東方超人記   作:銀剣士

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第九話

思わず変な声が漏れた、別に出来ないわけではない、ここに住む唯一の人間で今は上司にあたるメイド長に、空の飛び方を教えた事はもう懐かしい。

 

それに、自分に用事があるこういった手合いの多くは手合わせか果たし合いだった。

 

「ああ、勿論此方の主の許可を得てからになりましょうが……」

 

「え、ああ、そうですね、流石に主の許可なく門を離れは出来ませんので……」

 

驚いている間にも、何故か話はトントン拍子に進んでいく辺り、伊達に門番をしていないと言ったところだろうか。

 

美鈴が上司を呼んできますと館に戻って暫く、メイド服を着た女性を連れてきた。

 

「ようこそ御越しくださいました、私はスカーレット家メイド長、十六夜咲夜と申します。当主レミリア・スカーレット様がお待ちでございます、どうぞこちらへ」

 

「ではお邪魔致す」

 

 

 

 

咲夜の案内に従い紅魔館を歩いていく、内装も基本的に赤だった。

 

置かれた調度品は、友人……秋雨のお陰である程度目の肥えた隼人には目映い品ばかり。

 

「壁の色合いと意外に合っておるのは、やはり当主のセンスが良い証じゃな」

 

「ありがとうございます、きっと主レミリア様もそのお言葉に喜ばれるかと」

 

館の色も、調度品も全て当主の趣味なのだと、咲夜は誇らしげに語り、目ぼしい品の元では隼人にそれらを説明していくもので、目的の部屋まで退屈はしなかった。

 

「いやはやお若いのに造詣が深い」

 

素直な褒め言葉を受け些か照れもあったのだろう、咲夜は小さく咳を払い、ありがとうございますと微笑み豪奢な扉の前で立ち止まる。

 

「失礼致します、お客様をお連れしました」

 

『通しなさい』

 

言葉を聞いて、咲夜は扉を開き隼人に入室を促す。

 

「失礼しますぞ」

 

一言断り入室すれば、咲夜は扉の向こうに姿を消した。

 

それを見て部屋の奥に目を向ければ、少女が二人そこに居た。

 

「ようこそ、紅魔k」

 

「こんにちは!」

 

蝙蝠に似た羽をもつ少女が威厳を顕にしているものの、隣の宝石のような羽の少女は被せるように無邪気に挨拶してきた。

 

「ほっほ、こんにちは」

 

「ちょ」

 

「ねぇ、貴方はお姉様が用意してくれた私の遊び相手?」

 

「いいや、残念じゃが違うのぅ、しかしじゃ、儂の用事が済めば遊ぼうかね」

 

隼人の言葉に素直に頷くと、宝石の羽の少女は蝙蝠の羽の少女をせっつかせる。

 

早く隼人と遊びたいのだろう、しかし隼人は一つ気掛かりもあった、少女はこう言った『お姉様が用意してくれた』のかと、果たしてそれは本当の意味での『遊び相手』なのだろうか。

 

「全く……まぁ良いわ紹介が遅れたわね、私はレミリア・スカーレット、こっちが」

 

「妹のフラドール・スカーレットよ、フランで良いわ。よろしくねおじいさん」

 

「うむ、儂は風林寺隼人じゃ、よろしくのぅフランちゃんや」

 

浮かぶ笑顔に、フランも笑顔を見せる。

 

「早速本題と行きましょう、結論から言えば『構わない』よ、門番は咲夜に頼めば誰か見繕うでしょう」

 

そんな妹の様子も相まって、レミリアはあっさりと美鈴との特訓を認めると、咲夜を呼び今日から早速教えるようにと言付けた。

 

「では風林寺様、庭にご案内いたします」

 

 

 

 

案内された庭には既に門番こと紅美鈴が待っていた、軽く挨拶を済ます頃には咲夜は姿を消しており、二人きりでの訓練となった。

 

「では風林寺殿、貴方の気を先ず見せていただきますよ」

 

「気当たりで良いかね?」

 

「そうですね、あまり派手にしなければ良いですよ」

 

そう言われては本気では止めておいた方がいいだろうと、隼人は美鈴に梁山波(最弱)を放つ。

 

「……貴方は本当に人間ですか?」

 

受けた美鈴は今のが手加減されていることは解る、解るがどの程度まで抑え込んでいるのかは計り知れない。

 

もし、あれの全開を所謂『五大老』が『鬼』が、受けたとして平然としていられるのだろうか、或いは少女の様に怯えるだろうか? そう思い至ったとき、有り得ないと自嘲が浮かぶ。

 

(あの者達が、怯える? バカな考えが浮かんだものですねぇ)

 

むしろ喜んでしまうだろう、特にかつて鬼の四天王と呼ばれた『伊吹』『星熊』の二人は。

 

(……茨木はどうなんでしょうかねぇ?)

 

今は仙人となって存在しているようだが、果たして……そこまで考えて、美鈴は隼人に改めて向かい。

 

「気質は解りました、咲夜さんと同じ様に飛べるようにしてみせますよ」

 

「ではよろしくお願いしますぞ、先生」

 

「はい、それでは……」

 

 

 

 

「それにしても先生かぁ……昔、咲夜さんに空の飛び方を教えてる頃は可愛かったなぁ……先生先生って、なついてくれてましたっけ……今はすっかり『出来る美人』になりましたけど……」

 

美鈴は思わず目に映る光景から逃避していた、無理もないかもしれない、彼女が教えたのは『宙に浮く感覚』のみであり、空の自由な呼び方ではない、にも拘らず隼人は空を自由に飛んでいた。

 

それはもう、鴉天狗もかくやと空を舞う。

 

「あれが所謂天才ってやつなんでしょうねぇ」

 

そう言えば、博麗の巫女も直ぐに飛んだとかなんとか等と、思考は空を泳ぐ。

 

「ほう、もうあんなに飛べているのか」

 

声は背後から、気配の一切を感じなかった辺り咲夜に因るものだろうと踏み、さして気にすることもない美鈴。

 

「お嬢様、妹様もご一緒ですか」

 

「気になったし、フランにせがまれもしたんでね」

 

「すっごーい……お姉様、隼人凄く上手に飛んでるね」

 

無邪気に目を輝かせる妹に、思わず微笑みが溢れる。 ああ、我が妹だけはある、なんとも可愛い笑顔じゃないか、そんな想いがレミリアの顔にも浮かんでいるのだろう、二人の側に控える咲夜にも、笑みがあった。

 

隼人が地上に降りてきたのは、夕陽を暫し堪能したあとの事。

 

「隼人、もう帰っちゃうの?」

 

流石にそろそろ神社に帰るべきだろう、そう伝えるとフランは何処か甘えたように、隼人を見上げる。

 

「遊び相手になるのはまた今度じゃな、フランは弾幕ごっこ出来るのじゃろう? 覚えたらまた来るのでな、それまで待ってて貰えるかね?」

 

フランはその言葉に渋々といった感じに頷き、約束だと指切りを交わす。

 

「では、今日はこの辺りで」

 

「またいらっしゃい、次は満月の夜にでも……」

 

「私もいっしょに居るからね」

 

各々軽く別れの言葉を口にして、隼人を見送った。

 

「……恐ろしい人間ね」

 

「……でも、優しいと思う」

 

「また、来てくれるわ」

 

「うん!」

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