GATE クリティカルロマン砲に何故か転生した件   作:シアンコイン

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お久しぶりです。シアンコインです。

夏も終わってもう秋です、早いな一年(しみじみ)

今回もレオニダスのターン、あれ主人公の出番少ない……。





「お留守番決定だって」

 

 

 

「率直な意見を述べるならば、見栄を張らずに逃げるべきですな。」

 

「ッ、何だと……」

 

「口を慎め蛮族が!! 畏れ多くも皇女殿下に何という口を!!」

 

従妹や、掴み所のないガンマン、日に日に自衛隊の武装を魔改造(読んで字の如く)していく魔術師と別れても尚、伊丹の頭痛と胃痛は消える事はなかった。

目標である都市、イタリカを目指して足を踏み入れてみれば何時かの敗残兵が盗賊となり物資を求め襲撃してくるという。

 

して、この出来事は本来ならば伊丹、レレイ、テュカ、ロゥリィの四人で話を聞き驚くだけなのだが、残念、ここにはもう異例が紛れ込んでいた。

鈍色に輝く兜、赤いマントの下から覗かせる肉体美、そして赤い文様。自らが筋肉こそが鎧、そう誇るように姿を現した日本でも過去に映画が上映され有名となったレオニダス王、その人である。

 

街並み、外壁、そして門を一瞥し口を開かぬまま伊丹に追従していた彼は招かれた先で伊丹に問いかけられ。

そう冷淡に告げたのだった。

 

赤髪の第三皇女ことピニャはその言葉に眉を顰め、その隣に連れ添っていたハミルトンは声を荒げあろうことか、レオニダスに対して蛮族と侮蔑するという事態が起きてしまったのだ。

これが落ち着いていられるだろうか、いられるわけがない。武器を持たずとも英霊、しかもゲームでも映画でも色んな意味で凄い王様である。切実にやめてくれマジで。

 

「度重なる襲撃により、正規兵、有志の民兵も指揮は最悪。武器も盾もなく、物資も、気力も、それを補う活気でさえとうに潰えている。こんな状況では無駄に民を死なせるだけです。」

 

「何を知ったような口を、貴様のような蛮族に何が分かる。そんな出で立ちで参謀を気取るのか?」

 

「成る程、これで合点がいきました。この身なりで私の事を蛮族と呼んでいたのですな。いやいや、私の国の戦士の装束はコレが正装でしてな。他に切るのは性に合わないのです。」

 

「フン、よっぽど辺境の集落に居たのだな。」

 

「ま、まぁまぁ、二人ともその辺で。」

 

「イタミ殿、相手の規模にも寄りますが自衛隊が手を貸さなければこの都市は今夜にでも落されるでしょう。決断は早急に。」

 

「はぁ!?」

 

「何を根拠にそんな世迷言を!!」

 

「……二度目になるが、正規兵の数は少なく、碌に戦いを知らない民兵が大半、物資もなく活気もなく、休む時間さえ惜しい。そんな状況で勝てるとでも?

 先程拝見した民兵の武器もバラバラ、皆が皆、戦いの心得が無い物が剣や斧、挙句には鉈をを手に戦っている。アレでは心得がある盗賊に殺してくれと言っているも同然。

 何でもいい、長手の棒を削り槍にして待ち構えればいい。それで無駄死には減りましょう。相手は人間です、何度も同じ手では来ない。何でもしてくるでしょう。

 あの城壁を当てに防衛するとの賜うならば、即刻この街を捨てなさい。」

 

流れ出す一国の王のダメだしにたじろぐピニャにハミルトン、兜から覗かせる鋭い眼光は次第に熱がこもり二人は言葉を失ってしまった。

 

「………、それでも民を守るために戦うと口にするか?」

 

まるで子供の我儘を宥める様にレオニダスが口にした言葉、それに対し皇女ピニャは下げていた瞳を上げると真っ直ぐな瞳でレオニダスを捉えた。

 

「あぁ、民を想い、守るのが王族の務め。見捨てる等出来るものか!!」

 

宣言するように大きな声でそう発した彼女に、周囲は口を閉ざし、対するレオニダスは兜の中で閉じていた瞳をカッと見開くと口を開く

そして―――――

 

「よくぞ言ったッ!!」

 

賞賛するように、良く響く言葉が部屋の中を木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夜中だった、程なくして目的地に着いた伊丹達からの連絡により自衛隊が動き出す事となる。

向こうの状況は予想通り、異常が発生。本来は向こうの都市は敗残兵、野党の一団に何度も攻撃を受け疲労、偶然立ち寄った帝国の皇女により纏められ抵抗している所に伊丹等自衛隊が加勢する流れだった。

 

だが、当然のようにそこで邪魔が入る。レオニダスの勘が燻ぶる戦士たちの他に、それよりも脅威な気配を感じ取ったらしく救援を求めてきたのだ。

 

『これは戦士としての勘、これより攻め入る野盗とは別に、我々の同類が闇夜に紛れ姿を現すやもしれません。お二方のどちらかの手を借り申したい。』

 

先程の一件、自らの元に姿を現したビリーならぬビリーの事もあった。だからこそ彼はこの提案を呑む事を選ぶ。

当然、根拠が勘だと言われれば誰でも難色を示す、しかしこの言葉は幾星霜、戦い続け死して尚、自らの国を救った戦士の英雄の言葉、誰がソレを反故に出来るのか。

 

対してキャスターは今回はビリーが残りこの場で待機していろと口にする。

それも当然、瀕死の状態から回復しただけの英霊を戦いに向かわせられるだろうか、ならば今は万理と共にココに残るべきだと判断したのだ。

 

だがビリーも引けない、彼女の判断が至極まっとうな事に加え全快でもない事は確か。本人は自覚していないがその精神は先ほどの一件から大いにブレているのだ。

 

「ランサーの感じている気配は(シャドウ)の可能性もある。ボクで充分だ。」

 

「憶測で話をしても答えはない、むしろ向こう側の本物だった場合、手負いで足手まといが居る英霊二人がいた所で勝ち目なんか無いわ。」

 

「けど「―――聞き分けのない子は嫌いよ?」」

 

「私達はお互い協定を結んで協力関係にある。なのに一人に任せていたら協定の意味が無いわ。 そろそろ私が我儘を言う番よ。」

 

「…………分かった……、よろしく。」

 

はにかみながら宥める様にビリーを言い包めたキャスター、そんな彼女に根負けした彼は帽子のツバを掴み深く被るとそう口にして俯く。

そして胸元に手を動かし、一枚の紙切れを取り出してキャスターを見据えた。

 

「これを…」

 

「あら、何処で手に入れたの?」

 

「向こう側に踏み込んできた影の一体が落とした。素人のボクでも何か分かるさ、………きっと役に立つ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

城壁の南門に配置された自衛隊は、夜闇の中、松明の明かりを頼りに辺りを見渡し、隊長である伊丹はその上で月を見上げると隣で月明かりで本を捲るキャスターを見やった。

どうも、今回出て来たのが弓兵ではなく彼女だった事に疑問を感じたらしい。

 

「何か質問かしら、イタミ。」

 

「……何でもお見通しか、いや何、今回もアーチャーが来るだろうなって思ったから意外だっただけさ。」

 

あぁ、その事。と意味深な笑みを浮かべた彼女は本を閉じ、抱えていたトーマス君人形を隣に置くと指を一振りし、トーマス君人形をランサーが控えている東門の方向へと向かわせた。

そして伊丹の疑問に答えるべく身体をそちらに向けると口を開く。

 

「確かに、弓兵なら何かしら理由をこじつけて、マリを連れてココに来たかもしれないわ。でも、今は手負い。無理をしてでも仲間を守りたいという気持ちは立派だけれど、勝手に倒れられちゃこっちが困るもの。だから今回は留守番よ、打倒でしょ?」

 

まるで聞き分けのない子供を叱った母親の様に微笑んだ彼女、その様子に伊丹は内心で「あぁ、すごいわコレ……」などといったオタク特有の感情を呟いていた。

因みに何が凄いのかはその場に居た本人にしか分からない。

 

「ねぇ、イタミ。マリから貴方達のこれまでの顛末をそれとなく聞いて居たのだけれど、私も聞かせてもらって良いかしら。」

 

会話は止まる事無く、キャスターは今度は自分の番だと言葉を紡ぎ、伊丹は頷く。

 

「貴方から見てアーチャーはどう見えているのかしら?」

 

その質問の意味は一体どういう意味なのか、そんな疑問が生まれるも彼と彼女は現在協定を結んでいる。そんなビリーに対しての疑問だろうから、大した理由など無いのだろうと考えた伊丹は口を開く。

 

「ま、俺からすれば貴女達サーヴァントは空想上の存在だったからな。出会いは突然だったけど最初は夢心地だったよ、アイツ、割かし時代が近いからテレビを良く見てたり、万理ちゃんと積極的に向き合ってくれた。人が良いというか、絡みやすい、言葉にするなら気の合う悪友みたいな感じかな。」

 

「ふむふむ、それじゃもう一つ。彼は文字通り悪漢王(・・・・・・・)なのかしら?」

 

「え、そりゃどういう意味?」

 

「出会ってからもう何日も経ったけれど、彼は優しすぎるのよね。それは良い事よ、誰かの事を想い、命を軽んじる事は無い。けれど果たしてそれは少年悪漢王ビリー・ザ・キッドとして正しいのかしら?」

 

彼女もまた探究者、視野が広く知識もある。例えそれが英霊の範囲であろうとも歴史上に名を連ねた偉人であれば情報は手に入った。

何日も行動を共にして、ビリーの行動原理と考えを聞く限り、開拓時代にて少年悪漢王とまで呼ばれた冷酷で残忍なガンマンとはブレて彼女には見えていたのだ。

 

優しく信頼されているのは良い事だ、しかし彼はその銃で何人もの命を刈り取った否定しおうのない悪党である。本人もその事には頷いている。

だが今の彼はどうであろう、罪なき人となれば誰であろうと助けようとし、主人の為ならばと命令された訳でもなくこの土地に赴き戦っていた。

 

それは正しく悪党の姿であるのか?

 

その姿を人は英雄と呼ぶのではないのか?

 

キャスターはその考えに至り、万理と同じく近くにいた彼にそう問いかけたのだ。

 

「確かにビリーの属性は悪・中庸だけれど、それは歴史に刻まれた結果そうなっただけで。本来のアイツはああだったって事じゃないのか?」

 

「まぁ確かに、その線はありえるわね。彼のブリテン王が女性だったみたいに……。」

 

キャスターの脳裏に思い浮かぶのは輝くブロンドの髪に煌びやかな鎧を纏いし王の姿、そして同時に浮かぶのは記憶の中の『ビリー・ザ・キッド』

 

「あぁ、青セイバーの事ね……。そりゃ新しいサーヴァントが出る度に性別とかで話題になるから…。」

 

「そこは仕方ないわね。歴史は当時の人間が書くもので真相なんて調べようがないから。――――あら、お客さんがいらっしゃったみたいね。」

 

肩に座っていたオルコット大佐が瞳を光らせて暗闇の向こうを見据えたのと同時に、野盗の叫びが後方から木霊する。

その言葉に伊丹含め、他の自衛隊員が反応しどうするか無線で会話しているもそれは彼女によって遮られた。

 

「向こうの救援は先に向かった神官サマだけで十分よ、貴方達はこれから来るアレを私と相手なさい。」

 

「え、アレって何の……マジかよ。」

 

何かが地を蹴り飛んでいく姿を横目に、キャスターは本を開くと臨戦態勢に入る。

彼女が指さした方向を見つめた伊丹は口をだらしなく開いて、驚きのあまり咽ると無線にて全隊員に告げる。

 

「影が前方にて出現、数は複数と見られる。この場はキャスターが前線に立ち影の相手を担ってくれる。俺達は彼女の援護だ、総員、戦闘準備!!」

 

夜闇に紛れていた複数の影は、顔を出した月光に照らされ姿を露わす、日本で姿を現した影並の集団を前に怖気づく事なくキャスターは待ち構え。

伊丹含めた自衛隊員は小さな銃口を構え、やがて火蓋は切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――同時刻

 

 

 

 

「計算通りですな、やはり夜を狙ってきた。」

 

慌てふためく数少ない兵士達を前に姿を現したランサーは手にした槍の石突を城壁に叩き付け、視線を集めた。

 

「狼狽える事無く武器を持ち迎撃を!! 手の空いている者はまだ寝ている者たちを叩き起こし準備なさい。慌てる事無く事前に教えたとおりに動くのです!!」

 

ランサーの進言から、夜攻め入ってきた場合に備え待機していたピニャ含めハミルトンは目を開けると耳に入る雄叫びに眉をひそめた。

 

何時の間にかピニャやハミルトンしいては部下の兵士共々を置いてきぼりにして指揮を始めたランサー、そんな状況に黙っていられるはずもなく。

その光景を唖然と見ていたハミルトンが声を上げた。

 

「き、貴様。何を勝手に指揮を執っている!? それは姫様の―――」

 

「―――い、いや、いい。大丈夫だハミルトン。」

 

「しかし姫様……。」

 

ハミルトンの言葉を遮って前に出たピニャは彼女を見下ろすランサーの瞳を見据えると、門に向け視線を向けた。

 

「貴公が練った策の通りに動く事にしよう、だが困難となれば即座に貴公を切り捨て我らはこの街を守る事に専念する。それで良いな?」

 

ピニャはランサーを横目に言葉を紡ぐと兵を連ね、民兵に言葉をかけ城壁へと戦力を集中させる。

理解したのだ、戦場に置いて不利であるこの現状で焦る素振りも見せる事無く平然と指揮をして的確な指示を出し、戦力を集めて見せたランサーの力量を。

 

何よりも

 

(あの男は、わらわよりも戦を知っている……!!)

 

埋める事など出来るはずもない程に遠い場所に位置する男の揺るぎ無い強さに、彼女は楯突く事をやめ受け入れる事を選んだのだ。

 

「それではグレイ殿、城壁の守りはお任せいたします。」

 

「任されました、貴公もご無事で。」

 

ピニャの部下であり、恐らく彼女の部下の中でも歴戦の勇士であるグレイというベテラン騎士と言葉を交わすと、けたたましく門を突き破ろうと攻撃している門の前に立ち声を張り上げた。

 

「門を開けよ!!」

 

敵兵に攻められている現状で守りを固めたわけでもない門の前で、たった一人、重厚な鎧に身を包んだわけでもない男が槍と盾だけを構え開けと口にすれば誰もが馬鹿げていると思うだろう。

しかしこの場にもしビリーが入れば何て事は無いと気にした様子も見せずに門を開き、あわよくば軽口を叩く位、その男の背中は大きく堂々としてた。

 

傍から見れば自殺行為とも取れる行為に、門の周辺に木製の柵を立て手製の長物の槍を手にした民衆は固唾を呑んでソレを見つめていた。

左右の門を開く兵士達は気狂いでも見るかのようにレオニダスを見つめ、手早く門を開く。

 

炎の光に照らされて怪しく浮かぶ、卑しい笑みを浮かべた敗残兵は誰かが乗り込み門を開いたものだとばかりに笑い、一歩踏み出した瞬間だった。

 

「ギッ!!?!?!??」

 

鼻っ面から顔面に掛けて走る鈍痛、そして浮遊している自らの身体。思考は回る事無く見えたのは暗い夜空だけだった。

そして吹き飛ばされた敗残兵の隣に居た奴らは当然のように立ち、槍を持ち防具は兜と盾だけを持った男を見上げ慄いた。

 

兜の隙間から垣間見えた鋭い眼光、刹那にして一人を遥か後方まで吹き飛ばした膂力、そしてその余波で生まれた衝撃の風に。

程なくして静かにしまっていく門を止めようと動こうにも誰も動けない、絶好のチャンスとも取れる状況を前にたった一人の男を前に恐怖したのだ。

 

そう、今も覚えている。あの赤と黒の死神の様な者をこの男から感じたのだから。

 

「さぁ、参られよ。兵共(つわものども)ォォォォォォ!!!!!」

 

そして門は閉められ一対多の戦いが今、始まる。

 

 




やっとクイック強化のスカディ来てビリー強化がはかどるこの頃。

次イベも楽しみですねぇ……。

もうそろそろくどいので謝罪はナシで……。

その内また思いつきで他の話を投稿するつもり何で、その時はまた。

それではそれでは。


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