東方超人記   作:銀剣士

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第十四話

翌朝、隼人は慧音の元を尋ねる為、一路里へと向かっていた。

 

何故か幽香も共に。

 

霊夢に萃香と共に叩き出された後、萃香と賭けをして弾幕ごっこを行い、勝負に勝った幽香が萃香に求めた事、それはこうして隼人と行動を共にすることであった。

 

『儂は構わんよ』

 

と、隼人本人が言ったのであれば仕方なく、萃香は今頃博麗神社でごろごろしていることだろう。

 

「里の花屋に用がありまして」

 

どうせならと、言うのは本音か建前か。

 

「では里の入り口までと行ったところかな」

 

「ええ、隼人さんが向かう寺子屋と、用事がある花屋はほぼ真逆に位置していますから」

 

朝露も陽に乾いた街道を歩く二人の様子を、幽香を知る者が見れば、その『異様』にすわ異変かと疑うのでは無いだろうか。

 

年寄りとは言え、男の、人の、三歩後ろを歩くその姿。

 

これは幽香自身が自制を効かせる為、隼人の観察の為にしていることで、何も大和撫子を演じている訳ではない。

 

一挙一動から得られる情報は多い、本人が意図せず隠そうとしている訳でなく、自然と隠れている見えぬ力の底に、幽香は自然と笑みを溢すが、これも端から見れば『二人で歩いている』事に、微笑んでいるように見えるだろう。

 

だからこそ、朝刊を配り終え、里で朝食を済ませた天狗がたまたまその場面に遭遇し、カメラのシャッターを切るのも、無理はない。

 

「いやーあの花妖怪があの方と歩いているとは……突撃は……無理っぽいですねぇ」

 

伝わるのは幽香からのプレッシャー、来たら殺すと言わんばかりに自分にだけ殺気が向けられては、行くのは流石にと肩を竦めて飛び去った。

 

気配が無くなった事で、幽香は改めて隼人に意識を向け、ゆったりとした朝の散歩を楽しむのであった。

 

 

 

 

さて、殺気を向けられ引いた文ではあるが、折角のネタを掴んで放す程耄碌はしていない、と言うかたかだか四桁の年を越えた程度で耄碌するなど天狗の名折れである。

 

「はてさて、こんな時は霊夢さんのところに行くのが良いですね、邪険に扱われるとは思いますが行かなければネタを逃がすことになりかねませんし」

 

善は急げと神社に向かう文の目に、魔理沙の後ろ姿が映り、いたずらを思い付いたかほくそ笑んで、そのまま気取られぬように近寄り、上から覗き込む。

 

「うぉあぁぁぁぁぁぁ……」

 

「あやっ!?」

 

驚きに集中を切らした魔理沙は重力に身を任せて自由落下を開始、幻想郷最速の名に恥じてはならぬと慌てて魔理沙を抱き止める。

 

「おまっばっあほぉぉぉっ!」

 

「すみませんすみません!」

 

目に涙を浮かべ、怒る魔理沙の機嫌を直すために、文は里一番の甘味処で奢ることとなったそうな。

 

 

 

 

「む?」

 

突然振り向いて空を見上げた隼人に、どうしたのかと問えば。

 

「いや、誰かの叫び声が聞こえたような」

 

「気のせいでは?」

 

草木を通して聞こえてきたのは、魔法使いと烏の声だけだ。

 

「ふむ、まぁ問題は無さそうじゃな」

 

緊急性を感じなかった理由は、幽香の言う魔法使いと烏が関係しているのだろうか。

 

気を取り直して歩を進めた先に、先日慧音との繋ぎを果たしてくれた妹紅の姿を捉え挨拶をと近寄れば、妹紅も簡単に挨拶を返してきた。

 

「これから慧音の所かい?」

 

「うむ、ちと自警団について聞きたいことが出来たのでな」

 

ふぅんと相槌を打ちながら、妹紅は幽香にも同じように聞いてみるが。

 

「里の入り口までは一緒よ」

 

と案外素直に応じてくれた事に、割りと驚きを禁じ得ず、思わず一歩後ずさる。

 

「……何かしら、その反応は」

 

「い、いや……まさか普通に答えるなんて思ってなくて」

 

「喧嘩ならお姫様に売りなさい、案内人」

 

「あっはっは、朝に済ませてあるからお昼過ぎまでお腹一杯よ」

 

妹紅の言葉に呆れ混じりの溜め息を吐き、もう興味はないと言わんばかりに里に向けて歩き出す幽香に、妹紅もさして追い縋る事もせず、同じように里に向かう。

 

果たして意気の合わなさそうな二人をよそに、隼人は自身が働くことになるであろう自警団について、先ず何を慧音に訊くべきかと、空を游ぐ鳥を眺めて考えていた。

 

 

 

 

「では隼人さん、私はここで」

 

「うむ、ではまたの」

 

里の入り口で幽香と別れ、妹紅と寺子屋に向かう道すがら、何やら人だかりが出来ていた。寄って話を訊いてみれば、朝っぱらから食い逃げしようとした輩が捕まったそうなのだが、その者は自警団員を名乗り、今は自警団を呼べと喚いているのだと言う。

 

「呆れた、最近ああいう手合いが増えてるんだって慧音が嘆いてたわ、実際に自警団の人間だった事もあるって言ってたけど、難儀な話ね」

 

里を守る筈の自警団、その構成員が里で不埒な騒ぎを起こす。

 

この所、妖怪による大掛かりな襲撃や大異変などもなく、基本的に平和な日が『続いてしまっている』が、小さな事件や、有名処がちょっと出張る様な中小規模な異変は勿論起きている、だからこそ、組織がこうも短い期間で荒むものだろうか、そうも慧音は口にしたと妹紅は言う。

 

「ふむ、確かにおかしな話じゃな」

 

組織の人間と言うものは規模が大きければ大きいほど、力(権力)が強ければ強いほど、中枢末端関係無く、確かに増長することもある、しかし、強大な力がすぐ側に在り、かつ襲われたり救われたりと何かしら里に干渉しているのが幻想郷の妖怪達である。

 

「まあ……紅白巫女や白黒魔法使いに触発されたバカって線が無い訳じゃないんだろうけど、どうしたって変化が早すぎるのは、私も同意見ね」

 

やはり、内部に入ってみるべきか、そう思いながら寺子屋の門を潜る隼人であった。

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