東方超人記   作:銀剣士

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第十二話

「さて、それじゃ作ったスペカも使って一回模擬」

 

「私私!私がやるぜ!」

 

被せぎみに魔理沙が手を挙げ、役目は渡さないとばかりにと距離を取る。

 

「ほっほ、血気盛んじゃな」

 

「まったく……じゃあ魔理沙とお願いしますね」

 

「うむ」

 

魔理沙の対面に向かう隼人の背を、紫は真剣な面差しで見やる。

 

「……どうしたの?」

 

「真価を僅かでも見られればと思ってね」

 

「真価……ね」

 

弾幕ごっこは女子供、おバカな妖精でさえこなせる簡単なもの。

 

しかし、その実元来の力量差が如実に弾幕の差として表れる。だからこそ、紫は見ておきたいのだろう、生前武勇を誇り、神仏と化せる隼人の『力の一端』を。

 

一日も経ずに空を飛び、弾幕を放ち、スペルカードも作る、霊夢に劣らない才を見せられはした、萃香も『本気』で闘いたいと願う、加減をした技を見せて貰いもした、身体能力もある程度を見た、だが、紫はまだ見ていない。

 

風林寺隼人の『闘う姿』と言うものを。

 

竹林や夕刻の出来事では垣間見た、等とは言えない。

 

「行くぜ!」

 

気合いのはいった魔理沙の声と共に、二人の基本弾幕が展開された。

 

 

 

 

「おーいてて……」

 

撃ち落とされたのは魔理沙だった、流石に本気でやった訳ではないとは言え、落とされるとは思ってもいなかったと魔理沙は霊夢に溢す。

 

「あの図体なのに判定は霊夢より小さいとかアリかよって話だぜ……」

 

そう、魔理沙の弾幕はすべて胡散臭いほどに小さい(僅かな)判定の隼人に、一度も当たることはなかった。

 

その胡散臭い当たり判定と思われる隼人であるが、正直言えば、当たり判定その物はこの場に居る誰よりも大きい、単に小さいと思われる程の速さでかわしているだけなのだ。

 

「にしても驚きましたわ、空中においてあんな速さで動けるだなんて」

 

「皆出来るのではないのかね?」

 

出来る出来ないで言えば、出来るものの方が圧倒的に少ないだろうと紫は口にした。

 

通常弾幕戦の場合、弾幕の軌道を見つつ次の逃げ場を探す、その連続の中で相手にも同じ事をさせる、と言うのが流れであり、隼人のように目視で残像が残るような速さでの移動をするものなど居ない、中には自身の能力で安全確保しつつ……というのも居るには居る。

 

「んでも当たり判定そのものまであんな小さくするなんて、普通は出来るもんじゃないぜ?」

 

「どうやればあんな動きが出来るんです?」

 

「やっていることは簡単じゃよ、自分の気弾を足場に跳んでおるだけじゃ」

 

『飛ぶ』ではなく『跳ぶ』……つまりはジャンプしているということだと、隼人はあっけらかんと答えるが、それを聞いた四人はただ呆ける事しか出来なかった。

 

魔理沙はそれでも興味があるのか、真っ先に隼人に具体的に説明を求めた。

 

その説明を端で聞いていた三人は各々で感想が違う、霊夢は『無理』と断じ、紫はそもそも必要としない為素直に感嘆を溢し、萃香は『勇儀』なら出来そうと笑う。

 

そして魔理沙は、魔法の研究の傍らで習得してみせると息巻いた。

 

「ほっほ、その道は険しいぞい?」

 

「へっへーこう言うのは困難なほど面白いんだぜ!」

 

困難を楽しめる、隼人はそう言った魔理沙に好感を抱くのだった。

 

 

 

 

近接弾幕戦、萃香はこの弾幕戦が好きだと昼食をとりつつ熱く語る。

 

「一番の魅力はやっぱり、擬似的にとは言え対等な肉弾戦が出来るってとこに尽きるね」

 

「この札のおかげと言うことじゃが、お主の打突も軽減されるのか」

 

「スッゴいもん作ったもんだよねぇホント、流石に『全開』って訳にはいかないけどさ、それでも『本気』は出せる、鬼にとって人相手にこれが出来ることがどれ程嬉しいことか」

 

満面に笑みを隼人に見せたかと思えば萃香は霊夢に向き、今更ながらと前において頭を下げた。

 

「霊夢、あんたのお陰だよ、こうして私が……いや、鬼が人とまた闘えるようになったんだ、勇儀も感謝してたよ」

 

「別にあんたら鬼の為に作ったルールでもないわよ、普通の弾幕戦が苦手な妖怪からの打診が主な理由だし」

 

そうは言うものの、頬が赤く染まっているのを見逃す者は居ないが、それに触れる野暮天……

 

「お、照れてんのか霊夢」

 

は、居ないわけがなかった。

 

「可愛いわねぇホント」

 

「ほっほっほ」

 

 

 

 

お天道様がお空のてっぺんを越えた頃、紫は式に呼ばれたからとスキマに消えていき、魔理沙もそろそろ行くぜと残して何処かに飛んでいった。

 

博麗神社に残った萃香は、軽い練習と言えどもいよいよ願った隼人との勝負に、瓢箪を傾ける事も忘れて今か今かと準備運動をこなしており、隼人もが支度を終えて、霊夢に行ってくると伝えれば、待ってましたと萃香は隼人をかっさらうように空へと舞い上がって去っていっく。

 

「……無茶、しなきゃ良いけど」

 

ため息をこぼして、霊夢は後を追う。

 

あくまでも練習なのだ、水を差す役も居るべきだろう、そう思ってのことだった……だが、ふと鳥居を見れば、珍しい来客に眉をしかめて、神社へと戻る。

 

 

 

 

「さ、ここら辺が良いかな?」

 

連れてこられた場所は一面向日葵の畑を越えた、手付かずの丘。

 

「ずいぶん開けた場所じゃが……練習で済ませるつもりではあるんじゃろ?」

 

「流石にね、でもまぁ……手本とか色々派手になっちゃうし?」

 

どんな手本なのかは見てのお楽しみと言われれば、隼人はでは楽しみだと笑って見せる。

 

互いに距離を取る前に、萃香は隼人に近接弾幕戦の要、専用結界の最後の確認を行う。

 

「ダメージが無ければ白、で受けて耐久値が落ちる度に青、緑、黄、赤となって、ゼロになれば黒くなる……じゃったな」

 

「そう、で、その状態は内外の攻撃を完全に無効化出来るんだよね、残心って言うんだっけ? それを応用したってさ」

 

決着の後、不意打ちを防ぐために、そこまでの機能を一つの札に持たせる霊夢の技量には、正直紫も驚いたと萃香は当時を思い返して笑い。

 

「さて、それじゃあ始めようか、近接弾幕戦の基礎弾は、放つんじゃなく手や足なんかの攻撃部位に纏わせるんだ、こんな風に」

 

そう言って、萃香は両の手足と肘膝に光を纏う、あれが基礎弾なのだろう、恐らく結界はあれに反応して耐久値を減らす使用なのだと隼人は推察、あれ以外の物理的な接触攻撃では耐久値は落ちることは無いのだろう。

 

では投げや絞め等はどうかではあるが、折角の練習なのだから試せば良いと萃香に言われてしまえば、頷く他はない。

 

互いに距離を取り、結界を張れば準備は完了。

 

「風林寺隼人」

 

「伊吹萃香」

 

『いざ、参る!』

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