やはり俺を中心とした短編集を作るのはまちがっている。 作:Maverick
めちゃくちゃ短いですが、原作14.5巻を読んでつい妄想が捗ってしまったため書きました。なんかこう、マジでこういう大学生活を送ってて欲しいなって感じの間話みたいに思って貰えば。
一色が出てるのは単に作者が一色推しなだけです。
小町の過ごした奉仕部での日々、書きたくはあるんですがそうなると原作のあの分全部自分で考えて自分で書かないといけないんですよね…そう思うと気が引けてしまいどうも手が出ません。書きたくはあるんですけどね…。
では、八幡と一色が、こんなやりとりしてて欲しいなっていう2000文字程度のお話、どうぞみてってくださいな。
「せんぱ〜い。せんぱいってば〜」
俺は比企谷八幡、どこにでもいる死んだ目をした大学生だ。マジで大学生って結構死んだ目してる人いるから、俺の目が目立たないんだよなあ。やだ、私のアイデンティティ弱すぎ?
「ちょっと〜、なんとかいってくださいよ」
3年生の夏休みが目前に迫っている今、俺は大学の図書館でゼミの課題をしていた。なになに、あれ、これなんて訳せばいいんだっけかなどと古文を読んでいる。
「本物がほし」
「ははは、どうした一色。元気か」
「ふん、最初からそうしていればいいんです」
こいつ……と思わざるを得ないが、これ以上下手なことを言ってその話を流布されると、俺は間違いなく死ぬので下手に言を発せない。まあ、大学に知り合いとかほとんどいないからほぼノーダメだけど。いや、俺に直接ダメージくるわ。なんなら今自虐で既に瀕死なまである。
「わたし〜、社学じゃないですか〜?」
「ん、そういやそうだっけか」
隣でちょっかいをかけてくるのは高校の時からの知り合いである一色いろはだ。なぜか知らんが俺と同じ大学に来て、学科は違えど一年次は共通科目も多くあり、一年早く経験していた俺がそれについていろいろ手解きしていたら高校時代以上に懐かれてしまった。こいつ、大学でもああいうキャラしてんのかね、こう、きゃぴるーんみたいな。
ちなみに社学とは社会学科の略だ。
「も〜、去年から何回も言ってるじゃないですか〜!そろそろ覚えてください!」
そう言いながら片頬をぷくっと膨らませる仕草は、大学生にしては幼すぎるが、いかんせんやってるやつがやつなので様になってる…いやほんと、かわいいから近くでそんなことしないで。うっかり惚れそうになることはなくはなくなくないが、それ雪ノ下に見られると俺死んじゃう。尻に敷かれてます、どうも俺です。
「すまんて、で、それがなに?」
「えっと、先輩の…徒然荘、でしたっけ?そこに社学の人とかいない、かな〜って」
「はぁ、カリキュラムの相談か。ちょっと待ってろ…」
徒然荘とは、俺が所属している文芸サークルだ。新入生であった2年前に学内の図書館で本を読んで時間を潰していたら、いかにも緊張しているような面持ちをしたメガネの男性に話しかけられ勧誘された。一度は断ったのだがサークルの存続に名前だけでも貸してくれ、と言われてしまい、とりあえず一回行ってそれ以降バックれようとか思ってたのだが、思いの外趣味が合う人が多く居心地も悪くなく、なんといっても学内に自由に使える部屋が一個増えると言うのはとても大きい利点なのでそのまま普通に活動している。まあ、やることといったら年に一回の学祭で文集を出すだけなんだけど…これを知った時『古典部みたいっすね』といった時、反応してくれた人が半数いた。半数でも多い方だと言うのは経験則。
ため息一つ、サークルのSlackを開きメンバーのプロフィール欄を漁る。その様子を見守りながら伝染したかのように一色がため息をする。
「メンバーの所属くらい覚えていてあげてくださいよ」
「そういうお前も、絶対覚えてないだろ」
「……てへっ」
図星だったようで。さいですよね。去年の学祭での出し物に感化されてなんかのサークルに入ったとは聞いていた。どこに入ったかは忘れたが。
あ、いた。
「いたぞ、どうすればいい」
「うーん、その人なんかSNSしてません?」
「え、どうだかな…あ、ここに書いてあるわ」
「ほんとですね…インスタしてるじゃないですか。こっからアポ取ってみます。ありがとうございます助かりました」
見ず知らずの人のインスタをフォローしてDMを送ろうとしてるのか、こいつは…さすがコミュ力が高いやつ。インスタとかLINEとか、由比ヶ浜とか雪ノ下に迫られてひとしきりやったが、俺にあってるのはDiscordだという結論が出た。周りはLINEしかしてないからLINEがメインではあるが…仕方ないね!戸塚と小町がLINEなんだから、LINEしないと!LINE最高!!…なんの話してたんだっけ。
「じゃ、私は行きますね。課題、頑張ってください…あ、それと週末絶対来てくださいよ?」
「おう、さんきゅ…あと、ちゃんと覚えてるから、わざわざ言わなくていいから。小町のためだから、行くに決まってるから」
「わーシスコン。では」
そう言って一色は図書館を出ていった。
週末は小町の大学入学祝いで、久々に初代奉仕部で集まる、とかなんとか。そこに一色が入ってることに違和感は、もうない。
どうやら小町も小町で奉仕部で間違った青春を送ってきたらしく、特にここ2年は色々話を聞いてきた。まあ、それもまた奉仕部に入ったものの定めというかなんというか、高校時代の俺はこんなんだったのかと恥ずかしいやらなんとやらをたくさん味わった。
しかし、まあ、小町には小町の奉仕部があったのだというと、少し変な感じがする…高校で大人びた小町の頭を久々に撫でたのは、高校の卒業式より前に奉仕部の引退だったかな、など思いを馳せた。