東方超人記   作:銀剣士

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第三話

明くる朝、境内の掃き掃除を買って出た隼人の前に、萃香がちり取りを持ってしゃがんでいた。

 

「……何やってんの?」

 

食事の用意を済ませて、隼人を呼びにきた霊夢が見たのが正にそれ。

 

「何って……ちり取り持ってしゃがんでるんだけど?」

 

「いや、そうじゃなくて……」

 

「まあまあ霊夢殿、手伝ってくれると言うんじゃし甘えても良かろうて」

 

朗らかに笑う隼人に毒気を抜かれた霊夢は小さくため息を吐き、仕方ないと言い、萃香にも朝食を用意すると伝えて戻っていった。

 

「おー……これは隼人のお陰かな?」

 

「ほっほっほ、さてどうかのう? ほれ、あと一息じゃ、終わらせて朝食に行こうか」

 

掃除を再開後、ふと影が射し隼人は空を見やる。

 

「でけぇ!?」

 

そこに居たのは、箒に腰掛けて宙に浮く、黒を基調としたエプロンドレスにも似た服を着た金髪の少女。

 

(ふむ、魔女っ娘か、漫画やらの世界にしか居なさそうなものじゃが、流石は幻想郷と言ったところか、しかし……初見の相手に『でけぇ』と言う辺り、なかなかお転婆な娘のようじゃな)

 

等と考えてる間に、白黒の魔女っ娘は隼人の前に降り立っており、箒を片手に自己紹介を始めた。

 

「私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ」

 

「儂は風林寺隼人、今日から暫くここで世話になるじじいじゃ、よろしくのぅ」

 

互いに歯を見せて握手を交わす二人ではあるが、その体格のあまりの違いに、何処か滑稽に見えて笑みが浮かぶ萃香。

 

(しかし……隼人の体格に近いとなると……鬼位にしか居ないんじゃないかな?)

 

もしくは、幻想郷に散らしたままの己を萃めて大きくなるか。

 

さておき魔理沙は持ち前の明るさと人懐っこさで、隼人と既に仲良くなっているようだ。

 

「ほう、魔理沙ちゃんは霊夢殿と親友と」

 

「霊夢に殿なんて付けなくても良いんじゃねーかな?」

 

「世話になっとる身じゃて、敬意を払わんとな」

 

かってーの、と言いはするものの、そういう人間は里に多いことも知っているからか、さして気にすることでもないと切り替えて、魔理沙は隼人に肝心の霊夢の居場所を問うが、返したのは萃香。

 

「霊夢なら朝食の仕度してるよ、私も食べてくから魔理沙もどう?」

 

「勿論相伴にあずかるんだぜ」

 

「あんたらそう言うのは家主から言われて決めなさいよ」

 

呆れたと言わんばかりの口調ではあるが、諦めても居るのだろう。

 

「魔理沙の分もあるから、食べるなら上がんなさいよ」

 

しっかり用意をしていたようだ。

 

「優しいのう、霊夢殿」

 

「あんなのでも友人ですから」

 

隼人に向けられたのは、満面の笑みだった。

 

 

 

 

「弾幕ごっこなら私も教えられるぜ?」

 

朝食後のお茶一杯を楽しむ最中、隼人の今日の予定を聞いた魔理沙からそんな言葉が飛び出した。

 

「あんた教えながら弾幕ごっこ出来るとか考えてんじゃないでしょうね?」

 

「そ、そんな事はないのぜ?」

 

あからさまな態度にため息を溢す霊夢に、隼人は実戦で鍛えると言うのはよくあることだと言うと。

 

「基本となる弾幕を教えてくださるか、霊夢殿」

 

そう続けた。

 

実戦で覚えると言っても基本的な事、この場合弾幕を放つ事が出来なければ意味がない、ならば先ずは霊夢との約束を果たしてからと、魔理沙に伝えると。

 

「解った、それまでは萃香と弾幕ごっこやってるぜ、良いよな?」

 

「やる理由もやらない理由も無いから良いよ、遊ぼうか」

 

そう言って二人は空高く舞い上がる。

 

「霊夢殿、弾幕ごっこは空でやるものなのかね?」

 

それを見た隼人の当然の疑問、それを霊夢はあっさり肯定した、基本的には……と。

 

「儂、飛べんよ?」

 

弾幕ごっこ以前の問題だった事が今解り、霊夢による空を飛ぶ為の訓練に切り替わったのは、言うまでもない。

 

因みに、食らいボムで辛うじて萃香を倒した魔理沙がこの事を知るのは少し後である。

 

「うーん、私は能力で飛んでますし、魔理沙も魔法ですから……あ、風林寺さんは『気』を扱う事って出来ますか?」

 

「『気』のう……こう、漫画等のようには扱えはせんが、まあ使えるよ」

 

「でしたら『紅魔館』と言う館の門番をしている『紅美鈴』を尋ねましょうか、彼女であれば或いは……」

 

こうして、空を飛ぶ練習は見送られ、紅魔館を訪ねるのは後日と言うことにして、隼人は人里へと向かうと霊夢に告げた。

 

「人里行くんなら私も行くよ、丁度好んで飲んでた酒が切れちゃったんだ」

 

「ん、伊吹瓢の鬼の酒じゃダメなのか?」

 

そう聞いてきた魔理沙に、萃香は人の作る酒の美味さを説いた、伊達に伝説に謳われる酒呑童子ではないのである。

 

「私は仕事あるから行けないわ、萃香、風林寺さんよろしく」

 

「ああ任された、魔理沙もどうだい?」

 

誘う萃香に、魔理沙は一瞬渋い顔を見せるも、たまには良いかと答え、人里には三人で向かうこととなった。

 

 

 

 

「良いところじゃな、空気も爽やかじゃ」

 

生前住んでいた世界では、田舎も田舎に行かなければ見られない日本の景色。

 

時折向けられる殺気が無ければ尚良いのだが、それらは萃香が散らしてくれているのでまあ良いかと、隼人は景色を楽しむ。

 

「空から一望する幻想郷ってのも良いものだぜ」

 

「それは見たいのぉ、紅魔館の紅美鈴と言ったか、その者に空を飛ぶ術を教えてもらえると良いんじゃがなぁ」

 

「美鈴なら教えてくれると思うぜ、寝てさえなきゃ」

 

まるで起きている方が珍しいと言わんばかりである。

 

暫く進み、枝分かれした道に差し掛かると、魔理沙が案内を始めた。

 

「この道を向こうに行けば、命蓮寺っていう妖怪も仏門に入ってる寺があるぜ、気が向いたら行ってみるのも良いかもな」

 

「確か毘沙門天が本尊だよ、居るのは代理だけど」

 

本尊の代理とはまた面白いものだと、隼人は笑う。

 

「因みに和尚はすげぇ美人だぜ」

 

「ほっほ、それは里の男連中にさぞ人気がありそうじゃな」

 

そう口では言うが、やはり気になるのは本尊代理と言う者の実力だろうか、武と財の神である毘沙門天の代理を果たす者、その武に期待したいと思うのは、隼人も武人であるからか。

 

(出来れば弾幕ごっこではなく手合わせ願いたいのぉ)

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