東方超人記   作:銀剣士

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第二話

石段の先には立派な鳥居、そこから見える境内は清掃がしっかりなされ、参拝客を気持ちよく迎えてくれる……のだが。

 

「ふぅむ、ワシら以外に参拝客が見当たらんが……」

 

「ああ、ここは大概こんなんさ、それでも訪れる者が居ない訳じゃないけどね」

 

鳥居をくぐり、辺りを見渡すも誰が居るわけでもない、だが確かに気配は感じる。

 

「巫女殿は休憩中かのぅ?」

 

「ああ、と言うか基本的に暇してると思うよ、こっちに来とくれ」

 

社に向かわず、母家だろう建物に向かう小町のその先に、見慣れない紅白の装束を纏った少女の姿。

 

「暇してて悪かったわね、サボり魔」

 

ジト目で睨む少女に、小町は特に気にするでもなく隼人を紹介する。

 

 

 

 

「ふーん……閻魔様の紹介か」

 

「人里で食い扶持と住まいが見つかるまでで構わないのじゃが霊夢殿、どうかね?」

 

事情の説明に合わせて、互いの自己紹介を済ませ、紅白の変型巫女装束を着た博麗霊夢の返事を促す隼人に。

 

「まあそれは構いませんよ、紫あんたも構わないわよね?」

 

そう快い返事をする霊夢は、隣に座る金髪の美女、八雲紫に問い掛ける。

 

「まぁ反対する理由もありませんが、里での暮らしに目処がたてば即時そちらに居を移してくださいな」

 

「うむ、それは違うこと無く約束いたそう」

 

そう言葉にして、隼人はこれから暫し世話になると霊夢と紫に頭を垂れる。

 

それに応える様に霊夢達も頭を垂れ、これからの事、何より幻想郷について詳しく教える運びとなった所で、小町と紫は帰っていった。

 

「さて、先ずはこの幻想郷という場所についてですが……」

 

成り立ちや特性、それから妖怪等人外の者と相対した時の事を、霊夢が語ったとき。

 

『やーそのじい様には無用の心配じゃないか?』

 

霧が萃まり、二本の角を生やした少女が姿を顕す。

 

「あら萃香、それはどうい……う……っ!?」

 

「先ずは自己紹介と行こうか、私は伊吹萃香、ご覧の通り鬼だよ」

 

そう口にする萃香から、一度も感じたことの無い威圧がのし掛かってきた。

 

自分がこうなのだ、客であり、今日から暫くの同居人のお爺さんは……と、どうにか目を向けると、平然と否、何処か楽しそうに茶を啜る姿が映る。

 

(ウソ……でしょう……なんでこんな……平気なの……!?)

 

意識がいよいよ飛びかけたとき、不意に威圧は止み、何時ものように瓢を傾けて中の酒を飲む萃香が、霊夢に向かって済まないねと呟いた。

 

「流石は伝説に読まれる伊吹童子、いや、伊吹萃香殿とお呼びした方が良ろしいかな?」

 

「萃香でいーよ、言葉もそんな気にしなくても良いさ、気楽にいこーぜ、じい様」

 

「く……全く……何なのよ今の……」

 

どうやら先程ので参ってしまったのか、ようやと身体を起こす霊夢に、萃香は悪びれず。

 

「気当たりさ」

 

とだけ告げて、もう何度目か傾けた瓢に蓋をして床に置く。

 

「じい様、弾幕ごっこと幻想郷に於ける決闘ルールに関して説明は受けた?」

 

「うむ、じゃが……ワシもせんといかんものか?」

 

説明によれば弾幕ごっこは女子供の遊びの延長だろう、第一隼人に弾幕を出せる気がしなかった。

 

実を言うと霊夢はこれに関してしなくても良いんじゃないかと思っていた、だが先程萃香の『気当たり』を平然とどころか笑みを浮かべる程の人物だ、いざ人外との勝負になった場合、戦えてしまうのではないか、そうなれば……

 

(……一応、教えた方が良いかしら?)

 

霊夢の代になって、幻想郷の人と人外の関係は大きく変わったと言える。

 

以前のように人が妖怪等を恐れることに代わりはないが、それでも殺し殺されと言うのは、人の目に映る前では少なくなった。

 

それは一重に今代博麗の巫女、博麗霊夢に因るところが大きい。

 

幻想郷に於て、人は幻想の住人にとって『糧』である、それは信仰、恐怖、そして血肉と様々に。

 

霊夢によってもたらされた『弾幕ごっこ』以前は、血で血を洗う、殺伐とした世界……とまではいかないだろうが、それでも人が、女子供が里の外を出歩くには少なくとも手練れの男が数人着いていなければいけないと決められていた。

 

妖怪側の視点で見ても、弾幕ごっこのルール制定は有り難いものと言える、弾幕ごっこのルールでつく決着は、弾幕の美しさという点もあり、力があれば良いというものでは無くなった。

 

中にはこれまで通り人を襲う妖怪等も居るが、そういった者は霊夢に警告(手ずから下す事もある)を受け、尚続くのであれば紫の出番となる。

 

「ま、あれじゃな、郷に入りては郷に従えとも言うし、必要であると霊夢殿が判断したのなら、教えてくださるか?」

 

「解りました、では明日から早速」

 

力で妖怪等に抗えるのであれば、それは最早妖怪同士のぶつかり合いである、それは、今の幻想郷では、遠慮してもらいたい。

 

「じい様、弾幕覚えたら私とやろう、ケンカもしたいけど、そっちは場所選ぶ必要あるからさ」

 

「場所選ぶって……萃香、あんた全力でやるつもり?」

 

「とーぜん!」

 

ふんっとふんぞり返った萃香の頭上の空間が裂け、夥しい目が見えると、そこから帰った筈の紫が姿を見せ、萃香にげんこつを落とす。

 

「ダメに決まっているでしょう、幾ら貴女の気当たりを受けて平然としていても、幾ら自身の意思で神仏に変生出来たとしても、彼は人なのですよ?」

 

結構な威力があったのだろう、頭を押さえて蹲りながら萃香はそれでも反論する。

 

「だからこそ、鬼の私が全力で戦いひゃひゃひゃ……」

 

「だから、ダメだっつってんでしょ、やるなら私と紫で結界張るからその中でやんなさい」

 

鬼の全開など、地上の妖怪を触発させるに十二分である。

 

「良いの?」

 

「ただし、風林寺さんの生活が安定するまではダメですからね?」

 

釘を指す紫にやや恨めしげな視線を向けるが、仕方なしと自己で治め、瓢の蓋を外して中の酒を煽る。

 

「よし、じゃあ……人里に行ったら先ずは上白沢慧音って、寺子屋で先生やってる女に会いなよ、人里で一番顔が利くから、色々世話になるだろうさ」

 

「上白沢慧音殿じゃな、あい解った」

 

『んじゃ、やりあえる日を待ってるよ』

 

霧となった萃香は、その言葉を残して姿を消した。

 

「では霊夢、風林寺さん、私もお暇致しますわ、またお会いしましょう」

 

「おお、八雲殿一つお伺いしたい」

 

空間に見える目の世界に踏み入れる紫に、隼人はその空間は何かを訊くと快く答えてくれた『これは、スキマですわ』と。

 

「……さて、気を取り直して、風林寺さん」

 

「何かな?」

 

「幻想郷にようこそ」

 

「暫く世話になりますぞ」

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