東方超人記   作:銀剣士

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第十五話

隼人が先ず慧音に伝えたのは、入団自体は構わないという意思だった。しかし、だからと言って慧音もこれを真っ向に受け止める事もなく。

 

「外部では解らないことを見るために……ですか」

 

その意思の一部を汲み取れば、隼人は素直に首肯する。

 

問題となっている自警団の内情、こればかりは如何に慧音と言えど、把握しきっている訳ではない。

 

組織の内情など、中枢に目端の利く立場でも完全に把握は出来ないだろうが、知る事は出来る。

 

「とは言え、入団したばかりでは、それほど深くは知り得ないでしょうなぁ」

 

「ではどうなさると?」

 

「なぁに、こう言うことは慣れておりますでな、お任せくだされ」

 

白い歯を見せて、にっかりとした笑顔を向け、隼人は次に住居と出来そうな物件について訊ねるのであった。

 

 

 

 

「今暫く……ですか、構いませんよ、見つからないのに出ていけとは流石に言えませんし」

 

自警団への入団を済ませ神社に戻った隼人が先ず行ったのは、霊夢への報告と再度暫くの居候願い。

 

特に断る理由もないので、霊夢はこれを快諾。

 

「いっそこのまま神社にいたら良いんじゃないかなぁいたっ」

 

就職祝いだと持ってきた酒を、一人で煽る萃香の額を手にある扇子を閉じて、軽く叩くのは紫。

 

「理由を伺っても?」

 

「うむ、慧音殿も言っておりましたが、些か不可解な事で、何でも宿舎長屋五十棟の空きが無いと言う話らしいのです」

 

「……成る程、確かに不可解な……」

 

自警本団員は紫が把握しているだけで三百前後、後は里の協力者で成り立っているのだが、本団員も協力者も、基本的には里に自分の家がある、詰め所に寝泊まりすることはあっても、基本的に宿舎長屋はほぼ無人の筈、では何故そんな宿舎があるのかと言われれば、それは紫が『連れてきていない』人間の仮住まいとして用意してあるからだ。

 

紫が連れてくるのは、基本的に外の世界で連れ去っても大した影響の無い『餌』となる人間が大半で、異変の起爆剤として連れてくる場合もあるが、そんな人間は僅かである。

 

そんな『外来人』の為に用意してある長屋が、慧音の申し出で自警団の宿舎としても利用されている訳なのだが……

 

「隼人さん」

 

「心得ておるよ、じゃがま……明日からじゃな」

 

「あら、何かしらご用でも?」

 

「うむ、実はな……」

 

明日からの自警団の異変は、その長屋の調査から始めることとして、隼人は美鈴への挨拶の為、紅魔館に今一度向かう旨を伝える。

 

「義理堅いと申しましょうか」

 

「ほっほ、それに道中で会ったチルノちゃんとも弾幕ごっこの約束がありますでな」

 

 

 

 

紅魔館へと向かう森の中、隼人は無数の氷を避けていた。

 

氷の主は勿論チルノ、本人も言うようにそれは加減がなされているのだろう、チルノの正面に位置していればさして苦労もなくそのスペルは避けられた。

 

「あたいのスペルを簡単にクリアした!」

 

「すごーい」

 

「儂のスペルも容易く避けられはしたがのう」

 

チルノとの弾幕ごっこは引き分けに終わっていた。

 

というのも隼人が巧く発現できたスペルカードは超技『数え貫手』の一種類のみ(easy)で、後の数枚は要練習といったところなのだ。

 

「今度はちゃんと出来るようになってくるのでな」

 

「約束!大ちゃん、覚えてて!」

 

「チルノちゃんもちゃんと覚えとこうよ……」

 

 

 

 

二人と別れ、紅魔館に辿り着いた隼人が目にしたのは、ナイフを額に刺そうとする咲夜と、涙目で防ぐ美鈴の二人の姿。

 

「ああ、これこれ、何があったのかね」

 

「おや、風林寺様これはお恥ずかしい、居眠り癖のある門番に躾を行っていたところでございます」

 

咲夜の手からナイフが放たれ、美鈴の頬をかするものの、その肌には僅かな擦過傷一つ付いてない。

 

「あ、危ないじゃないですかっ!?」

 

「刺さりもしないくせに避けるだなんて……」

 

「当たったら痛いんですってば!」

 

「お仕置きなんだから痛くしないと意味がないでしょう、ねぇ風林寺様?」

 

「まぁ、程々にのう」

 

ナイフを何処ぞにしまうその手慣れた様子に、いつもの事なのだろうと思うことにして、隼人は美鈴に無事弾幕ごっこ初心者になれたと伝え、美鈴はならばと弾幕ごっこを挑みかかる。

 

流石にチルノのようには行かず、それでも持ち前の身体能力で残機を減らすこと無く隼人がスペルを見舞う番となるが、いざ宣言と言ったところで美鈴が空を睨めば、魔理沙が勢いよく紅魔館に突っ込んでいった。

 

「……良いのかね?」

 

「……あぁっ!また咲夜さんに怒られる!」

 

駄目なようだと既にナイフが刺さった美鈴の頭を見て、苦笑を浮かべる隼人であった。

 

 

 

 

「不様を晒してしまったみたいで、当主としては恥ずかしい限りだよ」

 

とは咲夜に隼人を案内させて、黄昏のティータイムを洒落混むレミリアの言葉。

 

隣で同じく紅茶を楽しむフランは、それを聞いて笑いを堪えていた。

 

お腹抱えて笑っていたのは他でもないレミリア、その姿を思い出しているのだろう。

 

因みに美鈴は罰としておやつ抜きらしい。

 

「何時もの事さ、体裁としてのモノに過ぎないよ。 パチェには悪いが、美鈴がどんな理由をつけて魔理沙を見逃すのか、楽しまさせて貰っているのさ」

 

「美鈴がホントの意味で本気になれば、スキマ妖怪以外侵入出来ないと思うよ」

 

それを聞き、ふと竹林の姫君であればどうかと思い聞いてみれば答えは簡潔だった。

 

「ああ、竹取のか、出来るんじゃないか? 流石に永遠に身を置いて須臾に在るものまでは捕らえられないだろうね」

 

だが、それでも知覚は出来るのではとレミリアは続けた。

 

フランの狂気が成りを潜めるまで、一番フランの遊び相手になったのは誰でもない美鈴、その際彼女はフランに『破壊の目』を掴ませる事がない。

 

狂気に染まったフランはその際『壊せるのに壊せない、めーりんホント面白い』と、嗤ったのだという。

 

今でこそフランは落ち着きはしたが、狂気が溢れたときは美鈴が抑えるそうだ。

 

「美鈴にはホント世話になってるよ」

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