹のしおりちゃんが現れました。
「て、何でスーツ姿?」
「言いたくないです」
アイドルのプロデューサーになったことはあまり言わないようにします。絶対に面倒なことになりますから。
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