今回は誤字に加え設定の見落としが心配です。
ローストビーフにチキン、ポークチョップやラム、ソーセージとベーコン、ステーキ、それといくつかのじゃが芋料理に主食のヨークシャープディング。付け合わせとして豆やニンジンなんかの茹で野菜と、グレービーやケチャップをはじめとしたソース類。飲み物は葡萄の……(魔理沙にとっては残念ながら)ジュースだ。さっきまで空っぽだった皿の上は、見るだけでよだれが溢れるような魅力的な料理で溢れかえった。いや、目隠しをしていてもその匂いで食欲を刺激されまくるに違いない。
クラッブとゴイルは、それはもう普段の鈍臭さが嘘のように(スリザリンに相応しい)俊敏な動きで取り皿へ料理を確保し、流し込むように口へ運んでいく。この二人には劣るが他の生徒も一斉に食べ始めた。それでも料理は一向に減る気配を見せず、ホグワーツ魔法魔術学校の偉大さを見せつけるがごとく次々と湧き出し続けている。
魔理沙はまずラムチョップに手をつけた。イギリス料理らしくシンプルな味付けだったが、だからこそ、その微妙な塩加減や上品なハーブの香り……そしてなによりラム本来の濃厚な肉汁の風味が躍った。
「汽車でもそうだったけど、君って小食なんだな」
そうやって肉の感触を確かめるようにゆっくりと咀嚼しているのにドラコが気付いた。皆が奮ってよく食べよく飲んでいる中では不思議な様相だったのだ。魔理沙自身も基本的に豪快(といってもこの昼からの付き合いでの印象だが)なだけに余計に。一方で、その小さく少女然とした容姿には相応なしぐさであるのだから……やっぱり、二倍変だ。"変なのが変"に感じている面もある。
「んあ? 何がだ?」
「手、止まってるじゃないか」
「いや、シンプルな料理だなと思ってな」
「そうかい?」
ドラコにしたら、その完成度はともかく一般的な"ご馳走"だ。むしろソースなんかはかなり充実している方に思う。
「ミストウッドさんの家ではこういう料理はなかったんですの? ……確かに、イギリス料理の粗雑さに見切りをつけて外国の料理を愛好する方も多いと聞きますけれど」
「あー、うん、見切りをつけた結果だな。意味は真逆だろうけど」
同じく今年の新入生、ダフネ・グリーングラスの問いに、魔理沙は苦々しい笑顔で答えた。確かに単純な料理に"見切りをつけた"のだが、その理由は「不味いから」ではなく「作れないから」である。この数年、周りに有ったのは森の瘴気をたっぷり吸って育った食材ばかり。味噌っぽいナニカやら醤油っぽいナニカやら……つまり薬液(開き直り)に漬け込んで毒素や魔力、そして何より味を調えないと食べられたものじゃなかった。そんな材料を相手にしてきた者にとっては、むしろこの部類の料理はある意味憧れだ。何度か免疫力を信じて森で狩った獣の(何故か蛍光反応を示す)肉にチャレンジしてみたり、地元の村からディナーを失敬してみたりしたこともあったが、やはりこの味には程遠かった。
「もし飽きるのが心配なら、頼めば違う料理を出してもらえるようになるわよ。ほら、あっちの男子……」
ジェマの視線の先で、かなり大柄の上級生が周りの生徒と談笑しながらぞんざいな手つきでローストビーフを切り分けて次々口に運んでいる。
「今は特別な宴会の席だからみんなと同じものを食べてるけど、あいつ……マーカス・フリントなんかしょっちゅうイタリア料理を食べて身体から魚介類とバジルの臭いをさせてるわ。タコ足なんかにも平気で齧りつくから困ったものよ」
「タコの何がいけないんだ?」
「メリッサは気にならないなの? ぬめぬめうねうねしてブチブチ吸盤がいっぱいついてて気持ち悪いじゃない! うぇー、思い出して気持ち悪くなっちゃった。イカはかわいいけどタコときたらまったく……」
「私はタコもイカもダメですわ」
ダフネにとってはどちらも気味の悪いモンスターである。「デビルフィッシュ」と言うが、タコやイカに比べたら悪魔の方がまだ人に近く優し気な見た目をしているというものだ。
「えー……もしかしてドラコもタコが怖かったりするのか」
「僕は平気さ!」
「ふーん……あーあ、久しぶりにタコの煮つけが食べたくなってきたな。出してもらえるように頼むかな」
魔理沙は魔法の道に足を踏み入れる以前の記憶を反芻した。
故郷の幻想郷に海は無く、タコに限らず海産物は貴重だった。実家は大店で裕福だったが、それだからこそ、何かの催しものの際には財力を見せつけるように魚介料理が振る舞われ、見た目にインパクト抜群なタコの姿煮は宴の花形だったのだ。魔理沙は丸くてプリプリした頭(本当は腹らしい)が大好きだったのだが、それは暗黙のうちにお客さんに譲らされることが多くていつも悔しい思いをしていたのを今でもはっきりと思い出す。
「見るのも苦手な子が多いみたいだしやめた方が良いんじゃないかな!」
「美味いのにな、タコ。……ところで、食べないのか?」
魔理沙は真ん前の席に座るゴーストに声をかけた。コイツときたら(なんせ肌から服から色が全部白銀なせいで判別し難いが)血糊だらけの服装で仏頂面の無口なばかりかモノも喰わない。あのスネイプですら食事には活発に口を動かすし、あまつさえ意外とよく喋っているというのにだ。宴会の席で、しかもこの私の目の前に陣取っておいて、それなのに腕を組んだまま置物になっているなんてなんとも癪に障る。
「食す必要が無い」
「じゃあ嗜好品として食べればいいだろ」
「……それにしてもこのような料理は我々には不適切だ」
「逆に言えば霊向きの料理が有るのか。初耳だな」
師匠の悪霊も平気で魔理沙と同じものを食べていた記憶が有る。まさか、あちらとこちらでは幽霊も違うというのか。……違うんだろうなぁ。
「じゃあそのゴースト料理を持って来ればいいだろ。その辺にフラフラ浮いてたり手持無沙汰にじーっと座ってるんじゃなくて霊用の席を設けてさ」
「となれば貴様らはやれ気色悪いだの臭いだのと騒ぐだろう。死せる者には死せるモノ……我々に相応しく、また我々が愛好するは死んだ料理。つまり腐敗した食物なのだから」
「そりゃアご配慮有り難う存じます」
聞かなくていいことを訊いてしまったことに気付いた魔理沙に、『血みどろ男爵』は初めて表情を変えて意地の悪そうな笑い声を出した。
「蛆が湧いておれば一流ぞ」
その後 魔理沙が二つ目のラムチョップを平らげ、口の中をすっきりさせるためのハッカ飴を噛み砕いている辺りで食べ物は消え去った。食後酒が欲しいところだが、どうなのだろうか。世の中には「未成年の飲酒禁止」とかいう意味不明な規則があると聞く。もしやここも"そう"で、宴会はこのままおひらきなのだろうか。酔っぱらいの喧嘩や素面じゃとうてい笑えないような下品な芸も無しに宴会と言えるのか。
と、一年生らしからぬ心配をする魔理沙の目の前で、再び大皿が満杯になった。
今度はデザート。びっくりするほど色鮮やかに多種多様なアイスクリームの山を筆頭に、これまた両手で数え切れない種類数の菓子パイ、ドーナツ、ゼリー、カスタードプディング、ライスプディング、エクレア、それに特大のトライフル。そして立ちこめる紅茶の香り。
「これは、ものすごいな」
糖分の津波、溢れる色彩……まさか菓子に圧迫感を覚える日が来るとは思いもしなかった。
「そうでしょうか?」
茶色面積90%だったメインとのギャップのせいで目を白黒させている魔理沙の隣で、ダフネはこともなげにドーナツを齧った。たっぷり詰まったブラックベリージャムが今にもこぼれそうだ。
「そうでしょうか、って……」
「ま、イギリス人はお菓子とお茶の方に情熱を向けるものだし。……だいぶカルチャーショック受けてるみたいだけど、メリッサって出身どこなの? タコ云々からするとやっぱりイタリア?」
「んや、長いこと引きこもって魔法の研究してた家でな。アイルランドにある最近の領地はだいたい700年目らしい」
ジェマの問いに、魔理沙はまたしても例の返答。しかも慣れてきたこともあっていかにも名家に聞こえるように言葉を選ぶという小細工も付け加えた。
それに反応したのはダフネ。驚きと納得が半々といった様子で目を見開いた。ジャムはこぼれなかった。
「ドラコさんと一緒にいらしたからどういう方かと思ってましたら、そういうことでしたのね」
「ああ。メリッサの魔法は凄いよ」
(なぜか)ドラコが得意になって応え、それを見てダフネは紅茶片手にクスクス笑った。
「……二人は知り合いだったのか?」
「父のパーティーでちょっとね」
「と言うよりドラコさんなら既に上級生の皆さんにもお知り合いが多いのでは? マルフォイ家のパーティーといったらもう殆ど魔法族旧家の社交界みたいなものですもの」
「まあ、主催者一家として父について挨拶してまわったりはそれなりにあるからね」
「ほー、たいしたもんだ」
「それほどでもないさ」
魔理沙は感嘆と尊敬を惜しみなく詰め込んだ"ふうの"笑顔でドラコをおだてた。いやはや、擦り寄った先は思いもよらぬ大樹だったようで。幸先が良すぎて逆に不安になるほどだ。物語や何やでも『一番の大金持ち』といったら噛ませ犬の定番だし。
「もしかしたらミストウッド家もそのうち招待することになるかもしれない」
「光栄だがウチの偏屈が動くかねぇ」
ドラコとダフネ、それと魔理沙の(架空の)家族の話につられてか、他の生徒たちの間でも次々に家族の話題が上がり始めた。パーキンソンにザビニにブルストロードに……今年の一年生だけでも、やはりと言うべきか、前評判の通りに名家の出らしい(つまりマルフォイ家と知り合いだという)のが多い。
「こう見るとスリザリンは貴族寮みたいなもんなのか」
「だから僕は初めからそう言ってたじゃないか。スリザリンが一番いいんだって。それを君は他の三つといっしょくたにして笑ってさ」
「貴族寮かどうかはさておき、スリザリン生が才能に溢れてて優秀なのは確かよ。だって、サラザール・スリザリンがそういう生徒を望んだんだもの。ほかの創始者より特に拘ってね。寮杯だって去年で6年連続よ」
「今年も諸君らの奮闘に期待している」
「期待してるようには聞こえないんだがな」
血みどろ男爵による底冷えするような声での激励からしばらくして、ついにお菓子も消えた。そして閉宴の挨拶のためにダンブルドアが再び立ち上がった。
「エヘン――全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうな。まだまだ満足していないというものは挙手!」
広間はシーンとして手が挙がる気配も無かった。魔理沙はフルーツたっぷりのトライフルをたらふく食べたし、クラッブとゴイルもシャツのボタンが閉まらなくなるどころか閉めようと試みるのがばからしくなるほど腹を膨らませて涅槃顔だ。
「よーしよし、ではまた二言、三言。新学期を迎えるにあたりお知らせがある。一年生に注意しておくが、校内にある森に入ってはならん。これは何人かの上級生へも言わねばならんことじゃがの」
ダンブルドアはグリフィンドールの方に視線を送った。どうやら話に聞いたグリフィンドールの規則破り癖は学校側も承知のことらしい。
「二つ目に、今学期は二週目にクィディッチの予選がある。寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡することじゃ」
白い短髪の魔女が立ち上がって一礼する。同じ金目ということもあってか、魔理沙は一瞬自分と目が合ったような気がした。
「最後に。とても痛い死に方をしてみたい人でない限り、今年いっぱいは本棟四階右側の廊下に入らないように」
この一言には少しのどよめきが起こった。言い回しに笑う者やどういうことかと困惑する者など。こういうことは珍しいようでジェマも表情を曇らせる。魔理沙はというとこれまたいろいろと勘ぐっていた。
「今年いっぱいは」と言うということは、その事象をある程度把握しているということ。脅しのため大げさに言っている(ついでに魔法を以てすれば人間は簡単に壊れる)ことを加味しても、宴の席で「死」という単語を出すことから透ける重大性。或いは何らかの機密が(今年は)廊下の先にあって、「とても痛い死に方」というのは"それ"自体が危険なのではなく"ペナルティー"や防御のしかけなのかもしれない。
この一瞬でひどく興味を惹かれたが、残念ながら魔理沙はそれなりの魔法使いであるものの、"魔法界"では初心者である。簡単に手出しできそうにないというのも同時に思い至った。"今年いっぱい"中に、(直接的にか間接的にかは問わず)チャンスが有ればラッキーくらいに構えるのが賢明だろう。その通りに過ごしてられるかは自分でも自信が無いが。
「では、寮に入って寝る前に校歌を歌おうのぅ」
ダンブルドアは数秒前に物騒なことを言った同じ口で、今度は底抜けに晴れやかに合唱の音頭をとった。ひょいと振った杖の先からリボンが高く長く延び、空中に金の文字で歌詞を描いた。
「皆、自分の好きなメロディーで。では、さん、し、はい!」
ふざけた歌詞だと思って読んでいたらメロディーもおふざけの極みである。ダンブルドアが歌おうと言い出したときに周りの職員がなにやら苦笑いしたように思ったが、気のせいではなかったようだ。ジェマはむりやりグレナディアーズのメロディーで歌い上げ、ダフネは花のワルツに歌詞を落とし込もうと腐心したが周りにつられて音程がしっちゃかめっちゃかになった。魔理沙はちょっとした悪戯心で、途中で眠ってしまいそうなほどゆっくりとした声明を用いたのだが、そのせいで同じくとびきり遅い葬送行進曲で歌っていた双子のウィーズリー兄弟(列車で爆竹を鳴らしていたヤツ)と最後まで残ることになった。さながら国際葬式合戦だったが、ダンブルドアは嬉しそうに拍手をして「音楽とは何にも勝る魔法じゃ」などと感涙する。ドラコはあまりのバカらしさに終始閉口していた。
「さあ、諸君。これにて今年の始業の宴は終わった。そして代わりに就寝時間が差し迫っておる。一年生は監督生に続いてベッドへ駆け足! それ以外は各々自由にベッドへ駆け足!」
監督生は一寮に何人か居る(見たところ男女それぞれ三人ずつ)ようで、ジェマ以外にも横両側と後ろについて一年生の誘導にあたるつもりらしい。だが、誘導というより監視にも見える。大広間から出て、やかましく動き回る絵画たちを無視して、その先から降りた地下牢らしき区画をも通り過ぎ、更にどんどん下へ下へ暗い道へと進んでいるこの状況にあっては。……そんなつもりは無いのだろうけども。
「まだ歩くのか……」
「雰囲気は面白いんだが、まぁ面倒だな」
「なんだかワクワクしますわね」
「僕は膝がガクガクしそうだよ」
目に入る壁面も灰色の石材から削った岩の洞窟へ、そしてだんだんと荒く凸凹としたものになっていき、やがて湿気からテラテラとおぼろげな灯りを反射する光沢を持ちはじめる。その間絶え間なく十字路や分かれ道を経由してきた(しかも魔法で偽装された隠し通路もいくつか見かけた)ものだから、ちょっと気の弱い生徒……それこそネビルなんかがスリザリン生になったら教室との行き帰りだけで泣き出して遭難していただろう。たとえ気弱でなくとも無駄に時間と体力を喰うというデメリットが有るが。
「さて、ここが入り口よ」
この地下空間にいくつも有るだろう岩の袋小路、その一つの壁を前にしてジェマが立ち止まった。
「いわゆる隠し扉というものよ。ちなみに、見て分かる通り広大な地下迷路の中のただの岩壁だから、場所を忘れたら悲しい結末が待っているわ。……ま、栄えあるスリザリンに選ばれた貴方たちなら、そんなことになる前にちゃんと道を覚えてくれると思ってるけどね」
ジェマの言う通り、隠し扉は見た目に全く普通の岩壁である。しかも、恐らくこの場では最も魔力(とその痕跡)に対し敏感だろう魔理沙のアンテナにも殆ど引っかからないほど巧妙だった。
「開く方法は合言葉よ。二週間ごとに変わって、この中の談話室の掲示板にアナウンスが張り出されるわ。そして、今日から二週間の合言葉が『無慈悲な鉄槌』」
武骨な岩の塊が驚くほどスムーズに音も無く滑り退き、スリザリン寮への道を開いた。場所を特定すればあとは合言葉だけ。しかし、単純であるからこその秘匿性である。どうやら魔法的な仕組みが作用しているのは『合言葉の感知』から『作動』までだけであり、扉の芸術的なまでに滑らかな駆動は物理的工芸の賜物であるようだ。
「さ、入って。突っ立ってないで」
入り口をくぐるとまず目に入ったのは壮大な彫刻が施された大理石の暖炉。そしてその両脇に開く大きな窓で、向こう側には水底の深い青の世界が広がっている。天井と壁は外の廊下と似た荒削りの岩だが、並べられたソファや机は荘厳な装飾を備え、全体の雰囲気は湖底に隠れた古代遺跡さながらだ(ホグワーツの歴史を鑑みれば遺跡そのものとも言えるが)。
ただ、一つ文句をつけるなら天井からつり下がっているランプが投げかける光が緑がかっていることだろう。顔色がこれ以上ないほど悪く見える。
「右突き当りの扉の先が女子寮よ。女子浴室もその奥にあるわ。左が男子ね。異性の領域に忍び込んだり、招き入れたりしないように。特に男子が女子寮に入ったら大変なことになるのよ」
「不公平な話だよなぁ」
監督生の一人が顎をなでながら呟く。その指の間から傷跡がのぞいた。
「それと、入り口前の両サイドにあるのが掲示板―――あ! ほら見て、うちのマスコットも歓迎に来てくれたわ!」
ジェマが件の窓を指さし、その先を見た一年生たちはどよめいた。
いつの間にやって来たのか、談話室の横幅とほとんど同じ大きさにも見えるほど巨大なイカがすぐ近くに揺れていたのだ。魔理沙たちにはイカの視線を読んだ経験は無いが、こちらを覗き込んでいるようだということはすぐに分かった。
「けっこう人懐っこいみたいで、たまにああしてじーっとこっちを見てるの。かわいいでしょ」
「たぶん僕らのこと狙ってるんだと思うけど?」
ドラコはいつもの三割増しで顔をしかめ、イカ嫌いのダフネは震えながら魔理沙にしがみついた。
「この部屋イカれてますわ」
「意外と余裕あるんだな」
思い思いに談話室を眺めてまわったあと、男女分かれてそれぞれの寝室へ案内された。一年生たちは二人部屋に割り振られ、その扉には既に札が掛かり中に荷物も運びこまれていた。誰かが気を利かせたのかこれまでに仲良くなった組で分けられたようで、ダフネと魔理沙は同室だった。ダフネは喜んでいたが、魔理沙の方は色々と作業やら実験やら自由にしたいということもあって、本当は個室だったら良かったのにと内心少しだけがっかりした。……それはさすがに贅沢かと我慢することにしたけれど。
それにしても、ベッドを前にすると一日で溜まった疲れをどっと思い出すもの。魔理沙は(帽子の中の)荷解きも風呂も明日の朝にまわすことに決めて、すぐに眠り込んでしまった。壁のタペストリーや銀細工のランタンはもちろん自分が眠る布団に施された銀糸の刺繍の美しささえ意識に入らなかったほどだ。一方、ダフネが眠ったのは談話室と同じく湖底に開いていた窓に分厚い蓋を取り付ける作業を済ましてからのことだった。
そのうち呪いの子もちゃんとチェックせなならんな。