読者達のアインクラッド   作:秋宮 のん

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後篇。
まさか二つ分けする事になるとは………。
ちょっと目測を誤ったよ。
添削は終わりました。


第四章イベント02:純白の罪(後篇)

 10

 

 

 

 クロノは今起きている現象が理解できない。

 いや、正確には理解できている。彼も逆の立場ならそうする様な性格なのだ。

 だが、それは彼の理解から言っても極少数派の考えだと信じて疑っていない。それだどうした事だろうか? 気付けば二、三パーティーくらいは既に舞い戻り、不器用な集団戦を必死に取り繕っている。

 自分を連れ戻しに来たのかとも思ったが、どうやらそうでもないらしい。いや、戻る事が出来なくなっているだけなのかもしれないが、それでも皆が自分を庇って戦っている現状が、どうしても許す事が出来ない。

「やめろ………、やめてくれ………」

 どうしてこんな事になってしまったのだろうか?

 これは、自分だけの問題だったはずなのに………。自分の命だけが天秤に掛けられる判決の筈だったのに………。気付けばまた(、、)、彼は沢山の人間を巻き込んでいる。

「どうして俺は………っ!?」

 歯噛みするクロノは、地に手を付き、己の罪を思い出していた。

 

 

 

 そもそもクロノはソロではなかった。彼は≪はじまりの街≫を抜け出す時、何人かのプレイヤーを元気づけ、六人でパーティーを組んでいた。仲の良い友人達と一緒にゲームを始めた事もあり、怯える仲間をクロノは必死に説得して、攻略に乗り出していた。

 だが、事件は第一層迷宮区から始まった。

 迷宮区攻略中、仲間の一人がモンスターにやられて死んだのだ。

 仲間達は一気に動揺し、このゲームの恐怖を思い知らされていた。

 このままでは仲間達がまた怯えるだけの住人になってしまう。そんな事は絶対にさせない。自分が皆を引っ張って行くんだ。クロノは何度も自分に言い聞かせ、仲間達を先導し、常に先頭に立ち続けた。

 だが、また一人が消えた。二人目の死亡が、仲間内で疑心暗鬼を呼び起こさせた。クロノの言葉がどんなに真実でも、どんなに綺麗な言葉を使っても、仲間達は信用しなくなっていった。もう誰もクロノの言葉を信じなくなったかのように思えた時、彼の親友だけがクロノを信じて反論した。

「俺はクロノを信じる! 俺の親友を信じる! だから、皆コイツを信じてやってくれっ!」

 生き残るために、何より親友を信じているからこそ、彼はクロノを信じ、声を上げてくれた。

 この言葉に応えよう。この言葉に応えなくては!

 クロノは強い信念を胸に抱き、真実リーダーとして振舞い、仲間を先導し続けた。死の恐怖が目の前に曝されようと、彼だけは常に冷静に仲間を勇気づけ続けた。

 

 そして6層迷宮区で………彼は仲間を失った。

 

 宝箱と思って取った箱が、≪ミミック≫だったのだ。

 そしてこう言ったトラップモンスターは多少なり強く設定されている。彼等は瞬く間に攻撃に曝され、奮闘虚しくポリゴンの破片にしてしまった。

 何とか街に戻ってきたのは、クロノと親友の二人だけ。二人はしばらく黙って仲間を失った痛みに暮れていた。クロノはなぜこうなったのかと、ずっと呟き続け、何がいけなかったのかと誰とも無しに問い続けていた。それに対し、親友は応えるように呟いた。

「お前の所為だろう………」

「!?」

「お前が………っ! お前が俺達を連れだしたからっ! だから皆死んだんじゃないかっ!!」

「お、俺の………所為………?」

「そうだよっ!? お前なんか信用せず、≪はじまりの街≫で大人しくしてれば、俺達全員助かってたんだ! お前を信用した所為で、皆死んじまったんだっ!」

「お、れは………」

「返せよ! ちくしょう返せよっ!? お前が俺達を連れだしたんだろうがっ!? だったら俺達を助けて見せろよ!? 今すぐお前の所為で死んだ皆を生き返らせろよっ!?」

「………ごめん」

「………! 謝っても………誰も戻ってこねえんだ………! お前なんか、信用しなければ………っ!」

「え? おい? 待て! 何処に………っ!?」

 親友は突然走り出し、アインクラッドの最端へと向かう。落下防止用の塀に飛び乗ると、一瞬だけ振り返り、そしてそのまま―――。

「クラマーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!??」

 

 

 

「俺が………アイツ等を死なせたんだ! だから俺は………!」

「だからこのボス戦で全力を尽くして、自分の生き死にを決めたかった?」

「!?」

 掛けられた声に顔を上げると、自分を守るために盾を構えるマサの背が見えた。

 マサは、振り返る事無くクロノへと話しかける。

「俺も仲間を失った事があるから、だから今の君の気持が解るんだよ………。君は仲間を失って、自分だけが生き残った事が許せないんだろ?」

「………」

「だからこのボス戦で命を掛けて戦って、ケジメをつけたかった。違う?」

 その通りだった。命を掛ける戦いに本気で挑み、全てを出しつくしてこそ、自分は仲間に報いれると思った。もし死んでしまったとしても、それは自分の行いに対する天罰だと受け入れられた。

 だから、撤退などと、確実に生きるための戦略は、彼にはどうしても許す事が出来なかった。誰かに自分の行動を強要はできない。だけど、自分は撤退しない。してはいけない。最後まで足掻き、戦い、終わらせなければならない。

 クロノの戦いはどちらかが死ぬまで終わってはいけないのだ。そうでなければ、死んでいった仲間達に、罪の意識に耐えられず自殺した親友に、死んでも顔向けできない。

「俺も似たような思いだったよ。俺を助けてくれた仲間が皆死んで、たった一人生き残って………、俺が生きている事が罪悪であるように思えた。………でもね、タドコロさんに半ば無理矢理引っ張り出された今は、こう思えるんだ」

 途端、マサは構えを解き、クロノへと向き直る。無防備な背中を敵に見せながら、それでも彼は真摯な眼差しでクロノを見つめる。

「過去を忘れる事なんてできない。仲間が死んだ事実はどうやったって変えられない。この胸に刻まれた痛みも苦しみも、消してなかった事になんてできない。でも、だからこそちゃんとここに残ってくれている」

 胸に手を当て、痛みを思い出すかのようにマサの表情が僅かに歪む。

「ここに、俺の中に皆が残っている! もし俺が死んだら、俺の中に残っている皆まで殺してしまう! だから俺は生き続ける! そしてもう二度と俺の仲間は誰一人だって殺させないっ!! 俺は………仲間を死なせた罪と共に、ずっと生き続けて見せる!」

 宣言し、マサは力強い眼差しでクロノを見つめたまま、手を差し出す。

「だから生きてくれ。俺にとっては、お前も俺の大切な仲間なんだ」

 その姿に、クロノは何かを見た気がした。今目の前に立つ男は、もしかして自分と同じなのではないだろうか? ただ、この男は、自分がなれなかった未来の自分で、塞ぎ込んでいる過去の自分を助けに来たんじゃないだろうか?

 そんな錯覚を覚えるほどに、彼の言葉は強くクロノの胸に届いた。

「この胸に残った仲間も、か………」

 だから、彼はマサの手を取る。その言葉を信頼したからこそ、胸に残った仲間を死なせる事は自分にも絶対できないからこそ、彼は手を取り、立ち上がる。立ち上がったクロノの姿を、マサは満足そうに笑んで―――刹那、彼の首に死神の鎌が刃を突きつけた。

「………っ!」

 あまりに一瞬の事で、クロノは反応できなかった。

 それを認識できた頭だけが、何処か冷静に一言を漏らす。

(ああそうか………、また俺が皆を殺すんだ………)

 

「空気読みやがれぇっ!!」

 

 バギィンッ!!

 

 刃がマサの首を両断する直前、まったく同時に響いた金属音が、死神の鎌を跳ね返した。

「ったく………! AIでももう少し気を使う事覚えろってんだよ!」

「いつまでもボケっとしてる奴等も悪いんだよ!」

「………(ニコッ」

 槍を肩に担ぐタドコロが、マフラーを付け直したアルクが、フードに隠れていない口元を微笑ませるラビットが、三人で力を合わせ、ソードスキルで死神の鎌を弾き返したのだ。

「はあっ!!」

 攻撃を跳ね返された死神の背後で、いつの間にか回り込んでいたスニーが、両手剣四連続ソードスキル≪ブレイブス・スクエア≫によって斬り飛ばす。背面攻撃で怯んだところを、正面からカノン、ナッツが飛び込み、時間差でケンとツカサがソードスキルを叩き込む。

「俺達も行こうぜ」

 マサは何事もなかったようにクロノを誘った。その瞳は揺るぎない強さを湛えていて、だから解った。この男は仲間をとことん信じている。信じることで力を引き出しているのだ。

 誰かを守る。そう言いながら、自分に足りない所は仲間に頼る。頼った分は、また助ける。それを繰り返し、お互いを支え合おうとしている。

(そうか………、俺にはこれが足りなかったのか………)

 クロノは仲間を助けようと必死にもがき、自分の力で全部何とかしようとした。だから、失敗した。

 あの時親友が、クラマが『信じる』と言ってくれた時、自分も仲間を信じるべきだったのだ。いや、信じてはいた。信じていたつもりだった。だけど、クロノは怯える仲間達を見て、心の何処かで思ってしまっていた。『俺が皆を守らなきゃ』『頼りない皆を、俺が守らなきゃ』その考えが、いつの間にか仲間を頼れないものだと思い込ませ、いつしか仲間を信用できないモノとして捻じ曲がった見方をしてしまっていたのかもしれない。

(でも………)

「まだ………間に合うよな………っ!」

 そうだ。まだ戦いは終わってはいない。ならまだ間に合うはずだ!

 だからクロノは、剣を掲げ、再び戦う。今度は仲間と共に!

「うおおおおおおぉぉぉぉぉっ!」

 正面から向かったクロノは、四方を囲む仲間達と共に、次々とソードスキルを放っていく。一瞬の隙も与えないと言わんばかりに、皆で波状攻撃を仕掛け無理矢理抑え込もうとする。

「ぐおおおおおおっ!? これは思いのほかきついぞ~~~っ!!」

 波状攻撃中も、反撃の鎌を振るわれ、クドが腰が引けそうな声を上げる。

「うわああああっ!! 死にたくねェ~~~~~っ!!」

「黙って攻撃してろ~~~~~っ!!」

 キサンが半泣きで斬りかかるのを、いくらが叱咤しながらやけくそ気味に躍り出る。

「どうしたんだいお嬢様っ!? もう隠れたりしないのかいっ!?」

「効果切れです! ですけど、隠れずとも………っ!」

「はっはぁっ! 楽しくなってきやがったぁっ!!」

 アルクが攻撃を躱しながらスニーを茶化し、スニーは何とか大鎌の攻撃を跳ね返す。晒される攻撃を僅かに掠めながら、ナッツが楽しそうに進み出る。

「ケン! 無事かっ!?」

「お前は仲間の心配しタレ」

「おぶふぅっす~~~っ!?」

「ケン!? 今お前の仲間が―――っ!?」

「アレは良いんだ」

「よくない! よくないです!」

 ツカサが仲間の心配をしつつ、ケンは吹き飛ばされたタドコロを無視した。無視されたタドコロを助けに、カノンが慌てて舞い戻る。

「ひゃ………っ!?」

「おっと危ないっ!? 気を付けて!」

「お前もだ!」

「おおっ!?」

 攻撃を受けそうになったラビットをテイトクが何とか跳ね返す。そのテイトクに向けて飛来した攻撃は、アレンが何とか叩き伏せた。

「走れ! クロノ!」

「おおおおおおぉぉぉぉぉ~~~~~っ!!」

 次々と訪れる攻撃を盾で跳ね返していたマサは、クロノの道を作るために攻撃の軸を逸らす。合図と共に飛び出したクロノが、開いた懐目がけ、全力の一刀を放つ。懐に深く突き刺さった刃がクリティカルを発生させ、僅かに死神が仰け反る。

「今だっ!!」

 最大のチャンスと感じ取ったテイトクが叫び、皆が一斉に同時攻撃を仕掛ける。これで決めるつもりだと言わんばかりのソードスキルの雨。固まる様に身を小さくして耐えていたが、攻撃が続くにつれ、圧縮された爆弾が爆発する様に周囲を薙ぎ払った。

 薙ぎ払いを受けた全員が、空中で不安定な状態になっている隙に、死神はあの怪しげな悲鳴を上げ始めた。

 

「オオロロロロロロロロロロロロロロォ~~~~~~~~ン!!!」

 

「まずいっ!?」

「くそっ! 誰か止めろ!」

「ええいっ! システムで身体が動かないんだよっ!」

 マサが、テイトクが、焦って叫ぶが、アルクの言う通り、対応しようにも吹き飛ばされたばかりの彼等は身体を動かす事が出来ない。

「ここでまた十体も召喚されたら………っ!?」

 必死に槍を投げようともがきながら、タドコロが戦慄した正にその時だ。

 一陣の白い風が真直ぐに貫き、悲鳴を上げる死神の正面へと躍り出た。

 影は腰に下げた刀室から刃を抜き放ち、縦一文字に切り裂くソードスキルを放つ。

 途端、縦一文字の閃光がエフェクトとなって炸裂し、死神の身体を大きく仰け反らせた。

 死神が地面に叩きつけられると同時に着地した影は、抜き放った剣≪菊壱文(きくいちもん)≫を肩に担ぐ。袖の長い白衣を纏い、青い袴で脚を隠す。長い黒髪が風に煽られ幻想的な姿を映し出す少女。だが、その瞳は冷ややかで、助けに来たと言うより、面倒な仕事を押し付けられた通りすがりのようにも思わせる。

「今だ! 総員突撃っ!!」

 瞬間、リンドの号令が発せられ、撤退したはずの仲間達舞い戻って来た。

 そして、白衣の少女は、手を払って指示を急かす。

「≪ケイリュケイオン≫! 態勢立て直し!」

「ウィセさん!? はいっ!」

 ウィセが舞い戻った事に歓喜するスニーが真っ先に指示に従い、他のメンバー達も瞬時に動き始める。

 攻略メンバーが全員戻ってきた事に動揺するクロノは、次々と陣形を整え直す姿を呆然と見入ってしまう。

「何してるの! アナタはこっちでしょ!」

 アスナの声に呼ばれ、クロノは弾かれた様に振り返る。

 憮然とした表情のアスナが、フードを下ろし、素顔でこちらを睨みつけている。それなりに御冠の様子だったが、助けに来た事には変わりない様だ。クロノは慌ててパーティーメンバー達の元へと舞い戻る。

 そんな中、キリトはウィセの武器を見て目を丸くしていた。

 視線に気づいたウィセが、気まずそうに“カタナ”を翳して見せる。

「この階層のサブダンジョンで、カタナスキルを使うモンスターがいたじゃないですか? それと戦い続けていたらこのカタナカテゴライズ武器≪菊壱文≫がドロップしまして………、そしたら≪曲刀スキル≫が≪カタナスキル≫に派生可能になったんです。ある程度練度は必要とされるみたいですけどね。また練度が低いので、ボス戦には使わないつもりだったんですけど」

 そう言って少し疲れた様な表情を見せ、すぐに表情を改める。

「ですけど、たぶんこれ(、、)を使わないと、この戦いを終わらせるのは無理でしょうからね」

 そう言葉を漏らした瞬間、死神のHPバーが赤色に変わり、アルゴリズムが変化した。

 強力な斜め切りのソードスキルを発動し、正面にいたプレイヤーを薙ぎ倒そうとする。だが、既に守りを固めていたキバオウのタンク部隊がこれを確実に受け止める。続いて逆斜めからもう一度切りつけられるも、これも全て防ぐ。最後に縦一文字に放たれようとした一撃を、飛び出していたウィセがソードスキルで受け止める。

 否、そのまま跳ね返し、逆に斬りつけてしまった。

「カウンター系ソードスキル≪山嵐(ヤマアラシ)≫」

 ウィセの呟きで何が全員がやっと何が起こったのかを理解した。

 相手の攻撃を受け止める事で初めて攻撃の効果を発揮するカウンター系のソードスキル。カタナスキルには、それが序盤の段階で習得可能になっていたようだ。

 カウンター判定を受けた死神が仰け反る中、リンドがこれが最大の好機と見切り、号令を発す。

「総員攻撃っっっっ!!!!」

 声に合わせ、レイドパーティー全員が飛び出し、四方から矢継ぎ早にソードスキルを放っていく。アルゴリズムが変化していようと、フルレイドのソードスキルを受けていてはさすがに反撃する事も出来ず仰け反り効果が連発する。HPはぐんぐん減っていき、あっと言う間に≪ザ・アストラル・グリムリッパー≫の最後を告げていく。

「コイツで、トドメだ~~~~~っ!!」

 クロノが叫び、最後の一撃を見舞う。

 瞬間、≪ザ・アストラル・グリムリッパー≫はポリゴン片となって消えさった。

 

 

 

 11

 

 

 

 ボスとの勝負には勝った。

 誰もが歓喜の声を高く上げるが、それも長くは続かなかった。

 それもそのはず。今回の戦いでこの勝利は結果論に過ぎない。いやむしろ負けていてもおかしくはなかった。勝てたのは運が良かっただけとしか言いようがない。その証拠に、今回参加した攻略プレイヤーのほぼ全員がHPバーを黄色に変え、中には赤くなっている者もいる。貴重な≪回復結晶≫を使い切った者もいた。

 これだけの被害を呼び起こしたのは、言い訳しようもなくクロノ一人の我儘が原因だ。

 正しい事だけを言うのなら、彼を見捨てていればそんな被害は無かったとも言える。だが、それは同時に一人を犠牲にするという重みを誰かに背負わせる事になる。どちらにしても、誰かに迷惑がかかった事に変わりはないのだ。

 それを解っているからこそ、クロノは素直にリンド、キバオウの声に応じて前に出る。そして第一声は「すまなかった」と言う謝罪。腰を折って謝る彼の姿に、幾分か留飲が下がった様子のリンドだが、キバオウはそうもいかない。

「すまなかったで済む話やないやろ? お前が勝手な事してくれたおかげで、ワイらはいらん被害を被ったんやからな? あそこで撤退しとれば、ここまで危ない橋渡る必要もなかったんやぞ?」

「………すまないと思っている」

 彼にはそれしか言葉が見つけられない。それ以外の言葉を紡ぐ権利など与えられていない。そんな彼の苦悩が感じ取れたのか、マサやタドコロが何かを言おうとした時、彼らの前に出たウィセが片手でそれを制すると、変わりに自分が一歩前に出る。

(お姫さん………?)

(何か良い案でもあるのか?)

 二人が心配そうに見つめる中、ウィセが発した言葉は思いがけない言葉だった。

「私も、さすがに今回の事は遺憾です。どう償ってもらうつもりなのか、この場ではっきりしてもらいたいですね」

 それはクロノを更に追い詰める糾弾の言葉。てっきり助けてくれるのか、場を丸く収めてくれるのかと期待していた二人は、虚を突かれてしまう。二人だけじゃない、≪ケイリュケイオン≫のメンバーや、アスナ、キリト達もまた、ウィセの発言に危機感の様な物を感じていた。

「ウィセさん………、飛び出したのは私達の勝手で―――」

「そもそもこの男が残らなければそんな『勝手』も起きなかった事態です」

「ああ………」

 スニーの柔らかめの反論は簡単に切り捨てられた。

「あのさ? オレが言うのもなんだが………?」

「私が怒っている理由はギルドメンバーが危険にさらされた事です。部外者のアナタが私を説得しようとするのは相手違いです」

「ぐぅ………っ!?」

 第三者のつもりで口を出したテイトクだったが、むしろ藪蛇だったようだ。

 同じ理由で、キリトやアスナ、ツカサ達も口をはさめなくなってしまう。

「クロノ? 君は僕達の攻略会議で遅れて来ておきながら、無理を言ってパーティーメンバーに入った。その上こんな勝手な事をしておいて、ただで済ませると言うわけにはいかないな」

「約束通り、アイテムも金も全部差し出す。それ以外に何か償えるなら従うつもりだ」

「アイテムとお金の件は、既にパーティー交渉で攻略メンバー全員に分配する事に決まった。君には何も残ってない」

 リンドは厳しく跳ね付け、他に何もないのかと目で問いかける。クロノはただ黙して俯くしかない。

「無いと言うなら仕方ない。これ以上君をここで糾弾したところで何かを得られると言うわけじゃない」

 続くリンドの言葉に、キリトはなんとなく先が読めた。2層ボス戦の時も似たような事があった。あの時、糾弾の対象となったネズハは、PKの疑いで危うい目に遭わされたが、今回のクロノの場合は被害者が誰も出ていない。なら、あの時は言おうとしたが言えなかった言葉が、今回は使えるはずだ。

『これからは、攻略組としてその力を尽くしてほしい』

 その要求をすれば、とりあえずこの場は凌げるはずだ。少なくとも彼をこれ以上糾弾したところで、言葉通り何も出てこないのだから。

 だが、その期待は思いがけない人物から遮られてしまう。

「リンド、まさかこんな迷惑人物の贖罪が『攻略組として力を尽くせ』などと言う物ではないでしょうね? 冗談ではありませんよ? 私はルールを守らない、他人を貶める、誰かに後始末をさせる様な男を最前線にうろつかれるなどと迷惑です。安心して攻略もできません」

 拒絶色を強く出して反論したのはウィセだ。彼女は言葉通りの危機感を感じていると言わんばかりに、鋭く柳眉を上げている。

「ウィセ、何もそこまで………、彼にだってなにか理由が―――」

「理由もなくこんな事をされていたのでしたら、それこそこのままではすみません」

 マサの言葉を一蹴して、ウィセは更に言及する体勢を取る。

 同じくキバオウも、何らかの方法で落とし前を付けさそうと睨み据えている。

 リンドだけが、険しい表情ながらも落とし所を探している様子だった。

 このままではまずいかもしれない。あまり事が大きくなるとは思えないが、このあとクロノがどんな仕打ちを受ける事になるのか解らない。もしかしたら体罰的な物を受けてもおかしくない。それだけは何としても阻止しようと、キリトはいつでも飛びだせる体勢に入る。

 マサやタドコロ、ケンやスニーも、この場をなんとか収められないかと苦心しているが、言葉をどんなに紡いだところでウィセを止められるような気はしなかった。

 そもそも彼等からしてみれば、彼女がこんな事を言い出す事自体が意外でしかなかった。ウィセは、冷たいところもあるが、基本的に正しい事を選べる人間のはずだ。

 ―――いや、違う。

 ここに来て、彼等は一つの事実に行きあたる。

 自分達は本当にウィセと言う人物を知っているのだろうか? 彼女が自分達に同調してくれるという考えは、彼女が自分達の友人だから、きっと自分達と同じ意見だろうと、勝手な信頼で勝手に決め付けていた事ではないのだろうか?

 そう考えた瞬間、彼等はウィセと言う人物が解らなくなってしまう。いや、もっと言えば、今隣にいるギルドメンバーでさえ、その胸に抱えている何かが、自分達と違う意見に向かっている物ではないのだろうか?

 人は一人ひとり違う。それは当然な事のはずなのに、いつの間にか皆一緒である事が当たり前のようにさえ思えていた。人は皆違うはずなのに、他人と同じである事を求め、そして当たり前のはずの『違い』を糾弾し、押し出そうとする。その気持ち悪いまでの『あたりまえ』でさえ、『違い』の一つでしかない。

 他人を思いやっている人間同士でさえ、争う事があるのだ。だったら、この場でウィセが下した判断を、他人である自分達が何か言う資格があるのだろうか? そもそもだ、彼女がクロノを糾弾する理由を作ったのは、彼を助けようとした自分達の行動が原因のはずだ。だとしたなら、この事態を作った責任は、やはり自分達にあるのではないだろうか?

 疑心暗鬼にも似た思考のループが発生し、誰もが口を閉ざし、事の成り行きを見守るしかできなくなった時だ。

 

 ぴろりんっ♪

 

「ん?」

 ウィセにだけ告げられるチャット最新音声を確認し、彼女はチャットを確認する。

 リンドとキバオウが訝しい表情で見つめる中、ウィセはキーパネルを使って何事かしばらく作業に没頭する。

 この時、キリトだけが偶然自分の立ち位置から見る事が出来た。

 ウィセがキーパネルを操作している間、同じく操作している少女の姿が視界の端に映ったのだ。

「………はあっ」

 しばらくキーパネルを操作していたウィセは、仕方がないと言いたげに溜息を吐くと、メニュー画面を消してクロノへと訊ねる。

「クロノ。確認しますが、アナタは商業系のスキルをお持ちですか?」

「いや………」

「では、何か情報収集などの伝手(つて)は持っていますか?」

「持っていない」

「なら、仕方ないですね………」

 もう一度、溜息を吐く様に肩を落としたウィセは、表情を改めてからクロノを見据えた。

「クロノ。アナタはこれから≪ケイリュケイオン≫の傘下に入りなさい。私達の監視下の元、リンドの処罰通り攻略に貢献してもらいます」

「「「はっ?」」」

 突然のウィセの発言に、クロノだけではなくリンドとキバオウすら声を漏らしてしまった。その反応も尤もだと言いたげな表情で額を押さえたウィセは、聞かれる前に説明を始める。

「さっきも言った通り、ルールを守らない人間を最前線でうろつかせるなど、不安要素にしかならないので私はごめんです。そもそも一個人のアイテムとお金を全部提供されたところで、大した額になるわけでもなし………、それだけ危うく命の危機に瀕する事態を収めようとする行為は遺憾とも言えます。ですが、彼には商業系のスキルは無い。今から上げてもらっていては攻略に貢献できるのはいつになるか解った物ではありません。それならいっそ、何処かのギルドに所属して、首輪が付いている状態で攻略の手伝いをさせた方がマシです。後はどのギルドに所属させるかですが………、幸いと言うか、不運と言うのか? ≪ケイリュケイオン≫は商業ギルドとして発展させるのがウチのギルドリーダーの考えです。そもそもが攻略組の手助けを目的としたギルドと言う事なら、今回迷惑を被った全プレイヤーの罪滅ぼしにはもってこいです」

 一気にまくしたてられ、返す言葉が見つからなくなる二人に対し、ウィセは額に当てている方とは逆の手で、自分の後ろを指差す。

「―――っと、ウチでお抱えの≪仕入れ屋≫が提案してきました」

 一気に視線がラビットへと集中する。

 ザッ! っと音が聞こえてきそうな注目ぶりに、驚いたラビットは、近くにいたケンの背中へと隠れる。すると不思議な事に、ラビットの存在感が異様なほど目立った。平均にして平凡な少年、ケンの背中に隠れるラビットは、彼と比較すればするほど異常な存在に見えてしまう不思議。

 余計注目を浴びて、どうした物かとオドオドするラビットが可愛らしかったのか、慈愛の表情で後ろに周ったスニーは―――。

「こう言う子ですわよ~~~♪」

 ―――思いっきりフードを下ろしてしまい、彼女の顔を晒した。

 初めて公開される≪仕入れ屋兎≫の素顔と、その可愛らしい顔立ちに、注目していた全員が息を呑んだ。

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッ^@☆×○□▲!!!!!!!!!!」

 

 バサッ! ビューーーーンッ!!

 

 注目状態に堪えられなくなった兎は逃げ出した。

 

 そんなテロップが見えた様な気がするほど、ものすごいスピードで顔を隠したラビットは、何処かへと走り去ってしまった。

 スニーだけが、とっても満足そうに笑顔にお花を咲かせていた。

「あと問題となるのは………」

 そんな一幕などどうでも良いと言わんばかりに、頭痛を錯覚しているらしいウィセが、最後の問題点を告げる。

「ウチのリーダーがクロノをギルメンに入れるかどうか………ですけど………」

「「「「「「え? 問題になるの?」」」」」」

「ですよね~~~~………っ!」

 

 

 

 12

 

 

 

「え? 新しい人? よろしくねクロノ! 僕サヤです!」

「せめて何か質問してはくれないのかしら………っ!」

 7層解放に伴い、呼び出されたサヤとワスプ。再会早々にクロノの件を聞いたサヤは二つ返事で了承してしまった。

 ちなみに、クロノの事情については、既にアクティベートの前に皆に告げられている。

 サヤは、ちょっと悩む様な素振りを見せながら頬を掻くと、すぐに満面な笑みを向けた。

「これからよろしくねクロノ!」

「私ですか? 私がサヤに高望みしているのがいけないのでしょうか~~~?」

「よしよし、ウィセさん………」

 あまりに予想通りのサヤっぷりに、さすがのウィセがスニーへとしな垂れかかる。それを受け止めながらスニーも予想通り過ぎる展開に苦笑を浮かべるしかない。

 事の本人であるクロノでさえ、今の状況はどう受け入れて良いのか解らずにいる。

 そんなクロノを見たサヤは、何かを思いついたような表情になる、

「じゃあ、一つ条件付けても良い?」

 期待してますと言う顔で、瞳をキラキラさせて問うサヤの姿は、ギルドリーダーと言うより、紛れもない子供のそれだ。

「なんだ? 子供みたいなオマエ」

「子供じゃないよ! これでも15だもん!」

「俺のが三つも年上なんだが?」

「クロノも子供ってだけじゃん!」

「いや、お前の年齢だと、辛うじて中学生だぞ?」

「違うもん! 僕学校行ってたらちゃんと高一だもん!」

(“行ってたら”?)

 サヤの言葉の端に疑問を覚えたウィセが、スニーから離れ、サヤを見る。

 それに気付かないサヤは、怒った様に頬を膨らませ、腰に手を当てる。

「そんな事より! クロノはその邪魔なフード取ってよ! 僕、まだクロノの顔見てないもん!」

「そういやおっさんらも見てない」

 興味を引かれた様にタドコロが同調すると、他のメンバー達も一様に注目し始める。

 少々困ったクロノは、フードに手を掛けながら躊躇したように訊ねる。

「取らないとダメか………?」

「スニー、お願いね♡」

「はい、我が主♪」

 サヤが軽くウインクすると、スニーが面白がってそれに乗っかる。

 ≪ミスディレクション≫でクロノの背後を簡単に奪うと、ラビットの時同様にフード下げてしまう(フードコートごと取り上げないのは、システム的に脱がす事が出来ないからです)。

「おわっ!?」

『おおっ!?』

 クロノの素顔が晒された瞬間、周囲から歓声が上がった。

 セミロングの白い髪に、大きくぱっちりした黒い瞳。丸みを帯びた顔のラインは、カノンに負けず劣らずの女の子フェイスだった。

「男の娘率タッケェ………」

 ケンのぼそりとした呟きに、苦虫を噛み潰したような顔になるクロノ。

「好きでこんな顔してるんじゃない!」

「………女?」

 ルナゼスが見た目だけで判断しようとして思わず呟くと、クロノは顔を赤くして怒鳴った。

「俺は男だ!」

「知ってるよ」

 そしてバッサリとサヤに斬られた。

「何言ってんのクロノは?」

 しかも疑問符まで付けたされた。

 長らく、この顔の所為で女扱いされ、悩まされてきたクロノだったが、サヤの様な理解の仕方も、まるでクロノの方が自意識過剰であるかのようで大変心が痛かった。

「オマエは俺の敵だ………っ!」

「なんでぇっ!?」

 クロノの宣言に新鮮な驚きを見せるサヤ。

「じゃあ、君は僕の敵だね」

「なんでぇっ!?」

 ワスプの宣言に新鮮な驚きを見せるクロノ。

 その姿に楽しそうに笑うナッツとスニー。

 苦笑を浮かべるだけに留めるマサ、ケン、ルナゼス。

「こう言うのを“朱に交じれば赤くなる”と言うんですかね?」

「『類は友を呼ぶ』じゃね?」

「タドコロ、先程アインクラッドの外周に新しい浮遊塔が出来たらしいので、ちょっとジャンプして見に行って来てください」

「いくらなんでもそれが自殺になるっておっさんは知ってるよっ!?」

「まあまあ、二人とも………っ」

「………っ!(わたわた」

 ウィセがタドコロをからかい、タドコロがいつもの様にショックを受け、それを宥め様とするカノンとラビット。

 こうして≪ケイリュケイオン≫は、少しずつ大きくなっていく。

 色々な形で巡り合い、個性豊かなメンバーが揃い、次々と(えにし)は結ばれていく。

 

 

 

 13 エピローグ

 

 

 

 第1層主街区≪はじまりの街≫、≪デパチカ≫前。

「サ~~ヤちゃ~~んっ!!」

「あ、フウリてきゃわあああぁぁ~~~~っ!?」

 サヤに呼ばれたフウリンは、サヤを見つけるなり飛び付き、彼女に思いっきりハグしまくる。

「いやいや久しぶりだねぇ! お姉さん久しぶりの再会にちょっとテンション高めで―――!」

 言葉の途中でウィセとスニーが協力して二人を引っぺがした。

「およ?」

「フウリンさん? 大変素晴らしいハグを邪魔して申し訳ないのですが………」

「サヤが許容限界を軽く振り切って気絶したので、強制終了です」

 ウィセがサヤの襟首を掴んでネコでも掴むみたいに持ち上げると、目をなるとにして半泣き状態のサヤが、気を失って伸びていた。

「ありゃりゃ? やり過ぎちゃったか? あははっ! ごめんね~~っ!」

「元気と言うか………、めげない子ですわね………」

「ひゃわひゃっ!? ちょっとアナタッ!? どさくさにまぎれで何処触ってるんですかっ!?」

「“何処”と言いますと? “何処”でしょうか?」

「人のおっぱい思いっきりご堪能してますよねっ!?」

「はい♪」

「なにこの人!? 普通に揉んできてるっ!? そっちの人ですかっ!?」

「いえ、この状況が気になってるのに紳士ぶりたくて視線を逸らしている男衆が面白過ぎまして~~~♪」

「上級者(こわ)ぁ~~~~~っ!?」

 フウリンとスニーがジャレていると、≪デパチカ≫からタカシとジャスが現れた。

「おやおや? これはなんだい? こなた達もサヤに呼ばれたのだけどね?」

「これから何かが始まるのか?」

「さあ? サヤが伸びてしまったので理由が解りません」

 二人に対応してウィセが伸びているサヤを見せる。途端に大人二人は悪巧みを思い付いたかのようにニヤリと笑った。

「なぁに、そんなのは簡単さね。ちょっとワプス坊やを借りてね?」

「耳元で『ジュテ~~ム(愛してる)』と囁けばいいのさ」

「できませんっ!!」

 顔を真っ赤にして抗議するワスプに、二人はカラカラと笑い声を上げる。

「よしっ! それならおっさんがとっておきの方法で起こして―――」

「サヤさん起きてください! 貞操の危機ですっ!?」

「―――!? 起きたよ僕っ!」

「『寝てる子にちょっかい出すのはエロ親父』っ!?」

 タドコロ、ついにクロンの様な小さい子にまで皆と同様の扱いを受ける事となった。

「お? なんだこの騒ぎは?」

「人が一杯だぁ~~?」

 そこに≪デパチカ≫常連のテイトク、ヌエ、シンまでもが集まってくる。

「うわぁ、ここまでは呼んでなかったんだけど………」

「そんでサヤちゃん? 私達に何の用だったの? もしかして、もしかしなくても、前に話してたあの用事ですかなっ!?」

ざっつらいと(、、、、、、)~~~!」

「発音悪………っ!?」

 サヤの台詞にクロノが茶々を入れると、いつの間にか背後に周っていたワスプに、ナイフで首元を“斬りつけられた”。

「………~~~っ!?」

「………ちっ」

 ≪アンチクリミナルコード≫によってダメージは発生しなかったのだが、クロノが振り向いた頃にはワスプはサヤの近くに移動していた。そして肩越しにクロノを見て、軽く舌打ちして見せる。

(俺はとんでもない男を敵に回していないかっ!?)

 そんな事は知らず、サヤは元気な子供の様に声を張り上げる。

「今日はね! ≪ケイリュケイオン≫の皆で写真を撮ろうと思って呼んだんだっ!」

「私、ゲストッ!」

 フウリンが手を上げ主張。

「おや? それには私らも入ってるのかい?」

「俺もか?」

「ジャス姐さんにもタカシにも色々お世話になってるし、≪ケイリュケイオン≫の『提供』って事で!」

「おもしろい! だったら俺が文屋として写真撮ってやるよ! ≪記録結晶≫かしな!」

「あら? 気前の良い文屋さん。もし撮影失敗したらお仕置きが楽しみですわね~~♪」

「親切で言ってるのに心を抉られたっ!?」

「解りましたから、そろそろ撮影に移りましょう? あまり時間を掛けてもなんですし?」

「っと、ウィセからの忠告を受けたので………?」

「皆整れ~~つっ!!」

 サヤとフウリンがはしゃぎながら皆に指示を出していく。

 

「あれ? ワスプ、サヤの隣じゃなくていいのか?」

「ルナゼス、気遣いはありがたいんだけど、≪ケイリュケイオン≫初期メンバーの記念すべき撮影に、リーダーの気絶ハプニングなんて、万が一にも撮っちゃまずいでしょう?」

「君も気を使ってるんだね………(涙」

「ワスプ、お前の所為でマサがナイタ。何とかシロ」

「これっ、僕の所為ですかっ!?」

「………ッ!!(おろおろっ」

 

「あのぅ? ここに私達≪デパチカ≫常連組なんかが入っちゃっていいんでしょうか?」

「肩身が狭い………」

 クロンとアルカナが妙にそわそわとし出し、同類のテイトクとヌエが一緒に居心地が悪くなった。

「お前さん達はこなたの部下と奴隷と居候と客だよ」

「「「「誰がどれっ!?」」」」

 

「おじ様! こっちで一緒に取りましょうよ! ほらほらもっと近くで!」

「おお、フウリンちゃんは俺を怖がらずに誘ってくれるんだな?」

「はい? おわっ!? おじ様顔がナイスホラーッ!?」

「今頃驚かれた事より、そんな例えされた事の方が堪えたよ………」

「まあイイや! 撮りましょう撮りましょう! ええっと………? タ()シおじ様?」

「あってるけどあってないぞ? タ()シだ」

 

「俺お前と並んで取りたくねぇっ!?」

「僕もアナタとは並びたくないですよ………。でも場所がもうないんですよ」

「誰か開けてくれっ!」

「せめて間に誰か入れてくださいっ!」

「おいおい? クロノもカノンもなんで嫌がってんだよ? 男の娘が二人並んでておもしれいじゃねえか?」

「「だから嫌なんだよ(です)っ!!」」

 

「サヤさんサヤさん! リーダーなんですからもっと真中に寄ってください!」

「あうあう………っ! 真ん中ってちょっと緊張するんだね………! ウィセ~~~」

「なんで私の袖を掴むんですか? もう………っ」

「あら? お二人とも、こうして並んで見ると姉妹みたいですわね? 装備と言い、髪の色と言い、長さと言い………?」

「こんな妹がいたら私の人生の半分以上が子育てで終わりますね………」

「………僕のお姉ちゃん、苦労してたんだ………」

「ああっ!? サヤさんにリアルのお姉さんがいる事が今発覚っ!? ウィセさんあんまりです!」

「初めてスニーにストレートに叱られましたねっ!? そもそも私が悪いんですか? 解りました。それなら私は邪魔にならないよう端の方にでも―――」

「………(ぎゅっ」

「………懐かれてますわね?(ニコニコッ」

「………。なんでしょう? 何とも云い知れぬ感情が込み上げてきます」

「ウィセさんにも逆らえないモノがあるんですわね♪」

 

「もうすぐ撮るぞ~~~! 準備しろ~~っ!」

 

 

 サヤを中心にスニーとウィセが両隣りに並ぶ。

 左側ではジャス店長を囲む様に常連組が並び、左端にタカシとフウリンがちゃっかりした感じに入る。

 右側では結局隣同士になったカノンとクロノを真ん中よりに、他の男子メンバーが、NPCに紛れそうなケンを中心に集まる。ラビットはフードを外して撮らないとダメだと言われ、恥ずかしそうに背を向けてしまうが、マサとタドコロに説得され、顔を真っ赤にしながら正面を向いた。

 カメラ役を担当したシンは、この一枚を撮る瞬間、妙な気持ちに駆られた。

(なんだろうな………? こいつ等は、この先にこのデスゲームで何かを起こしてくれそうな、そんな気がするぜ………)

 それが予言なのか、ただの勘違いなのか、それはまだ解らない。

 何故ならその時、まだ彼等は気付いていないのだから。

 

 ―――彼等の物語は、まだ始まりにさえ辿り着いていない事に。

 

 

「そら武器も構えろ! いち、に、の『さん!』っで撮るからなぁ~~! ほい、さんっ!」

『わわっ!?』

 

 パシャリッ!

 

 

 

 14?

 

「………。7層………。後3層。ここまできたら、あっと言う間ね………」

 7層のとある丘の上で、赤い髪の少女は膝を抱えて座っていた。

 話す相手のいないはず(、、)の彼女は、独り言のはず(、、)の呟きを洩らし続ける。

「後少し………。予定より早いペースで………、ああでも、グランドマスターにとっては順調なのかしら? ………まあ、サブマスターにとってはどっちでも良い感じかしらね? それとも早すぎて逆に困ってるかしら? ふふ………っ」

 少女は薄く微笑み、抱えた膝に顔を埋める。

「………うん、解ってるよ。これは()じゃなくてアナタ(、、、)だって………。でも、やっぱ無理でしょう? そんな事関係無しに………」

 赤い髪の少女は突然立ち上がると、いつの間にか背後にいた人物へと振り返らずに訊ねる。

「こんな所に居て大丈夫なの?」

「―――――――」

「………? ああ、そう? 完全にアクセスはできないのか? じゃなかったら、今頃私らの神様に消されてるか?」

 赤い髪の少女は、自分の背後に立つ、銀の髪の少女へ振り返らずに笑みを送る。

「今は引っ込んでなさい。もし、この世界の神様より、エライ神様が私達に親切だったら………、そんでもって運が良ければさ?」

 少女は遠くを見つめ、ありえないと言いたげに、諦めていると言う様に………。

「きっと、“生きられる”」

 それだけ呟き、振り返る。そこには既に銀髪の少女は消えており、赤い髪の少女は気にせず歩き始める。

「さあ、もう時機だよ? もう時機私は、本当の私になる! なってしまう! だからルナ!!」

 

「私を追ってきちゃ、だめだよ?」

 




タドコロ「≪舞台裏劇場≫!!」

全員「いえ~~~いっ!!」

タドコロ「さあ、やってきました久しぶりの舞台裏劇場! 進行は御馴染、エンターテイナータドコロさんがやらせていただきます!」

エンド「どうも、6層記念と言う事でゲストのエンドです。レッドプレイヤーです」

タドコロ「とんでもない奴がゲストにっ!?」

エンド「いやぁ、作者が私を敵役と言う事で使いたいと思っているらしいんですが、6層まではオレンジプレイヤーは出さない設定で来てたもので、未来編にも登場できなかったので出番を貰ったんですよ」

バン「なんか俺も敵役っぽいよ? 作者未だに悩んでるらしいけど………」

レン「つぅ~~わけでぇ~~? メンドイけど、今回はオレンジがゲスト三人登場です~~~っ?」

スニー「殺伐としてますわ」

クロン「怖いです」

ロア「タドコロ、上げて上げて!」

タドコロ「そんな訳で! 今日から始まりました! 『今回を振り返って』のコーナーを初めま~~すっ!! まず最初は四章イベント01!」

フウリン「はいっ! 私の章だよ! どうだったかな? ロアくん達も登場してイイ感じだと思ったんだけどっ!?」

エンド「ええ、半分はサヤとワスプの恋愛で取られてましたけど」

フウリン「ガーーンッ!!」

レン「つぅかよ? お前なんでソロで挑んでんだよ? 普通、このゲームでソロ上がりなんて出来ねえぞ? キリトでさえ、この時点ではもう無茶なレベル上げだっつてんだからぁ? なに? 目立ちたかったの?」

フウリン「辛辣っ!?」

バン「まあアレだ。絶景は見事なものだが、アレはどっちかと言うとイベントを考えたお前のマスターが偉いんであってお前が偉いんじゃない」

フウリン「何この悪意百%トリオッ!? 気分悪いよっ!? ちくしょう泣いてやる~~~っ!! でもマスターが褒められて嬉しいからやっぱりバンザ~~イッ!!」

エンド&レン&バン「(めげないなぁ、この子………)」

タドコロ「続いてイベント02だ!」

ナッツ「俺様の出番だな!」

クロノ「俺の出番だよ! 引っ込んでろよ戦バカのオマエ!」

サヤ「クロノの呼び方って、一々ケンカ売ってるよね~~?」

クロノ「なんだがガキ?」

サヤ「『っぽい』も無くなったっ!? 僕子供じゃないのに~~~っ!」

スニー「殺伐ですわね」

ウィセ「殺伐ですね」

マサ「やっと活躍できたよ。最初の一回きりで、もう活躍できないのかと思ってた………」

ケン「(活躍と言えるシーンのナイ僕に対するアテ付けデスカ?)」

アルク「初登場だぜ! ツカサのパーティーに入れてもらって少し活躍してきたぜ!」

アレン「まだ僕はカタナスキルも手に入れてないのか?」

ヌエ「いずれお前とは≪居合スキル≫を掛けて勝負するだろうな………」

レン「なぁんかよ~~? 俺らが喋らなくても他の奴等が喋るから、どうでもよくねぇ?」

エンド「ですよね。まあ、最初からそんな感じでしたけど。ほら、向こうにサカキさんとかいますけど、ちゃんと沈黙を守ってますよ」

バン「うわ………、マソップが思いっきり喋りたそうにしてるよ………」

タケ「なぁに、大人は色々気を使うものさ」

テイトク「最後は写真撮影で、ちょっと楽しかったな! これの所為でちょっと最後が長引いた感じはするけど………?」

タドコロ「さてそろそろお時間です! 次回は五章は長編! ルナゼスの物語! そして~読者達のアインクラッド~での最初のデカイ事件だぜ!」

ルナゼス「やっと俺にも光が!」

クロン「ああ、ちょっとイイですか?」

タドコロ「どったの?」

クロン「いえ、あまり関係ないかもですが、この辺でちょっとお浚いとかしたくて………。今、≪ケイリュケイオン≫のメンバーって、どれだけ居るんですか?」

タドコロ「一挙公開!!」

≪ケイリュケイオン≫
サヤ   (リーダー)
ウィセ  (参謀)
スニー  (インヴィジブルメン)
マサ   (盾持ちエース)
ケン   (切り込み隊長)
タドコロ (援護役)
ルナゼス (アタッカー)
ラビット (仕入れ屋)
ワスプ  (エース)
ナッツ  (エース)
カノン  (支援役)
クロノ  (アタッカー)

ウィセ「こんな感じでしょうか?」←(書いた)

フウリン「おおっ! なるほど! じゃあ私も聞いていい!?」

タドコロ「じ、時間過ぎてるんですけど………?」

フウリン「ウィセっちが他人を駒に例えてるでしょ? ギルメンだけで良いから教えてよ!」

ウィセ「はあ………? まだ見分中の相手もいるのですが………」

サヤ   (香)
スニー  (桂馬)
ウィセ  (棋士)
マサ   (角)
ケン   (と)
タドコロ (歩→と)
ルナゼス (銀?)
ラビット (桂馬? 歩?)
ワスプ  (金)
ナッツ  (銀)
カノン  (銀?)
クロノ  (香?)

ウィセ「こんな感じですか?」

タドコロ「OKだなっ!? もう本当に時間オーバーだから予告するぞ!」

シナド「アナタの役割も案外大変ね………」



・次回予告
読み手:ルナゼス
 ついに俺達はベータテストの範囲を超え、10層に辿り着いた。俺もサヤも、初めてのボス戦を潜り抜け、気分は高揚。意気揚々と俺達は10層ボスの部屋を早々に見つけ、ボス戦へと挑む。だが、そこにいたのはボスであってはいけない存在だった………。
 苦渋の選択を迫られる俺。俺が今ここで選択しなければ、きっと後悔する事になる!


 第五章グランドクエスト01 『アイリオン』
 御期待下さい。








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