はりまり   作:なんなんな

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例のあれの人に配慮し、お辞儀まではするように展開を変更しました。


十三話 初めの一月の最後の方の夜の決闘は無かった

「なんだよ、つッッッまんねーの!」

 

 ディナーが終わって、談話室。

 夜中の決闘の本当の計画を聞き、魔理沙は思いっきり不満を吐いた。

 ドラコが指定した"真夜中のトロフィー室"……ここにフィルチが来ないらしいというのは真っ赤な嘘である。本来はその逆。フィルチとその飼い猫のミセス・ノリスの巡回ルートで、まさに真夜中に当たるのがトロフィー室付近なのだ。

 

「全然つまらなくないさ。飛行訓練で上がったハリー・ポッターの評判が次の日に突然落ちるのも見ものだし、もしかしたらあの赤毛を追い出せるかもしれないんだよ」

 

 夜間徘徊が他の非行につながりやすいためか、その罰則は重いものになりやすい。数十点単位の減点から、悪ければ退校まで。ドラコ自身も上級生たちから夜出歩くならよく注意するように言われている。それを、ロンに挑発されたときにふと思い出したのだ。

 

「私は評判もウィーズリーもどうでも良くて、魔法使いの決闘を見てみたかったんだがなぁ。それに、アイツらがお前に嵌められたことに気付いたら、今度はお前が不名誉を被るんじゃないか? 決闘から逃げたことになるんだし」

 

 それに直接やり合えば、方向性はどうあれスッキリした関係になるものだ。そういう意味でも、魔理沙はドラコとロンの決闘に賛成だったのだが……。

 

「『待ってください先生! 僕たちマルフォイに決闘を申し込まれて来たんです! マルフォイも悪いんです!』って? 僕はこう言うさ『確かに言い合いのはずみでそんなことも言いました。でも、まさか、本当に夜中に出歩くバカがいるなんて!』」

 

 ドラコは心底嬉しそうに独り芝居をした。ドラコの中では、もうウィーズリーは破滅したもののようだ。

 

「そりゃ教授や管理人に見つかったらそうだろうが、私が気にしてるのは無事、何事も無く寮に帰って来れたときの話だ」

「それは無いと思うよ。夜の城を好きに歩けるのはスリザリン生だけだ」

 

 ドラコは完全に高を括っていた。

 まず、城の管理人であるフィルチは隠し通路にメチャクチャ詳しくて殆ど神出鬼没だ。おまけにその飼い猫のミセス・ノリス。猫だから小さくて気付きにくいし、足音も気配も殆ど無い。そのくせ変に頭が良くて校則違反を見つけたらフィルチに知らせるという。そして、夜中と言えど何かの用事が有れば教授たちだって廊下を行き来する。極めつけに、ポルターガイストのピーブズは本当の神出鬼没だった。壁を抜けるし行動が読めないし最悪なことに人を困らせるのが大好きなもので、生徒の隠し事……この場合なら夜間徘徊を見つけたらフィルチに言いつけるに違いない(普段はフィルチも教授もおかまいなしに悪戯をしているくせに)。

 フィルチと猫の対処は過去の膨大なデータから行動範囲を予測できるスリザリン生でないと難しい。夜出歩いている教授というのはだいたいスネイプである。そして、やりたい放題のピーブズが言うことを訊く稀有な存在が、スリザリン寮のゴーストである血みどろ男爵なのだ(ゴーストと言えば、当然夜中には他のゴーストも徘徊しているが、ほとんどは校則なんかには興味が無く考慮に入らない)。そういうワケで、夜中出歩くのは基本的にスリザリン生だけだった。

 

「やれやれ。兎を獲る前から兎シチューによだれを垂らしてやがる」

「いやに向こうの肩を持つじゃないか。……もしかして何かしたのかい?」

 

 ドラコは苛立ちと不安に目を細めた。メリッサは"こっち側"のはずなのに、さっきから反対のことばかり言う。

 しかし、当の本人はそんな疑念など軽く一笑に付した。

 

「あっはっは、それは無い無い。私なんかさっきまで観戦する気満々だったんだぜ? ……ただな、世の中にはたま~に"持ってる"ヤツが居るもんなんだよ」

 

 ドラコはまだ不機嫌だ。「僕は"持ってない"とでも?」というセリフが喉まで出かかった。しかし口を開く前に「どっちにしろ明日になったら分かることだ」と肩を叩かれて、その話は終わりになってしまった。

 

 

 翌朝、朝食の席。

 グリフィンドールのテーブルには今までと変わらずハリーとロンの姿が有った。一つ違うところを挙げるとすれば、いつものように朝の眠気にボーっとしながら目玉焼きをつつくのではなく何か興奮した様子で話し合っているところだろうか。

 

「何話してんだろうな? 送還の段取りじゃなさそうだが」

 

 二人の上機嫌に綻んだ口角を見れば、少なくとも何か良いことがあったことは明白だ。そして反対に、ドラコはギッと歯噛みした。メリッサの言葉でケチが付いていたとはいえ、ベッドから這い出たときはまるでクリスマスの朝のような気分だったのに。

 

「君の言った通り、僕が卑怯だって言いふらす口実ができて嬉しいんだろう」

 

 大きく一つため息をついた後、ドラコはまさに苦虫を噛み潰して呑み込んだような表情を魔理沙に向けて、負けを認めた。

 

「どうしたんですの?」

「ドラコがちょっとヘマやらかしたのさ」

「いや、計画は素晴らしかったはずだ。もしかして、ハリー・ポッターが英雄だからって先生がもみ消したんじゃ……」

「さあどうでしょーねぇ。ただ、個人的には、勝てる決闘を放り出したのは下策だったと思うぜ。ま、悔いても仕方ないだろ。どう取り返すか考えようじゃないか」

 

 

 そして今日は金曜日。魔法薬学の授業の前、ハリーたちと話す機会が訪れた。魔理沙が無理に話しかけに行ったと言う方が正しいかもしれないが。

 

「よう、二人とも。昨日は大丈夫だったか?」

「ああ、お か げ さ ま でね」

 

 ロンが皮肉っぽく、しかし勝ち誇ったように答えた。魔理沙もグルで嵌めたと思っているのだ。しかし、魔理沙は敢えて、何の心当たりも無く皮肉に気付いてすらいないという様子で話し続けた。

 

「そりゃ良かった。何かルートが違ったらしくてさ、ドラコのやつが見つかりそうになって途中で帰ってきたって言うもんでな」

「ふーん」

 

 全く信じていないのは何も言わずとも分かる(実際嘘だし)。その上「マルフォイの坊ちゃんは決闘に来ないばかりか言い訳まで女の子にしてもらうんだねえ!」と、少し離れたところに居るドラコが聞こえるように大声で罵った。逃げた後ろめたさが有ると言ったって、これに我慢できるほどドラコの堪忍袋の緒は強くない。ツカツカという足音と共に、煽り合いに参戦することとなった。

 事前に想定した(非常にシンプルな)シナリオ通りだ。魔理沙はまた口喧嘩して、また決闘の約束をし直せばいいと考えた。

 

「フン、初めから結果が分かってる無価値な決闘だったからね。フィルチの動きがおかしいと分かったときに、ワザワザ危ない橋を渡るのはバカだと思い直したのさ」

「フィルチなんて逃げ切ればなんにも問題にならないね。僕たちはそうした」

 

 ロンはドラコを見下して胸を張った。

 

「アイツに見つかって追い回されたのか?」

「見つかりそうになったけど、顔が見られる前になんとか逃げたんだよ。それより、本当にマルフォイが僕らを嵌めようとしたんじゃないの?」

「私はその時間寝てたからな。当事者に訊くしかないさ」

 

 ハリーは、魔理沙がワザとはぐらかしているように感じた。ドラコの味方をしているからなのか面倒な話に関わりたくないからなのかは分からないが、さっさと"次の話"に移りたがっているようだった。

 

「どっちにしろ、君は僕らか、そうじゃなきゃフィルチに怖気づいたんだ」

「誰が怖気づくもんか!」

「実際来なかったしねぇ」

「言い合ってないで今日やり直そうぜ。昼頃校庭ででも。下手に夜中にするから悪いんだ。誰かに見つかったら、『呪文の練習です』とでも言やぁ良い」

 

 魔理沙はニッと笑った。

 

「ドラコもロニーも、自信が有るなら断る理由なんか無いよな?」

 

 ドラコは二つ返事でYes。なんだかまた嵌められている気がしないでもないが、こう言われてはロンも受けるしかない。「もちろんさ」と息巻いた。

 

「あなたたち、あんなことがあったのにまだ決闘なんて下らないことをするつもりなの?」

「下らないと思ってるんなら関わってくるなよ。優等生ちゃん」

「マグルの社会じゃ盗み聞きは下品だとも教えないのかい?」

 

 再決闘については多少考えた様子のロンだったが、この声には反射的に反抗するようになっているらしい。ドラコもすかさず追い打ちをかけた。

 肩を怒らせながら文句をつけてきたハーマイオニー。今はあまりに相手がバカすぎて言葉も無いという様子だ。あの憤怒に満ちた鼻息は、軽く100℃を超えているんじゃないだろうか。

 

「あなたたちが退学にでもなれば関わらずに済むのよ」

 

 一言、的確な捨て台詞を絞り出すように吐き捨てて、ハーマイオニーは地下牢へと足早に去っていった。嵐のような奴だと思う一方で、魔理沙には、ハーマイオニーと他のグリフィンドール生の関係が日に日に悪くなるように見えた。

 しかし、それはともかく、気になるフレーズが有った。

 

「『あんなこと』って、何だ?」

「さあ? あいつは正真正銘の校則を守る機械だから。どんなことでも『あんなこと』だよ。いつまでもネチネチネチネチ……」

「ほーん……」

 

 ロンの文句の陰でハリーが一瞬何かを話したそうにしたのを、魔理沙は見逃さなかった。

 

 

 その日の昼食後、校庭……昨日飛行訓練を行った場所辺りに四人の姿があった。

 何としてでも倒してやるという意気込みのロン。少し緊張している気もするが全体的には余裕たっぷりな表情のドラコ。呑気に面白がっている魔理沙。そしてとりあえずロンが勝てばいいなぁと思っているハリー。

 

「作法は知ってるよな? ウィーズリー」

「頭を下げて、杖を構えて、一、二、三だろ」

「カウントは私がやるぞー」

 

 向き合って、まず一礼。杖を持った手を身体の前に曲げて恭しく頭を下げたドラコに対し、腰は折ったものの顔は下げずに、撫でつけられた金髪を睨みつけていたロン。そして互いに杖を剣のように構える。ロンの杖の端から飛び出した芯が風に揺れた。残念ながらロンに勝ち目は無さそうだとハリーは思った。ドラコのように財産の大小で差別して、ましてそれを頻繁に口にするのは良くないことだと知っているけれど、それでも"これ"を見ると確かに差が有る。それはロン本人も今になって感じているようだ。

 

「いーち、にー、――」

「ああ、探しましたよミスター・ポッター!」

 

 邪魔が入った。魔理沙は嘆息したが、ロンとハリーにとっては助け舟だ。

 

「あなたたち、何をやっているんです?」

「呪文の練習です」

 

 マクゴナガルはいかにも胡散臭そうに魔理沙を一瞥し、窘めるように言った。

 

「呪文を試すときは、まず杖の先に人が居ないか確かめることです。互いに杖を向けてする練習がありますか。あるとすれば決闘の訓練くらいでしょう。一年生がするものではありませんけれどね」

 

 もっとも、この四人が決闘するつもりらしいということはハーマイオニーから聞いて知っていた。四人がここに居るだろうという情報も、ハーマイオニーからのものだ。……メリッサ・ミストウッドの差し金で、ハリー・ポッターとドラコ・マルフォイが争おうとしている、と。

 マクゴナガルは次にドラコを睨みつけた。無言の催促を受けて、ドラコも渋々杖を下げた。それを確認して、マクゴナガルはハリーに向き直る。一変して機嫌が良さそうな表情だ。

 

「ミスター・ポッター。ウッドから聞きました。素晴らしい飛行技術を持っているそうですね。そこでなのですが、貴方がチームに相応しいか、これからテストをしようと思うのです」

「一年生はチームに入れないはずです!」

 

 ドラコが噛みついた。

 

「無論、規則ではそうなっています。一方で、寮監が承認し、校長に話を通せば規則を曲げられるのは大前提の決まりです。だからこそ、私立ち合いの下でテストをするのです。規則を曲げてまでチームに入れる程の腕があるかどうか」

 

 マクゴナガルは涼しい顔できっぱり言い切った。

 

「さて、では、競技場に行きましょう。ウッドが待っています」

 

 ハリーが半ば引っ張られるように連れて行かれて、またも決闘はお流れになった。ロンも魔理沙も、仕方が無いのでテストの見物に行くことにした。「まさか君も行くつもりかい?」と、ドラコが魔理沙の袖を掴んだが「逆に、ドラコは見に行かないのか?」と返事すると黙ってついてきた。

 

 クィディッチ競技場は、まるで城壁のように高くそびえる観客席に囲まれた楕円形の広場だ。両端にゴールである輪と、それを支える柱が三本ずつ立っている。空中の競技だけあって、地面に引かれた線はサッカーやバスケットボールなんかと比べれば大雑把な上に少ないもので、芝生も禿げたり枯れたり、他の植物に侵食されている部分が目についた。

 その真ん中あたりに、ウッドは待ち構えていた。箒を二本と、何か大きな箱を持っている。「待ちかねましたよ」と、ウッドはマクゴナガルとハリーに駆け寄った。

 

「さあ、まずは慣らし飛行だ」

 

「やあハリー、よく来たね」なんて挨拶も無いうちから、ウッドは箒を押し付けた。しかし、ハリーも飛ぶ気は十分だったから、何のためらいも無くそれに跨った。やっぱり『カイゾエニン』なんかより箒で飛ぶほうが何倍も楽しくて有意義だ。

 ハリーは、ネビルを助けたときよりもさらに速く滑らかに飛んだ。備品のオンボロじゃここまでの飛行はできないだろう。「クリーンスイープだ。ウチの兄さんも使ってる」とロンが言った。「ま、クィディッチをするための最低限の箒だね」とドラコが付け加えた。アレが、いわゆる現代の競技用箒なのだろう。柄も握りやすそうなカタチになっているが、特に穂の部分がちょうどドラコの頭のように整えられて滑らかなのが目についた。「あれじゃ掃き掃除はできそうにないな」と、魔理沙は少し笑ってしまった。

 

「素晴らしい! 天性のものがあるとしか思えません!」

 

 ハリーがいくつかのターンや宙返りをこなして地上に降りてきたときには、もうマクゴナガルもウッドも大喜びだった。

 

「でもちょっと窮屈そうですよね。良い箒を買わないと。クリーンスイープでも、この5号じゃなくて7号。欲を言えば、ニンバス2000なら最高の飛行が見られるはずだ」

 

 ウッドはハリーの頭をなでたり肩をさすったりしながら言った。マクゴナガルに言外にねだっているようにも見える。「それで、テストっていうのは?」とハリーが言うまで二人でお祭り騒ぎだった。

 

「おほん。では、テストに入りましょう」

 

 もう必要ないものだったが、一応、形としてテストは行われる。今度はウッドとハリーが二人で飛び上がった。

「今からこれを投げる」と、ウッドはゴルフボールが詰まった袋を見せた。

 

「30個中、20個取れたら次のテストだ」

 

 この条件もやはり不要だった。ウッドが下に投げようが上に投げようが強く投げようがゆっくり投げようが、ハリーは全ての球を完璧にキャッチしたのだ。マクゴナガルは授業中とは別人のようにはしゃぎまわっていた(地面すれすれのダイビングキャッチのときなどは目も口もついでに鼻の穴も全開だった)し、ロンは友人として誇らしい気分だった。

 これにはマルフォイも感心してしまっていた。場合によっては自分にもテストを受けさせろと主張するつもりだったが、今コイツと比べられては恥をかくことになると悟ったのだ。メチャクチャ悔しいことに変わりはないが。

 

「次のテストはこれ」

 

 ウッドは箱を開けながら言った。

 

「この『ブラッジャー』を放す。五分間逃げきってくれたら、合格だ。第三テストの予定だった曲乗りは慣らし飛行で見たしね」

 

 ハリーは、ウッドの手元で、黒光りする球が拘束具をガタガタ揺らして暴れているのを見た。

 

「それ、何なの?」

「ブラッジャー。クィディッチの球の一つで、『暴れ玉』さ。一番近くに居る選手に突進する。『ビーター』が、この球の餌食にならないように味方を守る役目なんだけど……ま、テストだから。君がこれに追い回されるのは今回だけと思ってくれ。ウチのビーターは腕がいいからね」

 

 ウッドはロンにウィンクした。ロンの兄、双子のフレッド&ジョージ・ウィーズリーがグリフィンドールのビーターなのだ。

 

「当たったらどうなるの?」

「不合格になる。たぶん死にはしない。さ、十五メートルほど上で待機してくれ」

 

 ハリーが空中に止まったのを確認すると、ウッドはできるだけ腕を伸ばしてブラッジャーの留め金を外し、そして一目散にその場から離れた。

 実際のブラッジャーの動きを見ると、『暴れ玉』と言うよりは『殺人球』だ。単に暴れているんじゃなくて、的確に人を狙って飛んでいる。全速で逃げても、身体を捩じって避けてもしつこく突っ込んで来る。……逆に言えば、それだけ厳しくてもハリーは避けきっているということだ。

 そうして五分後、ブラッジャーがウッドに押さえつけられると同時に、ハリーのクィディッチチーム入りが決定した。

 

「即戦力とはこのことだ!」

 

 ウッドはまたハリーをグチャグチャに撫でた。

 

「百年ぶりの一年生クィディッチプレイヤーです。あなたのお父様がどんなにお喜びになることか」

「父さんが……?」

「そうです。あなたのお父様も素晴らしい選手でした。シーカーでも、チェイサーでもビーターでもなんでもできました」

「まあ君には絶対シーカーになってもらうけどね」

 

 

 最終的に、その日はドラコにとってかなり屈辱的な日だったと言わざるを得ない。ウィーズリーにたっぷり嫌味を言われ、結局その後決闘で汚名返上できなかった。それに、先輩たちにグリフィンドールクィディッチチームがハリー・ポッターを新しいシーカーとして迎え入れたこと、しかもハリーがかなり優秀であることを報告しなければならなかったのも気分が悪い。何よりメリッサが端々で"向こう寄り"に聞こえる発言をしたのが嫌だ。本人は今も何食わぬ顔で隣に居るが……。

 

「そう気を落とすなってドラコ」と、魔理沙は『身近でタチの悪い毒,呪い』の文章に目を落としたまま言った。

 

「ロニーのやつ、カウントの間相当ブルってたぜ。呪文をぶつけ合いはしなかったが、実力の違いは伝わったんだ。こっちが煽らない限り、向こうも大口叩いてはこないだろうさ」

「ハリー・ポッター"様"に、その隣のウィーズリー。嫌でも目に入る」

「一々気にすることじゃない」

 

 ページをめくる動作のついでみたいに、静かに短く言った。

 

「一体、君はどっちの味方なんだい?」

「じゃあなんでお前たちは敵なんだ?」

 

 今度はちゃんと向き直った。血統の因縁だかなんだか知らないが、そんな他所事のために今ホグワーツで一番ホットな人間に喧嘩を売るのは誰にとっても不利益にしかならない。

 

「私は両方の友達のつもりなんだがな」

 

 しかし、反対にドラコは拗ねたように顔を逸らしてしまった。無理もない。11歳の少年に、急に大人の対応を求めたってそうそうできるはずがない。嫌いなものは嫌いで、文句が言いたいものだ。魔理沙が涼しい顔でいられるのだって、結局のところ「私は嫌な思いしてないから」というだけの話。

 

 魔法学校に来て一月目の終わり、魔理沙の生活にちょっとした面倒の種が生まれたのだった。




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