GATE クリティカルロマン砲に何故か転生した件   作:シアンコイン

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ドーモ、ドクシャサマ。シアンコインデス。

色々と言わないといけない事がありますが……。

これも全部オビワンの……じゃなかった。

オルフェンズとタイタンとfgoのせいだ!!

………今回はやや増量なので心が広い皆さんなら許してくれますよね……?





「無茶はしないよ、大丈夫」

 

 

数時間前、現地にて村民からの情報収集中の伊丹を置いてキャスター、ビリー、万理の三人は顔を合わせて何やら話し込んでいた。

 

「マスター、話したいことって?」

 

「えっと詳しい事はキャスターさんから何だけどね? この村から魔力反応がするって……。」

 

『正確にはサーヴァント未満の魔力の塊があったわ。』

 

「あった?」

 

『えぇ、あったの。けれどその反応はもう無い。自然に消えたとしか言えないわ。何か心当たりはないかしら?』

 

キャスターの言葉に首を傾げたビリー、万理も同じように不思議そうに首を傾げている辺り似た者同士というべきか。

キャスターが操るトーマス君人形は片手から桃色の煙を出すとそれを玉状に浮かべ、解けるように離散させた。

 

「……………そういえば妙に既視感があった人影を見たけれど……。」

 

「え? でもアーチャーはこの世界出身じゃないよね?」

 

元々おかしな話ではある、この地にて人見知りが居る事自体無理な話であるのに既視感。一度は見た事がある人影を見かけるというのはまずありえないのだ。

最初はビリーも前世で見たことがある人物を偶々この地で見かけたのかと考えた。時間軸に大きなズレが生じているこの世界でならあり得る話だと。

 

「うん、だから他人の空似か見間違いかと思ったんだけど。」

 

『それはどの位前かしら?』

 

「ついさっきさ、10分くらい前かな。」

 

『…アーチャー、警戒した方が良いかもしれないわ。貴方が見たことがある人影とはつまり、今の地球の人間又は英霊の可能性が高い。態々姿を露わにしたのにもかかわらず接触して来ないのは……。』

 

「こっちの隙を伺っている可能性があるって事かい?」

 

『その通りよ。仮に相手が暗殺者のクラスなら彼女も、自衛隊員にも被害が出かねないわ。』

 

警戒を促すキャスターとそれに同意するように彼を見つめる万理、二人の雰囲気に押されビリーは頷くが心の奥底ではまだ疑問が渦巻いていた。

 

(さっきの既視感は前世の物? それとも彼の物? いや記憶とかの継承はされていないし……、でも一度意識が途切れた時にもしかしたら……。)

 

この世界は正史ではない、彼により多少のズレが存在するのは無理もない話だがそれ以上に危惧すべきは自衛隊及び世界に何らかの影響が及ぶこと。

せめて自分が歪めた物語なら落とし前として、犠牲になるのは自分だけでいいという身勝手な決意を胸にビリーは今の今まで行動していた。

 

だがここでまた気づく、シャドウサーヴァントにせよサーヴァントであろうと自分(ビリー)以外の存在を狙って攻撃してとは言い切れない。

現状はキャスターであるエレナを駐屯地に留まってもらっているがそう長くは引き留められない。

 

この状態が続いてしまえば被害は必ず出る、自分自身が常人ならざる存在になっていようと綻びは必ず現れる。

驕りなどは誓ってない、杞憂など何度も何度も彼は自身で繰り返し自問し続けた。

 

この世界に置いて安全な場所などありはしないだろう。

だがそれでも、始まってしまったこの物語を止める事など出来ないのだ。

 

後には引けないこの状況で最善の判断を下し続ける自信は彼の中に残っていない。

だが、それでも絶対に諦めはしないと彼は誓った。

 

だから選び続ける、選択し続ける。

その先にその身を滅ぼす楔が打ち込まれていようとも。

 

「――あぁ、早々にイタミに話を切り上げて貰ってこの場を離れよう。ね? マスター。」

 

「う、うん。アーチャー……大丈夫? 何か思いつめたような顔してるけど……。」

 

ふと主人の口から発せられた言葉にビリーの内心は大きく揺らされる、何故なら笑みを崩して等いないのだから。

これも主人と使い魔の関係が彼女に影響しているのかと考えるが普段通りおちゃらけて見せて彼はその場を乗り切った。

 

 

 

 

 

 

 

行動は早く、あらかた必要な情報を入手した伊丹に声をかけビリー等一行はコダ村を後にした。

先程と打って変わり車両の屋根に座ることなくビリーは万理の隣に腰かけ、向かいの窓を見つめ流れる景色を眺め。

 

万理はと言えばキャスターとの会話に花を咲かせている、サーヴァントとは言え同じ女性ならば気を使うことなく話が出来るのは当然の事だ。

暇を弄ぶように片手には具現させた相棒サンダラーに指を掛け回しては構え、回しては構え。時折シリンダーを開いては銃弾を見て閉じる。

 

カチャリカチャリと金属の音を響かせていると彼はふと気づいた、向かいに座る自衛隊員と助手席に座る伊丹の視線がバックミラー越しに伝わってくることに。

それも仕方はない、片や事情を知っている男は不用意な行為で他の人を刺激するなと言いたいのだろう。

 

もう一人は肩書きは大量殺人、はたまた英雄と呼ばれている未知数な男が自身の目の前で銃を片手に暇を持て余しているのだ。

いつ何時、その銃口が自分に向くかもしれないと気が気ではないのだろう。自分の軽率な行動に溜息が漏れそうになるのを堪えビリーはシリンダーから銃弾を抜いてポケットにしまいこんだ。

 

「………アーチャー殿。」

 

「ん? どうかしたかな、えっと……。」

 

そんな時だ、虚空を見つめるビリーに向かいに座った初老の男性が声をかける。

一拍おいてその言葉に反応したビリー、隣に居る万理は思った以上にキャスターとの会話に夢中のようで気づいていなかった。

 

「桑原陸曹長であります。差支えなければ話を聞かせてもらっても良いでしょうか?」

 

「勿論さ、丁度暇を持て余していたからね。何の話だい?」

 

ビリーの脳裏には向かいに座る渋い顔つきの男性に見覚えがあったが、名乗りもしていない男性の名をいう訳にもいかずに一芝居うっている状況だ。

 

「お恥ずかしながら、先ほどからその手に持っている拳銃が気になりましてね。随分と年代物をお使いになっているようで。」

 

「あぁ、コレかい? そうだね今の時代からするとコレは拳銃のご先祖様って言ってもおかしくない位だもんね。」

 

丁寧な口調でビリーの手に納まっているコルトM1877(サンダラー)を見て言葉を紡ぐ桑原陸曹長。

 

「…………銀座での件。貴方は何の為に戦ったのですか?」

 

「……あー、言える事は一つかな、自己満足。ただそうしたかった、それだけさ。それ以上はボクに言う権利無いから。」

 

唐突に声を低くして問われた言葉、その瞳が捉えるは真剣で鋭い眼光。言葉の重みが伸し掛かるビリーは本心を偽りなく口にする。

そう、ただそうしたかった。武器も抵抗する力も持たない人間を不意に襲い掛かり平和な日常を血に染め上げようとした野蛮な行動を見過ごせなかったから、彼は今、英霊としてソコにいるのだ。

 

考えてみれば感情的になりすぎて冷静な判断が出来ていなかったかもしれないと彼は思う、けれどその感情が今の状況を作り出してくれた。

あのまま何もしなければ後悔していた事は確か、この先苦難が続くであろうこの旅路も悪くないと気を持ち直したビリーは薄い笑みから確かな微笑みへと変わる。

 

「……そうですか、不躾な質問。失礼いたしました。」

 

「そんな畏まらないでおくれよ、別にボクは大統領でもなければ王様でもないんだからさ。」

 

何処か納得したように頷いた向かいの男性を見て朗らかに微笑みビリーは桑原陸曹長に告げて、助手席からバックミラー越しにこちらを見ていた伊丹へ視線を移し横目で外を垣間見る。

 

「そういえばイタミ、さっきの村でどんな情報を手に入れたか教えてほしいな。」

 

「ん? あ、あぁ。そういえば伝えていなかったなちょっと待ってくれよ。」

 

思い出したようにメモ帳を取り出して伊丹は情報を読み上げていく、この先の森にエルフと呼ばれる種族の集落があるという事。

最近になり火竜と呼ばれるワイバーンの上を行くドラゴンの行動が活発化してきていると。

 

元来の目的はこの世界の地形の把握、住民との接触だった故情報としては十分すぎるぐらいだ。

このまま問題が無ければ本筋通りエルフの集落が火竜に襲われ壊滅している所だが、ビリーはその可能性はないだろうと予測した。

 

時間軸が確実にズレているこの世界線は本来よりも早く物語が進行している、彼の知識の中にあるエルフの集落襲撃も伊丹等自衛隊の到着よりもほんの少し前だった。

ならば、この先で見つけるのは火竜に襲われる前のエルフの里。あるいは………。

 

どんなに思考を前向きに構えても這い出てくる悲観的な想像に溜息を吐いたビリーは頭を振った。

 

「―――そんで最後が、最近になって近頃亡くなった人間の姿を見るようになったらしい。」

 

次いで伝えられた情報に社内の空気は凍りつき、一瞬目を見開いたビリーは気を取り直し詳しく話を聞いた。

伊丹によれば、何でも寿命を終えた者や病死、あるいは不幸な事故に遭い死んだはずの人間が時折姿を現しては何も話さずに姿を消すという事で一部の人間は気味が悪いと外に出るのを控えていたらしい。

 

異常が続く現状に更なる異常が重なり内心、動揺が止まらないビリーは気を逸らすように隣に座るトーマス君人形を見やり口を開いた。

 

「ねぇ、キャスター。さっきの話とこの話、関係がありそうじゃないかい?」

 

『…………何故そう貴方が感じるのか聞きたい所だけど、可能性が無い事も無いわね。死んだ人間が形だけでも生き返っているのなら死霊魔術師(ネクロマンサー)にも可能だわ、けれど住民が気味悪がるという点からしてこの世界の魔術にその類の魔術は存在しない事になる……貴方の言う事もあながち間違いではないかもね。』

 

「つい最近って事からしても時期的にもあり得る話じゃないのか? 」

 

興味深そうに視線を飛ばす伊丹にビリーは頷き、トーマス君人形は難しそうな表情で腕を組み黙り込んだ。

同時にビリーの脳裏に掠める前世の知識、もしこれがただの噂で済むのなら何ら影響のない話だが本当ならこれも本筋から外れた異常となってしまう。

 

これ以上、問題が続くのは避けたいところだが無下にも出来ないビリーだった。

 

『……状況判断するにしても、仮に死霊魔術だとしてその蘇った人間とアーチャーが見たっていう人影との関係性があるかは分からない、あやふやな憶測で行う行動程危険な物もないし。今は保留にして本来の目的を果たしてからにしましょう。』

 

「うん、私もそれが良いと思う。アーチャーも今は忘れよう?」

 

「え………えっと、マスター。ボク変な顔してた?」

 

「なんとなく。」

 

「あ、アハハ。マスターには適わないな。」

 

困ったように笑い飛ばしたビリーを万理は不安げに見つめ、トーマス君人形を通してビリーを見ていたキャスターは目を鋭くした。

 

「「ッ!!」」

 

そして二人の英霊は強烈な重圧を全身にくらう。即座に窓から飛び出した二人は車両の屋根で目を細め進行方向の先を見つめた。

二人の行動にどうしたのかと、驚いた様子で伊丹と万理が窓から顔を出して様子を伺っている。

 

「…………アメリカで見た時とは桁違いだ…。」

 

『…アーチャー、アレを単騎で打倒しようなんて馬鹿な事言わないわよね?』

 

弓兵としてビリーの視力は問題なくその先の光景を見据える、あってほしくなかったその可能性は無情にも今否定され無情な光景がビリーに叩き付けられる。

嘘だと思い込みたい衝動に駆られたビリーが直視するは燃え上がる森、立ち上る紅焔、その場に漂う煙の中に潜む赤黒い(・・・)ドラゴン。

 

英霊としての視力で視認出来ている現状、ドラゴンの視力がどれほどの物かは予測できないがこちらの姿を遠目に確認できているわけではないらしい。

それほどまでに離れているが、英霊となった今、彼が全身に感じるのは膨大な量の魔力、殺気、重圧。相手に気づかれてもいないのにこれほどまでのプレッシャーを浴びるとは彼も夢にも思わなった。

 

異常は健在、この先に待ち受けるは知りえた情報をバラバラにされた別の物語だ。

ビリーには世界が自分を嘲笑っているようにも見えた。

 

いつの間にか握りしめていた愛銃を片手に彼は大きく息を吸い込み真上を見上げ、瞳を閉じる。

覚悟はいいか? このまま進むのかと自分自身に問いかけ胸に燻ぶる下向きな気持ちを取っ払う。

 

「流石に何の策も無しに突っ込む気にはなれないね、今はマスターもイタミも、自衛隊の皆もいるから。あの時みたいに好き勝手に暴れるわけにはいかないよ。」

 

『冷静な判断が出来ているようで安心したわ。けれど変ね、炎龍と呼ばれるぐらいなら鱗は赤に……ッ。………なるほど。』

 

何にせよ、自分が消えるという選択肢が存在しない彼の思考内で結論を導き出し当たり前のように告げるビリー。

その言葉を聞き、ホッと息を吐く仕草をしたトーマス君人形は瞬く間に表情を一転させるとキャスターが息を呑むのを彼は感じた。

 

「……気づいた?」

 

『えぇ、まさか貴方が先に気づくとは思わなかったわ。どうやら……アレと私達は切っても切れない関係になりそうね。戦力を整えないと。』

 

キャスターの反応により、ビリーの推測は正しかった事が決定した。

その推測は『本来、赤一色の炎龍が所々黒く変色している』という点からきた推測だった。

 

「いやぁ、退屈しないとは思っていたけれどこりゃオーバーワークかな。アハハ。」

 

『アレを見て笑っていられるその神経、異常というか図太いというか………。まぁ、悲観的な考えよりも建設的ね。』

 

それはつまり、彼の炎龍が――――

 

『―――決まったわ、私の今後の目的は炎龍……いえ。サーヴァントの影響を受けている炎龍の打倒よ。もちろん手を貸してくれるわよね?』

 

車両の上に立つ弓兵と人形、徐にビリーの腕の中に納まったトーマス君人形はそのつぶらな瞳を彼に向け決定事項と言わんばかりにビリーにそう告げた。

ビリーにはその瞳の先でニンマリとご満悦の表情で笑うキャスターの顔が浮かび、彼はゆっくりと頷いた。

 

 

 

 

 

           ◇

 

 

 

 

 

立ち上る煙が常人の視界に入るほどに近づいたころ、あらかじめビリーから状況を説明された伊丹は他の隊員に通達。

その頃には姿を消していた炎龍がいない事に内心歓喜していたビリーを余所に、自衛隊は煙の出所まで進んでいた。

 

大火事による影響か、降り出した雨を物ともせず自衛隊員はこぞって集落跡地にて生存者の有無を確認する為に動き出していた。

小雨のおかげか多少の臭いは抑える事が出来ているもののそれでもこの臭いは、一般人には苦痛であろうとビリーは取り出した自身の赤いスカーフをトーマス君人形を抱える万理に渡し歩き出した。

 

集落の中心へとゆっくりと足を進め、気配を探るビリーとキャスター。今の所互いに何かに気づいた様子が無い事に安堵し気を引き締め踏み出したその先に見えたのはありふれた井戸と大きな地に書かれた文様だった。

訝し気に眉をひそめた彼は立ち止まり再度、周りに神経を飛ばす。英霊として過敏になった神経はこれと言って敵意や殺気などは感じなかった。

 

ただ疑問に感じたのはまるで空気中に漂うように浮遊する魔力の塊だったが、それはこの集落に居たであろうエルフたちが炎龍に対抗する為に使った魔術の残り香だとうと結論づけた。

その地に描かれた巨大な文様は井戸の手前に存在し、その手前まで足を進めた彼は屈みゆっくりと触れるた。

 

「この陣、キャスターさんが描いたのと似ていますね?」

 

後ろで口を開いた万理に腕の中のキャスターは腕を組んで首を傾げていた。

 

『えぇ、確かにこれは魔法陣だけど。………この陣は一人で使用する為の物じゃないわね、複数の人間で魔術を注ぎ込むような構図……一体何をしようとしていたのかしら。興味深いわ。』

 

「少なくとも魔術に精通する人たちがここに住んでいた事に変わりないね。生き残りが居ればいいのだけれど。……ん?」

 

立ち上がったビリーは何かに気づいたらしく、魔法陣を超え井戸を徐に覗きこんで顔を上げると声を上げた。

 

「イタミー!! 生きている人居たぁぁぁぁ!!!」

 

「「「「ッ!!!」」」」

 

自衛隊員が軒並み顔をこちらのに向けたのを皮切りに駆け出して、状況を確認すると迅速にロープを持ち出して井戸の底に居た金髪の少女を助け出すために行動を始めた。

発見者のビリーはまだ疑問が残るのか、警戒した素振りで腰のホルスターに銃を出現させ辺りに気を配り始めた。

 

(勘だったけれど、やっぱり彼女が生き残っていた。それは良い事だけどこの足元の魔法陣が引っかかる何もないと良いけど……。)

 

心の中で前世の記憶に感謝するのと同時に異常に不気味さを覚えたその瞬間だった。

 

――――スカンッ

 

簡素な音の後に、彼の足元に突き刺さったのは一本の矢。軌道を見ても明らかに常軌を逸したその矢の速さと角度にビリーは戦慄する。

条件反射、即座に抜き放った愛銃をその矢が放たれたであろう空中に向けて彼は構える。

 

「ッ!! 敵襲!! イタミ、ボクがここを抑えるから早く上がって来て!! 自衛隊の人も引き上げる人以外物陰へ!! 後ろの二人は下手に動かないで!!」

 

「マジかよ!! 頼んだぞビリー!!」

 

「総員、物陰に隠れろッ!!!!」

 

伊丹に代わり誰かが叫んだ瞬間にその場にいた四人を除く全員が廃屋や瓦礫の影へ走り出した。

隣にいた万理を片手で抱え、すぐ傍の廃屋へビリーは送ると自身に迫る数本の矢を撃ち落とし、井戸の前へ立ち戻る。

 

宛らオールレンジの如く井戸を中心に全方向から放たれる無数の矢をビリーは寸分の狂いもなく撃ち抜く。

左手にかかる負担を物ともせず引き金を絞り、神経をすり減らし続けた。

 

「おい、グリーン!! 何でこんな事をするんだ、やめてくれ!!」

 

彼の脳裏に過ぎる、この状況を作り出せるであろう人物に対し彼は声をかけるが、反応はない。

 

その場を支配するのは止む事のない爆音と迫る矢、建物の影からその光景を目の当たりにした自衛隊員達はまるで夢でも見ているかのような錯覚に陥る。

あり得ないはずの角度、速さの矢が四方八方から迫り、それを順番に撃ち漏らす事無く撃ち抜き無効化していくその神がかり的な彼の腕に。光景に。

 

数分にも及んだその攻防は終盤に変化を迎えた。

拮抗してた矢と銃弾の嵐は、中身が人間である彼の疲労により崩れる。

 

「ッ!!」

 

コンマ一秒、小雨が雫になり彼の額を伝い瞳を落ち瞼を閉じてしまったその瞬間だった。自身に迫る矢に反応する事が出来ずビリーは片腕を犠牲にした。

右腕を貫いたその矢に何かが塗られているのは百も承知の上だった。ギリッと歯ぎしりをしたビリーは井戸から伊丹等が顔を出した瞬間に矢を引き抜き口を開いた。

 

「いい加減にしろッ!! ロビン・フッド!!」

 

この場にて初めて声を荒げたビリーの怒号はその場に響き渡り、それを切っ掛けに最後の一本の矢が彼の頬を掠め矢の雨が止まる。

呼吸を荒く、鋭い視線を辺りに向けたビリーは銃をホルスターに戻し右腕の傷口を左手で押さえ片膝をついた。

 

ロビン・フッド、中世イングランドの伝説的な英雄であり弓の名手とされる。その知名度もさることながら本来のビリーは彼との接点がいくつかあるのだがこの場で語る事ではないだろう。

本来、圧政を強いられていた民衆の為に立ち上がった彼が何の理由もなく人を襲うという行動に映るという事があり得ない事であり。

 

彼の素性を前世の知識で知っているからこそビリーは彼の名を口にし怒鳴りつけたのだが、何のレスポンスもなく姿も現さない事に彼は落胆しつつ更に疑問を感じた。

 

(キャスターが第五特異点の記憶を持ち得ているのならって思ったけれど……。全然反応が無い…、今回の彼はその記憶を持ちえない彼なのか?)

 

恐らく毒が塗られているであろう矢を受けた右腕の傷口に視線を向け、息を大きく吸うと彼は立ち上がり井戸から引き揚げた少女を車両に乗せ終えた伊丹とトーマス君人形を抱えた万理がこちらに駆け寄ってくるのを見た彼は薄く笑みを浮かべ歩き出した。

大丈夫かと声を掛けられ笑顔で頷いて見せた瞬間に万理とキャスターに傷を見せろと詰め寄られ、引き摺られビリーは瞬く間に装甲車に乗せられ一行は逃げるようにその場を後にした。

 

 

 

 

 





はい、という訳でお久しぶりですシアンコインです。
更新が滞ってしまい申し訳ありません、というわけで言い訳をさせていただくと……。

続き書こうと思う

タイタンフォール2に出会う

また書こうと思う

オルフェンズで毎週落ち込む

気を取り直して書こうと思う

沖田さん当たる

といった具合で……本当にお待たせして申し訳ありません。話進んでない?そうですか?(すっ呆け)
ちょっと駆け足なんですがこれからはなるべく更新を早くするのでまた、よろしくおねがいします。


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