東方超人記   作:銀剣士

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第四話

「着いたぜ、ここが人里だ」

 

開かれた門の向こうには、江戸後期から明治初期頃と見受けられる町の様子が伺える、町行く人々が纏うのは着物や着流し、洋服はまず見ない分、魔理沙の格好がやや浮いて見える。

 

だが町の人々がそれを見て何を言うでもなく、魔理沙達を歓迎するかのような優しい声で挨拶をして過ぎていく。

 

「そんじゃ私は酒買いに行くから、隼人の事は任せたよ」

 

「慧音の所だっけ?」

 

「そうそう、んじゃまた後で」

 

鬼が町を歩いて行く、それを気にすることもない住人達、彼女が受け入れられているのか、妖怪等が町に居るのが普通なのか、何れにせよ壊滅的に関係が悪い訳ではないようだ。

 

「じゃあ行こうか、こっちだぜ」

 

「うむ」

 

そんな町の顔役とも言える上白沢慧音と言う人物、果たしていかなる人物かと、想像するに中々難しい。

 

しかしそんな思考もさして長くは続く事はない、どうせ直ぐに会うのだからと、町並みを楽しむことにした。

 

 

 

 

案内されて着いたのは、そこに着くまでに見た建物とは違い、塀に囲まれたそこそこに立派な建物。

 

「ここで慧音は寺子屋を開いてるんだ」

 

成る程、それならこの規模の建物も頷ける、隼人が改めて建物を見ていると、もんぺ姿の少女が二人に近づいてきた。

 

「あれ、魔理沙じゃない、珍しいわね慧音に用事……は隣のお爺さん?」

 

「如何にも、儂は風林寺隼人、お嬢さんは?」

 

「藤原妹紅、ここの主の友人よ、それで慧音に用事があるんでしょ? 良ければ取り次ぐよ」

 

なら丁度良いと魔理沙は隼人を妹紅に託す。

 

「ちょっと用事があってね、悪いんだけど妹紅、後は頼むよ」

 

そう言うや元来た道を戻って行く、それを見届けて、妹紅は慣れた様子で隼人を迎え入れ、玄関で少し待っていて欲しいと言うと、そのまま上がり、奥に姿を消した。

 

ふと見渡すと飾られている戯画が目に映る、画かれているのは『聖獣・白沢』のようだが、寺子屋の玄関には果たして相応しいだろうかと思うところで、奥から妹紅が女性を連れて戻ってきた。

 

「お待たせいたしました、上白沢慧音と申します、妹紅より私に用がおありだと伺っております、客間までご案内致しますのでご用はそちらで改めてお伺い致します」

 

「これはご丁寧に、儂は風林寺隼人と申す、お邪魔致しますぞ」

 

 

 

 

通された客間で、隼人は慧音に自身の出来事とこれからを説明する、それに応じて慧音は幾つかの職場で人手が不足している心当たりがあると伝えると、隼人に得意な事を問う。

 

「得意なと言いますか、生前によくしていたのはやはり世直し旅ですかな」

 

「世直し旅?」

 

「世には法が裁かぬ悪に苦しめられる者が居り、そういった者達を救い、悪を裁く、そんな旅をしておりましてな、時に依頼と言う形で受けることも数えきれませんな」

 

この言葉を受けて慧音は少し考え、妹紅を先に庭に向かわせると着いてきて欲しいと言い、客間を後にする。

 

「上白沢殿、いったい何を?」

 

「紹介しようと思う仕事の、まあ面接でしょうか、ああそれと私の事は慧音で構いませんよ」

 

「ふむ……そう言えば、幻想郷に来てからと言うもの、名前で呼んで良いと言われてばかりでしてな」

 

「ああ、特にこの幻想郷では名のある者は妖怪等が多く、その傾向が強いみたいで……とこの庭で、風林寺殿には自警団への入団審査みたいな事を行いたいのです」

 

慧音の言葉が終わり庭を改めると、妹紅は準備運動を行っていた。

 

「彼女に勝てと?」

 

しかし返ってきたのは否定の言葉、正確に言えば『妹紅を倒さず半刻戦って欲しい』との事。

 

「貴方の言葉を信じれば、妹紅一人倒すのに一秒も要らないでしょう、ですがそれほどの武を常に振るわれると、自警団の者達に驕りが生まれてしまうかもしれません、それは良くない」

 

幻想郷は基本として現世で行き場を無くした存在が生きるための世界、人里があるのはあくまでも神仏や妖怪等が存在するために必要な『畏怖』や『信仰』等をもたらす為に必要だから存在している、言い方を変えれば『牧場』なのだ。

 

しかしそこは人が住まう場所、ただ殺られるのを黙っている訳ではないし、妖怪達にはその抵抗こそが最も必要な『栄養素』と言える。

 

幻想郷は全てを受け入れる、それは間違いない。

 

それでも、それは人と人外のバランスが壊れなければの話であり、人が人外に『畏れ』を抱かなくなってしまうことは、あってはならないと、慧音は語る。

 

「ふむ、しかしそうと言うのであれば、儂は自警団に入らない方が良いのでは?」

 

「遅かれ早かれ、里で生きていこうと思っている貴方が、自警団の目に映るのは時間の問題、ならばさっさと自警団に入ってもらい、対害妖ではなく里の治安維持に専念して頂きたい」

 

そこでこの試験だと言う。

 

「妹紅は蓬莱人と言って、老いも死にもしない存在ではありますが、身体能力自体は上位妖怪には届いていません、自警団の者達が数人でかかれば制圧出来る程度です、そんな彼女と『何とか戦える』程度の加減を得てくだされば、自警団の実際の入団審査も里の治安維持を専任とするなら一発合格かと」

 

「ふむ……成る程、中々難しい試験じゃな、攻撃をかわし続けるではなく、戦わなければならない、儂の加減が巧く無ければ成立せん……か」

 

「お手柔らかにお願いするよ、私も胸を借りるつもりで行くからさ」

 

準備体操を終えて、妹紅は庭のほぼ中央で構えを取る。

 

「ほっほ、こちらこそのぅ」

 

妹紅の正面に立ち、彼女を少し観察、その身体能力にある程度当たりをつけ、出した結論は『YOMIとの一連の事件に一旦区切りがついた頃の孫娘程度』であった。

 

(となると、里の自警団と言うのも中々出来るものが揃っとるようじゃが……さて、実際どれ程のものか)

 

「行きますぞ」

 

 

 

 

今回、妹紅は自身の能力は使わず、その身一つで戦うのだが、やはり普段とあるお姫様とやり合う時は、炎を用いた『喧嘩術』で闘っている事が多いからか、ついぞ炎を出しかけてしまう。

 

(参ったな、やりにくい)

 

炎を出せば必殺の機会を自身で逸すると言うのも、思った以上に負担がかかる。

 

(これはアイツとの殺し合いじゃない、あくまでも手合わせ、審査の練習だ、普段通りはダメ……!)

 

普段と違う、それは隼人も同じ。

 

幾ら武の神仏に転生出来る程の功徳、研鑽を積んだ隼人と言えど不老不死とは闘ったことはない、その者が孫娘程の身体能力を持ち、その深みは孫娘以上となると尚の事。

 

(死を意識しない、肉体へのダメージ等お構い無し、動の者特有のリミッターが外れ、常に暴走しているようなもの、それを完全に操っておる……やはり、やりにくい)

 

隼人の場合、加減を間違えられないと言うのもあり、余計に闘いづらいのだろう。

 

互いがぎこちない闘いをこなし、それでも時は過ぎていく。

 

「そこまで!」

 

慧音の凛とした声が、庭に渡る。

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