東方超人記   作:銀剣士

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第十三話

「んで、わざわざ菓子折りまで持ってなにしに来たの、幽香」

 

神社を訪れたのは四季のフラワーマスターこと妖怪、風見幽香その人。

 

「人里で見かけたおじいさんを訪ねたつもりなのだけれど、ちょうど鬼に持っていかれてしまった様ね?」

 

「ああ、って言うかよくここに居るって……そう言えばあんたって」

 

四季のフラワーマスターの名に恥じない能力として、植物と意思を交わす事が可能であると、霊夢は思い出す。

 

「ええ、その通りよ、草木に訊ねてここに来たの」

 

「……なんの目的で?」

 

「面白そうだった、ではいけない?」

 

普段であれば帰れと一蹴するだろうが、幽香の目を見て言葉を呑んだ、いや、呑まされてしまった。

 

そこにあった目は、実に純粋な光を湛え、霊夢を見ている。

 

主に残忍だの無情だの残虐だのUSCだのと謂われる幽香ではあるが、今の彼女は無垢な少女のよう。

 

「面白そうって……」

 

「言葉のままよ、あのおじいさんと『遊べたら』きっと、とても面白そうだと、里で見て思ったのよ」

 

じゃなければわざわざこんな神社に足なんか運ばないと、言い捨てた幽香に対しさしもに声に棘を含ませて『こんな神社で悪かったわね』と幽香を睨むも、幽香には心地好い視線であった。

 

「ま、そんな遅くはならないと思うし、あんたが良ければここで待ってれば?」

 

「そうね……じゃ、庭の植物見ながら待たせて貰うわ」

 

 

 

 

隼人と萃香がすっかり汚れて戻ってきたのは霊夢と幽香が夕食を終えてすぐ。

 

幽香を一人にするのも何となく嫌だった霊夢は、二人の元に行くのを止めていた。

 

どうせ汚れて帰ってくるだろうと、風呂を沸かしておいたのは正解だったと呆れる霊夢に、幽香は微かな笑みを湛えてお茶を啜る。

 

「いやーいい湯だったよ、流石私の好みを把握してくれてるね」

 

「あら鬼さん、おじいさんは?」

 

「おお、誰かと思えば花妖怪じゃないか、隼人目当てかい?」

 

勿論と微笑むその顔に、噂に聞く様相は欠片もない。

 

「彼なら今頃のんびり風呂に浸かってる頃さ、少し武術の鍛練してから入るって言ってたしね」

 

武人(神)の鍛練を見ようと思いはしたが、そんなものを見てしまえば、きっと止まれなくなると解っている。

 

近接弾幕戦の練習でさえ、自重するのにどれ程己を削ったことか。

 

(おかげで風呂が心地良すぎだった)

 

「とりあえず夕飯用意したから、食べて流しに入れといて」

 

「用意がいいねぇ、さすが霊夢」

 

言いつつ卓を見渡せば、あるべき食器が一つ無い事に気付く。

 

「あのー霊夢さん、私のぐい飲みは?」

 

「夕飯のあとお楽しみがあるんだけど」

 

「後で呑む楽しみってのもありだね」

 

瓢箪を置いて箸を持ち、いただきますと呟いた。

 

 

 

 

隼人が姿を見せたのは、萃香が食事を終えるとほぼ同時、霊夢の後ろに付き添う形で部屋に入ってきた。

 

「おや、お初に見える方のようじゃが、霊夢殿の御客かな?」

 

その目が先ず捉えたのは、縁側で草木の声に耳を傾けていた幽香。

 

「客は客ですが、霊夢ではなくおじいさん、貴方を尋ねてここに」

 

「ふむ、では自己紹介と参りますかな、儂は風林寺隼人、ここ博麗神社にて暫く居候させてもらっております、ご覧の通りのじじいですじゃ」

 

「これはご丁寧に、私は『太陽の畑』を管理しております、風見幽香と申します」

 

太陽の畑とは何かと問えば、一面の向日葵畑だと微笑む幽香に、隼人は彼処かと合点がいった。

 

「ご存知でしたか」

 

「今日萃香に連れられて向かった先の途中に見事な向日葵畑が見えましたのでな、時間がとれれば行ってみようと思っておったのです、そこの管理者殿が赴いてくださるとは思いませんでしたがのぉ」

 

「里で一目見た折り、これはぜひともご挨拶をと思いまして」

 

その言葉の奥に潜む感情、瞳に宿る僅かな狂気を見る。

 

それは生前に数えきれぬほどに見た物、そしてこの幻想郷においては近しく知り合い、簡単にではあるが拳を合わせたのんべぇの鬼が常に宿す物。

 

『闘いたい』

 

燻り、半ば諦めていた。

 

『強い人間と、命を賭して闘いたい』

 

その欲求。

 

畑の向日葵にお痛をする人間もこの所居ない、居ても弾幕で追い払う程度、度が過ぎれば畑の栄養源にはするが、それこそ居はしない。

 

博麗の巫女や普通の魔法使いとは弾幕ごっこが楽しい位で、命を賭ける様なことなど無いし、その辺りの妖怪何てつまらない。

 

賢者や和尚、亡霊の姫に竹林の姫や薬師、天人は滅多に会うことがないし、わざわざ此方から赴いてまでというのは嗜好に添わない。

 

だが、先日里で見掛けた隼人は『赴く価値』があると踏んだ、そう一目見ただけではあるが、その価値を見出だす事が出来た。

 

肉体が、ではない、その醸す雰囲気が、求める『人の猛者』そのもの。

 

だからこそ、ここに来たのだ。

 

「言っとくけど、隼人さんとの『真剣勝負』はまだダメよ? 隼人さんが里での生活拠点を得られて落ち着いた後で、萃香とやり合う予定もあるし」

 

その言葉を受けて、萃香は幽香に先んじた事に笑みを浮かべ、幽香は先んじられた事にさして思う事はない様ではある。

 

あるのだが、あまり上機嫌になる萃香には思う事があるのか、ついぞ殺気を萃香に向けて反応すればそれを消す。

 

何度かそれを繰り返した結果だけを伝えれば、霊夢に二人とも叩き出されたとだけ記す。

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