GATE クリティカルロマン砲に何故か転生した件   作:シアンコイン

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はいどうも、新年明けまして、GW終わりまして。
シアンコインです。

また年越ししちゃいました……。

許してクレメンス…





「決着、ついたかなぁ」

 

 

 

 圧倒的物量差、相手は唯一人

 

 傍目に見ても半裸に近く、盾、槍、そして兜だけという鼻で笑えそうなほどに軽量の装備の男一人に無数の敗残兵たちは足止めされていた。

 たった一人が吹き飛ばれたぐらいでどうしたと口にし斬りかかった誰かは、容易く剣戟を盾でいなされ片腕だけで振るった槍の柄で同じく後方へ吹き飛ばされる。

 

 異質、鎧を着こんだ大の大人が子供が如く軟なはずの槍の柄で悉く吹き飛ばされ起き上がってこない。

 たった一人を相手にしていた筈が数秒であっと言う間に気圧された。

 

 勘の鋭い者は距離を取り、馬鹿正直な連中は気にも止められずに同じく吹き飛ばされてく。

 有利なはずの戦況が拮抗する、まるでこちらの戦法が筒抜けしているのか思わせるぐらいに城壁の守りは硬く梯子を掛ければ叩き落とされ。

 

 門からの突撃は未だ一人の男に阻まれ続けている。何故と、策を練っていた男達は何度も何度も襲撃して弱らせた筈の街が硬く守られてしまった事に困惑する。

 そもそも最初からあの男が前線出ていれば馬鹿正直にこうして何度も襲撃などしなかっただろう。可能性としてはこの数刻前にあの男を傭兵として雇ったのか、それとも単純な増援なんだろうか。

 

 だとしても簡単に落とせる守りではなくなったのは事実、どうするか。このままジリ貧を狙い相手の消耗を待つべきだろうか。

 だが、そうするとしても不可解な部分が残る。兜の男のその膂力を持ってすれば周囲の兵士達を紙屑が同然に吹き飛ばせる、数十人の兵士を率いて突撃されれば簡単に自分達は薙ぎ払われているはず。

 

 何故それを実行せずに、ただその場で門を守るように立ち続け依然不動であり続けるのか。

 時間稼ぎかそれとも単純に手を抜かれているのか……。

 

 今も押し寄せる大軍をたった一つの盾と槍だけで迎え撃ち薙ぎ倒されていく。

 人間とは思えない強さはその異質さをより際立たせ、その空間の不気味さを周囲の男たちに見せつけた。

 

「……誰一人、死んでいない……?」

 

 隣からそんな言葉が聞こえた、何の事かと視線を巡らせれば蹲るり、力なく地面に突っ伏す仲間たち。

 大人一人が宙に浮くほどの力を受けながらも誰一人とて死んではいない、何より見慣れた筈の赤が何処にもなかった。

 

 何時の間にか開いたままになっていた口、視線を徐々に上げて行けばこちらを見据え再び盾による一撃で集団を吹き飛ばしては構え直す一人の男の姿。

 それはまるで殺めずともどうにでもなると、その刃を使う必要もないと暗に口にしているように男たちには見えたのだ。

 

 今ここで確信する。それぞれの額に青筋が浮かび、口にした。舐められていると。戦狂いの男たちの頭でもそれは理解出来た。

 気圧されていた空気は激昂した男たちの殺意により相殺、いいや、沸騰した頭では冷静に戦況を理解できて居なかった、未だ男が戦場を支配している事に変わりない。

 

「…………炎門の守護者(テルモピュライ・エノモタイア)

 

 聞いた事の無い言葉が迫った兵士達の何人かに届くも、すぐさまその視線は眩い光により遮られ男たちの身体は再び硬直した。

 しかし一斉に投げ付けた槍、矢が間もなく届くだろうとほくそ笑んだ男は光が消え少しして瞳を開くとその光景に息を呑んだ。

 

「何処から、現れた……!?」

 

 口から飛び出した言葉はその場にいた彼の仲間たちの総意、強烈な光が瞬いた数秒の間に無数の盾が男を包み込み門を守るように展開されていた。

 無論、敢え無く槍は弾き飛ばされ矢は受け流される。攻撃が止んだその瞬間、盾の隙間からギラリと光る眼光が男を貫き情けない悲鳴が漏れた。

 

 それを皮切りに無数の盾の中から数百人、敗残兵にも引けを取らない数の同じ格好の兵士達が現れた。

 鎧を身に纏わず、携えるは槍に盾、腰の剣に兜。統一されたその軍団の中心には先ほどの男が無傷で立っていた。

 

「……、スパァァァァァルタアァァァァァァア!!!!!!!!」

 

 

「「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」」」」」」

 

 雄叫びの如く中心の男が叫んだ瞬間、周囲の兵士達は声を上げ地響きかと錯覚するほどの音が轟いた。

 竦んだ足腰、熟練の兵士の如く、ルーティンとして確立された動作で盾を一斉に構えた兵士達。

 

 たった一人にも適わずにいた男たちがコレに向かって行けるはずもなく、戦意は簡単に削がれた。

 次第に一人、また一人と、逃げ出し絶叫しながら逃亡する仲間たち、男がそれに加わろうとしたその瞬間。

 

「ふふ、フフフフフ!! 逃げちゃ、駄目よ?」

 

 月光を背に、また一人、黒い死神がその鎌を振りかざし姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなもんかしら?」

 

 肩の埃を払う様な仕草を見せながら穴だらけの大地の上でキャスターは呟いた。

 警戒心の欠片も無いそんな様子に背後から闇に紛れ突き進んでいた、一体の影がその手にした槍を突き出すも、届く事なく彼女の頭上に出現した巨大な書物からの魔力の一撃により沈む。

 

 まるでもう慣れっこだといった顔で辺りを見渡した彼女は、踵を返すと軽く地を蹴り、伊丹の元まで浮かぶように舞い戻り口を開き彼の横腹をしっかりしろと言わんばかりに軽く叩いた。

 

「あら、そんな呆けた顔して。もう眠いのかしら?」

 

 言葉にして圧倒的だろうか、英霊の闘いを一般人としてはそれなりの数を見てきた伊丹からするとそんな言葉が脳裏に浮かぶ。

 目前で繰り広げられた戦闘は魔術師と言えど敵の追随を許さない一方的なモノだった、コレが英霊、サーヴァントの普通なのであれば弓兵の彼は何故あそこまで苦戦したのか、と思うほどには。

 

 開いた口を閉じた伊丹は視線を魔術師に向ける、すると彼女は指折りして今回現れた影の数を呟いて数えているようでまた何かを考え込んでいた。

 視認するのも一苦労なこんな真夜中、シャドウサーヴァントはその身体に文字通り影らしき何かを纏っている手前、物凄く視認し辛くそも常人離れした動きなので数など把握できるわけもなかった。

 

「……6……7……、数はあっている。でも変……まだ……」

 

 訝しむ様に瞳を細めたキャスターは視線を辺りに巡らせて不意に城壁下、門手前に駐車されている装甲車の傍、今回の遠征についてきた魔法使い見習いレレイ、そして保護中のテュカが居る辺りが視線に入る。

 その場を目にして異様に大きい魔力の塊、そして黒い影が視界にチラついた事に気が付いて腕を振るう。

 

 即座に開いた書物は無数の閃光を生み出し彼女ら二人から影を引き離す為に放たれた

 

「キャッ!?」

 

「なに……!?」

 

 魔法使いとしての勘か、しきりに周囲を見ていたレレイは閃光に気が付き構えるも影の存在には気が付けない。

 その光景に伊丹も当然声を上げるも遠距離での攻撃は視野に入れていなかったのかキャスターの表情は明るくなく、何も口にはしなかった。

 

 狙いが自身だと気が付いているだろう、しかし影は彼女の閃光に守られている二人から視線を外さない、何度妨害されようと執拗に二人の場所へと向かい続けている。

 引いては避け、飛び退き進み、阻まれるその繰り返し、何度も繰り返すその光景に伊丹は何も話さないキャスターに見やり走り出した。

 

 彼なりの最善、恐らく影の目標はレレイ、テュカ、ならば二人をその場から引き離しキャスターの負担を減らすべきだと考えた。

 無線で各員に警戒を呼びかけ自らは二人に向かい走り続ける。

 

「こっのッ!!」

 

 ちょろまかと動く影に痺れを切らし始めたキャスター、これほどまでに無駄な魔力の消費は計算外だったのだろう。

 形振り構わずに振るう腕に反応した書物はより一層多くの閃光を生み出し放つ、が

 

「暗殺者のクラスは本当に厄介ねッ!!」

 

 その背後にいつの間にか迫っていた影の一撃を飛び退く事で避けたキャスターは悪態を着き、片腕を振るい横目に未だテュカ達に接近を試みる影へ攻撃を仕掛けるも両方に意識を割く事に苦戦。

 乱雑に撃ち出される閃光を一瞬の隙を突かれ掻い潜り、影が遂に彼女等に届きかけた瞬間だった

 

 ―――――スカンッ

 

 何処からともなく影の進行方向から一羽の矢が飛来する

 

『ッ!?』

 

 例え影であろうが元は英霊、常人ならぬ反射で飛来した矢を紙一重で避け追随する無数の矢を後退する事で避けていく。

 何が起きているか理解できていない渦中の二人はアタフタと周囲を見渡し、それを横目に捉えたキャスターは一度目を見開くと何かを確認するように周囲を見渡し手元に本を出現させた。

 

 間髪入れずに前方から斬りかかってくる影、それに対しキャスターは心底ウンザリした表情で斬撃を避け、避ける間も与えずに影の背後に出現した本による閃光を直撃させ離散させる。

 鋭い眼差しのまま未だ影に狙われている二人に視線を向ければ何処からともなく矢が彼女らに近づく影に向かっては撃ち出され続けている。

 

 周囲に他の人影は無く、あるのは影の反応と大きな魔力の塊、見れば二人を保護する為に動いていた伊丹も矢に狙われたのか運よく避ける事に成功し近づけずにいるようだ。

 まるで二人を守るように撃ち出される矢の雨、近づく者には容赦のない一撃。なるほど、と一人勝手にゴチたエレナは以前にビリーに渡された何も刻まれていない、しかし異様な魔力を秘めた一枚の札を取り出す。

 

「――繋がったわ」

 

 パズルが解けたと言わんばかりにニッと歯を見せ笑った彼女は手元に手繰り寄せた魔術書にその札を栞の様に挟むと腕を振るう。即座に消え失せた魔術書は渦中の少女二人の目の前に飛び出した。

 瞳をパチクリさせて驚いた二人は目線の高さで浮遊する書物が独りでに回転、誰の手も借りずに開かれ一枚の札が片方の少女、テュカの足元にヒラリと落ちる。

 

 何事も無かったように再び消え失せた書物を前にテュカは何事かと驚くだけで、隣のレレイは興味深そうにその様子に瞳を煌めかせていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 星屑に照らされた草原の元、人知れず一体の塵芥が闇夜に離散する。

 硝煙を気にも留めず何度目かの自分の形をした偶像を撃ち抜いたビリーは踵を返した。

 

 日数にして二日と言った所だろうか、伊丹等が駐屯地から離れてそれぐらいの時間。

 ランサーに続いてキャスターが増援に向かった現状、特に心配するような必要も無く万理は魔術の訓練に精を出し、それを見守りながらビリーは時折姿を現す自分の姿をした影と対峙していた。

 

 まるでこちらを試すばかりに決まって駐屯地離れの草原に姿を現し、彼が足を運ぶと途端に行動を開始する。

 実力は図らずも彼が上を行き、常人の精神は皮肉な事に同じ姿をした偽物を撃ち抜く事で同調率を上げていく。

 

 次第に出来ずにいたクイックショットも造作なく行うほどにまで上達、いいやこの場合は同じ領域に達しつつあったが正しい。

 

(こっちに異常はない、……そりゃあそうか、本筋は向こうの伊丹達だ。こっちに動きがあるとすれば増援の準備位だけど、その必要もないよねぇ)

 

 本来ならばイタリカには闇夜に紛れ自衛隊の増援が突入し、侵略が如く野盗を薙ぎ倒すという自衛隊無双が始まるのだが駐屯地にはそんな素振りは無い。

 準備をしている隊員はおろか、日々の機体チェックだけで動きもしていない機体が殆どであった。

 

 つまり、そういうこと(サーヴァントのせい)である。喜ぶべきか、それとも盛大に捻じ曲がった事を笑うべきかビリーは曖昧な表情で唸るだけだった。

 ただ同時に危惧する事と言えば

 

(キャスターに渡したけど……、多分、解決、しちゃったよねぇ……)

 

 弓兵として直感か、英霊ならざる思考がそうさせるのか、おそらくまた何か起きたのだろうと一人勝手に勘ぐるのだった。

 

 






段々ペースが落ちていますが、何度も言いますがまだまだ続けますので、よろしくお願いしまっす。

ライネスちゃん、可愛い……(爆死報告)

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