第5護衛隊群出撃録 〜17 wake till the end〜 作:しがみの
横須賀鎮守府第7艦隊、第2水雷戦隊の艦娘達、そして、海上自衛隊第5護衛隊群、第6護衛隊群所属第15護衛隊の護衛艦を交えた大艦隊は、横須賀に向かって航行していた。その頃の横須賀鎮守府では、提督らしき人物が、大淀に質問を投げかけられていた。
「提督!!!不明艦隊を横須賀に入港させるのですか!?」
「ああ。」
「危険です!!!何者か分からないのですよ!?」
「大丈夫。彼らは自らを海上自衛隊と名乗っていた。海上自衛隊は約2年間しか存在しなかった組織だ。もし敵ならば、無理にでも国防海軍だと名乗るはずだからな。それに、万が一何かがあっても、一艦隊くらいは、今集結している全ての艦隊を出撃させれば撃沈出来るかもしれない。それに、2水戦旗艦の神通からの報告からでは〝練度が限りなく高い〟との報告もあった。紛れもなく、海上自衛隊の艦隊だろう。」
提督らしき、いや、提督は、大淀からの問いかけに答えた。大淀はため息をつきながら「分かりました。その代わり、何かあっても手助けしませんからね?」
と言い、執務室から出ていった。
「これが吉と出るか、凶と出るかだな・・・。」
静寂が訪れた執務室には、提督の独り言のみ聞こえていた。
水平線の彼方に見える黒い影の中で一つの灯が点滅しているのを、一番先頭にいる護衛艦〝あけぼの〟の右ウイング要員が見つけた。それは、紛れもなく、太平洋と浦賀水道に挟まれた場所にある剣崎灯台だった。
「点滅する白灯1、左30度水平線、剣崎
日本に帰ってきた事による安堵感を感じていたのか、それとも、艦これの世界に来たことが嬉しかったのか、右ウイング要員は、いつも以上のハキハキ声で艦橋内や旗艦に報告をした。
「浦賀水道まであと1時間で入る。強速に落とそう。」
「両舷前進強速!!!」
浦賀水道に先頭の1番艦が入る前に沖波司令が指示を出し、艦隊の速力を下げた。
「変針10分前になりました。次回変針予定時刻、22:45、海獺島
そして、艦隊の全艦は下げた速力のままで東京湾の入口である浦賀水道へと入っていった。
「パイロットボートです。距離30。」
〝あけぼの〟の右ウイング要員からの報告で、秋津艦長や、沖波司令は双眼鏡で黒い物体が黒煙を吐きながら近づいてくる海面を見た。その暗い物体は、元の世界では既に使われていないタグボートだった。
「これはレトロなタグボートだ。連絡に軍艦や艦娘を寄越さないことは、横須賀鎮守府は本艦隊の入港を正式には認めない様だな・・・。」
沖波司令は、そう言いながら双眼鏡でタグボートを直視していた。その時、タグボートから点滅する光が見えた。そう、発行信号だ。
「パイロットボートから発光!!!『1番前の艦を猿島山頂から90度、750mに投錨せよ。』」
「猿島沖!?」
「まあ、とりあえず、今は従っておくべきだな。」
タグボートから思いもしないような投錨地点を指示されたので、秋津艦長が驚きの声を出したが、沖波司令は冷静だった。
「艦長、
「はっ。」
そして、そのまま席を立ち、秋津艦長を連れて、海図のある図面台まで移動し、図面台上にある鉛筆を手に取り、投錨地点をマークした。
「これは・・・、考えたな・・・。この錨地なら島影に隠れて、陸からは見えずらい。」
マークした場所は、猿島沖で、島影で陸からはこの艦隊の停泊予定場所は見づらく、見る人を制限できる場所だった。
「さらに、別世界なら猿島や、第2海堡に大戦期の砲台が設置されているかも知れません。」
「要塞島に囲まれている、か・・・。」
「我々は至近距離で攻撃さる可能性があります。」
「ふむ・・・。念の為、横須賀鎮守府に釘を刺しておくか。」
「錨地まで2500mになりました。」
「入錨用意。」
『入錨よーい。』
「何ぃ!?」
「『本艦隊の今後について交渉の場を希望する。決定権を有する人物と明朝より旗艦内で会談を行いたし。交渉人派遣ない場合、我が艦隊は浦賀水道及び全東京湾航行の許可を得たとする。なお、本艦隊内には、貴艦隊所属の航空母艦〝飛龍〟を保護している。宛、横須賀鎮守府司令官。発、第5護衛隊群司令、
旗艦〝しょうかく〟から出され、横須賀鎮守府に着いた電文は、大淀により、横須賀鎮守府の提督達に直ぐに述べられた。通常、艦娘達の所属する鎮守府は1人の提督によって構成されているが、横須賀鎮守府は、海将や海将補レベルの1人の統括提督、そして、その下に4、5人ほど佐官レベルの佐官提督が居るのだ。その為、横須賀鎮守府は、かなり沢山の艦娘が住んでおり、同名艦も少なからず居る。その為、横須賀鎮守府では、同名艦が出た場合、制服のデザインを若干変更する事や、リボンや、ヘアゴム等のアクセサリーを変更する事で区別する事が多いのだ。
話が逸れた。話を戻そう。今は横須賀鎮守府の会議室には統括提督と提督5人が席に座っていた。それぞれの提督の横には秘書艦が立っていた。統括提督を除く提督達は険しい顔立ちで腕を組んでいた。秘書艦達はその提督達の様子を心配そうに覗き込むだけだ。その空気のまま1、2分がすぎた頃だった。横須賀鎮守府の佐官提督5人のうちの1人である佐川提督が口を開いた。
「打つべき手を打ってきたという事ですか・・・。」
「決定権を持つ人物とは誰のことを言ってるの?」
「偵察を兼ねて乗り込んでみてはいかがですか?」
「誰が行くの?つまりは人質になるのよ!?」
「大体、城本統括提督が決定したといえ、この件は非公式です。それに加え、鎮守府のドックは1つを除き、海軍本部の物です。城本統括提督に決定権はありません。」
「海軍が下手に動いてに陸軍に知られると色々マズイぞ・・・。」
「事故ということで沈めてみては?横須賀鎮守府指揮下の警備艦数隻、それに演習のために寄港した精鋭の艦娘艦隊の呉鎮守府第2艦隊、舞鶴鎮守府第1艦隊、佐世保鎮守府第1艦隊、そして、横須賀航空隊もいるけど・・・。」
「どうするの?その電文には、中に飛龍が居るとか書いてあったけど。飛龍も一緒に沈めるの?」
「え?それは・・・。」
「これだから五航戦は・・・。」
「何ですって!?」
「瑞鶴、落ち着け。」
「加賀もだ。」
「「はい・・・。」」
「「「うーん・・・。」」」
佐川提督が口を開くと、別の提督や秘書艦達も次々と意見を述べ始めたが、なかなか意見がまとまらず挙句の果てには一航戦の青い方と七面鳥が言い合い始めてしまった。提督達がどうにか宥めたため、大事には至らなかったが、会議を始めて2時間が経過しても未だに意見はまとまらなかった。2時間10分が経とうとした時、ずっと口を閉じていた城本統括提督が口を開いた。
「君たちじゃ、10年経っても決まらん。
俺達が行くよ。」
城本統括提督は、真剣な眼差しで5人の佐官提督達を見ながらそう言った。
「城本海将!!!危ないです!!!彼らは何者か分からないのですよ!!!」
しかし、城本統括提督のことが心配なのか、5人の佐官提督達は会談に行くことを承認しなかった。
「ついさっき鳥海から報告があってね。鳥海の偵察妖精さんはウイングにいた人を日本人だと確認したってね。」
「それに、提督や秘書艦の1人や2人居なくなっても、痛くも痒くもないだろ?」
しかし、城本統括提督は、自分は別にいなくなってもいいという様なことも言い出した。ここまで来てしまうと、城本統括提督を止めるのは面倒くさくなるので、誰も城本統括提督を止めようとする佐官提督達は居なかった・・・。
明朝、横須賀鎮守府の桟橋には1隻のタグボートが停泊していた。そのタグボートには城本統括提督の同行者として行く横須賀鎮守府佐官提督の堺3佐と操船者、堺提督の秘書艦である衣笠改二が乗っており、城本統括提督と秘書艦の吹雪改二が乗り込むのを待っていた。そのタグボートが繋いである桟橋には、4人の佐官提督と、秘書艦達が心配そうにその様子を見ていた。
城本統括提督と吹雪がタグボートに乗り込むと、城本統括提督は、同行者と操船者に向かってこう言った。
「ああ、君たち降りていいよ。」
それは、戦国時代、武将が武器を持たずに敵陣地に歩いて入る事と同等ほど危険な事だった。
「は?」
危険と言えど、余程のことがない限り佐官提督は城本統括提督に逆らえないので、堺提督と衣笠は、タグボートから降りるしかなかった。
「久しぶりに吹雪と2人で行きたい。」
城本統括提督はそう言いながらタグボートから舫いを離すと、舵を握った。
「提督!!!」
横須賀鎮守府の佐官提督の中で1番階級の高い那珂海将補(海将補の時点で佐官では無いが、最近昇格したということで・・・)が止めようとしたが、その寸前にタグボートが桟橋から出ていってしまった。佐官提督達やその秘書艦達はしばらく横須賀鎮守府から出ていくタグボートを見つめてしたが、ハッと我に帰った那珂提督は、直ぐに後ろを向き、「横須賀停泊中の警備艦隊、横須賀鎮守府に連絡!!!あの不明艦隊を包囲させよ!!!」と、背後に立っていた佐官提督4人に命令した。