はりまり   作:なんなんな

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若さも美貌も頭脳も魔力も無いのになんで魔法学校で活躍する美少女の話を書いているのか?
若さも美貌も頭脳も魔力も無いからこそ魔法学校で活躍する美少女の話を書いているのだ。
それはさておき7777文字です。これだけははっきりと真実を伝えたかった。


十一話 初めの一週間

「まったく、これじゃあ香りが台無しだな」

 

 冷たく薄暗く薬品の刺激臭漂う地下牢に似つかわしくない華美なティーカップを傾けながら、魔理沙は冗談っぽく愚痴をこぼした。対するスネイプはやはりいつも通りの、皆さんご存知の、あの仏頂面だ。

 

「そう邪険にしなくてもいいだろ。一応気を使って茶も茶器も茶菓子もこっちで用意したんだからな」

 

 魔理沙は琥珀色の液面に視線を落とした。使い古されたカンテラの淡い光が反射している。

 

「この部屋にはそれらのものが必要ないから置いていなかったのだが、その論点に関しては考えなかったのかね?」

 

 抗議の念を込めてジロリと目を向けたスネイプに、魔理沙はフッと鼻を鳴らした。

 

「そりゃ部屋に茶は不要だろうぜ。でも、私は茶を飲む人間だ。ついでにお前――」

「『お前』?」

「――スネイプ 先 生 もさすがに茶無しじゃ"アフタヌーンティー"を楽しめないだろ。……ちぇッ、締まらねぇな」

「急に押しかけて来ておいて恰好をつけようとするのが間違いだというもの」

「けっ……こんなときだけうれしそうな顔しやがって」

「そんな幼稚な精神はしていないが」

 

 スネイプは口角を下げなおしながら続けた。

 

「それで、何の用だね?」

「見ての通り茶話だが。含んだ意味は無しでな」

 

 さも当たり前のように言い放つ魔理沙の態度は、目を細めて訝しむスネイプとは対照的だ。

 

「将来有望なスリザリン生とスリザリン贔屓で有名なスネイプ先生が仲良くお茶するのに何の問題が有る?」

「何を勘違いしているのか知らないが、君は将来を心配されている部類の生徒だ」

「ほぅ? そりゃ初耳だ。驚いたな……授業もプライベートもかなり上手くやってるつもりだったんだが」

 

 座学がメインの教科は言わずもがな。妖精の呪文は初回の勢いそのままに寮内最優秀を突っ走っているし、変身術も、既知の魔法を混ぜるというちょっとしたズルをしつつもどうにかこうにか課題を成功させ3点手に入れた(もちろんその日の夜にはトリック無しでマッチを針にできるよう自主練した)。そして特筆すべきは天文学で、あとは呼び名さえこちらの流儀に合わせればもう言うことが無いというレベル。教授であるシニストラが明日からでも自分の後継になれると太鼓判を押したほどだ。

 友人関係で言えばダフネとドラコにデブ二人はいつものメンバー。それとたまにミリセントとパンジーなんかのスリザリン一年生たちとも気軽に談笑できる。ジェマをはじめとした何人かの上級生たちとも気安い関係になっている点を考慮すれば新入生全体で見ても屈指のコミュニケーション能力を発揮していると言ってもいいはずだ。

 

「確かに一年生にしては上手くやっている。しかしそれ故に注視される。何か企んでいるのではないか、とな」

 

「メリッサの将来が心配」というより「メリッサの"せいで"将来が心配」と言った方が正しいだろう。闇の魔法使いが往々にして優秀な学生だったというのも割と知られた話である。魔理沙はどう見たって御しやすいタイプの生徒ではないために、神経質な教授らはその金色の視線の先を頻繁に気にしている。特にマクゴナガルは言葉にこそ出さないが正に「悪の卵を見つけた」などと考えているようだった。

 

「それと、質問を受けた際に、その問いかけの言葉のうちに出た文言の定義について確認を取るのも不自然だろう。"何も知らない"一年生としては。薬草学の授業があやうく哲学の授業になるところだったそうではないか」

「いや、出題者と回答者の間に意識の齟齬があるのはマズいだろ」

 

 スネイプは心の中で首をかしげた。自分は普段から適当に冗談を並べてはぐらかしてばかりの割にこういうときだけマトモなことを言うものだ。

 

「……はぁ、不器用な方が可愛いってのはどこも同じか」

 

 そういう問題ではないと分かって言ってゐるのは、スネイプの洞察力が優れていることを差し引いても明白だった。全く、本当に学術以外ではこの通りである。

 

「……でも、大部分はスリザリンだからっていう色眼鏡のせいだとも思うけどな。スリザリンの嫌われっぷりと言ったらとんでもないぜ。ついこの昼頃にもレイブンクロー生に追い回された。この刺繍を見た瞬間豹変したぞ」

 

 魔理沙はローブ左胸の蛇の刺繍をいじくった。授業初日の夜に配られたスリザリンの寮章で、布の上に置いて杖でつつくだけで縫い付けられるというものだ。

 

「……どういうことか、少し聞かねばなるまい」

「どうもこうも。インチキクイズ出して来るドアの部屋に居たらレイブンクロー生が何人か来て『スリザリン生だ!!』っつって」

 

 呑気に語る魔理沙の態度に思わず天を仰いだ。天を仰いだと言っても見えるのは湿っぽい地下牢の灰色の天井だけだが。

 

「その扉というのはもしや西塔最上、鷲のドアノッカーがついている扉かね?」

「なんだ知ってたのか。アレ、ひでぇよな。さっき言った『出題者と回答者の間の齟齬』の最たる例だぜ。『一とは何か』って聞いてきたんだが……そんで、向こうが欲しがってた答えは『全』なんだが……なぁ? どういう意図の質問なのか、哲学なのか数学なのかはたまた別の何かなのか、そもそも『一』じゃなくて『イチ』って音の別の言葉なのか。確認しようにも相手は九官鳥みたいに『一とは何か』としか言いやがらねぇ。私が数字の一の概念について懇切丁寧に説明した時間を返してほしいぜ。他にも散々言ったしな。そんで最後に半ばやけくそ……いや、言いたくなかったから残していたんだが……ともかく、『全』が答えときた。『一は全全は一』確かに有名な言葉且つ概念だ。でもその解釈は様々だし、それぞれの解釈についてまず『一』とは何か『全』とは何かという仮定が有る。法則と神、素粒子と世界、自我と仏、始まりと終わり……例を挙げればきりが無い。そういうわけで、『一は全全は一』というのは思想がたどり着く先として興味深い一つではあるが、『一とは何か』という説明不足で合言葉的な、融通のきかない問いの答えとして扱うには不適切過ぎると私は思うんだ。本質を見失ってるというか」

「あぁ、さよう。あの扉の問いが厄介だという話は有名だ」

 

 スネイプはキュウリサンドを口に入れたままフゴフゴと言った。だんだんとヒートアップしていた魔理沙に冷や水をかけるような、これでもかという程の生返事だ。

 

「……さすがにおざなりすぎないか?」

「話の要点はそこではないのでな。問題は、その部屋が何の部屋かということだ」

「ああ、中はけっこう凝った部屋だったな。青シルクのタペストリーとか。でも見晴らしの良い高所の部屋のくせに天井に星空を描いてあるのはナンセンスだと思うぜ。奥に通路も見えたけど、そこでレイブンクロー生が来て調べられなかった。何か重要な隠し部屋か?」

「レイブンクロー談話室だ」

「……ほーん」

 

 魔理沙はちょっと気の抜けた返事をした。ああ、そういうわけでアイツらは私を見た瞬間血相変えて杖を抜いたんだな。端的に言えば空き巣だもんな。色々と納得だ。鷹に青の装飾も、思えばレイブンクローの象徴だし。その面から考えれば、扉のクイズも(問題に納得いかないとはいえ)英知を宝とするレイブンクローらしいシカケだ。

 

「これ、もしかしてけっこうヤバいやつか?」

「君にとっての『ヤバい』の基準が分からんが、あえて吾輩の尺度で答えるなら、けっこうヤバいやつであろうな」

 

 レイブンクロー談話室が問題さえ解ければ誰にでも入れるようになっていると言っても、だからって他寮生が侵入したという例はなかなか聞けるものではない。そこに"なにするか分かったもんじゃない"スリザリン生だ。今頃レイブンクローの監督生たちはどこかに罠が仕掛けられていないかと大騒ぎしているだろう。

 

「『スリザリン生』という認識だけで、身元の方は判明してない可能性は……」

「君は二番目か三番目には有名な一年生だ。『うるせぇんだよこのファッキン痴呆帽子』の子」

「うげぇ」

 

「そう言えばそんなことあった」という意味と「モノマネ似てねぇ」という二つの意味が込められた「うげぇ」である。

 

「そうでなくとも目立つ人間だということはさすがに自覚しているだろう」

 

 もっと正確に言えばいわゆる目立ちたがりだろうとスネイプは見ている。派手な服装に異様に軽いフットワーク、隙あらばジョーク……。スコーンを割る手つきにだって妙な含みを持たせて気取っているようだ。

 

「あー、何かあったらよろしく頼むぜ」

「もちろんだとも。君がスムーズにホグワーツから撤収できるよう、喜んで力添えしようではないか」

「私に対して冷たすぎないか?」

「これでもスリザリン生ということで堪えてやっているというものだ」

「『ミストウッド、君の無礼な態度で、一点減点』ってか?」

 

 魔理沙は眉を寄せて口をへの字に曲げ、昼前の授業でスネイプがハリーに言ったようにモノマネした。スネイプはしまったと思った。突然イヤなところに話が跳んだものだ。 

 

「スネイプ先生は有名人だからって祭り上げるタイプじゃないだろうとは思ってたが、だからってまさかその逆に振り切ってるとはなぁ」

 

 いずれ弄られるだろうとは思っていた。ハリー・ポッターを質問攻めにしてグレンジャーを無視したとき、スリザリン生たちがその二人を笑いものにしている中、ミストウッドはこちらを向いてちょうど今のようにニタニタと笑っていたのだ。

 

「……グリフィンドールはポッターを取ったことで調子付いている。今後の問題を防ぐためにも、ポッターには特に厳しくして折っておくべきだという考えだ」

「教師が生徒を折っちゃダメだろ」

 

 魔理沙は紅茶を吹き出しそうになったあと、ケタケタと笑い声をあげた。

 

「言葉の綾だ。ところで、その授業でのことだが。ミストウッド、どうして手を抜いた?」

「露骨すぎる話題転換なうえに身に覚えが無いときた。どうしたもんかねぇ」

 

 ハリーの話題はどうにもよほど突いて欲しくないところらしい。

 

「授業中盤、おできを治す簡単な塗り薬を調合しただろう。あのとき、君の実力ならばもっと効率良く作れたはずだ」

「教科書と先生の説明の通りに作ったつもりなんだが」

「確かに、君は指導された工程を全くの淀み無く、狂い無く実行した」

「ああ。我ながらタイムロス無く鮮やかな手並みだったな」

 

 同じくハーマイオニーも完璧に指示をこなしていたのだが、魔理沙の鍋の方を盗み見てはその進行の差に嫌な汗をかいていた。定規とにらめっこしながらイラクサを刻むのとフリーハンドの鼻歌交じりで等間隔にナイフを滑らせるのとでは差が出るのは当然である。

 グリフィンドール生たちが今にも「ミストウッドの手際は素晴らしい。スリザリンに10点」とスネイプの声がかかるのではないかとビクビクしていたほどの腕前だった。だが、だからこそ、スネイプは一点もやらなかったし、こうして疑問を持つに至ったのだ。

 

「しかし講義で扱ったのはそもそも薬匙の使い方もままならんような初心者向けの遠回りで慎重すぎる方法だ。材料の分量、刻み方、投入順序、どれをとっても他に上手いやり方が有る」

「私も初心者なんだけどな。さすがに薬匙の使い方は心得てるが」

 

 応えながら、魔理沙はまた一つスコーンを手に取った。

 

「杖魔法云々はともかく、これまで会話した二、三度、どう見ても魔法薬の分野にはかなり詳しい様子だったと記憶している」

「詳しくないんだな~これが」

 

「知らなかったのか?」とでも言うように人差し指を揺らした後、魔理沙はググーっとノビをし、数秒かけて短くて上手い説明を探した。

 

「例えば、だ。マグルがおできの治療薬を作るとき、蛇の牙やらナメクジやらなんかは使わないよな」

「抗生物質だとかなんとか酸だとかの名が耳に入ることはあるな」

「そ。同じ地球の資源を与えられ、片や魔法使いは魔力と組み合わせることで魔法薬学を作り、片やマグルは分析に分析を重ねることで化学や非魔法の薬学を発展させたワケだ」

「同じように、今度は資源と魔力を前にして、我々は我々の魔法薬学を産み出し、君らは君らの魔法薬学に至った、と?」

「そういうことだな。だから道具や手際はいっちょまえだけど、蓋を開けてみればこっちじゃ魔法薬学素人ってワケだ。ビーカーやら試験管はマグルも使うし、たぶんマグルの薬師を連れて来ても私と同じような状況になると思うぜ。素材を活性化させる分の魔力さえなんとかすれば、の話だけど。……にしてもいちいち『あっち』『こっち』言うのめんどくさいな。私の方のを『魔化学』って呼ぶことにするぜ」

 

 そこまで言って、魔理沙は口にスコーンのかけらを放り込んでグイッと紅茶を飲み干した。

 

「あえて自分の方に『化学』と入れたのは何故かね?」

「別に、なんとなくだが。敢えて理由をつけるとすれば魔法薬学と化学だったら化学の方に近いからかな」

 

 スネイプはちょと神妙な顔をして魔理沙を見やった。当人は時計に目を移して、それには気付いていないようだった。

 

「さて、ちょうど菓子も切れたし、おいとましますか」

「……そうするがいい。夕食の時間も近づいている」

 

 帽子をバフッと被せてテーブルの上を片付けて、魔理沙は地下牢を後にする。背中に投げかけられた「夕食ではレイブンクローの机から距離を取った方がよかろう」というアドバイスには苦笑いを返した。

 

 いくつかの階段と廊下を抜け、やっとこさ地上階に出てきたちょうどその時。城にいくつかある出入り口のうち、森の方へと続く扉から入ってくる二つの人影が見えた。黒髪眼鏡と赤髪のっぽ、ハリーとロンだ。

 

「よー、ハリーにロニー。どっか行ってたのか?」

「やぁ、メリッサ」

「うん、あぁ」

 

 ロンはモゴモゴと返事した。相手がスリザリンということもあるし、それに『ロニー』という愛称で呼ばれたのがむず痒かった。ロンがまだ小さいときの 家族(特に母親)からの呼び名だったからだ。今でも双子の兄がロンをからかうときに偶に使うけれど。

 

「僕らはハグリットのところでお茶してた帰りだよ。そっちは? 地下から出てきたとこみたいだけど……」

「奇遇だな。私もお茶してたとこだ」

「地下牢で?」

「流石にそれはないよ。僕、兄さんたちから聞いたことがある。スリザリンの談話室はどうやら地下に有るらしいって。そっちだろ?」

「ぅんや、地下牢の、スネイプんとこだ」

「スネイプ!?」

 

 ハリーはあまりの驚きで思わず跳び上がりそうになった。本当に少し跳び上がったかもしれない。メリッサとスネイプのアフタヌーンティーというのが全く想像できない。この活発そうな女の子と、あの見た目も性格も真っ黒で意地悪でイヤミったらしい中年男性が同じテーブルで紅茶を?

 

「嘘? それホントに言ってるの?」

「こんな嘘言ってどうすんだよ」

「度胸自慢にはなると思うよ。そりゃあもう……」

 

 あの、どこから小言を投げつけてくるかわからない男を前にして呑気に紅茶なんて飲んでいられる自信は、少なくともロンには無い。メリッサはスリザリン生だから理不尽に減点することはないだろうけど、だからってニコニコしながら会話に相槌をうってくれるワケでもないはずだ。

 

「二人ともアイツを死神か何かと勘違いしてないか? からかうと面白いんだぜ?」

「ヒェ~ッ」

 

 今度は確かに跳び上がった。

 

「君とクィレルを混ぜたらちょうど良いくらいになりそうだ」

「流石にアレを相殺できるほど肝が据わってる自負は無いな。それに、スネイプにはハリーも言い返してたじゃないか『ハーマイオニーが分かってると思います』って」

「そのせいで一点減点されたけどね」

 

 ハリーは肩をすぼめた。

 

「それでなんだけど、僕のことで何か言ってなかったかい?」

「残念ながら期待してるような情報は出てないな」

「じゃあ、今度それとなく探ってみてくれないかな」

「いや訊いてみたことは訊いてみたんだ。でも『グリフィンドールはハリー・ポッターを取ったと調子付いているからその牽制だ』ってな。それが本当だとは思わないが、向こうはこの言い訳で押し切って来るだろうぜ。真意を探るにはハリーの話を一切出さずにハリーを目の敵にしてる理由を引き出すことになる。これ、かなり難しくないか?」

 

「そうだね……」と、ハリーはため息をついた。スネイプはどう見たって自分を憎んでいるようだった。でも、あのハグリットでさえ「そんなワケない」と頑なに何かを隠そうとしている様子だ。身に覚えのない称賛の的にされるのに慣れてきたら今度は身に覚えのない敵意をぶつけれらるハメになるとは。

 

「ま、分かるまでは『有名人はつらいな』とでも思ってりゃいいさ。『ああ見えて有名人に嫉妬しちゃうタイプなんだ』ってな」

「そんな理由で点数引かれちゃあ、それはそれで腹が立つけどね」

「それも気にすることないんじゃないか? グリフィンドール生にとって、英雄がスネイプに踏んづけられて頭下げてるのとたかだか一点二点引かれるのとどっちが嫌だと思う? 好きなだけ言い返していいだろ」

 

 その方が見てるこっちが面白い。授業の後にスネイプにインタビューして二倍面白い。

 

「英雄の自覚なんて無いんだけどな」

「無いなら無いでいいのさ。"ただのハリー"が、散々迷惑かけてくれた"ハリー・ポッター"を好きなだけ利用してやれ」

 

「ま、私の見立てじゃお前は本物だがな」と、魔理沙は心の中で付け足した。

 

「そう言ってグリフィンドールの点数を下げさせるつもりじゃないでしょうね?」

 

 その時後ろからハーマイオニーが(いつも彼女がそうするように)会話に割り込んできた。ロンは露骨に顔を顰めた。少しお調子者な方の性格であるために、ハーマイオニーの説教がましい態度は人一倍苦手なのだ。

 

「おできの薬のできで負けたからって悔しいのは分かるけど、流石に言いがかりが――」

「ばれちまったか」

「なッ……」

「そんな雨の日に捨てられた犬みたいな顔すんなって。冗談だよ。じゃな」

 

 ニシシと笑いながら軽く手を振って、そのまま大広間へ行ってしまった。

 

「あの子、気を付けた方が良いわよ」

「そりゃスリザリンだから油断できないけど、少なくともスネイプや他のスリザリン生よりはかなり付き合いやすいよ」

 

「ついでに君よりもね」という言葉はさすがに飲み込んだ。ムキにさせたら面倒だ。ハーマイオニーも「油断しきってたように見えるけど」というセリフは省略して返した。

 

「そのスネイプ先生ととっても仲良しよ、あの子。ダイアゴン横丁にも二人で居たわ。これを聞いてどう思うかはそっちの勝手だけどね」

 

 ロンは口の中で呻いた。何か言い返したいが、事実メリッサについてよく知らない。それに、ハーマイオニーに何か言い返したいがためだけにスリザリン生を弁護するのもよく分からない。仮にその理由をひねり出したとしても「何? あの子のこと好きなの?」とでも言われたら……。

 一方ハーマイオニーはロンの次の言葉が出てこないらしいことに満足して話を切り上げた。

 

「私たちも早く行きましょう。夕食が始まっちゃうわ」

「"私たち"ねぇ……」

 

 癪だが、ワザワザ別れるために大回りするのも子供っぽすぎる。ロンはせめてもの抵抗でハーマイオニーから少し後を歩き始めた。

 二人に遅れないようについて歩きながら、ハリーはまた別のことを考えていた。「ハリーがハリー・ポッターを利用する」……その詳しい意味は完全には分からないけれど、何か惹きつけられる響きだ。




誤字修正で文字数がずれるのに28クヌート
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