GATE クリティカルロマン砲に何故か転生した件   作:シアンコイン

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私「去年あと一回は更新すると言ったな。アレは嘘だ」

                  
                    友人<うわあああああああああああああああ


新年あけましておめでとうございます。
冗談はさておいて、更新が滞ってしまい申し訳ありません。

中々に忙しく書く暇がありませんものでして…………。
そこでナイフを構えないでください何でも(ry


「そう怒らないで(何このトンデモ技術)」

 

 

 

 

夜更けの特地では『アルヌスの丘』と呼ばれるその場所で男は一人、丁度いい大きさの岩に腰かけ徐々に上る太陽を背にまだ薄暗い地平線を見据える。

今は弓兵(アーチャー)という立場を捨てて少年に戻ったその精神は苦悩と興奮に苛まれていた。

 

(…………どうしようか…。)

 

前方の虎、後方の狼。この場から主人を連れて逃げ出せば言葉も通じない災厄が訪れるであろう世界に投げ出され、地球に戻れば各国から追われることになるだろう。

覚悟を決めて足を進めても決定条件としてまず、彼には龍の存在と他サーヴァントが待ち構えてる。

 

どちらに転んでも少年には困難が待ち構えている事に違いはないのだが………。吹き付けた夜風に前髪が揺らされ少年は瞳を細める。

本心は逃げ出したいのだろう、こんな責任を伴い重圧に耐えてる自分を自覚していた彼は逃げられない理由を頭の中で上げていった。

 

(ボクはどの道、あの場でマスターを助けたことで逃げ道はとっくに消してるじゃないか……。今更逃げるなんて情けない、何よりこの身体を貸してくれている”彼”に顔を向けられないよ。)

 

「……ハハハ、結局行き着く答えは変わらずだね…。」

 

結論を見つけ自嘲気味に力が抜けたように薄く笑って少年は後ろに手をついて身体を逸らす、変わり始めた空を見上げていると草を踏む音が彼に届いた。

夜更けのこの時間にこの場を訪れる人物が思い当たらない彼は、ゆっくりを首を動かした。

 

「…おはよう、アーチャー。眠れないの?」

 

振り向いた先には眠そうに瞳を擦る主人、万理の姿があった。まだ誰も起きる時間ではないだろうと高を括っていたビリーはまさか、あまり朝が得意ではない万理がこの場訪れるとは思わずに驚いてしまったがすぐに何時もの笑顔で迎えた。

 

「やぁ、マスター。Good morning。いや、ただ空を眺めていただけさ。マスターこそよくボクがここに居ると分かったね。」

 

「あ、そうなんだ……。私は何となくアーチャーならここに居るかなって思って……。」

 

「へぇー。そっか……今日は冴えてるね? それともまだ寝ぼけてるのかな?」

 

「寝ぼけてないもん!! まるで私が何時も鈍感みたいに……。」

 

「ごめんごめん。ボクのマスターだもの、そんなことないよね。……………。」

 

「……考え事?」

 

陽気に振る舞うビリーに対し万理は落ち着いた表情で言葉を返してはむくれ、苦笑いしながら会話をする二人。コロコロと表情を変え最後にビリーは自然に言葉を止めて何処かを見つめた。

そんな彼の表情に何かを感じた彼女は彼が腰かけた岩の隣に座りこみ同じ方向を見据える。

 

誰かが何を考えているのかなど、誰にも分かりはしない。それでも使い魔の主人は理解しようと、自分に出来る事なら力になろうと考えた。

それが例え、本来の聖杯戦争の魔術師が取るべき行動でなくても。彼女の本質から生まれた彼への気遣いなのだから、

 

「……ん? いや……。」

 

「……………。私はね、聖杯戦争ってよく分からない。アーチャーの為に何をしてあげれば良いなんて思いつきもしないの…。」

 

素っ気なく万理の言葉に返答したビリーは何処か上の空で、何を考えているのかも分かりはしない。

そんな彼の隣で万理は穏やかに言葉を紡ぎだした。

 

「おじさんから話を聞いて、貴方が人間じゃない存在だって教えてくれた時は俄かにも信じられなかった。それでも不思議と怖くなかった、最初は驚いて腰が抜けちゃったりしたけど……。」

 

「……あの時はボクも焦ったなぁ。どうやってマスターに会えばいいか悩んだもんさ。」

 

「ごめんね……。昔から私怖がりでそういうの苦手だったから。でも今は大丈夫だよ、アーチャーのおかげでね。」

 

「マスターは……怖くないかい? 今の今までボクの独断で話が進んでしまっているけどマスターの気持ちを聞いていなかった。だからもし―――」

 

「―――大丈夫。私はビリーさんに助けて貰ったからこうして生きているの、だから今度は私がビリーさんの力になりたい。それでいいの、ね?」

 

静かに言葉を交わす二人の間を風が吹き抜け草木が穏やかに揺れる。朝焼けの空が明るく色を変えて大地を照らし出す。

慎ましく微笑んでビリーに念を押した万理。言わずとも見透かされたように言葉を返されたビリーはその仕草に困ったように顔を逸らす。

 

主従の関係とは程遠いその二人の絆は徐々に深まりつつあった。

 

 

 

 

    ◇

 

 

 

「~~~♪~~~♪」

 

舗装もされていない道を車両、装甲車がひたすら駆ける。空を行く鳥は高らかに上昇し吹き抜ける風は草原を揺らす。

車両の中から時折聞こえる歌声に耳を傾けながらビリーは車両の上で寝そべっていた。

 

快晴の空の下、まばらに浮かぶ雲の数を数えては瞳を閉じて深呼吸を繰り返す。

彼は束の間の平穏に身を委ねていた。

 

『快適そうね、アーチャー。』

 

そんな彼の頭上に小さな影がかかる、耳に届いたのは何処となく不機嫌そうな女性の声だった。

ゆっくりと瞳を開けて彼が見据える先には白いライオンの顔をしたカラフルな人形。それを見て一瞬目を見開いた彼は思い出したように笑って身体を起こした。

 

「そうだねぇ、歌を聴きながら一眠り。最高のひと時さ。」

 

『そう、それは結構だけど。』

 

デフォルメされたライオンの顔がずいっと微笑んだビリーの顔面に寄せられ、擬音を着ければクワッと表情を変えてビリーの顔面に頭突きする。

だがそこは人形、ぬいぐるみ特有の綿の柔らかさが彼に伝わるだけで特に意味を成していない。

 

『な・ん・で!! 私を置いて行ったのかしら!!』

 

(やっぱりご立腹デスヨネー)

 

険しい表情で両腕をバチバチ光らせながらトーマス君人形(仮名)がビリーに向けて不満を露わにする。ビリーからすればどんな魔術を駆使すればこんな人形が作れるのか非常に好奇心を誘うモノだった。

 

「そう怒らないで欲しいな、キャスターにしか出来ない事だからお願いしたんだし。」

 

『えぇ、確かに貴方は銃の技量で英霊の座に着いたのは承知しているし魔術と無縁だった事も百も承知。 けれど、何で私は調査隊から外されて駐屯地で魔術の罠を張り巡らせているのかしら!!』

 

「適材適所って奴さ、ほらほらそんなに怒ると綺麗な顔が勿体ないよ?」

 

『見えてないでしょ!!!!』

 

語気を強めてトーマス君人形はビリーの頭部をタコ殴りにするが所詮は人形、ポカポカと柔い衝撃が彼に伝わるだけで実害ゼロ。

傍から見ればただ一人の男が人形と戯れているという部屋の中のならば思わずドアを閉めてしまいそうな場面なのである。

 

だがこれはトーマス君人形を介してキャスターと会話をしているのであって、人形遊びでは断じてないのである。

やんややんやと騒がしい車上を余所に助手席に座った伊丹耀司は、憂鬱そうに道すがらその先を見つめては手帳に何やら書き込んでいた。

 

「………アーチャーの話だとこの世界に聖杯があるのは間違いない…。それはキャスターが出て来た時点でもう確定と言えるけど……、それなら何でシャドウサーヴァントが門を超えて地球に来たのか……。聖杯の泥を浴びてシャドウになったのか、されたのかは二の次でも……明確に誰かが指揮していた? ……いや、それならもう駐屯地は火の海……何かが偶発的に出現しそれに伴って奴らが現れ無造作に暴れたというのがまだ現実的か………?」

 

彼は彼で持ちうる知識を絞り、現状を考察していた。真剣な表情で箇条書きしながら状況を整理している中で隣から伊丹に声がかかる。

 

「…あの…隊長、お取込みの所申し訳ないんですけど……。」

 

「ん? どうかしたのか倉田。」

 

「い、いえ……。その、上に居る『アーチャーさん』はあのビ「それ以上言うと禁則事項で消されるぞー」え!? ちょ、ネタ古いのととんでもない言葉が!!」

 

「……はー。あのな、確かに上に居るのはお前が思う通りの人物だけど一部の人間以外には正体も詳細も開示されていない。出所がアレだから意味はほぼないけれど出来るだけ口にするな。」

 

じゃないと本当に消されるか………他国に……。と最後には口を噤んだ伊丹の表情に運転席の倉田陸曹は青い顔で震えて視線を前に戻した。

 

「て、わけでこれを聞いてる全体は彼の事はアーチャーという男性として認識すること。彼は今の俺達にとって切り札であり最高戦力だ、敬意を払えとは言わないけれどちゃんとした態度で接するように。」

 

 

無線機の回線が開いている事に気づいた伊丹は苦し紛れに話を纏めて言い放つ。仕方ないとは言え説明もなく万理とアーチャーを連れて調査に出たのだから問題はないだろう。

車両の屋根で未だにキャスターと騒いでいる弓兵を余所に、伊丹はとりあえずと手帳を閉じて道筋を地図に書き込み民家を探し始めた。

 

「ねぇ、おじさん。」

 

「ん? どしたの万理ちゃん。」

 

そんな時だ、ふとした時に後部座席に座って景色を眺めていた万理が顔を覗かせて伊丹に声をかけた。

何気なく彼女に言葉を返し伊丹は横を向く、だが声をかけて来た当人はまっすぐ前を見つめていた。

 

「何か、嫌な感じがするの………。あそこにある村……双眼鏡で見てもらえる?」

 

万理の緊張しているような表情から伊丹は何も言わずに双眼鏡を手にその先に見えた村を見つめる。裸眼ではまず捉える事は出来ないであろう街並みを流すように見て行く。

太陽が真上に指した正午にその村に人気は無い、活気も垣間見えない異常な光景に伊丹は眉をひそめた。

 

「アーチャー……。」

 

小さな声でビリーを呼ぶ万理、開いていた窓から何も言わずにトーマス君人形が飛び込み万理の腕の中に納まり天井から透けるようにしてビリーは姿を現した。

その光景に数人が口を開けてみていたのは別の話し………。

 

「…変だねぇ、まだ昼間だよ。ボクらの時代なら酒場で飲んで騒いでいる時間なのに。」

 

『文明が違うでしょう、でもその通りね。何かあるかもしれないわ。』

 

「アーチャーは何か感じないか?」

 

何度かこの手の質問をされていたビリーはこんな時に上手く逃げるコツをつかみ始めていた、何度も言うが彼は身体は英霊、中身は一般人という。

俗に言う見た目は子供、頭脳は大人その名はなんちゃらという具合なのだ。よってこんな時に彼の口から出る言葉は。

 

「…違和感はあるけどね。魔術とかそういうのはジェロニモの得意分野だったしなぁ…。でも寄ってみて損はないんじゃないかな。」

 

嘘である、本音はただ単に分からないだけでそれっぽい事を言っているだけ。

 

「どの道、情報収集しないわけにもいかないからな。―――これより我々は先の村に向かい村民との接触を試みる、何があるか分からない総員警戒を怠るな。」

 

『『『了解』』』

 

やや浮かない表情の伊丹により各車両に伝達され、了解の意を聞いた後に倉田陸曹はハンドルを切りその先に向かった。

 

 

 

        ◇

 

 

 

言葉が通じない、それはあまりにも大きな問題で。常日頃から共通の言語を使う人種がそろう世界から外れたこのは独自の言語を当然ながら有していた。

ビリー等が村を訪れた際に一軒家から人の気配を感じる事は出来たがココで問題が生じた。

 

それは日本人、地球人ならば最早常識である自動車の駆動音、そして自衛隊員の姿が村民からは異形の物としか映らずそれが僅かな恐れの感情を抱かせてしまった事。

怯えるような視線を向けて扉から顔を覗かせた婦女は伊丹等と視線が合うとすぐに扉を閉じ姿を隠してしまう。

 

「―――やぁ、こんにちは。チョコレート食べるかな?」

 

困り果てる自衛隊員の一部と、自ら笑顔を覗かせて黒川二等陸曹とビリーはそれぞれもの珍しそうにこちらを見ている子供らに歩み寄っていった。

言葉は通じなくとも笑顔で身振り手振りでこちらが危険ではないと伝える為だ。

 

張り付けたような笑みではなく本心からの笑顔で、銀紙に包まれた一口サイズのチョコレートを取り出したビリーは離れた場所から差し出す。

安心させるように自らも一つ取り出して口に放り込んで問題ない事を見せると、何とか男の子も受け取ってくれた。

 

心配そうに後ろで見守っていた母親も安心したように男の子に駆け寄ると、何かに気づいたようにビリーの後ろを見つめ始めた。

見ればその男の子もビリーの後ろを瞳を輝かせて見ている。

 

何事かと振り返れば―――

 

「キャ、キャスターさん!! あんまり目立つようなことは……!!」

 

『警戒心を解くには子供からの方が良いのよ。それに……彼の見た目は子供受けするからね。』

 

万理に抱かれていたトーマス君人形が独りでに浮かび始め、肩の電球と胸元が煌びやかに光らせながら飛び回りアクロバティックな動きを繰り返していた。

本当にどんな仕組みでできているのか気になり始めたビリーと、あたふたしている万理を余所にその光景に引き寄せられて子供が姿を現しその騒ぎに村長が顔を出した。

 

その時の伊丹の顔はかなり複雑そうだったとか。

 

伊丹が言語の違いに悪戦苦闘している中、それを横目にトーマス君人形を抱えた万理と車両の傍で待っていた時。

ふとビリーの視線が何かに引き寄せられるように森に面している家の向き、人影を見つける。

 

「………ん?」

 

目を細めてそれを注視するが、それはすぐに家の影に隠れてしまい何だったのかは分からず終いだった。

だがビリーの目にはその姿に妙な既視感を覚えていた。

 

 

 

       ◇

 

 

 

「―――――物陰に隠れろッ!!!!」

 

束の間の平穏、夕暮れ近くの森の集落にて雨に打たれながら自衛隊員は駆け出し。ビリーは万理を抱え即座に四方から放たれた矢を撃ち落とす。

その数は十。的確にして正確、ビリーに負けず劣らずのその矢。撃ち落され地に落ちた矢先に何かが塗ってある事に気づき舌打ちをする。

 

怯える万理はトーマス君人形を通じてキャスターに声を掛けられ障壁を張るのを確認し、飛び出す。

場所は広場、敵の姿は何処にも見えはしない。むしろ空中から狙っているのかと思えるほど出鱈目な角度で迫る矢を撃ち落とし駆ける。

 

潜伏先も見当たらない、自衛隊員に被害が出ていない事は幸いだが。ジリ貧に他はない。

 

(一体何処から……いや、この攻撃方法は!!)

 

ビリーの脳裏に掠める記憶の切れ端、この場で最も可能性が高い敵の姿を思い出した。

 

 

 

 





ところどころ文章の差があるのは作者クオリティ。
気にしないでください。

ソロモンというクリスマス聖杯戦争は楽しかったです(ゲス顔)
なお、新年明けて何の気もなしに引いたらキングハサンの前に武蔵ちゃんで運を使い果たした模様………。

キングハサンは強敵だったよ…………(大爆死)

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