第5護衛隊群出撃録 〜17 wake till the end〜 作:しがみの
『対水上戦闘よーい!!!』カーンカーンカーン
大海原を進む全艦に、武鐘が鳴り響た。
「司令。多分、相手はSIFが使えないと推測されます。今は相手の姿を確認すべきでは?〝きぬがさ〟から海鳥を飛ばしましょう。」
『危険だが・・・、やむを得ない。飛行を許可する。』
秋津が沖波司令に具申すると、司令からは了承の返事が返ってきた。
DDG-167〝きぬがさ〟の後部ヘリ格納庫には飛行服を着た自衛官2人と作業服を着た自衛官1人が立っていた。
「いいか?佐竹1尉。航空機にはくれぐれも注意して欲しい。任務は偵察だ。発砲は許可しない。」
「なぁに。空母類が居ないって事は居るのは下駄履きの水偵でしょ?対地速度も300kmそこそこ。こちらは450km。振り切って来ますよ。」
飛行服を着たパイロットの2人のうちの1人、佐竹1尉が作業服を着た自衛官、そして〝きぬがさ〟の副長兼船務長である角松2佐にそう言うと、ヘルメットを装着し、海鳥と呼ばれるティルトウイング機にガンナーである森2尉と乗り込もうとした。
「繰り返すが、任務は偵察だ。交戦は許可しない。」
「了解しました。」
佐竹1尉は、角松2佐に敬礼しながら海鳥に乗り込み、ドアを閉めた。
『哨戒機、発艦!!!』
スピーカーから音声が聞こえると同時に、ヘリ格納庫のシャッターが開きはじめる。
『ベア・トラップ、リテイリングレールに展開。』
ヘリ格納庫のシャッターが開き終わると、海鳥はゆっくりとヘリ甲板に向かって動き始めた。
『ベア・トラップ、リテイリングレールに到達確認。甲板作業員は退避ー!!!』
「主翼展開後、エンジン点火。」
佐竹1尉の合図と共に海鳥の主翼が開き、キュィーンという音とともにプロペラが回り始める。
「ベア・トラップオープン、テイクオフ!!!」
海鳥はベア・トラップから切り離され、水平線上に向かって飛び立って行った。
「海鳥からの画像、最大ズームの画像、受信しました。」
「画像、処理します。」
〝しょうかく〟は、海鳥からのズームされ、そしてかなりぼやけた画像を受信したので、CIC要員が、画像を解析した。
そこには・・・
「これは・・・、艦娘・・・?」
水上に立つ少女達達が写っていた・・・。
「あれは・・・、日向か・・・。」
「日向だな・・・。」
「私の瑞雲が飛んでいる・・・。」
「鈴谷もいるぞ。」
「ああ、ビッチだろ?。」
「ビッチ言うな。」
などと、CICが騒がしくなり始めた。
「日向は・・・航空戦艦に改装して・・・、ある・・・!!!」
副長の漣が画像を見ると、日向の艤装には航空甲板がついているのが確認できた。漣も艦これをやっているので、直ぐに分かったらしい。その瞬間、漣はある事を思いつき、直ぐに艦内電話を手に取った。
「後ろの艦も確認したい。もう少し近づくぞ。」
「それは危険です!!!」
海鳥では、佐竹が後ろの艦娘を確認する為に、機を近づけようとしたところを森に拒否されていた所だった。
「お前、俺の腕を・・・」
「信じてますよ。でなきゃガンナーは務まりません。ですが・・・」
「ですが!?条件付きの信頼なんぞ豚に食わせておけ!!!行くぞー。」
しかし、佐竹は操縦権が自分にあるのをいい事に、森の言ったことを否定し、艦娘達に近づいていった。
「戦艦らしき艦娘の背後に駆逐艦らしき艦娘2人、重巡らしき艦娘1『シーフォール!!!現刻をもって、全作戦を中止!!!直ちに帰投せよ!!!』
「え?りょ、了「7時の方向、距離1500。2機上がってきます!!!速力230。水偵にしては速すぎます!!!」230!?コイツら、只の偵察機じゃないぞ!!!」
佐竹が報告している最中に、角松から作戦中止の命令が届いた為、佐竹は混乱気味に了承したが、その直後、森が背後から近づいてくる目標をレーダーが捕捉したのを確認した直後、通常の速度ではないと佐竹に報告した。
「目標、急速接近!!!こちらの最大速力に届いています!!!」
「エマージェンシー!!!日本軍機の接敵を受けました!!!」
『間に合わなかったか!!!全作戦を中止、直ちに帰投せよ!!!』
「了解!!!直ちに帰投します!!!」
佐竹が〝きぬがさ〟にエマージェンシーを報告し、当海域から離脱し始めた。その時、佐竹は海鳥の翼を振った。
「何のために翼を振ったんですか佐竹一尉!!!」
「バンクといってな、昔の味方機だという合図だ、どこまで通用するか分からんが・・・。」
「日の丸を掲げているが、〝海上自衛隊〟なんて隊は海軍には
バンクを振られた日本軍機側では、偵察してきた日の丸を掲げた
「振り切れるか!?」
『駄目です・・・。完全に張り付かれています・・・。画像、送信します。』
「ヤバイな・・・。あれは瑞雲だな・・・。対空戦闘よーい!!!」
〝しょうかく〟に海鳥からの画像が届くと、追跡してきた機が瑞雲だと確認できた。
「沖波司令!!!」
『しょうかく、どうした?』
「あの瑞雲は、妖精さんが搭乗しています!!!コクピット以外に被弾させ、墜落させれば、妖精さんは、飛行場所に転移します!!!なので、その機能を使えば!!!」
『しかし、我々は先制攻撃は出来ない・・・。』
しょうかくからの提案に、司令は悩んでいたが、その瞬間、無線に銃声が聞こえた。
「!?シーフォール!!!何があった!!!銃声が聞こえたぞ!!!」
角松が佐竹に問いかけた。しかし、佐竹からの応答が無かった。
「どうした、海鳥!!!佐竹1尉、現状を報告せよ!!!」
『こちら・・・、シーフォール・・・。コクピットに被弾・・・。ガンナーが・・・。』
「森2尉がどうした!!!」
『銃創・・・。血が・・・。』
佐竹からの報告で、〝きぬがさ〟と〝しょうかく〟CICがざわつく。
『一刻も早く森2尉を治療しなければなりません!!!攻撃命令を!!!』
「しかし・・・!!!」
角松が命令を出すかどうか悩むと、直ぐに沖波司令が、
『〝きぬがさ〟副長。あの瑞雲は、妖精さんが搭乗している。コクピット以外に被弾させ、墜落させれば、妖精さんは、飛行場所に転移する。だからその機能を使う。それを使えば撃墜出来る。大丈夫だな?副長。』
と言ったため、角松は無線のマイクを海鳥と繋げた。
「・・・シーフォール、発砲を許可する。だが、コクピット以外だ。出来るな?佐竹1尉。」
『副長、それは攻撃命令ですか?』
「そうだ。攻撃命令だ。」
『ですが・・・、コクピットに着弾する可能性も・・・』
「それは認めん!!!お前の腕を信じている。」
『了解!!!バルカン砲アイリンクシステム接続。」
佐竹がコントローラを操作すると、機銃はコントローラと同じ方向を向いた。
「接続確認!!!」
「よし、射線確保。いつでも撃てる!!!」
その頃、瑞雲のパイロット妖精は機銃の照準器を海鳥にロックし、今撃とうとしていた。
「プロペラピッチ可変。ティルト変更、60度、80度!!!」
「トドメだ!!!」
しかし、パイロット妖精は機銃で撃つことしか頭に無かったので、海鳥のプロペラが動いていた事すら分からなかった。その時、海鳥がパイロット妖精の視界から消えた。
「き、えた・・・?下か!!!急降下で逃げたか!?見えない・・・。どこだ!?」
パイロット妖精はいきなり消えた海鳥を探し始めた。前方と左右、下にもいない。じゃあ何処にいるか?
「よくも森を・・・!!!」
上だぁ・・・。
「目標1機をロックオン。ファイヤ!!!」
佐竹が射撃スイッチを押すと、ダダダダダダ!!!という音と共に弾丸が3連装バルカン砲から吐き出され、瑞雲の尾翼に着弾し、そして、ボロボロに壊れた。
「駄目だ!!!バランスが取れない!!!」
そしてそのまま水面に着水すると、機体と妖精さんは光になって消えた。そう。母艦に妖精さんが戻ったのだ。
「帰還するぞ森2尉。分かってるな?今まで自衛隊に戦死者なんかいない。そして、これからもだ!!!」
「フォーチュン・インスペクター、シーフォール。目標2機を撃墜。パイロット妖精の生存を確認!!!只今より帰投する。報告終了!!!」
佐竹からの報告で、〝きぬがさ〟と〝しょうかく〟のCIC要員は安心した顔をしていた。