やはり俺を中心とした短編集を作るのはまちがっている。   作:Maverick

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最近クロスオーバーばっかですみません。ちゃんと純正二次創作も書いてるんですが、やっぱり好きな作品でのシナジー効果というのは凄いですね、ハイ言い訳すみません。

サブタイには×魔法科高校の劣等生とありますが、原作未読のため優等生とアニメを参考に書くとなると、なら北山家に居候させちゃえということで。

あ、オリキャラもいます。あと北山家の方々やその他設定も原作と違うかもしれませんが、二次創作のため許容願います。
もしそういうのが無理!という方はブラウザバックを推奨します。

長くなりましたね、ではどうぞ。


俺は北山家の居候【クロスオーバー:×魔法科高校の劣等生】

雨が地面に、そして背中に打ち付けられる音がする。

車が地面を、力強く走り去る音がする。

心臓がまだ諦めてたまるかと、鼓動を続ける音がする。

肺が止まるわけにはいかないと、呼吸を続ける音がする。

けど、もういいんだよ。俺の理性は生きることを望んでなんていないんだよ。

必死に言い聞かせていると、俺を尊重してくれたのか、鼓動も呼吸も弱くなっていく。

もう、何もかも、信じられない。

信じていた親も、信じていたかったあいつらも、俺を見捨てたんだ。

俺を、俺だけを、必要とする人は、いない。代わりがいるなら、もう…いいよな。

せめて最後に、この残酷でくそったれな世界に、生まれ変わらないように、目に焼き付け覚えようと、開けていた目も泥で汚れてきた。さて、目を、瞑ろうか。

くすんだ視界を暗転させようとした時に見えたのは、少女が駆け寄る姿だった。

 

 

*****

 

 

次に目を開けた時には、俺はベッドの上に寝ていた。

しかしそれは、助けられてすぐの事じゃないし、知らない天井だと言うのは夢の日の翌日にやった。

定期的に見る、あの日の夢。もうあの日から四年と半年くらい経ったのか。今日までその夢を見た回数は、百を優に超える。

それを今日見れたことに運命じみたことを、らしくないと分かっていながら感じていた。

寝起きで気怠い体をよっこいせと起こす。そのまま軽く伸びをしてあたりを見渡した。

一年前からあてがわれた自分だけの部屋には、特に特別なものは何一つなく、現代にはよくある光景だった。

カーテンから指す光があまりに平面的で、それもまたカーテンかと幻視する。きっとまだ、しっかり目が醒めてないのだろう。自嘲的に苦笑を浮かべてベッドを降りる。

部屋を出て洗面所へ歩く。すると、正面から俺よりもそこそこ背の低い少女が歩いてきた。

お互いの顔がはっきり視認できた頃に朝の挨拶を投げかけられる。

 

「八幡、おはよう」

 

「おう。おはよう、雫」

 

「早く顔洗ってきてね、今日はなんと言っても──」

 

「分かってる、一高の入学式──だろ?」

 

満足そうに彼女が頷き、俺の横を通り過ぎていった。

その背中を少し見送って、洗面所へ歩き出す。

北山雫。

いわばこの家のご令嬢。父が資金家で、母が魔法師というめぐまれた環境下にいながら、不当な理由なしに人を蔑むことをしない、優しくも強かな少女。

洗面所のドアを開け、誰もいないことを確認しセンサに触れる。確認した理由はただなんとなく恥ずかしいだけだ。深い意味は無い。

清らかな水が流れ出し、それを手に掬って顔に浴びせる。再三するうちに、完全に目が冴える。いつもはしないけれど、一度パシンと頬を両の手で叩いてみた。

なんだか気合が入った気がする。鏡に映る自分の顔も普段より少し凛々しい。それでも目は腐ったままだけど。今日だけでも一日頑張るぞいっ。今日だけかよ。

洗面所を出て向かうはダイニング。毎朝の決まり事として、この家に住む皆で朝食を摂るためだ。

補足しておくとこの家には、雫とその御両親、そして弟の四人。それに俺、俺の妹。さらには住み込みのお手伝いさん──所謂メイドが四人と執事が五人の計十五人が住んでいる。日もそこそこになるとさらにお手伝いさんが増えるが、それは今話すことではないだろう。

なんて思っているとそこは既にダイニング。両開きのドアの片方に右手をかけてゆっくり引く。

広がる空間に、既に人がそれなりに集まっていた。みんなせっせと朝食の準備を進めていた。俺に気づいた人から挨拶をしてくれる。もちろんその挨拶を返しながら、最愛の妹にして最年少のお手伝いさんに声をかける。尤も、身に纏うは通う中学の制服だが。

 

「小町」

 

「んん?あーっ、お兄ちゃん!おはよう!」

 

「おはよう。で、俺は何すればいい?」

 

「んー、それじゃあこの箸を全員分配ってくれる?あ、あそこだけ逆でお願い」

 

了解を返して、十五膳の箸の入ったカトラリーケースをワゴンからひったくって配ってまわる。そうして俺が一つの仕事を終えるあいだにプロのみんなはすべての仕事を終わらせていた。

みんなそれぞれ自分の席に座る。逆に置いた場所は左利きの人が座る場所だからだ、一応記憶にはあるのだが、間違えてしまうかもと不安なのでこういうことは毎回言ってもらうよう小町に頼んである。

入口から一番遠い、上座に座った雫の父の潮さんが恒例の音頭をとる。

 

「それじゃ、今日も一日楽しくいこう。頂きます」

 

『頂きます』

 

十四人分の声を部屋に響かせるのも、毎朝のこと。

今日も絶品だと舌鼓を打っている時、隣の小町が話しかけてきた。

 

「ついに今日、入学式だね!お兄ちゃん、雫さん!」

 

「うん、楽しみ」

 

「少し面倒だけどな」

 

「うふふ、一高の一科生でそんなこと言ってるのは八幡だけじゃないかしら」

 

雫の母の紅音さんのその一言で、皆一同笑う。なんとなくいたたまれない気分になった俺は、味噌汁を一口啜った。

うん、やっぱり美味い。

場の笑い声がある程度収まったってところで、雫の隣にいる彼女の弟、航が大きい声で俺に言った。

 

「ねえ八幡。八幡はやっぱり魔法師?」

 

「ん?まあ、一応はな。でも忘れたのか?俺は魔工師も視野に入れてる、ちゃんと魔工師についても色々聞いてくるから、心配すんな」

 

「別にそんなこと言ってないけど…でもありがと」

 

またもこの場にいる人が笑顔になるも、今回のは航が微笑ましいって感じの笑みで笑い声が漏れることは無かった。

魔工師として一流と言える腕を持つ俺だが、それを知るのはこの場では北山夫妻と北山家専属の魔工師である『師匠』だけだ。この場にいないものの紹介はまたいつか。

場の雰囲気に充てられ頬を赤く染める航を、実の弟のように思ってきた俺としては将来を考えていることを嬉しく感じた。

ここで簡単に俺と小町の境遇について説明しようと思う。

前述から分かると思うが、ここは北山邸。俺と小町はだいたい四年半前からここに居候している。実の親は、まだ刑務所のはず。まあ気にしてないから本当のところは分からない。

ある事情で勘当された俺は脇目も振らず街を走り回り、ある公園で行き倒れてしまう。気絶する直前に公園の前を車で通った雫が偶然俺を見つけ、そのまま介抱される。その後はとんとん拍子、虐待で起訴された俺の両親は有罪となりそのまま刑務所へ。引き取ってくれるような親戚がいない俺と小町を潮さんが後見人として家に入れてくれたって流れだ。

その後色々ありながらも、俺たちはここまで成長してきた。そのことを思うと少し感慨深い気がする。そして俺たちはまだ成長を続けるのだろう。願わくば、その成長が恩返しに繋がりますように。

 

 

*****

 

 

かなり余裕を持って家を出る。

ドアを開けると、庭に植えられている桜の花びらが舞っているのが見えた。改めて春を感じるとともに、この機械だらけの街の中を過ごすうちに無意識に貯まるストレスが霧散していった。

春の空気を肺いっぱいに充満させ、門を開閉して歩き出す。爽やかな追い風が辺りを駆け抜ける。

普段ぼっちを好む俺だが、今は隣に雫と小町がいる。航は初っ端から学校の方向が違うので、毎日寂しそうに家を出る。

大丈夫だ、お前も今の調子で行けば一年後には俺たちと一緒だぞ。

途中で小町と別れれば、駅までは雫と二人きりになる。自然と、頬が赤くなる。途中、洋服屋のショーウィンドウに映った俺の顔は、春の花より、霜で色づいた葉より赤かった。

会話については問題ない、伊達に長いこと一緒に暮らしていないのだ。

だからと言って緊張しないのと、会話が不自然にならないのは、訳が違うから俺の心臓は徒競走したあとみたいだが。

白状すれば──もっとも、今までのモノローグでわからないやつは朴念仁だが──俺は隣を歩くこの少女を、恋愛的感情の面から好いている。

俺にとっての救世主がこんなに可愛くて優しくて魔法師の卵としてかっこよければ、そりゃ惚れないわけがない。

そんなありふれたことを考えながら、雫と雑談していれば駅にはすぐに着いた。

雫といるのが楽しいからか、時間の流れがあっという間で、あまりの単純さに割れながら呆れてしまう。

 

「雫!八幡!」

 

「おはよう、二人とも」

 

駅で俺たちを待っていた二人のうちの一人、光井ほのかがこちらに気づき、名前を呼んで手を振ってくれる。

俺は手を上げるに留まるが、雫は二人に挨拶する。

 

「朝からあついねえ、まだ春なのにブレザーを脱ぎたくなるぜ。全く」

 

朝からそんなことを言ってからかってくるのは、焔緋ケオ。ギリシャ人の母とエレメンツの父を持つハーフ才能マン。

その苗字に負けない、燃え盛るように鮮やかな赤髪をツーブロックにキメている。母の血が濃く出ている顔立ちと髪が、フィクションのように完璧にハマっている。正直なところ、なんでこいつが俺の親友なのか分からない。見た目リア充層なんだけどなあ。というか俺以外の三人全員リア充層なまである。

 

「そんなんじゃないって。行こう、ほのか」

 

そう言い残すやいなやとっとと先に歩いていってしまった雫。顔が赤い気がした…怒らせてんじゃねえよ。

ま、待ってよ〜と雫を追いかけていくほのかを見届けつつ、俺は肘でケオの脇腹をどつく。

 

「おい、お前からかうのもいい加減にしてやれよ。俺は嬉しいが、雫は迷惑に思うだろ──怒ったあの機嫌治すの俺とほのかだぞ」

 

「怒った──ねえ。ほんとに怒ってんのかは、どうか分かんねえよ?」

 

ニヤニヤしながら言ってくるのにかなりイラッときたけれど、特に否定する意味も理由もなかったため、ひとつ大きなため息をして二人の後を追うべく歩き出した。

四年以上一緒にいるんだから、怒ってるか怒ってないかなんてすぐ分かるんだよ──今回はケオに対してイラッとしてた感じ。

雫たちの後ろに並んでキャビネットを待った。二人乗りが二台続けて来たのでそれに男女で別れて入った。

ケオはワクワクしつつ端末を触っている。そうだ、さっきの仕返しをしてやろう。

 

「なあケオ」

 

「なんだよ」

 

「ほのかにはいつ告白するんだ?」

 

勢いよく咳き込んだのを見て満足したので、もう何も言わなくてよかったのだが、ケオは律儀にも俺の問に答えてくれた。

 

「今年中…そうだな、九校戦あたりには、伝えたいな」

 

ケオの顔が髪に負けず劣らず朱に染まる。誰得だよ。

お察しの通り、ケオはほのかに好意を寄せている。傍から見ていればほのかも満更でもない様子だから、もうひと押しふた押しすれば付き合えるだろうが…見た目にそぐわないチキンぷりで二年あまりの両片思い?が続いていた。

俺にからかわれ腹が立ったのか、西方くんのように稚拙なからかいを返してきた。よってケオのからかい指数は中一レベルである。俺がラディッツならゴミめと吐き捨てるところだった。

 

「そういうお前はどうなんだよ?お前だって告白できてねえじゃねえか」

 

「北山邸にお世話になってるうちは言うつもりないけどな」

 

「ほーん、まあお前らしいっちゃらしいか」

 

渋々ながらも納得する素振りをしたもつかの間、首をブンブン横に降り始める。

数年前ならここは電車で、変質者扱いだったろうな。

 

「そうじゃねえよ。ぶっちゃけるが、雫はもうお前の告白を待ってるまであるぞ」

 

「──何言っても聞かねえな、その顔だと」

 

「まあな」

 

ケオは俺にとって三番目に付き合いが長い人なのだから、それくらいは分かる。

ちなみに一番が小町、二番は北山家とほのかだ。

ともかくそれほど長い付き合いということもあって、彼が嘘をついているようにも思えないし、同じく彼がそういうことで勘違いや思い違いをすることはないほど、見た目にそぐわない慎重さを備え付けているのは知っていた。

なら、信じてみようか。

 

「そう──ま、前向きに善処するよう検討しとくわ」

 

「なんだよ、それ。ほれもうすぐ着くぞ」

 

前向きに検討すると善処するという、なんとも表面とはパラドックスな意味を持つこのワードたちのシナジー効果によって俺が伝えたかったトピックは、残念ながらケオには通用しなかった。

つまり、やる気はない。

駅についてキャビネットから降りた時には雫の機嫌はすっかり元通りだった。テトテトと俺の横に歩いてきてこちらを見上げ、ニコリと笑った。

 

「行こう?八幡」

 

「ああ、だな」

 

最寄り駅から歩いて数分、この高校のための駅だから当然だがすぐに一高に着く。

正面の校門から見える校舎は、威圧感さえ感じられた。しかし敷地内に入った途端にその雰囲気は霧散、空いた空間に滑り込むようにして上級生や教師達からの歓迎する雰囲気が流れてきた。

入学式前で慌ただしい様子だ。それでも、見える新入生は少ない。時間としてはまだまだ早いのだ。

これはひとえに、人混みが苦手な俺に三人が合わせてくれたおかげだ。感謝カンゲキ雨嵐。

そういう訳で俺達にはなかなか時間の余裕があった。

 

「あ、あそこにベンチがある!座って時間潰そうよ」

 

そのほのかの提案に乗らない理由は誰も持ち合わせてなかったし、持ち合わせていたところで断る理由はなかった。

向かい合わせの二人がけのベンチ二つセットが、だいたい八メートル四方のスペースに六つあった。

校門から見て奥の左に俺、横はケオで俺の向かいが雫、ほのかはケオの向かいだった。

だいたいこの四人で向かい合わせに座るとなるとこうなる。暗黙の了解、というやつである。

クラス分けへの不安などのこれからの高校生活に思いを馳せた雑談をしていた時、雫とほのかの視線が動く。二人は顔を見合わせて同時に立ち上がりたったったっと小走りしてこの場を離れてしまった。

目で追いかければそこには重そうな荷物を二つ抱えて運ぶ女生徒──おそらく上級生だろう──が二人いた。雫たちは彼女たちに話しかけ力になりたい旨を伝えているようだった。

取り残された俺たちは、苦笑を浮かべる。

 

「また、か」

 

「また、だな」

 

俺に続いてケオもボヤく。

あの二人、困っている人がいれば大抵何をしていても、相手が誰か知らなくとも助けようとする傾向がある。

それは美徳だとは思うけれど、ただあの重そうな荷物を運ぶのに、あいつらが加わったところでなんだかなぁという感じである。

ため息をついたケオが立ち上がって頭をひとかき、行ってくると呟いて行ってしまった。四つあるうちの一つを雫とほのかで運び、残る三つを上級生とケオが一つずつ運んでいった。

となればやはり俺は一人、別段その事に問題は無い。三人の案内が少しでもできるようにと、敷地内を歩き回ることにした──と言っても、手持ちの端末にマップデータは入ってるんだが。

ぶらぶら歩いていると、とある自販機横のベンチに見知った顔がいた。足をそちらへ向けた瞬間にこちらに気づいた相手には、一科生のエンブレムがなかった。

 

「よう、シルバー。一高入れたんだな」

 

こいつの評定基準での実技能力は小耳に挟んだことがあったため、少し皮肉をブレンドしながら話しかけた。

 

「比企谷か、というかここで俺をそう呼ぶのはやめろ。さもなくば俺もお前をレンズと呼ぶ」

 

「脅しか、しかしそれは効かない。なぜなら俺はお前の本名を知らないからな」

 

「──はあ。司波だ、司波達也。達也でいい」

 

絶句して固まっていたシルバー…改め司波が本名を名乗る。いきなり名前呼びが無理なのはデフォ。

俺とこいつは同じ会社に出入りする超新星としてお互いを認知している。

片や『新技術』のトーラス・シルバー。

片や『最新スペック』のグリム・レンズ。

世界レベルのCAD開発を主にする会社、FLTでのお互いが持つブランド名だ。

 

「お前は、一科生か」

 

「ああ…手抜いて二科生なんてやっちまったら友人達に弾劾裁判される」

 

「訳が分からん」

 

司波がベンチを指さす。特に断る理由が見つけられなかった俺は渋々座った。

 

「たまにお前のCADの実験を見るんだが──」

 

「何盗み見てんだよ」

 

「まあまあ、そこはお互いだ」

 

バレてたのか、俺が部下からこっそりトーラス・シルバーの技術実験の様子の動画を仕入れていることが。

なら、お互い不問としよう。それを伝えると司波は肯定の頷きを返してきて、会話を再開させた。

 

「お前なら総代行けたんじゃないか?あそこまでのCADをつくる座学教養もあれば、実技能力も申し分ないほどあるだろう」

 

俺は自身の開発したCADの実験を部下にさせたりしない。単純なことで、それがもし暴発して被験者が怪我を負ったとしても俺は責任を取れないからだ。

今や会社を支える大きな柱とまでされている──まだブランド設立から一年も経っていないのにそれはどうなのかと思う──が、蓋を開ければただの魔法科高校生なのだから。

結局のところ何が言いたいのかというと、実験の映像を見られるとはつまり、俺の魔法師としてと実力と魔工師としての手腕を見られるということになる。

なにそれ恥ずかしい、リークルート見つけたら即断絶せねば。え?人材派遣?それはリクルート。

 

「友人たちに土下座してそこは手を抜いた」

 

「面倒くさがりなのか」

 

「基本的には、そうだな」

 

と言うより知らない人との交流はなるべく少なくしたいと思うだけだ。多くしすぎると人間強度が下がるから。

友人なんてあの三人でおなかいっぱいだし、別腹デザートだって司波で問題ない。

デザートに司波というイメージは問題かもしれないし、そもそも司波が友人かも怪しいところではあるが。

けれど俺の友人が欲しいという欲は、その程度で十分満たされるものだった。

 

「…時間も時間だな」

 

ふと司波が呟く。時間が気になって端末を開くと入学式まであと十五分を切っていた。

こいつの体内時計すごいな。

と、開いていた端末に連絡が入った。アイガッタメール。

送り主は雫、内容は『講堂前、あと五分』とだけ。

うーん、ちょっと怒ってるけどそれ以上に俺がなにかに巻き込まれたのか、万に一つ帰っちゃったかと思って心配してるな。それとあと五分と言っときながらも四分で行かなきゃ怒られるし、今返信しないと怒り三割増しの攻撃を食らうことになりそうだ。返信しないけど。

潮さんと紅音さんに雫検定準一級を貰ったのは伊達じゃない。バレた時には軽く引かれた。軽くで済むのか。

立ち上がり数歩行って振り返る。

 

「行くぞ」

 

「お前の友人だって一科生だろ。俺は」

 

「いいから来いっ!」

 

変に遠慮しようとしている司波を無理やり引っ張って講堂へ向かった。らしくないことをしてしまったが、流石の俺でも浮かれているということで見逃していただきたい。あとそんな俺たちを見てきゃーと叫んでいた女子どもを個人的には見なかったことにしたい。

 

 

*****

 

 

四分と四十秒かかったが講堂に着いた。仁王立ちする雫の後ろでほのかとケオが苦笑いしている。ここで俺がとるべき行動はもちろんひとつ。

 

「こいつ司波達也。ついこないだ知り合った、経緯については聞くな」

 

話をそらすことに決まっている!

 

「──八幡?」

 

「すみませんでした」

 

俺の背骨が水平となった瞬間だった。無駄な抵抗、ここに極まり。

俺の後ろにいた司波が回り込んでケオとほのかと話しているのを気配から感じた。ただ、ほのかの機嫌が悪いというか──少し乱れている。

しかしながら今の俺には大切な友人に割く余裕のリソースは無かった。

何とか宥めて講堂に入るけれども、その光景に反吐が出そうになる。それはケオも同じようなのでこそこそ言い合う。

 

「差別意識がすごいな」

 

「ああ、問題はこれがどちらに根強く定着しているかだが──」

 

「たぶん、双方」

 

俺たちの会話が聞こえていた雫が俺の言葉を奪い去った。スティールされた、下着じゃなくてよかったです、まる。

端的に示すなら前に一科生、後ろに二科生が固まっていた。一科生の殆どはチラチラ後ろを見ながらほくそ笑んでるし、二科生は二科生で妬み嫉みの視線を一科生に照射していたりお互いにため息しあっていたりと、お察し定番負け犬感がひしひしと醸し出されていた。

 

「だよなあ」

 

「ま、まあ。早く座ろうよ、五人で座るところなくなっちゃうよ」

 

そこでちゃんと司波を頭数に入れるあたりほのかだなと思った。

ほのかの言葉に驚くように目を見開いた司波だったが、やんわり断ったあとこちらのそれ以上を聞こうとせず二科生が座る方へ行ってしまった。

とりあえず残念そうにしているほのかを見て司波に一発拳入れなきゃなと思った。

 

「座ろ、目立つの嫌でしょ?」

 

そう言われ講堂内を見渡すと、既に立っている人は俺たち以外に数人という状況だった。

その雫の言葉は俺だけでなく、ほのかにも向けられていた。実はこの光井ほのか、注目されることを苦手とする。そのため俺とケオで一高入学試験の実技の時、ほのかに集まる視線を散らしたりしていた。

兎にも角にも座ろうと四人並べる席を探すが見当たらない。仕方なくまたも男女で別れて前後二人分空いていたところに座った。俺の正面には雫の頭がある。

 

「そういやほのか。さっき少し取り乱してたようだが、なんかあったのか?」

 

式までほんの少しあったので気になっていたことを聞いた。

俺の言葉を聞いたほのかは少し驚いたあと、顔を青ざめて呟く。それは周りに聞かれないためか、本人が感情を頑張って抑えようとしたのか。

 

「入試の時に達也さんの魔法を見てたんだけど、それがすっごく綺麗だったの。流石魔法科高校と思ってたのに…なんで二科生なのっ、そんな評価、絶対に正当じゃないもん!」

 

僅かながらに声を荒らげさせてしまったことを悪く思いつつ雫がほのかを宥めるのを見ていた。

そんなことがあったのか…聞くだけ聞いといて何も出来ないとはもどかしい。それは俺もケオもだが、まして俺はあいつの名誉を挽回できる秘密を知っている分さらに居心地が悪い。

とりあえず俺たちもほのかを宥めているとすぐに入学式は始まった。

様々なお偉いさんたちが当たり障りのない挨拶をしていく中、一際目立った人物がいた。

一年生総代、司波深雪。

こちらも見覚えがある。よく司波とFLTに来ている。苗字も同じなのだから、従兄妹関係か双子かはたまた養子か。その辺だろう。

目立った理由は主にその美貌。この世界にあの少女に匹敵する美しさを持つ女性は存在しないと思われるレベルのそれは、顔だけでなく体格や姿勢、言葉遣いに声からでさえも感じられた。

しかし彼女が持つのは美しさだけでなかった。彼女が持つ肩書き通り、実力も余りあるほど持ち合わせており、入学試験の時から他を寄せ付けない記録をマークしていた。というか、二位は俺だった。なかなかいいラインでの手加減って難しかったりする。

彼女の声に皆がうっとりしている中、俺だけは過去の黒歴史を連想せざるを得なかった。あまりにも似すぎだろなんでだよと心の中で悪態をつく。

大半の人はそれらの美しさに見とれていたが、ここにいるうちの数人は違う意味で一目置いていた。

答辞に度々織り込まれていた『等しく』、『一丸となって』、『魔法以外にも』などのワード。

それはつまり、一科と二科の格差を消したいという婉曲表現にほかならなかった。

司波には格差をなくしたいなんて感情を感じられなかったから、あれは司波本人の意志に違いない。

──ややこしくなってきてしまった、心中では達也と深雪としておこう。

しかしなるほど、それほどの意思があれば生徒会役員としてはこれ以上ない戦力となりそうだ。そう思いながら生徒会役員の固まる場所をチラ見した。

そこに佇むは十師族が一柱、七草家の次期当主七草真由美その者だった。以前魔術協会の晩餐に──潮さんによって強制的に──参加させられた時に会ってから、何故か気に入られている。こっちは北山家に居候しているだけの軟弱者なんだから話すだけでも恐れ多いというのに。

閑話休題。

つい先日も呼び出され荷物持ちをしていたのだが、その時ちらりと生徒会役員に入る新入生総代は差別撤廃派がいいと言っていた気がする。あともしそうでなければ俺にも入ってもらうとか。そのため良かったですね七草さんというより、助かったぜ八幡くんという心境だ。

いや、ほんと。安心しました、言葉にできないレベル。

 

 

*****

 

 

そんなこんなで特に問題や気になることもなく入学式は幕を閉じた。そしてそのまま俺も帰ろうとしていた、だって帰ってもいいよと言われたんなら帰るでしょ。それとも何、まさか俺が禁止されたらやりたくなったり許可されたらする気をなくしたりするあれで帰らずにいると思った?

残念、帰る気満々です。ちゃんとやらなきゃいけない手続きとかはすべて終わらしてあとは自由なんだから、何も問題はないだろう?

麗らかな春の日差しと爽やかな春の風に背中を押されるように軽やかに帰路につこうと、右足を踏み込んで校門を出ようとした瞬間。

間違いなく俺の右足の真下に魔法式が展開された。

そこ一点のみが不自然に沈降し正味深さ二十五センチほどのそこそこな穴ができた。

そんなところにそんな穴が出来れば、そりゃもちろん俺の足はまっすぐその穴にゴキブリホイホイのように綺麗に吸い込まれていった。

十点!十点!十点!出ました満点三十点です!

しかし美しかったのはそこまで、バランスを崩してしまった俺はそのまま顔面から地面にダイブした。い、痛い…。

転んだ拍子に右足は穴から出てきて脛をぶつけることは無かったのが、不幸中の幸いと言える。やっぱり弁慶の泣き所なんだから、俺なんかがそこを強打しちゃうと悶絶するまである。むしろ泣くだけで済む弁慶は異常。逆説的に俺は普通。

 

「というわけで、普通の人間がする行動とはつまり普通のことであるからしてとにかく俺が帰ろうとしたことは当たり前であり当然の帰結だと思います」

 

「…いきなり訳わかんないことを捲し立てられても困るよ、八幡」

 

こちらに歩み寄ってきて俺から見て左横にしゃがみこんでいるであろう雫に話しかける。いて良かった、いなかったら黒歴史確定だった。

起き上がってみれば昨夜まで新品未使用状態だった制服にすこし土がついていた。このままでいるのもなんとなく癪なのでCADを使わずにささっと魔法でそれらを除いた。

普通魔法を使う時にはCADを使うが、CADはあくまで補助でありCADが無くても個人的な能力が高ければそれなりの速度で魔法を使うことは出来る。ただ戦闘となるとどうしても高速高質な魔法を求められるため、一同CADを保有しているのだ。

俺も一応持っているが、日常で使うような魔法ならCADなしでも融通は効くのだ。

 

「相変わらず出鱈目だね」

 

「──普通だろ」

 

多分褒められたから、少し照れて返す。

どうやらこの一高は俺を帰してくれないらしいので大人しく教室へ向かおうとする。校舎の方へ振り返ると、ふと視界にあの人が映る。おそらく生徒会室であろうその場所からニコニコしながら手を振っている。

…七草さんめ、許さん。

 

 

*****

 

 

自由参加のものも一通り終わってついに帰れる!と思ったのもつかの間、ほのかが達也を探そうと言い始めた。

嫌だと言おうとしたが、ほのかの目には決意しかなくこういう時何を言っても曲げない彼女に逆らう理由は残されていなかった。こうなってしまうと俺より一足早く雫とケオが折れてしまい、三対一になってしまうのが常だったからだ。

俺ももう高校生だからな、こういう所は柔軟に大人な対応をしていこうと思います。

敷地内をぶらぶらしていると、偶然にも見つける。まあ魔法で探知した俺がさりげなく誘導していたから当たり前といえば当たり前だ。

そして彼の隣には二人、女生徒がいた。もうナンパですか達也さん。流石っすね。ケオが元気よく話しかける。

 

「ヨウ達也!もう女引っ掛けたのか?ん?」

 

「やめろケオ。二人に悪いだろう」

 

「そうだよケオ。謝って」

 

達也と雫からお叱りを受けたケオは律儀に二人に謝った。こういうところがあるから憎めないんだよなあ、基本的に良い人である。見た目とは裏腹にな!

おっと寒気が、エレメンツ的にそれはどうなんだ?

 

「ねえ達也、四人とも知り合いなの?」

 

達也の隣にいた二人の内の一人、赤髪でスポーティな雰囲気を漂わせる女生徒が達也に聞く。うなづいた達也が説明を続ける。

少しこちらを警戒している気がする──一科と二科の隔たり、か。

 

「と言っても一人以外は今日知り合ったんだがな」

 

「そっか──えっと、F組の千葉エリカよ」

 

「同じくF組、柴田美月です…」

 

ショートカットにメガネをかけた女生徒も千葉に続いて名乗る。

千葉、千葉ね…いい名字だ!仲良く出来そうだぜ!

ところで…さっきから周りの視線が少し──いや、かなりウザイ。周りをキョロキョロしたほのかが声を小さくして二人に言った。

 

「えっと──気にしないでね、私たちは気にしないから」

 

ここにいる人たちには、その言葉だけで十分に伝わった。雫、ケオ、俺は頷く。それを見た二人は達也の方に目線を移す。

 

「今朝話しただけだが、保証できると思うぞ?」

 

達也のそれをきっかけに千葉と柴田が纏っていた警戒はあっさり解けた。

ほのかも雫も差別撤廃派だから、こういう地道なことをコツコツ積み重ねたいと思っていることだろう。俺とケオか?差別殲滅派、撲滅と言ってもいい。とりあえずは小町が入学するかもしれないことを視野に入れてるから、それまでには消し去りたい。

そのまま七人で喋っていると、こちらに近づいてくる人影が三つ。そのうち一つはあまりよく知りたくなかったがよく知っているものだったので、幻術魔法で姿を見えなくする。千葉と柴田はかなり驚いていたが、説明はあとだあと。ここはひとまず乗り切らなければ…。

小走りで寄ってきた一年生総代が快活に口を開く。

 

「お待たせしました!お兄さ…ま?」

 

すぐに萎んだが…おっとこちらに目を向けた。流石総代、怪訝そうな顔をしているのでなんとか話を合わせてもらおうと人差し指を口に当てる。半ば賭けだったがこの子強い、俺の魔法効いてないわ。丸見えらしい。頭の上にクエスチョンを浮かべながらも従ってくれるらしい。

 

「お兄様…さっそくクラスメートとデートですか?」

 

周囲の気温が間違いなく下がった。一同身をぶるっとさせる。

す、すげえな深雪。事象干渉力が桁違いだ。これ程の実力を持ち合わせながら入試試験であのタイムってことは少し手を抜いている気もするが、能力のベクトルは全く違うためそんなもんかと思考を捨てる。

 

「いや待ちながら話していただけだ。こちらは同じクラスの…」

 

「千葉エリカです。よろしくねっ!」

 

「柴田美月です。よろしくおねがいします」

 

千葉と柴田が先に紹介される。

俺たちと話していたからか一科相手の話し方がかなりフランクになっている。まあ答辞を聞いていた限りこういう対応をして即抹殺はないだろう。案の定深雪は少し慌てながら自己紹介を進めた。

三人が姦しく話していたところに、雫が割り込む。

 

「司波さん、私たち同じA組なんだけど分かる?」

 

「え?ええ、北山さん光井さん焔緋さん……よね?」

 

ほんとにいい子ですねこの子。俺を配慮して俺の名前を呼ばない。それとも、もしかして認知されてない?

なんだか達也には勿体無い気がする。

 

「私たち…のことも下の名前でいいよ。私たちも深雪って呼ぶから。エリカたちもいい?」

 

私たちのあとに深雪だけに見えるように左手の指を四本立てている。はい、そうなりますよね。雫さん少し怒ってらっしゃる。まあ七草さんに見つかるよりはマシだと甘んじる。

 

「いいわよ」

 

「もちろん!」

 

「いいですよ」

 

三者三葉の返事を返してくれてこちらサイドは安堵する。その刹那俺の肩に誰かの手が置かれる。瞬間俺の魔法が切れる。今年の総代を一目見ようと集まっていた野郎たちがざわめく。

 

「八くん?自衛目的以外の魔法の使用は校則違反よ?」

 

ここの返しをしくじれば間違いなく俺の週末は埋まるか入学早々停学処分である…さてどうしよう。

 

「いやいや完璧自衛でしょ。七草さんから自分の身を守ろうとしたんですよ?」

 

「土曜、暇よね?」

 

ダメでした。

 

「…はい」

 

俺たちのやりとりを野次馬していた奴らが口々に達也たちについてひそひそ言い出す。それが聞こえた七草さんは顔を顰める。

副会長であろう男子生徒に命令する。

 

「はんぞーくん、生徒会室に帰りましょう」

 

「それでは予定が…」

 

有無を言わさず七草さんは歩いていってしまった。どうやら相当気が立っていたらしい。もしかして俺のせいもあるか?あるな。

少し歩いてこちらを振り返った七草さんが作り笑いして言った。

 

「それでは深雪さん今日はこれで。皆さんもまた、機会があれば」

 

んー、週末俺生きて帰ってこれるかな。本格的に不安になってきた。とりあえず今日帰ったら小町の癒し成分を補充しないと、胃がキリキリしてます(嘘)。

会長が去ってしまい居ずらくなったのか野次馬も散っていった。残ったのは八人。達也が口を開いた。

 

「帰るか」

 

七人七色の返事をするも、皆内容は肯定だった。俺がいいと言うなんて珍しいって?仕方ないだろう、雫が睨んで来ているんだから。そんな雫も可愛いと感じる俺はなかなか末期。

 

 

*****

 

 

放課後こってりこんと今日の愚行の全てについて説教を受けた俺は心身ともに疲れていた。

家に帰り粗方日常を終えあとは寝るだけとなった時雫に呼び出された。

やだなあ、また怒られるのかなあ。雫のことは好きだけど、積極的に怒られたいと思うほどではない。ノックを二回、返事が返ってきたので中に入る。寝巻きになった雫がベッドに腰掛けてモニターを見ていた。寄ってみてみればケオとほのかの顔が映っていた。テレビ通話ね、なるほど。

説教ではないことに心底安心していると雫が右手でベッドをぼふぼふしている。そこに…座れというのか。いつもは雫の勉強机の椅子を引っ張り出しているというのに。

心拍数がリミットに近づく。顔を真っ赤にしながらもゆっくり歩いていって恐る恐る座る。俺と雫のあいだに拳三つ分空けて。

 

『ごめんね八幡、ケオも。学校では取り乱しちゃって』

 

俺たちにしか謝らないということは、俺たちはあとから呼ばれた形になっているんだろう。

取り乱したってのは多分、達也のこと。

 

『気にすんなよ、いつもの事だ』

 

「違いないな」

 

『も、もうっ!酷いよ〜』

 

「二人ともダメ、ほのかすごく楽しみにしてたんだよ?」

 

『分かってるって、悪かったな』

 

「悪い悪い。つい、な?」

 

『う〜。式の前にもさ少し言ったけど、すごく魔法が綺麗でまさか二科生だと思わなくて、裏切られた気がしちゃって』

 

「そんなに綺麗だったのか?」

 

『うん、深雪はこう、なんていうのかな…フルパワーでドーンって感じだったんだけど、達也さんの方は逆に最小限しか使ってなくて…魔法式の無駄で出る光波のノイズが全くなかったの』

 

『ほのかが言うなら相当なんだな』

 

「地元では俺たちだけが内輪で競い合ってる感じだったが、まだまだ世界は広いってことだな」

 

「うん、これから楽しみ」

 

『まずは九校戦だな!』

 

『うんっ!みんな出れるように頑張ろうね!』

 

「絶対、出る!」

 

「…出なきゃダメか?」

 

『『「ダメ!」』』

 

「…りょーかーい」

 

次の日もまた大事なオリエンテーションが多いということで早めに寝ることになった。という訳で雫の部屋から出ようとしたところで雫に呼び止められる。

 

「なんだ?」

 

「えっと…深雪もエリカも美月も美人だったね」

 

「…まあ、そうだな」

 

突拍子もなかったが特に否定する意味もなかったので安易に肯定する。

が、すぐ雫の機嫌が悪くなる。なんで?今回は流石に唐突すぎてわからんぞ。

 

「えっと、早く寝ろよ?寝る子は育つ、な?」

 

「バカにしないで」

 

少し頬をふくらませながら言う雫は世界一可愛いと思うが、流石にそれを言うのは無理であるのでははっと受け流して部屋を出た。

──春休みの途中から時々行われてきたこのテレビ通話だが、何故か俺の部屋には付けてくれないのだ。こちらとしては雫の部屋に入る口実になるからいいんだが、こちらから潮さんに頼むわけにもいかないからずっとこのままだな。

今日は俺史上最高に他人と距離を縮めた一日だった。達也とはCADの話で盛り上がり、深雪とは彼女の兄を慕う姿が我が妹の小町と重なった。エリカたちとも雫たちを橋渡し役に置きながらもそこそこ喋ったものだ。

そんなこんなで慌しい日常の始まりもまた慌しいもので、それもいよいよ幕を下ろした。




めっちゃ長いです。
この本文自分のスマホのメモ帳使ってちょいちょい書いてたんですが、今見ると本文文字数15000弱になってますね。びっくりしました。
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