東方超人記   作:銀剣士

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第十一話

明くる日、霊夢は朝のお務めを終えると、隼人と神社上空に居た、向かう側には魔理沙と萃香、スキマに腰掛ける紫。

 

「隼人さんに弾幕ごっこ教えるだけだっていうのに、暇な連中ねぇ」

 

「良いじゃないか、隼人がどんな弾幕放つのか観てみたいんだし」

 

「そうそう、それに……霊夢が真っ先にお楽しみなんてずるいんだぜ?」

 

基本から教えるのだからお楽しみも何も無いだろうと思いはするが、ちょっと楽しみではあるので否定もしない。

 

「じゃあ先ずは基本弾幕からなんですが、そもそも気弾を撃てなければ弾幕も何もないので、気弾を撃つ練習から始めましょうか」

 

「気弾……こうして飛んでいる応用で良いのかね?」

 

「そうですね、それを弾にして撃ち出すように……」

 

 

 

 

扇状に拡がる気弾を慣れた動きで避ける霊夢に、隼人は素直に感心し、安全マージンはまだまだたっぷりといった様子は崩れそうにない彼女に、敬意さえ覚える。

 

恐らく、いや、確実に、見学している三人も、霊夢同様の技量はあるだろう、それは先日見上げた魔理沙と萃香の弾幕ごっこからも伺えた。

 

「いやはや、一切当たる気がしませんな」

 

「当然ですわ、霊夢は歴代の巫女の中でも天才中の天才、努力少なくとも場数は踏んでおりますので、あの程度は軽い軽い、もっと濃い弾幕であれこなして見せるでしょう……それよりも、昨夜のお話通り、近い内に隼人殿には自警団に入団していただきたく思っています、入団を決意なされたならば、寺子屋にお向かいくださいな」

 

既に慧音には話を通してあると、紫は微笑む。

 

「遅いと不味いようですな?」

 

「……些か、とだけ」

 

「せめてスペルカード使えるようになってからにしていただけますか?」

 

霊夢の言葉は、隼人が力不足だからではなく、強すぎる事への懸念だろう、だからこそ弾幕ごっこを覚えてもらう事を先決に行動してもらいたいのだ。

 

博麗の巫女の立場とは、人に、妖に、傾いてはいけない無二のもの。

 

中立ではあれ、妖怪の側に重きを置く紫のようにはなれない。

 

中立ではあれ、人間の側に重きを置く魔理沙のようにはなれない。

 

確かに幻想郷に異常をきたす異変があれば解決に向かう、だがその異変も、引き起こす者が主に妖怪だと言うだけだ。

 

人が起こすのは事件であり、里の者が主に解決するが、度を過ぎれば霊夢が出張り、霊夢に『向かないもの』であれば紫が対処する。

 

そうして調和し、安定している幻想郷に『人間であり神仏になれる者』である隼人が、弾幕ごっこを知らないままに生活すればどうなるか、想像さえしたくはなかった。

 

「勿論、流石にそこまで急かせるつもりは無いから安心なさいな、霊夢」

 

「……別に安心してない訳じゃ……」

 

口ごもる霊夢を抱き寄せ、紫は満足そうに笑みを浮かべた。

 

「ちょ……もう、続きやるんだから離れなさいってば」

 

頬に紅が指す顔で、紫を引き離す霊夢に魔理沙からちゃちゃが入り、霊夢から高密度の弾幕が放たれた。

 

間近で展開するその弾幕は美しく且つ避け処が難しい。

 

隼人は幻想の調律者が使う弾幕の威力を確かめる為、幾らか手で受けながら魔理沙を見ると、慌てる様子も見せず流麗に避けているのが見えた。

 

(しかし……この威力は……)

 

一撃一撃に乗る力は恐らく野球で投げられる120km程度の硬式ボールはあろうか、これでは当たり処が悪ければ人間であれば死ぬこともあるだろう。

 

ごっこと言うには過ぎた威力……とも言えない、主に力ある妖怪が手加減の為に使っているのだ、ならば妥当と思うほかないと、自身を納得させる。

 

「さすが隼人と言うべきかな? 霊夢の弾幕を素手で受け止めるなんて、普通は出来ないしやらないよ」

 

萃香の呆れたような笑顔のその瞳、鬼の闘争本能が吹き上がっているのが見える。

 

「あ、実際に行う通常ルールの弾幕ごっこでは、弾を受けたりしちゃいけないよ、避けながら攻撃、これが基本」

 

一発でも当たり判定に貰えば残機が減る、とよく解らないことを言われたが、そう言うものかと納得しておく。

 

「基本ルールと言うことは、他にもあるのかね?」

 

「あるよー私が一番好きなルールが」

 

近接弾幕戦、俗に格闘ルールと呼ばれる弾幕戦。

 

闘うものは特殊な結界札を身に付け、その札が完全に燃え尽きれば勝負ありと言うものである。結界札は博麗謹製であり、格闘ルールでの弾幕ごっこ以外では作動しない為悪用は出来ない。

 

通常弾幕戦と同じく、こちらにもスペルカードが存在するのだと萃香は言い、隼人に期待の目を向ける。

 

「はぁ……先ずは通常弾幕戦のスペカが先よ、近接弾幕戦なんて滅多にしてないんだから……ね?」

 

萃香に向けられた霊夢の笑顔は、威圧と共に問答無用と語る。

 

「おお怖い怖い、霊夢が怖いから大人しくしとくよ」

 

「ま、その代わり近接弾幕戦の指導は萃香にやって貰うわ、あんたの方が得意でしょ?」

 

その言葉に、萃香は霊夢に抱き付いて礼を言うが、鬱陶しいとばかりに引き剥がされるも、嬉しそうである。

 

「さて、それじゃ萃香待たせるのもあれですから、続きを始めましょうか」

 

「ですな」

 

 

 

 

基本弾幕を繰り返し練習して、弾幕の密度を上げることにも大分慣れてきた。

 

「うん、そろそろスペカ作ってみましょうか」

 

「おお、ついに隼人もスペカデビューか!」

 

盛り上がる魔理沙と萃香を余所に、霊夢は数枚の何も書かれていない札を隼人に渡して説明を始める。

 

曰く白紙の札に技や術の形を封じ、使うときはそれに弾幕の応用で気を流し『宣言』するのだと言う。

 

発動時の効果音が鳴る程度の物で、段幕自体は自分が出すものだそうだが、初心者向けのスペルカードには、弾幕形成補助の効果もあるのだとか。

 

「試しに一枚、作って使ってみてください」

 

「ふーむ……ではこれかのう」

 

気を流し、白紙のスペルカードに浮かんできたのは、数え貫手であった。

 

「数え貫手……ですか、本来はどんな技なんです?」

 

「見てみるかね? では萃香、すまんが受けてくれぬか」

 

「勿論構わないよ」

 

向かい合い、隼人が合図を出せば萃香が身構える、そして繰り出される四回の貫手。

 

その何れも萃香は受けるが、もし『本来のまま』で放たれていればと、背筋に冷たい汗が流れる。

 

端で見ていた霊夢達には解らなかったのだろう、いまいち理解出来ていないようだ。

 

「今のは隼人が手を抜いてたからね、見た目の型しかしてないから……本気でやられてたら、この手は……いや、私は今頃永遠亭まっしぐらだね」

 

笑いながら言う事かとも思いはするが、霊夢は簡単な返事を返すに止まった。

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