GATE クリティカルロマン砲に何故か転生した件   作:シアンコイン

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どうもシアンコインです。

かれこれ一カ月経ちましたね(白々)
ビリーの宝具強化を確信して日付が変わった瞬間に強化してから一カ月です(二度目)

イベントが立て続きだったものですので今回はやや少なめです。
ご了承下さい……。


「ひ、久しぶりだね……」

 

 

「――――痛ったぁぁぁッ!?!?!?」

 

早朝、アルヌスの丘、駐屯地のテント一角にて金髪の青年が頭部を抑え悲鳴を上げた。彼の前に立ちはだかるように立つ小柄な貴婦人は片手を腰に当てもう片手を前に掲げている。

見れば彼の頭上には分厚い本が宙に浮遊し、その上にはオルコット人形が見下ろしていた。

 

「まったく……、一仕事終えて様子を見に来れば、早々に抜け出して何処に行くつもりだったのかしら?」

 

呆れたように溜息を吐いた貴婦人こと、キャスターは頭を押さえて蹲るアーチャー、ビリー・ザ・キッドを戒めるように睨みつける。

身体の至る所に巻かれた包帯は痛々しく赤く染まり、帽子もコートもスカーフも脱いでいた彼は傍から見ても全開とは思えなかった。

 

「や、やぁ。キャスター。久しぶりだね。」

 

「お陰様でね、どこかの陽気なガンマンに言い包められて置いて行かれたから体力も有り余っていてよ?」

 

困ったように笑みを浮かべ彼女を見上げたアーチャーに映るのは絶対零度の如く冷たい眼差し。一瞬凍りつくかと錯覚してしまうほどに驚いたビリーは何とか言葉を繋ぐ。

 

「そ、そんな悪い奴がいるならボクが退治してあげようか?」

 

「大丈夫よ? 今目の前にいる事だし自分で報復するから。―――マリも言いたい事があるのよね?」

 

(あっ………)

 

何とか誤魔化そうと足掻くが無駄になりそうだと諦めた瞬間にキャスターから誰かに向けられた言葉を聞き、ビリーは死期を悟ってしまった。

ギギギとブリキの人形の様にゆっくりと首を後ろへ向けたアーチャーが見つけたのは、自分がかけたコートを羽織り涙目でこちらを睨む万理(マスター)の姿だった。

 

状況にもよるが、唐突にサーヴァントである自分に腕力でダメージを与えたり、消耗しているとはいえ自分に気づかれず背後に立つという偉業を成し遂げている彼女も大概だとか。

関係ない事を考え始めてしまった彼。傍から見れば女性二人に挟まれ詰め寄られている様にも見えなくもこの状況。

 

(またあの男か………)

 

(羨ま……妬ましい妬ましい…)

 

(リア充消滅しろ)

 

(修羅場かな?)

 

通りかかった自衛隊員達は急にハードになりつつあった訓練からの疲れか、単純な嫉妬の視線が注がれていた。

――――ビリーに容赦のない口撃が向けられるまであと10秒。

 

 

 

 

             ◇

 

 

 

 

とある村の酒場、夜な夜な栄えるのは当然の事と飲んだくれや、食事を取りに来た民衆の中で四人の鎧を纏ったいかにもな格好をしたグループが飲み物を片手にとある話をしていた。

噂話として最近巷を騒がせている、緑の服を着た傭兵団。その一団はコダ村の人々を炎龍といういわば災害に近い存在から非難させていた途中で、その炎龍と遭遇、それを追い払ったという話だ。

 

俄かには信じられないと若い金髪の騎士は苦言を示し、龍にも種類があると別の可能性があるのではないかと言葉を紡ぐ。そんな時だ、実際にその炎龍の話をしていたおかみがそのテーブルに近づいて来た。

 

「本当の炎龍さ、騎士さん達。」

 

さも当然、嘘など言ってはいないと堂々とした態度でそのテーブルに飲み物が入った器を置くと女将は二ヤリと笑う。

ノーマとそう呼ばれた騎士は信じられるかと笑い飛ばすが、女将は腰に手を当てこの目で見たと自信満々に告げる。

 

間髪入れずにその隣の女騎士、ハミルトンは小銭を手に取り話を聞かせてくれと頼む。こういう時は大概チップが目当てだろうと勘ぐっての行動だ。

案の定、どうしたものかと焦らした女将にハミルトンは小銭を差し出す。その瞬間にその手から小銭は消えて女将の手には小銭が握られる。

 

「ありがとよ、若い騎士さん。こりゃ取って置きの話をしなけりゃいけないね。」

 

思い出すように瞳を閉じた女将は語りだす。その光景と凄まじさを。

 

「―――鉄の一物のような魔法の武器を持ち、ビクともしない頑丈な荷車に乗った緑色の服を着た連中。最初は不気味だったけど、その荷車は馬が引いているわけでもないのにとんでもない速さで駆け、炎龍の吐いた火を避け、鉄の武器で炎龍を怯ませたのさ。」

 

「鉄の……一物? そんな物でどうやって炎龍を?」

 

その話を聞いていた赤髪の女騎士は首を傾げて聞き返した。剣や矢ならまだ分かるもその武器でどうやって炎龍を怯ませたのか疑問に思ったのだろう。

 

「目には見えなかったけどね、パンッと何かが弾けるような音がしたと思えば炎龍の身体に火花が散っていたのさ。しかも、だ。最後に取り出した巨大な鉄の一物は、とんでもない音を出したと思ったら炎龍の片腕を吹き飛ばしていたねぇ……。アレには本当に驚いたさ。」

 

「炎龍の片手を……吹き飛ばした!?」

 

女将の言葉に赤髪の女騎士は思わず立ち上がり声を荒げてしまう。信じられるか、触らず音を立てたと思えば炎龍の腕を?いだというのか。そんな事が出来る筈がない。

どうやら他の騎士たちも同じく感じたようで皆、顔を顰めて項垂れている。

 

「あと、最後に…。」

 

「まだあるの!?」

 

「あぁ、とっておきのとっておきがね。」

 

流石にこれ以上の事があるとは思えなかったのか、椅子に座り直し息を整えていた赤髪の女騎士の隣のハミルトンが声を上げ。再び彼女はむせてしまう。

 

「――ソイツはたった一人で炎龍を前に大立ち回りをしていた。そうだねぇ、むしろ緑の服を着た連中が彼を補助していたとも今では思えるよ。黒い帽子に赤い布切れを首に巻き、黒い服を着た金髪の男は炎龍を見つけるや鉄の荷車から飛び降り。その荷車よりも早く早く駆け、その手に持った黒い塊で鉄の一物と同じように音を響かせ確かに炎龍の身体に傷をつけて行ったんだ。」

 

「は……ハハハ、それこそ無理がある。荷車よりも早く走り、炎龍に傷をつけた? そんな事信じられるわけ……。」

 

「まぁまぁ、最後まで話をお聞きよ。ソイツは振りかぶられる巨大な尻尾を飛んで避け、吐かれた火を躱し、炎龍の身体に引っ付くととても人間業とも思えない速さでその巨体を登り頭まで辿り着くと、何かを口の中に入れ炎龍の口を爆発させたのさ。……信じられない、そういったね? じゃあ証拠を見せてやるよ、アレを見な。」

 

長々と話を続け、満足といった様子で話の内容に唖然としている騎士たち四人の視線をカウンターの上に飾られている巨大な牙に向けさせた。

 

「ま……まさか。」

 

「ご想像通りさ、アレがその男が吹き飛ばした炎龍の牙だよ。」

 

帽子の男は興味なさそうだったからねと笑い、満足気に微笑んだ女将はゆっくりしていってね、と言葉を残して次の客の所へ行ってしまう。

残された四人の視線はその飾られた牙に向けられるが。あの話を嘘だと否定できる材料が見当たらなかった。遠目に見ても何かで弾かれたような真新しい傷があちらこちらに存在し、日に当たって出来るであろう黄ばみも無い。それはつまりつい最近の物だと証明していた。

 

「とんでもない者達の様ですな……。」

 

誰もが言葉を失った中で老年の騎士が最初に口を開いた。その言葉に我を取り戻した三人は各々頷くなり、乾いた喉を潤すように飲み物をあおる。

 

「…………これも噂ですが…何月か前、門から帰還した兵士達は皆口々にこう語っていたそうです……。『黒い帽子と赤い布の死神』が門の向こうには居たと……。」

 

「「「………」」」

 

騎士ハミルトンが絞り出すように発した言葉に、三人は言葉が浮かばない。そして不意に思ってしまった。

帝国軍が踏んだのは虎の尾ではなく、それよりも恐ろしい何かではないかと。

 

赤髪の騎士こと、帝国第三皇女ピニャ・コ・ラーダは身震いする。どんな強大な敵であろうと我らが負けるはずがないという自信が。

突きつけられた言葉と噂に目に見えて崩れ始めている事に気づいてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………。」

 

「……あー、マスター?」

 

沈黙は金なりと昔の人は言った。だが、今この瞬間のビリーにとってそれは苦痛以外何者でもなかったのだ。

二人による容赦のない波状口撃を真正面からくらった彼は面を食らい、項垂れる事しか出来なかった。

 

キャスターを口で言い包めてアルヌスの丘に置いて行った手前反撃も出来ず、こちらの事を心配して付きっ切りでいてくれたらしい主人の万理が涙目で問い詰めてくれば何も言えるわけがなかった。

結果としてギッタンギッタンにされたビリーを置いてキャスターは、時間をあけてまたお話しましょうとテントを去ってしまい。

 

残されたのは主人の万理と使い魔のビリーだけであった。

心底困ったように苦笑いを浮かべた彼は立ち上がり振り返ったのだが、その先に居た万理は目が合うや顔を逸らしてしまい気まずいままだった。

 

「………包帯と傷薬、タオルもありがとう。マスターがやってくれたんだよね?」

 

「私が出来るのは……それくらいだから……。」

 

「ありがとう…、ごめんね、心配かけたよね。」

 

「………そんな言葉、いらない…。」

 

感謝の意を伝えた瞬間に呟くように返された言葉、人間であった頃の彼であれば聞き逃していたであろう言葉に英霊の身である彼は皮肉にも気づいてしまう。

半ば信じられない様子で顔を背けたままの万理に彼は手を伸ばした。

 

「…マスター?」

 

「……ごめんなさい、アーチャー…」

 

顔を合わせぬまま、彼の手を避けるように隣を通り抜け彼女は一言そう囁いてその場を後にする。

残されたビリーは数秒、唖然としてその場に立ち尽くし行き場を無くした片手を力なく下げると天井を光のない瞳で見上げた。

 

(………あぁ、この姿になった以上、自分を殺して、手の届く範囲を護ろうと恨まれるのも疎まれるのも覚悟していたのに……。――――やっぱり、僕は人間のまま、か……………。)

 

傷の痛みなど感じるはずもありもしないのに、酷く痛む胸を押さえ何かで叩かれたように揺れる頭を押さえビリーはベッドに崩れるように寝転がった。

どこまでも非情になり、考えうる最善の策を練り上げ、自分の為に大多数を救い続けようとして自身に最も近い存在を蔑ろにしていた事に、今頃気づく彼は後悔の念に遂に押しつぶされてしまった。

 

 

 

 

 




ハンティングクエスト、羅生門、鬼々島…。

皆さんはどうでしたか?
自分はビリーで無双できたので大満足です。

あと呼札で星5ってホントなんですね……都市伝説だと思ってました。
まさかの酒呑が………。

育成頑張らなきゃ…………(遠い目)

あ、マイページの方にFGOのID記載しております。
良ければご気軽に…。

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