やはり俺を中心とした短編集を作るのはまちがっている。   作:Maverick

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「奉仕部同窓会で花見!!」「そんな名前ついてたの、このメンバー」

「花見だ!花見!比企谷、行くぞ!」

 

「ああ、おはようございます。静さん、うっさいです、まだ寝起きなんですよ俺」

 

一週間ぶりの休みを噛みしめて惰眠を貪っていた俺に電話が来た。この春からついに大学4年生にも関わらず電話帳に登録されている名前は20もない。これぞぼっち!

電話の相手は平塚静、高校時代の恩師であるがしかしいつまでも平塚先生と呼ぶわけにもいかないので、静さんに落ち着いた。流石に魔王よろしく静ちゃんは無理だ。

 

「比企谷妹と戸塚も誘ったぞ」

 

「場所、時間、持ち物迅速に」

 

眩しいほどの太陽光が日本全土を照らす今日、俺達の花見が執り行われる。この物語は、俺たちがただ花見するだけの見物語〈花〉、とでも題するとしよう。

 

 

 

 

 

ほかのメンツも聞き、その際近くに住んでるやつから連絡が来たため一緒に行くこととなった。

黒の半袖にジーンズを履くというシンプルすぎる服装で待つこと数分、待ち合わせのやつが来た。

 

「ごめんなさい、待たせてしまったかしら」

 

「ああ、超待ったね。まあ電車は出てねぇし、問題ないが。飯も作ってたんだろ、ありがとよ」

 

「貴方かなり丸くなったわね。素直にお礼を言うなんて」

 

雪ノ下雪乃、高校時俺が所属していた奉仕部の元部長である。細いジーンズに上は白のブラウスとピンクのカーディガンでサイドフィッシュボーンね。正直グッときました。鎖骨あたりに金色のネックレスが輝く。

 

「いいから行くぞ」

 

雪ノ下の荷物を奪い改札へ向かう。小声でありがとうと言われたのを聞き逃さなかった。

電車に揺られること数駅、雪ノ下が連絡していたのか俺たちに最寄りのドアから知り合いが乗ってくる。

 

「あ、先輩方お久しぶりです~」

 

花柄のスカート、白のTシャツの上にデニムのジャケットを羽織った一色いろはが現れた。頭には黒キャップを被っている。高校卒業時に長く伸びてた髪も、今では俺達がよく知るセミロングになっていた。

 

「よう、一色。久しぶり」

 

「久しぶりという程でもないでしょう、初詣も一緒だったのだし」

 

八幡はそれには呼ばれてませんね。まあいいけど、気にしない!気にしてないんだからね!!電車がいっぱいで一色の座る場所がなかったので席を譲る。こいつの背じゃつり革つかむの大変そうだし。ま、そこまで低くもないか。変わったし、もういい。

目的の駅に着き、ここで合流するメンバーを待つ。ベンチに座ってぼーっとしてると、突然視界が暗くなる。

 

「楽しみで眠れないねッ!」

 

「その完璧な声真似は小町か」

 

「あったりー!久しぶり、お兄ちゃん!!」

 

視界が明るくなり、目が暫く見えなくなる。目が光になれたところで後ろを向くと、小町と由比ヶ浜、戸塚と知らない男の人がいた。

小町は白黒のボーダーに暗めのパーカーを着ていた。パンツはデニム生地っぽい。

由比ヶ浜はピンクのニットに白のロングスカートとかなりシンプルなコーデだった。

戸塚は黒の七分袖のシャツに白のチノパン。腰に赤チェックの長袖を結びつけていた。

 

「で、お前は?」

 

「よう、お久でござる」

 

「…痩せたなあ、材木座」

 

白と紺を重ね着して痛ジーンズを履いた小太り男子の正体は材木座だった。白い髪は無造作で、メガネと相まってインテリなリア充感が漂わせていた。

 

「ささ、いこ!静さんが場所取ってくれてるから、早く行ってあげないと!」

 

「ええ、そうね。行きましょうか」

 

俺たち7人は指定された場所へと歩き出す。思い出話や近況報告の話に花を咲かせる。俺は両隣に小町と戸塚がいて幸せもんです。

歩くこと十数分人混みの中にぽかんと空いたスペースを見つける。そこには既に酒が用意されていた。

 

「お、待ちかねたよ。思ったより時間がかかったようだな」

 

白のTシャツと黒のパンツという俺並みにシンプルな服装で静さんは座っていた。…周りに既に数缶からのお酒があるんですけど。彼女が座っているブルーシートは8人座ってもまだかなりスペースが空くほど大きかった。隣に座っている雪ノ下の顔色というか、気分があまり良さそうではない。

 

「どうした?人に酔ったか?」

 

「いえ、それもあるけれど…多分このブルーシート、姉さんからのだわ」

 

「さっすが雪乃ちゃん。よく気づいたねぇ」

 

「みんな、こんにちは」

 

両手にビニール袋を持った陽乃さんとめぐりさんが声をかけてきた。

黒のハット、白のニット、緑がかったデニムスカートに明るめのベージュのトレンチコートに身を包んだ陽乃さんがそうしている格好はなかなかシュールというか、不釣り合いだった。

白の、襟が広いブラウスの上に灰色のニットを着て暗い赤の膝上スカートを身につけたいつも通りお下げ髪のめぐりさん。なかなか似合っている。

空いている適当な場所にふたりが座る。静さんが口を開く。

 

「総勢10人。さあ、全員揃ったな。乾杯の音頭は…」

 

「はいはーい、不肖小町が務めさせていただいてよろしいでしょうか」

 

「ああ、頼む」

 

音頭をとることとなった小町が立ち上がり軽く咳払いをする。皆が皆飲み物を持ったのを確認するとにかっと笑って喋り始める。

 

「えー、皆さん。今日は一週間前というかなり急なお願いに、全員が来てくれたことを嬉しく思います」

 

え、俺今日聞かされたんだけど…。まあ、いつもの事か。あきらめよう。

音頭は続いた。

 

「もうはや小町自身も大学2年生。つい先月19歳となり、もう気づけば10代最後の年です…そんなふうに、今年は皆さん『今年が最後の年』が何かあるんじゃないでしょうか、だからこそこの一年健康に元気に陽気に過ごすため、まずはそのスタートとしてこの花見を楽しみましょう!」

 

俺と雪ノ下、由比ヶ浜や戸塚さらに材木座は今年が大学生活最後の年で多分静さんは今年あたりがアラサー最後の年…おっと寒気が。一色、陽乃さん、めぐりさんあたりは分からないがまあいろいろあるのだろう。

 

「前置きはこの辺にして、では改めまして今年一年のご健勝とご活躍を願って…」

 

最後はみんなで声を揃えた。

 

「乾杯っ!!!」

 

思い思いの人と缶を合わせる。と言っても順序こそ違えど全員が全員と缶を鳴らし合った。ちびちび飲む人、豪快に一気飲みする人、飲む前から既に軽く酔っていた人、お酒を飲めないから仕方なくリンゴジュースを飲む人、年齢的にはもう飲めるのに飲まない人などなどまさに十人十色だった。

人目を引く美貌の持ち主の女性が8人(うち1人は実際は男の娘だが、周りから見れば普通にボーイッシュな女子である)もいるものだから、俺と材木座は居心地が少々悪い。通りかかる男性どころか女性ですら見とれているのだから、当たり前といえば当たり前だ。そんなこと関係なしに話は盛り上がるし騒々しさは時間に比例して増すばかりだった。

ちびちび飲みながら、程よく酔いつつ雪ノ下手製の料理を摘む。

 

「あ、比企谷くーん。食べたのー?」

 

「あ、ああ。食った」

 

雪ノ下は飲むとすぐに酔うくせになかなか潰れないから厄介である。で言動も変わるから可愛さが増すし、都合よく自分がしたことは覚えているのにされることは一切忘れるから、今俺が何を言ったりしたりしてもこいつは忘れる。だからと言って犯罪はしないけど。

 

「やった、やった!あのね、比企谷くん。私御褒美欲しいな」

 

「…何すりゃいい」

 

「…頭撫でて?」

 

お安い御用である。一回添い寝してとか言われたことあるしなぁ、それに比べればまだまだマシなもんだ。

頭を撫でているうちに目がトロンとしてきた雪ノ下がそのまま俺の方に倒れ込んできた。

それからまた時は過ぎ雪ノ下も一度起き、弁当を片付けブルーシートはかなり広くなった。小町と戸塚と由比ヶ浜以外の7人は深浅の違いはあれど酔っていた。

 

「せんぱーいっ!あすなろ抱き!あすなろ抱きしてください!!」

 

「すー…すー…」

 

「あれー?八幡が二人いる…えへへ」

 

「比企谷くん!胸なくても…ここまですれば少しは柔らかいでしょ?」

 

あぐらする俺の足にいろはが座り、背中合わせでめぐりさんがねていて左隣の陽乃さんが恋人繋ぎしながら俺の顔を凝視して、雪ノ下は俺の右腕をかなり強く抱きしめてる。

この4人、皆完全に酔いすぎていた。めぐりさんは酔うとすぐ眠くなるから、特に泥酔とかではない。

ぶっちゃけこうなるのは初めてではない。雪ノ下の20歳の誕生日会を皮切りに度々起こってきたことである。

 

「いやあ、いつ見てもすごい光景ですよね」

 

「あたしはあそこまで出来ないかなぁ」

 

小町と由比ヶ浜がそう言う。見慣れることは一生ないだろう。前回は確かめぐりさんが正面から抱きついたまま寝てしまい3人が暴走したんだっけ。毎度毎度大変なのだ。

 

「羨ましいと思うは思うが、しかし実際変わりたいかと言われると否だな」

 

「でも男の夢ではあるよね、ハーレム」

 

材木座と戸塚が語る。戸塚がそんなことを言うなんてな。やっぱりちゃんと男の子な戸塚でした。

今更だが、小町は未成年で酒が飲めず、由比ヶ浜はアルコールにめっちゃ弱いから飲まず、戸塚は今回の運転当番のため飲めないのである。こういう集まりの時は車の免許を持つ人たちが順番で酒を飲まないようにしている。免許保持者とは静さん、戸塚、材木座、俺、陽乃さん、雪ノ下だ。しかし陽乃さんはいつも上手いこと躱すが…そこまで見据えてサブというか補欠当番も一応いる。

戸塚は飲むと妖艶さが増す。

結局解散は太陽が沈む頃で、レンタルしてきたバンにみんなを詰め込んで戸塚が運転。俺は助手席で彼女らを届ける手伝いだ。

 

「今日も楽しかったね」

 

「ああ…来年から社会人かぁ。やだなぁ」

 

「あれ?八幡も働くの?専業主夫の夢は諦めたの?」

 

戸塚はからかうようにニヤニヤしながら聞いてきた。それに応える。

 

「まあな。ーーーーと結婚するためには、やっぱ働かないと」

 

まあ、ーーーーとはまだ付き合ってすらない、想いを伝えてもいないんだが。

俺は今年が彼女いない歴=年齢が最後の年になればなと願望抱いていた。このことを知っているのは戸塚と材木座だけだが。夏休み、2人で花火誘ってみるか。




この後八幡がどの人と付き合うかはみなさんのご想像にお任せします。
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