読者達のアインクラッド   作:秋宮 のん

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文字数の問題で、本編に付け足せなかった内容を一挙公開です。
小ネタばかりなので、軽い気持ちで読んでください。


第五章グランドクエスト:番外

番外:その頃の彼等は………

 

 

 

 

1―――いつかは気絶しないで話したい―――

 

 サヤとウィセとナッツが≪デパチカ≫の二階で話し合っている時………、ぽっかりと、短い溜息を吐いたラビットは、カウンターの上で最近獲得した裁縫スキルの鍛錬に勤しみながら、不安そうに空気を濁らせていた。

 最近では、≪仕入れ屋兎≫の名も≪ケイリュケイオン≫と同一視されていて、ラビット自身が依頼を受け取らなくても仕事が入る様になった。そのため、ラビットは依頼を待つ必要が無くなったため、今まで待っていた時間を仕入れやレベリングに回す事が出来る様になった。特に、彼女が受け持っている仕事は、ギルド内では意外と重要なお仕事で、一層で得られるクエストで、とあるモンスターから手に入る素材アイテムと交換に、ポーションを作ってくれると言うタスクをこなしている。これによって、ラビットは弱いモンスターを一人で無双し、大量の素材と交換にポーションを手に入れている。一見、普通に上層のモンスターを狩ってお金を溜めた方が良いようにも思えるが、回復アイテムを安値で提供するには、必須のクエストなのだ。なんせ、ほぼタダで回復アイテムを回収する事が出来るのだから。

 だが、今のラビットはそのタスクをしようと言う気にはどうしてもなれなかった。先程目の当たりにした喧嘩が、彼女の気持ちを自然とダウンさせていた。

(そんな、神様じゃないんだから、誰だって自分の意見を言えばぶつかったりするって解ってるけどさ………?)

 それでもラビットには、この≪ケイリュケイオン≫が荒れる姿など、一度たりとも想像できなかった。皆いつまでも仲が良く、軽い言い争いはあっても、本気で斬り合いをしようとまで思う程の事は起きない。もし、仲間の誰かが死んだとしても、悲しんだり沈んだりしても、皆の絆は変わる事がない。不思議とそう思えていた。そんな訳がないと解っていたはずなのに………。

(サヤちゃんが、いつもあんな感じだから、そう言うところなんだって、勝手に思い込んじゃってたけど………。逆を言えば、あんな子がリーダーなんだから、ちょっとした事で壊れたら、きっとそのまんまになっちゃうんじゃないのかなぁ~………?)

 純粋に≪ケイリュケイオン≫を好きになっているラビットとしては、このままギルドが解散してしまわないか、それが不安でならなかった。

 先程のウィセの発言は、ルナゼスの………もっと言えば他人の感情を無視した攻略優先の発言とも捉えられる。少なからず、不快感を仲間に与えたのは事実のはずだ。私見的には、クロノやマサ辺りは、今回の事でウィセに思うところが生まれた様な気もする。

 逆にルナゼスの発言は、自分の大切なものだけを優先しようとする、攻略無視とも言える発言だ。停滞してもいいと言わんばかりの態度に、ここから抜け出したいと思う者達に反感を買っていたはずだろう。

 考えれば考える程、先行き不安になるばかりだ。

「………皆バラバラになっちゃうのかな?」

「大丈夫ダロ?」

 ラビットの呟きを、いつの間にか隣に座っていたケンが拾い上げる。

「自分のイナイところでギルドが壊レルなんて、ソンナ事許せるヨウナ奴じゃないダロ? サヤは」

「ケン………?」

「アイツは僕を誘う時言った。“きっと楽しくなる”ッテ。だからリーダーとして、このママ壊れる事なんて許したりしないと思ウよ?」

「………。うん、そうだよね? サヤちゃんは………そんなんだ………♪」

 友達を褒められたような気がして、ちょっと嬉しくなるラビット。両手でフードを引っ張りより深く被る事で、ちょっと赤くなった顔を隠す。

 そんな姿を微笑ましいと思いつつ、ケンは気になっていた事を尋ねる。

「ところでラビット?」

「なに………?」

「なんか、僕と普通に喋ってナイ?」

 数秒後、ラビットは思考停止状態で固まり、ケンから思いっきり突っ込まれる事となった。

「ただし、性的な意味で!(キランッ!」←(シン)

「ちょっと黙ってろお前(怒っ」←(アルカナ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2―――再戦は一生出来ないけどね!―――

 

 

 第6層、とある町。暗くなった街中を、クローバーは必死に走り続けていた。背後に迫る気配は、その足音から確実に自分を追い詰めていた。

「ち、ちくしょう………っ!」

 叫び、曲がり角を幾つも曲がり続け、必死に相手の目を撹乱しようとするが、≪索敵≫スキルが高いのか“その者達”は迷いなく追いかけてくる。

 ―――っと、幾つ目かの曲がり角を曲がったところで、彼は足を止めた。不覚にも、行き止まりの道を選んでしまったのだ。

「ふっふっふ………っ、もう逃げられない。大人しく我らの一員になるのだ」

「く………っ!」

 追い付いてきた少女が、腕を組んで仁王立ちし、その存在を持って立ちはだかる。

「ふざけるな! お前等の仲間になるくらいなら、ここで戦ってやる!」

 クローバーは腰に吊るした大剣を抜き去り、両手でしっかり握り、上段に振り被る構えを取る。彼が本気になった時に見せる、攻撃重視の構えだ。だが、目の前の少女は取り巻き二人の男を連れ、余裕の笑みを作る。

「そんな事を言っていいのか? 私はさっきみたいに指一本触れずにお前を倒せるのだぞ?」

「その前に貴様の口を塞ぐまでだっ!!」

 地面を蹴ってソードスキル≪アバランシュ≫で突進するクローバー。女は余裕の笑みを作りながら迫る剣には目もくれず口を動かす。

「“噛ませ犬”にゃ」

「ぐっ、はぁぁぁ~~~~~………!?」

 SAOなのに吐血したクローバーがソードスキルに失敗して地面に倒れ伏した。地面に突っ伏したまま、彼は涙ながらに反論する。

「ぐす………っ、ち、違う………、あの第一層で噂の“赤女”に負けたのは、俺が本気出してなかったからだ………! 俺が本気を出していれば………!」

「“負け犬が遠吠え”してるにゃ」

「ぐぼはぁっ!? ち、ちがう………! 違うやい………! 俺はまだ負けてない………! 吹き飛ばされた後、すぐに起き上がって本気でやるつもりだったんだ………! なのに、あの女が屋根まで吹き飛ばすから、降りるのに時間がかかって………! やっと降りたら誰もいなくなってたんだ………! だから俺は負けてない………! ぐすんっ!」

 しつこく言い訳を続けるクローバー少年を見降ろす少女、ライラは、ニマニマと猫口を笑ませながら更に追撃する。

「勝ちと言う結果を取れなかった時点で負けは負けにゃ。いつまでも言い訳するなんて弱い奴のする事にゃ」

「げぼばぁっ!?」

 更に吐血を繰り返すクローバーは既に虫の息だ。

「う、うわぁ………、ライラ、マジ容赦なし………。それはそれで良いのだが………」

 ボソボソした声で独り言を呟く髪の薄い中年風の男、ライラの取り巻きA、キャストはライラの姿にマニアックな視線を向けて喜んでいる。21歳という若さながら既に寂しい事になっているヘアースタイルが、40代突入の風格(??)を思わせる。

「俺はお前さんの趣味が心配になってきたぞ? そしてライラのアレは確実に大人げない子供虐めだ」

 苦笑を浮かべるライラの取り巻きB事、無地のシャツに明る色のジーパン姿の堅物そうなガタイの良い男、ゴオは、この状況を一番客観的に捉えている。25歳と、キャストより年上でありながら、そのガタイの良さと若々しい喋り方に加え、キャストの残念な容姿が際立ち、どうしても歳下に見られてしまう。もちろん、キャストがアレ過ぎるだけなのだが………。

「でも大丈夫にゃよ? ………大丈夫よ? 私がお前の力を更に高めてあげる。もう二度と誰にも負けず、誰にも劣っているなどと言わせにゃい………言わせない力を!!」

「な、なに………!? 俺は、もっと強くなれるのか?」

「ソロで強くなれるのは最初だけ。だけで、ソロには絶対的な限界があるにゃ。私達と組めば、その限界を突き破り、更なる高みを目指せるのにゃ! ………目指せるのよ!! さあ、この手を取って、更なる高みへぇ………っ!!!」

「う、うおおおおおおっ!! 俺は更に高みを目指すぞ! 限界突破だ~~~~っ!!」

 ライラの手をとり、盛り上がるクローバー。この時、ライラが後ろ手に片手でクローバーを歓迎しながら、もう片方の手で呼び出しておいたキーパネルを操作し、フウリン、セリア宛てに『ムッチャ面白い奴ゲット! これから面白ネタが最新される事請け合いなので、夜中のいつもの時間は開けておく事にゃ!』っと、ガールズトークの予約を入れていた。

 キャストは少し危なげに、ゴオは可笑しそうに苦笑しながら、「このパーティー(っと言うかライラ)は、一体何処に向かうんだろうか?」と、疑問を浮かべているのであった。

「まあ、今はまだ負け犬にゃ」

「うわあああああん! 俺はまだ負けてねえぇ~~~! 絶対再戦してやるぅ~~~!」

 クローバーがそんな事を叫んでいる頃、第10層ボス部屋では、現在アイリオンとルナゼスが接触していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3―――この時はまだ、ただ出会っただけ―――

 

 

 第9層、主街区。≪ベンダーズ・カーペット≫を広げ、鍛冶仕事を始めている少女、リズベット。彼女は憂鬱そうに溜息を漏らしていた。

 彼女もSAOを脱出したいと望み、だが、戦闘するのはやっぱり怖いと言うのと、自分があまり戦闘向けではないと判断した事もあって、今は鍛冶仕事に熱中している。

(それでも、必要な素材アイテム取りに、メイスの練度上げたりしながら戦闘もしてるけどさ~? 今のままじゃどうしてもねぇ~?)

 売れ行きはそれほどいいとは言えない。なんせ、最前線では有名な鍛冶屋アスパラの名がデカイ。彼が強化で失敗したと言う噂は、未だかつて一度もない。道具さえ揃えば必ず最強の武器を作ってしまうだろうと言う話だ。彼一人ならまだいい、だが、密かに噂されている、最前線にランダムで出現すると言うNPC鍛冶士の事も気になる。腕はそれほどでもないらしいが、時たま新しいクエストやイベントを発生させ、レアアイテムゲットのチャンスがあるとかで、余裕のある客は、皆そっちに取られてしまっている。

(こんな駆け出しの鍛冶士なんて、最前線にはお呼びでないと………?)

 苦笑を浮かべていると、誰かがこちらにやってきた。

「い、いらっしゃぁ~~い!」

 まだ慣れていない接客スマイルを浮かべて対応する。

 近づいてきたのは、五人組のパーティー。しかし、用があるのは、その内の一人だけらしく、リズベットの前で一人の少年が膝を曲げてきた。

 茶髪のツンツンヘアーに少年としての幼さがやっと抜け始めた程度の顔つき。体格は標準的で、全体的に茶色の装備を纏っている。不思議と土の匂いがしてきそうなイメージのある少年は、背に背負っていた大剣を抜くと、軽い笑みを向ける。

「強化を頼む」

「は、はい」

 多少慌てながらも両手剣カテコライズ大剣≪ヘビィーメタル≫を受け取る。

 買ってもらった素材アイテムを炉の中に入れ、刀身を焼き、赤く発光したところで取りだし、ハンマーで力強く打ちつける。

 やがて予定回数を打ち終えたところで出来を確認し、リズベットは軽く青ざめてしまった。

(し、失敗した!? 素材アイテム、95%分まで買ってもらったのに………っ!?)

 この確率で失敗した経験はさすがに初めてだった。コレではさすがに剣の持ち主も憤慨せずにはいられないだろう。

 しかし、隠すわけにもいかず、リズベットは恐る恐る剣を差し出す。

「ご、ごめん………、失敗しちゃった………」

「うおっ!? マジかっ!?」

 さすがにショックを受けたらしく、少年は受け取った剣をまじまじと見つめている。

 先程確認した時、あの大剣の強化限界数は0になっていた。つまり、これ以上強化できない上に、失敗によって逆に弱くなってしまった。これから仲間達と狩りに行く様子だし、罵声の一つは貰うだろうと覚悟を決めるリズベット。

「う~~ん………。じゃあ、仕方ないか」

「へ?」

 覚悟していたリズベットに対し、少年は軽く笑って剣を背の鞘に仕舞った。

「よ、よかったの? 私強化に失敗しちゃったのに?」

「良くないけど………、普通に仕方ないだろう?」

「で、でも………」

 素材アイテムをフルで買ってもらって失敗では、納得もいかないだろう。ああは言っているが、怒っていない筈がない。そう思って言い淀むリズベットに対し、少年は少し考えた後、少しだけ笑って答えた。

「じゃあ、俺の事覚えといてくれよ? そんで、いつか俺が攻略組になったら、最高の剣を作ってくれないか?」

「は?」

「なんだ? やっぱ約束できねえ?」

「え? いや、別にそう言うんじゃ………」

「じゃあ、約束な。俺はヴァジュロン。攻略組になったら剣を作ってもらうよう頼みに来るから、それまでに最高の鍛冶士にでもなっててくれよ」

 それだけ言って、少年事ヴァジュロンは、呼び止める間もなく仲間達の元へと走り去ってしまう。

「ヴァジュロン、強化だけに時間かけ過ぎ」

「いいじゃないかコウ。あの位置の女性のスカートを覗くには、色々と手間がかかる」

「そうだったのか………、がんばってたんだなお前………」

「俺はマソップじゃねぇんだからそんなことしねえよ! ってかコウも何、哀れそうな瞳してんだよ!?」

 五人の内、三人が仲良さ気に言い争いながら、そのパーティーは何処かへと行ってしまった。

 残されたリズベットは肩透かしを食らった気分になり、しばらく呆けてしまった。やがて我に返ると、彼女は大きな溜息を一つ吐いた。

「今のアイツ、攻略組に追いつくつもりなんだ? 無理とは思わないけど………、あんな装備で良く言うわよね?」

 先程見た装備には大したレア装備は含まれていなかった。ハイペースで攻略の進んでいる現在の攻略組に追いつくのは、もう少し先になる事だろう。

「でもなんか、また会いそうな気もするし………、まっ、それまでには立派な鍛冶士にでもなってやるか」

 何でも無いこの出会いが、いずれ≪ケイリュケイオン≫や、SAOの物語に係わってくる事になる。でもそれは、まだもう少し先の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4―――それは勘弁してあげてください―――

 

 10層迷宮区、必死にスニーから逃げようとする黒尽くめの男、ロア。彼の後ろからスニーが怒った口調で呼びかける。

「いつまで御逃げになるんですかっ!? 私だって我慢の限界と言う物があるんですよっ!?」

「そう言うなら付いてくるなよっ!?」

「そう言うわけにもいきませんわ! 私、アナタとしばらくコンビを組むと決めましたもの!」

「勝手に決めるなっ!? って言うかいいのかよ? そのアイコン、ギルドマークだろう? ギルドの連中に迷惑がかかるんじゃないのか?」

 素早くメニュー操作で音声メールを発信するスニー。

「サヤさん! 申し訳ありませんけど、このスニーをしばらく単独行動させて下さいませ! さもなければ………今すぐハグして愛でまくりますわ」

 

 ピロンッ! ←(送信)

 

 ピロンッ! ←(受信)

 

『うんっ! いつでも戻ってきていいから勘弁してッッ!!』

「OK出ました~♪」

「ほぼ脅迫じゃねえかよっ!? なんだよお前の“ハグ”!? どんな驚異が備わっているんだよっ!?」

「これで断る理由はありませんわよね?」

 人差し指を立てて、可愛くウインクして見せるスニーを軽く無視して(失礼ですわっ!!)、ロアは早足にダンジョンを進む。

「何と言われようと、俺はお前とコンビなんて組まねえ」

「フレンドだけしてくださっても構いませんわよ?」

「もっと嫌だよ」

「まあ………っ! そんなにはっきり断られては、私………」

 傷ついた様な表情で俯き、片手を胸に当てるスニーは、ロアがちょっと心配そうに視線を送った瞬間を狙ってあるモノを取り出した。

 スニーが取り出したのは、ロアの似顔絵が描かれた張り紙だった。

 

『探し人。コスプレシャドーマン。「俺に関わるんじゃねえ」っと鳴く。追いかけると逃げ出す習性がある。捕まえると御礼に自分の所有しているコルを全額譲ってくれる。シャイな性格なため、惚れた相手はとことん無視しようとする困ったさん。からかいにからかい尽くした後に、ギルド≪ケイリュケイオン≫まで御連絡下さい』

 

「これを、アインクラッド中にバラ撒く必要が出てしまいますわ~~~♪ ああ~~、何という悲劇でしょう~~~っ♪」

「とりあえずフレンド交換しようぜ」

 

 ………この数分後、迷宮区ボスは撃破され、新しいフロアが解放された。

 

 

 

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