GATE クリティカルロマン砲に何故か転生した件 作:シアンコイン
お、お久しぶりです。シアンコインです。はい。
気が付けばUAが30000突破していて………。
お気に入り数も1500突破してて………。
なんか評価もオレンジ色キープしてて………。
ナニコレコワい(真顔)
内心穏やかじゃない自分に鞭打って書いていたんですが動揺で手が進まず日が経ってしまいました。
申し訳ないです。
そして感想覧で所長の人気を再確認しました。
駄文ではありますが頑張って投稿します、これからもどうぞよろしくお願いします。
「こんな体になったからかな……。こんな静かな夜が凄く落ち着くよ。」
窓越しに見える夜空を見上げ帽子の男、ビリー・ザ・キッドは誰に伝える訳でもなく呟いた。
彼の後ろにはキングサイズのベッドで横になり静かに寝息を立てている女性、尾賀 万理が居た。
(余程疲れたんだろうね……。ここに来るなりへたり込んじゃって伊丹さんとベッドに運んだら寝ちゃうんだもの。)
振り向くことなく視線だけを一瞬そちらに向けるとビリーはまた小さくため息をこぼした。彼らが居るのは高層ビルの一室、伊丹耀司により取調室から連れ出された彼女は諸事情によりこのホテルに数日宿泊することになったらしい。
恐らく国のお偉いさん方に自分の存在と彼女の関係を少なからず把握されているからだろうと彼は考えた、前触れもなく現れた巨大な門と軍団、それに触発されるように現れた架空のゲームのキャラクター。
門の対処にも苦労しているだろうが、間違いなく自分もその苦労の一つに入っているだろうと感じている。
彼の心境はかなり複雑だった、突然の転生は許容範囲としてもまさか自身が知っていたゲームのキャラクターとして転生し。挙句の果てにはこの世界にも同一のゲームが存在している。
そして助けた女性と体が触れれば相手には
腹を決めて彼女の
(あの時はまだ深く考えてなかったけど……。彼女の名前と顔、容姿ってまんまオルガマリー所長を黒髪、黒目にして三つ編みを無くした感じなんだよなぁ………。)
オルガマリー所長とは、彼こと英霊ビリー・ザ・キッドを生み出したゲームの中でストーリーの序盤で登場する人物でゲームの中での主人公の上司にあたる存在。
だが、ストーリー上で彼女は不運にもとある事情で姿を消してしまい。彼が知っている中では再登場はしていないのだ。
(アホ毛も健在だけど、話をした感じ魔術には精通していないし。高飛車でもない、まぁ小心者で臆病なのは変わらないか………。)
その所長と彼女がよく似ている事は良いとして、苦笑しながらビリーは考える。
(………まだサーヴァントとしての感覚には慣れていない、けれどこれだけはわかる。”この世界には”聖杯はない。)
聖杯、本来
これを聖杯戦争と呼び、本来ならばその時に限ってサーヴァントは召喚され互いに殺し合う。実際にはその聖杯からの補助を受け魔術師は
これは神様がうまい具合に調整してくれたのかと考えたビリーだったが、人の願いを勝手に自己解釈して滅茶苦茶な状態に叩き落とす奴だ。あまり信用できないとその考えを消した。
(fateの設定は土台無視って事なのかな………。)
本来のこの世界は彼ら英霊が存在する「fate」シリーズの世界ではなく、寧ろファンタジー色を残しながら現代日本の自衛隊が主人公の物語。
それはあの”門”が証明している。
本来関係ない存在がこの世界に乱入し本来の筋書きを変えてしまった時点で、この物語は間違いなく歪んでいるだろう。実際、彼の後ろで寝息を立てている女性は自分の知っている物語には登場しない。
もちろん彼もそうである。この先の物語は絶対にどこかが違う別世界。彼の知識はもう当てにはならない、そう気づいたビリーは踵を返して窓際の椅子に腰かけて帽子を深く被り直した。
「………考えても仕方ない…。マスターが寝てるんだしボクも寝よう。」
(警戒していたとはいえ、伊丹さんには悪いことしたな………。ちゃんと謝ろう……。)
あの門も封鎖されているため心配事はない。
それよりも先ほど取調室に入ってきた伊丹に銃を突きつけてしまった事を少なからず後悔している彼は、ボンヤリそんなことを考えてゆっくり意識を手放した。
◇
「それで……その、ビリーさんで良いかな?」
「うん。大丈夫だよ、ボクは何て呼べばいいかな?」
尾賀 万理が宿泊しているホテルの一室で二人の男が机を挟んで向かい合っていた。お互いに微笑みを浮べているものの伊丹の表情からは疲れ、困惑の意が見て取れる。
「あぁ、すいません。俺の名前は伊丹耀司、好きに呼んでください。」
「それじゃあ、イタミって呼ばせてもらうよ。それでボクに何の用だい?」
俄然表情を崩さずフランクな話し方をするビリーに伊丹は調子を崩されながらも、息を呑んで彼の今一番の疑問を口にした。
「えっと……。その、もしかして貴方は彼の有名なガンマン、ビリー・ザ・キッドさん……本人ですか?」
「彼の有名なんて言われると照れるけど、その通り。ボクはヘンリー・マッカーティ・ジュニア、人呼んでビリー・ザ・キッドさ。」
ビリーの言葉を耳にして伊丹の脳裏には携帯ゲームのキャラクターと、自身の従妹である尾賀万理の顔が浮かぶ。恐らくと考えていた事が少しずつ彼の中で確信に変わっていた。
彼の後ろの部屋ではまんま被害者であるはずの女性、尾賀万理が今も休んでいる。伊丹は見逃してはいなかった、彼女の腕に浮かぶ赤い文様を。
「それじゃあ、次に………。貴方は自分の存在がどんなものか理解していますか?」
確かな核心を得る為の言葉、伊丹にとって最悪な言葉は聞きたくはないがそれでも大事な従妹の事である手前有耶無耶には出来なかった。
できれば「あ、これ実はコスプレで彼女にちょっと付き合ってもらったんですよー。」とか安易な言葉で返してもらいたいと思っている。
「もちろん。この”世界”でのボクはフィクションの中のキャラクターだって事でしょ?」
「………あぁ。………ご存知ですか…。」
「………何でそんな暗い顔してるの?」
「いえ……何でもないんです…。」
まるで当然とばかりにハッキリ言って返したビリーに伊丹は消沈してしまう、それもそうだ。先の一件で自分は一躍時の人。
昇進決定、英雄やらヒーローやらで持て囃されてしまい。新聞やニュースでも自分の事を見ないというのも難しくなっている。
自分が望んでいた平穏で趣味に没頭したい、そんな生活がたった今。
『親戚の従妹がFGOのキャラ、ビリー召喚して契約結んじゃった(テヘペロ)』
的な俄かにも信じがたい、いや信じたくない、そんな出来事に現実が
(…これ、ボクの登場でもっと話がややこしくなるよねぇ……。)
因みにビリーも内心ではかなり落ち込んでいる。一晩寝ても状況は変わらず隣の部屋で昨日の女性、尾賀万理は寝息を立てていたし。
姿も変わらない、銃の取り出しも思いのままで、何も変わっていないのだ。
これから起こるであろう一波乱に、間違いなく何らかの形で関わる事になるか。それか、政治的な問題で自分は正体を隠されるか抹消されるか。
はたまた外国、主にアメリカ辺りに存在を知られて世界中が大騒ぎになってしまうか。
嫌な憶測ばかりが頭の中で飛び交い、更には不安の種としてもう一つある、彼女。尾賀万理の事だ。
彼女はこの世界で主人公をしている伊丹耀司の親戚、従妹として存在し、現マスター。
雰囲気、見た目からして明神が用意したのかと考えたビリー、それとも自身の出現で歪んだ世界に元から居た存在なのかと思考を巡らせるが答えは出るはずもないので考えるのを放棄する。
彼女の潜在的な魔力の保有量が多いのか魔力は微量ながら彼に供給されており、疲れた様子は昨日寝るまで見えなかった。まぁ別の疲れは見せていたが。
伊丹から事前に聞いた話では大人しい女性らしく、騒がしい事には無縁なタイプらしい。
「……あっ、万理ちゃん。起きた?」
「………………ん……。おじさん、なんでいるの?」
突然の伊丹の言葉に天井を見上げていたビリーは視線を戻すと、そこにはドアを開けて半開きの瞼を擦りながら寝癖だらけな尾賀万理の姿があった。
一見して明らかに寝起き、朝に弱いタイプなんだろうなとビリーは一人思うとさりげなく視線を逸らした。
理由は明確。
「何でって……。万理ちゃん、とりあえず部屋に戻って着替えてきて?」
寝起き、着替えなし。そこから導かれる答えは自ずと出るだろう。ワイシャツ一枚、かなり無防備な姿で登場した彼女。
伊丹は至って冷静に言葉を返しながら顔を逸らしているビリーを見て一息つく。
年頃の女性、寝ぼけているとはいえそんな姿で簡単に人前に出てはいけないだろう。
(……………ボクは何も見ていない見ていないみていないみていない。)
寝ぼけの万理よりもクールな表情で内心は動転しているビリー、それも仕方ない、彼の意識は少年のままで大人のビリーではないのだ。
「……………? …………、………ッ!?」
そしてしばらくして今の状況に気づいた万理は二、三回彼らを交互に見ると顔を真っ赤にして慌ててドアを閉めて引っ込む。
大きなため息を吐く伊丹、未だ内心大慌てのビリーの二人を残してその部屋は静寂に包まれた。
『夢じゃなかったぁぁぁぁぁぁ!! 見られちゃったぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
隣の部屋から聞こえる悲鳴に伊丹は何とも言えない顔で机に突っ伏し、ビリーは風に当たろうとベランダに歩き出した。
彼らの苦悩は続く……。
◇
『次のニュースです、今から丁度一週間前になります。銀座事件で関係しているとされる帽子の男の情報が入りました。』
「イタミー。本当にいい加減情報規制しないと世界中が大騒ぎになるよー?」
大型のテレビ前で帽子の男こと、ビリーが呑気にそんなことを口にした。
場所はホテルの一室、変わらずそこに滞在しているビリーと万理の所に護衛兼、万理の保護役として共に滞在している伊丹はめんどくさそうにその視線をテレビから天井に移した。
「もう知らないよ、俺はもう何回も上に報告したし。情報規制も入ってるはずなのにやってるんだもん。」
「おじさんも疲れてるんだね……。」
「万理ちゃん程じゃないよ、どう? 落ち着いてきた?」
何処から手に入れたかビリーはポップコーンを片手に床に胡坐をかいてニュースを見ており、その後ろで伊丹、万理が机で茶を飲んでいる。
あの寝ぼけから数日、最初は政府からの取り調べ、ビリーとの関係など事細かく毎日ゆっくりと取り調べを受けてきた彼女は、最初の頃よりも落ち着きを取り戻しメンタルも回復しつつあった。
それでもあの一件の出来事は根強く彼女の心に住み着いており、あまり思い出したくない出来事であるらしい。
会社の方は政府の者から連絡が行ったらしく暫くは休業になったとのこと。
「うん、取り調べの人も優しくしてくれるから…。」
「そうか、良かった。」
「マスター。本当に大丈夫かい? 何かあったら呼んで。」
そういって万理の身を案じているビリーにも取り調べはされており、最初はメンドクサイと渋ったがイタミと万理に言われとりあえず取り調べを受けている。
最近では自分がゲームキャラクターと自覚しているかどうか等と聞かれるようにもなっていた。
その辺の事にはありのまま話してはいるがまだ疑われている節はあるようで、まだ拘束は二人とも解かれていない。
「………ありがとう、でももう銃は使わないで欲しいかな?」
「えっ!? ボクにそんな事言うの!?」
「だって、今の日本には必要ないもの。ね?」
儚く笑顔でこちらに笑いかける万理にビリーは驚きながらも渋々銃をしまう。万理自身も最初は突然現れたビリーの事がよく分からなく。
何処からともなく現れるビリーに盛大にビビッて腰を抜かしたり、寝起きに無防備な姿で出くわして悲鳴を上げたりと散々だった。
(……何か、所長のイメージが強いから優しく諭されると何も言えないんだけど…。)
(でも、本当に落ち着いてきたみたいでよかった。話しかけるだけも一瞬飛び上がるんだもん……。)
それでも数日でビリーの努力もあり普通に話を出来るまで仲良くなってきている。
もちろんビリーがどういう存在なのかも説明済みで、その辺の詳しい設定なんかは伊丹によるFGO実戦で理解済みだ。
最近では少しずつだが笑顔を彼に向けて話すようになり、幼い頃の万理を知っている伊丹からすれば本当に安心している。
『―――そしてこの帽子の男は銃を片手に、一般市民と門の向こうから現れた軍団の間に割って入り。自衛隊が駆け付けるまでその場で戦い続けたといわれています。』
そんな時にテレビでは銀座事件での動画が流されていた。画質がすごく荒く悲鳴などが聞こえ揺れている映像には黒い帽子と金髪の人影が見て取れた。
聞こえにくいが銃声らしき音も聞こえ、ビリーの姿が度々移りこんでいる。
『本当にそんな事が可能なんですかね? だってあの軍団はモンスターやらドラゴンやらが混じっていたって話でしょう? そんな中で拳銃一つで戦えますか?』
その映像の後にはコメンテーターらしき男とニュースキャスターにカメラが向き話し始めた。
男の顔には嫌味たらしい表情が浮かんでおり、明らかにこの映像と話を嘲ていた。
『普通ならあり得ない話ですが、実際に証言は幾つもあるようでネットの書き込みや投稿された動画も多いんですよ。』
『それにしたってあまりに現実離れしすぎていませんか? 銃一つで軍団を倒せるならとうの昔にこの世界に戦争はありませんよ。仮にこれが本当でも帽子の男がやったことは大量殺人じゃないですか。』
わざとらしく肩を竦めて男は笑う、こういう出来事にはこんな言葉は付き物だ。
『そんな人物がいるなら私は早く捕まえてほしいですね、一部ではこの帽子の男を英雄視する声も上がっているそうで。大量殺人犯を英雄扱いするんて寒気がしますよ。』
(ホントに英霊なんだよなぁ………。)
テレビのコメントに伊丹はそんな事を考えて首を振る、仕方ない事とはいえコメンテーターの言葉は間違ってはいない。画面の下に流れる視聴者の言葉は荒れに荒れてはいるが当の本人は素知らぬ顔だ。
(まぁ、そういわれても仕方ないね。その通りだし。)
して本人も気にしていない様子でポップコーンを頬張っている。彼も数日で気を取り直し殺人を犯した事も受け入れている。
本来そんなに物事を気にしない性分の彼はどうでもよさそうだった。
「………酷い言いようだね、この人。……ビリーさんが居なかったらもっともっと被害者が出たかもしれないのに……。」
だが、不意に聞こえたマスターの言葉にビリーは思わずポップコーンの手を止めてゆっくり振り返った。
悲しそうに影を落とした彼女に伊丹とビリーは苦い顔をしている。
「……………そうだねぇ、ちょっと恩知らずかなぁ。なんて…良いんだよマスター。」
そんな彼女にビリーは立ち上がってにこやかに笑って見せて言葉を返した。
「…え?」
「ボクは誰かに認めて欲しかったとか持て囃されたくてあの場に召喚されたんじゃない、ボクがそうしたいからそうしたんだ。」
「ボクは無法者、ボクはボクのやりたいようにやって生きてきた。あの場で君を助けたのも自分がそうしたいからそうした。それだけなんだよ。」
「他人がどう言おうが関係ない、連中の言葉なんか気にしていたら疲れちゃうよ?」
「「…………」」
「あれれ? 二人とも今日は疲れたのかな? それじゃボクは一足先に寝ることにするよ。お休みー。」
ビリーの本心の言葉を聞いた二人は何も言わない、それを見たビリーはハッとして笑顔で明るくその場から姿を消した。
「……ビリーさん、本当に気にしてないのかな?」
「…どうだろうな…。元は昔の偉人、それなりに波瀾の人生を歩んできたんだろうけど。誰かを助けたのにあんな言い方されたら誰でも傷ついちゃうんじゃないかな。」
この数日でビリーと過ごしていた二人はその人柄をなんとなく知っている、陽気で優しい人物で確かにあの場でたくさんの人の命を救った英雄であると。
そんな彼が悪く言われているのに納得がいくわけもなく、二人して彼が傷ついていないか心配だった。
そして、その数日後。
封鎖された筈の門は何の前触れもなく、突然。
強引に開かれた。
門の向こうはちょっぴり待って下さい……………。
そろそろ平均、下がりますよね………?(脅え)