東方超人記   作:銀剣士

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第八話

「お茶も頂いた事ですし、そろそろお暇致しましょうかな」

 

「あ、竹林の外までは私が送っていくよ」

 

腰を上げた隼人についで、妹紅も腰を上げると見送りの為に同じく腰を上げる永琳と輝夜……なのだが、何故か輝夜は妹紅と並んで玄関へと向かう。

 

その真意は玄関を潜り、門を越えたところで永琳に突っ込まれる。

 

「……どちらへ?」

 

「もこたんと竹林の外まで隼人の見送りに」

 

その言葉に溜め息を吐き、永琳は妹紅に丸投げする事に決めた。

 

「いやいや、私はそのまま人里行くんだから……で、何か用事あるの?」

 

「んー何か面白そうなの無いかなーって」

 

それを聞いた永琳が、それならむしろ香霖堂の方がいいのではと口にする。

 

「ちっちっち、人里でっていうのがミソなのよ」

 

物と言うよりも何か起こっていないか見に行きたい、つまりはそう言うことなのだろう。だが、人里での事件など、さして彼女の興味を引くような事が起こる……事もあるだろうが、それでもそうそう起こるようなものではない。

 

「まぁ、ここへの受診を望む人間もそう居ないだろうし……妹紅、姫様をお願いできる?」

 

「ええ……ったく、仕方無いわねぇ」

 

「流石永琳、話がわかる!」

 

「善き哉善き哉……と、言ったところかね?」

 

 

 

 

人里で妹紅と輝夜に見送られ、隼人は紅魔館へと向かう為に、霧の湖へと続く道を歩いていた。

 

「ふぅむ……誰かに見られておる気がするのぉ」

 

感じる視線から敵意ないし殺気はない、が、好意的とも言えない、所謂観察されている……と、言ったところだろうか。

 

午後の穏やかな木漏れ日と、葉擦れの音を楽しみながらも、そちらの事も気に留め置こう、そう思っている内に森林浴も終盤となり、視界の先にそれが映る。

 

「おお……これは」

 

森が開けたそこには、霧がかかる美しい湖が、優しく吹く風に波を立て陽の光りを湛えて煌めく。

 

「秋雨君に絵の基本でも習っておけば良かったのぅ……いや、実に美しい……あれが、どうやら紅魔館のようじゃな、いやはや赤いのぉ」

 

目的地も目視出来たところで、気温が少し下がったように感じ隼人は周囲を見渡す、すると氷のような羽が背にある少女が近寄ってきた。

 

「どちら様かね?」

 

「あたいはチルノ、この湖を縄張りにしてるさいきょーの氷の妖精だよ、おじいさんは?」

 

「儂は風林寺隼人じゃ、見ての通りのじじいじゃな」

 

「じゃあ隼人で良いね! で、隼人は何しにここに来たの?」

 

「うむ、紅魔館の門番、紅美鈴という者に用事があってな」

 

「ふぅん……隼人は弾幕ごっこできる?」

 

何を思ったか、突然そう聞いてきたチルノに、隼人は出来ないと伝えると、つまらなさそうに口を尖らせはしたが、まあ良いやと言わんばかりに、紅魔館へ向かう側の道を教えてくれた。

 

「弾幕ごっこが出来たら勝負って言ってたとこだけど、出来ないんじゃ仕方ないからね」

 

本当はかくれんぼでも良かったらしいが、隼人の体格を見てかくれんぼはつまらないだろうとチルノは思い、口に出すことはなかった。

 

尤も、梁山泊の面々とかくれんぼをして無敗を誇る(気による探査はしないのが条件)隼人が、チルノに見つかる筈もないのだが。

 

「今日は特別、あたいのお気に入りのお菓子あげる、今度は遊ぼうね!」

 

言って金平糖を二つ隼人に渡すと、チルノは森の奥に消えていった。

 

折角なので貰った金平糖を一つ頬張れば、砂糖の甘さが口にじわりと広がっていく、舌を使って口内で金平糖の突起を感じつつ、隼人はふと空を見上げ。

 

『そこのお主、何か用かね?』

 

そう言葉を発すれば、空からカメラを持った女性が降りてきた。

 

「い、今のは一体……おっと、ご挨拶が遅れました、私は文々。新聞を発行しております、鴉天狗の射命丸文と申します」

 

差し出されたのは名刺、隼人はそれを受け取り、挨拶を返す。

 

「やはり外来の方でしたか、修験者……いえ、天狗よりも鍛えられたその体、この幻想郷では見慣れないものでして、さあこれは是非お話をと思っていたのですが、その前に多少観察させて頂いた次第で」

 

おそらく接触を図るか否かを見ていたのだろう、そうしている間に隼人の肺力狙音声で声をかけられ降りて来ざるを得なくなったのだ。

 

「ふむ、まあ取材をしたいと言うのであれば、また後日にしてもらえんかね?」

 

「おや、何故でしょう?」

 

「今は紅魔館に向かう最中であるし、この幻想郷での生活基盤も出来ておらぬ、出来ればその辺りが落ち着いてからにしてほしいのじゃよ」

 

文は一考し、その時は独占取材をと隼人と約束を取り付け、空に舞い去っていった。

 

「成る程鴉天狗か……優雅に飛ぶものじゃな、さて、儂もああして飛べるようになれるものかね?」

 

 

 

 

 

『紅魔館』

 

主の趣味か嗜好か、レンガを用いているからかと思っていたが、塗装も赤い。

 

赤くないのはそれこそ門扉や高い時計塔の時計や窓位だろう。

 

「……よもや内装も赤いのではないじゃろうな?」

 

流石にそれは目に痛そうだ。

 

「おっと、こうして眺めていても仕方ない、早速訪ねるとしよう」

 

門を見れば門柱に寄り掛かっている女性の姿。

 

「もし、こちらは紅魔館で宜しいですかな?」

 

声をかけると、返ってきたのは寝息であった、なので隼人は先程チルノに貰った金平糖を女性の口に放り込むと口の中で転がしているのだろう、僅かながら歯に金平糖が当たる音がした。

 

「……ふむ、やはり狸寝入りか」

 

「……女性が寝ている口に金平糖を投げ込むとは……美味しかったですよ今の金平糖、ありがとうございます」

 

金平糖の礼もそこそこに、門番とおぼしき女性は構えをとる。

 

「貴方の気は感じておりました、さぞ高名な武人であろう事は伝わってきます、我が名は紅美鈴、是非一手お手合わせ願いたい」

 

「ほう、お主が博麗の巫女殿が言っていた」

 

その言葉に構えを解き、美鈴は事の経緯を訊くことにしたようだ。

 

「儂は風林寺隼人、紅美鈴殿に『空を飛ぶ』為の手解きを請いに参ったのです」

 

「はいぃ?」

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