GATE クリティカルロマン砲に何故か転生した件 作:シアンコイン
何とか宣言通りに早めに投稿できたんですが………。
ちょいと短めですご了承を………。
所で皆さん、
スパルタ教育の語源て知ってます?
「………キャスターさん、アーチャーの容態は?」
集落での一件の後、その場を後にした一行の先頭車両にて万理は助けられた金髪の少女の傍らで体を休めるように崩した姿勢で眠るビリーを見つめ。
腕の中で難しそうな表情のトーマス君人形を通してキャスターに問いかけた。傷のせいか、それとも魔力の消費が激しかったのか、おあつらえ向きの治療を受けたビリーは一言休むと彼らに伝えると霊体化せずに眠り始めてしまったのだ。
『そうね……。彼の言う通りならアーチャーの身体を蝕んでいるのは英霊ロビン・フッドの毒……。本当なら今すぐにでも私が治療に行くべきなのでしょうけどこの場を離れるわけにもいかないのよね…。マリ、私が教えた治療魔術を使いなさい治す事は出来ずとも少しは楽にしてあげられるはずよ。』
キャスターの言葉に頷いた万理はトーマス君人形を椅子に降ろし、アーチャーの元へ近寄ると教えの通り、未だあやふやな魔力回路という原理を思い出し腕のプレスレットへと意識を集中する。
数秒の後に仄かに輝きだしたブレスレットの光が集まると弾けるように離散し、弾けた光がビリーへと吸い込まれていく。
失敗してしまったのかと誤解した万理は慌てるが、息苦しそうに呼吸を繰り返していたビリーの表情がやがて穏やかになっていくのを見た万理は安心したように息を吐くと、右腕に巻かれた包帯から血が滲んでいる事に気づきポケットから替えの包帯を取り出した。
「おじさん、ロビン・フッドって義賊のあの人の事かな……。」
手際よく起きないように静かに包帯を取り、新しい包帯に交換しながら彼女は助手席から視線を送ってきていた叔父、伊丹へと問いかけた。
ビリーの言うロビン・フッド。彼女の知識の中にあるのはイギリスの英雄として圧政に苦しめられていた民衆の為に立ち上がり、弓を武器に戦った英雄という知識しかなかった。
「…万理ちゃんに話していなかったけど、アーチャーは第五特異点って場所でそのロビン・フッド、もう一人のアーチャーと国民を守るためにゲリラ戦をしていたみたいなんだ。だからあの攻撃で相手がロビン・フッドだって思ったんじゃないかな。」
「だから……怒ったんだ。アーチャー……。」
彼女の脳裏に浮かぶのは普段からは想像できないような表情で叫ぶビリーの姿、まるで大事な友人に裏切られたという表現が近いだろうか。
弱者を守るために戦った英雄が、一度は共に戦った戦友が敵となり、自身が最も憎むべき弱者を虐げる行為をした事に憤りを覚えたのだろう。
「……俺もうっかりしていた、アーチャーが居るから警戒が御座なりになってたし…。起きた時に謝らないとな。」
「でも、アーチャーも無理し過ぎなんだよ…。一人で何でもしようとしてる。」
『それは貴女という主人を護るのが私達英霊の務めでもあるからよ、まぁ、彼が何もかも一人で解決しようとしているっていうのは分かるわ。』
「もう少し、頼ってほしいな。」
悲しそうに微笑んだ万理は眠り続けるビリーの頬をそっと撫でると座席に座り直した。
ふと後ろを向けば、連なる車両と荷馬車の列だった。拠点へと戻る道のりでコダ村に寄りエルフの集落にて炎龍らしき影を見たと警告の意味も込め忠告しに立ち寄ったのが理由で、現状、非難するというコダ村の住民を連れて帰路についていた。
魔術を使った影響か、それともビリーの先ほどの戦闘にて消費した魔力が供給されているのか多少の疲れを感じた万理は瞳をゆっくりと閉じるが、急に停車した事により揺れた車内で万理は目を見開いてしまう。
前を見れば双眼鏡を覗く叔父、伊丹の姿。遠目に見えるのは鴉らしき黒い鳥が道の先で集っていることぐらいで、見つめるとその下で誰かが居るのか人影らしきものが見えた。
「ご、ゴスロリ少女だと……!?」
「うぇ!?」
自身の叔父が呟いた言葉に、思わず何を言っているのだろうかと呆れてしまった万理であったがとある事に気づいた。
いないのだ、先ほどまで自分の隣にいたトーマス君人形を介したキャスターの姿が無かった。辺りを見渡せば伊丹の真横で両腕をだらんと垂らし宙に浮かんだまま微動だにしないトーマス君人形の影。
『………………………』
「キャスター、さん?」
立ち上りキャスターの隣まで進んだ万理、トーマス君人形が見つめる先には無数の鴉らしき鳥が飛び回り佇む大きな斧を携えた小柄な人影。
『………何でもないわ、アーチャー、休んでいなさいな。どうやら敵意は無いらしいわ。』
キャスターの言葉に彼女は思わず振り返る、見れば寝ていたはずのビリーの瞳が開き鋭くフロントガラスを睨んでいた。
「こんな気配を垂れ流されて………反応しないってのも無理な話さ……。マスター、こっちにおいで。」
気だるそうに言葉を紡ぐビリー、力なく手招きされた万理はゆっくりと彼に近づき、自分の隣に座るように言われそっと腰を下ろした。
「しばらく……こうしていて…。」
致死性の毒かそれとも神経毒か、ビリーの思考内で手探りを始めるがいまいち結論には至らない。それもそのはずだ、中身がただの人間なのだ知りえるはずがない。
揺れる視界内で心配そうにこちらを見つめるマスターを見つけ、ゆっくり微笑むその横顔に汗が流れ落ちる。
行動範囲が限られてしまった現状でせめて自身の主人を護るために隣に置いて、彼はその手に銃を持ちその時を待ち続ける。
願わくば、黒い神官には何も起きていない事を祈って。
『………アーチャー、悪いけれど少し席を外すわ…。客人が来たようだから…。イタミ、貴方の銃器には私の魔術が施してあるのは知っての通り。 いざという時は躊躇なく使いなさい』
「あぁ……」
「よろしく、お願い。」
助手席の伊丹が頷き、それを確認すると彼の目線に人形が一瞬過ぎる。そのまま声をかけて万理の腕の中に納まりただの人形に変わった。
ビリーはにじり寄ってくる強大な力の気配に神経を研ぎ澄ませ、キャスターがいち早く戻ってくることを祈った。
◇
「さて……、それでそこの貴方、その不審な男は何処に居るのかしら?」
ふぅ、と一息ついたのと同時に手元の本を閉じたキャスター、エレナ・ブラヴァッキーは髪を掻き揚げるとテントの出入り口で気難しそうに眉間に皺を寄せる男が居た。
黒縁の眼鏡を掛け直し、不機嫌そうに男は口を開く。
「柳田二等陸尉だ、とりあえず来てくれ。今にも暴れそうな勢いなんだ。」
「せっかちな男は嫌われると後世にも伝わってるはずなのだけれど?」
クスクスと余裕の表情を崩さないキャスターの言葉に柳田二等陸尉の機嫌は更に悪くなる。
アーチャー、ビリーがこの場を後にするという状況ではこういう厄介ごと、つまり人間では対処できない事はすべてキャスターに協力を得る手はずになっており、柳田はその為にキャスターに割り当てられたテントまで足を運んでいた。
「そんな事はどうでもいい、原住民なのかもよく分からない男が槍と盾を持って騒いでいる。もはやアレは人間の域を超えている!!」
冷静な雰囲気を放棄して、柳田は頭をガシガシと掻くと早くしろと言わんばかりに彼女に背を向けてテントの外に出て行ってしまった。
そんな彼の言葉に反応を示したキャスターは携えた本の一片に目星をつけるが、この場であの口ぶり、外の喧騒から特に大きな被害と負傷者が出ていない事を加味してあまり好戦的な英霊ではないのかと結論づけて柳田の後を追った。
「その男の風貌は?」
「筋骨隆々、兜に槍と「まだまだぁぁぁぁ!!!」………赤いマントに大きな「フンヌッ!!!」……。大きな声が特徴だ…。」
目の前を足早に歩く柳田の言葉を遮るほどの大きな声が前方から木霊する、時折自衛隊員らしき人物たちの悲鳴が聞こえ始め彼女の頭には一人の英霊が該当した。
思わず笑いが漏れそうになる自分を自制し、彼女は人形を片手に宙に浮かびその先の広場で武器を手放し素手で大柄な自衛隊員複数と組み手をしている身体中に刻まれた赤いラインが特徴的な男を見つけた。
「フフフッ……。アーチャー、どうやら風は私たちに吹いているみたいよ…。」
嬉しそうに口元に手を当て微笑むキャスター。その姿に一瞬あっけに取られた柳田二等陸尉だったがすぐに気を取り直し声をかけた。
「悠長に構えていないで早くアイツを止めてくれ。」
「心配ご無用よ、何せあの男……いえ、
そう、風向きはこちらに向いている。あの英霊が姿を現した事、危害を加えていない事から敵ではない事。なによりこの場に彼が現れてくれたことが何よりのアドバンテージに成りつつあった。
◇
『―――――――――――ッ!!!!!!!』
「総員戦闘配置に着けッ!! 怪獣退治は自衛隊の伝統だよなぁ!!」
激しく揺れる車内、徐に立ち上ったビリーは銃を片手にゆっくりと歩みを進める、舐めるように背後から向けられる視線を全身に浴びながらも歩みは止まらない。
垣間見えた騒動の根源、炎龍の身体は所々が黒く変色しその片目には一本の矢が突き刺さっている。
ただの一介のガンマンがこの天災に何が出来るのだろうか、抵抗虚しく死ぬのが落ちではないのか。ましてや手負い、足手まといにもなりかねない。
本来の筋書きならばこの後にロケットランチャーの一撃で炎龍を退ける事は出来るが、この場合、その可能性は低い。
何らかの影響を受けている炎龍がその一撃で止まるのか定かではない、ならば異常には異常を。
規格外には規格外で対抗して見せよう、徐に取り出したカウボーイハットに赤いスカーフを身に纏い飛び出そうとした。
「―――ダメッ!! アーチャー!!」
車両後部のドアを開いた瞬間に背後から誰かに呼び止められるが彼は一瞬笑顔を咲かせると、何も言わずに外へと飛び出してしまった。
「ッ、自衛隊の銃は効いてないけど……数発は貫いてるね……イタミの銃かな…。なら……倒せるッ!!」
地に降り立った炎龍の周りを走り一斉射撃を繰り返している装甲車にも負けず劣らずの速さで駆けだしたビリー。
横目に自衛隊の数人が驚愕の表情を見せていたが気にもせず、ビリーは目前に迫った炎龍に向け引き金を絞る。
巨大ビルにも劣らないその巨体に拳銃の弾など焼け石に水とも言えなくもない。それでも身体に穴が空けば痛いだろう。
「良い的だね、何処に撃っても当たるよ。」
ニヒルな笑みを見せて疾走しながらも銃口から火を噴かせ続ける、着実にこちらにダメージを与えているビリーに気が付いたのか炎龍の口元に火が灯る。
「ブレスが来るぞ!!」
傍にいた伊丹の叫び声に耳を貸し、ビリーはその場で跳躍すると低くした頭部に向けてサンダラーを空中で構える。
「―――ファイア!!」
炎龍のブレスを引き金にビリーの宝具、『
相手の攻撃のカウンターとして機能するその宝具はサーヴァントの知覚として周囲の時間をスローモーションにして、状況を完全把握。
相手の急所に最大で三連撃を食い込ませる、この場合は矢が刺さっている左目だった。
――――バンッ!!
一つの銃声が鳴り響き、の銃弾が的確にその瞳に吸い込まれる。
『ォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!!!!』
火が残る地面に降り立ち、悲鳴の様に叫ぶ炎龍を見やり再びビリーは駆け出す、痺れ始めた右腕、強くなる頭痛に歯を食いしばりながらも戦う事を止めはしなかった。
だがそれ故に気づけなかった。再度開かれた炎龍の瞳がビリーを捉えたその瞬間に全身の黒い模様が大きくなっている事に。
BBちゃん配布キタキタキタァァァー!!
えぇ、石の貯蔵は充分ですともまだまだ回せますよ!!
星5………誰ですかねぇ……キアラさんかな……(遠い目)
はい、というわけで自衛隊皆さん、頑張って、どうぞ。