やはり俺を中心とした短編集を作るのはまちがっている。   作:Maverick

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あざとさ全開アザレア満開

「今年もそろそろかなー」

 

私、一色いろはは今日から高校生。

庭にあるアザレアの木は今にも咲き誇れそうな蕾を沢山つけている。日光のスポットライトを当てられているそれは、まるで庭というステージで華やかに踊るアイドルさながらだ。

それはさておき、真新しい制服に身を包んで、鏡の前で笑顔の練習をする。…うん、今日もいい感じ♪

今日から通う総武高校は県有数の進学校で、勉強についていけるか心配だけどなんとかなるよね!

 

「よし、頑張ろ」

 

今日から始まる高校生活!目指せ薔薇色の青春!

 

 

 

 

 

 

 

「とか、一年前は思ってたなぁ」

 

「は?どうした、一色。いきなり変なこと呟いて」

 

「何なんですか、ちょっとの呟きに反応するなんてこっちに注意払いすぎじゃないですか?ごめんなさい、そういう気遣いは嬉しいですけど正直に言うとそういうの先輩にあってませんからいつもの捻デレでお願いします。ごめんなさい」

 

「なぜ少し心配しただけでこういう扱いにされちゃうかな」

 

場所は生徒会室。ここにいる人は私とあと1人だけ。とある先輩の口車に乗せられて生徒会長になってしまった私は薔薇色どころか、その先輩の目の如く灰色に近いものに。

生徒会って少女漫画とかで読んでたのとは違って雑用がほとんどだ。…せんぱぁい、ちょっと疲れちゃいましたぁ。

 

「先輩、心配してくれるんですね」

 

「あ?…ああ、それはアレだ。うん、アレだからしょうがない」

 

「何なんですか、意味わかりません」

 

口ではそう言いつつも心は躍るのが少し悔しい。先輩は優しいから、優しすぎるからこういう心配は誰にでもするって分かっててもやっぱり嬉しい。

口がにやけるのを頑張って抑えつつ、作業を進める。生徒会の作業は好きではないけど、この人-比企谷八幡-となら何でも楽しくなってしまう。

 

「にしてもなんだよこの量。今までのが可愛く見えちゃうぜ、ダンディ」

 

「まあ、もう新年度ですから。小町ちゃん、無事合格して良かったですね」

 

先輩は3年生で私は2年生。先輩の妹さんの小町ちゃんは1年生。なんて事無いこんなことまで何故か特別に感じる理由なんてとっくに知っている。

そんなこと考えていたら、1年間聞いてきた下校の合図が校舎内に響く。

 

「ああ、今日も終わりませんでしたね。先輩、明日もお願いしますね」

 

「なあ、毎度思うんだがなんで雪ノ下とか葉山を呼ばないんだ?」

 

「はあ、これだから小町ちゃんにごみいちゃんって言われちゃうんですよ、ごみいちゃん」

 

「やめろ、ちょっといい笑顔でそれを言うな。怒るぞ」

 

先輩のシスコンは放置して、私が何故雪ノ下先輩や葉山先輩を呼ばないのか、用意しておいた嘘を吐く。

 

「雪ノ下先輩を連れてきちゃったら結衣先輩がひとりになっちゃうじゃないですか?」

 

「まあ、そうだな。ならあいつも連れてこい、それで解決だ」

 

生徒会室の片付けが終わり、帰りの支度もできたところで先輩と揃って部屋を出る。そのまま帰ろうとする先輩の袖を掴んで話を続ける。このまま、部屋の鍵を返しに行こう。

 

「でも、それだと結衣先輩が作業の邪魔しちゃいますから、結局遅くなると思うんですよね」

 

「…はあ、まあその様子は容易に想像できるんだが」

 

諦めてくれた先輩は私の隣を歩いてくれる。目的地は職員室。閑散とした廊下は生徒会室と同じように、2人だけの世界を創り出す。そんな、世界で私は私以外の話をしている。それも少し悔しい。それはきっと嫉妬とかじゃなくて、こんなことくらいしか私が先輩と一緒にいる方法を思いつかないっていう事実に対しての悔しさ。

 

「で、葉山先輩は夏の大会に向けて頑張ってますから」

 

「…サッカー部のキャプテンだったか?まあ、そりゃ大変だろうな」

 

「消去法で先輩です」

 

ほんとは違う。先輩しかいない。先輩じゃないと嫌だ。先輩がいい。そして、私だけを見て欲しい。

その思いは酷く独善的だと思う。その思いは醜いものだと思う。それでも、それは恋をする少年少女のほぼすべてが持つ感情なんだとも思う。

消去法と聞いて、うへぇと思ったのか先輩は顔を歪める。

 

「何なんですか。消去法に不満を持って好きですアピールですか。ごめんなさい、嘘つきましたほんとは先輩以外の選択肢なんてありませんでした。先輩とずっと一緒にいたいからいつも先輩のこと頼ってます。迷惑なのはわかってますんで、ごめんなさい」

 

「ものの数時間で同じ人から2回も振られるとはな」

 

私のこの早口も慣れてきたのか、妹を可愛がるような視線を向けてくる。この視線が私は嫌い。まるで私を恋愛対象として見ていない、そんなことを彷彿とさせるようなこの視線が…大っ嫌い。

だから、私は逃げる。

 

「っと、職員室につきましたね。返してきますから、待っててくださいね」

 

「俺が待つ意味ってあるのかね」

 

そんなこと言ってても待っててくれるくせに。なんて、言えるほど心の距離は近くなくて、それを縮められない自分が嫌になる。でもその一方で今の関係を変えたくない自分もいる。どっちが正しいのか解がわからない。正解も誤解も1つの解で、それらの回答に採点者はいない。だから、どれが正解か、いつまで経ってもわからない。

気持ちの解は、解であって解じゃないんだ。

 

 

 

 

 

帰り道を先輩は私ひとりで帰そうとする。そうして去って行こうとする背中に話しかける。

外は既に春の陽気に包まれていて、しかしその包みのなかに冬の冷たさがちらちら残っていた。校門前は既に下校時刻を過ぎてかなり経っているからか、閑散としていた。

 

「先輩、話聞いてくれます?」

 

「…なんかあったのか?」

 

いつもとは違う雰囲気に何か感じとった先輩が真面目な顔をして答える。

ここで告白してしまって、振られたら先輩は変に気を使って明日から生徒会室に来てくれないんじゃ、とかもし付き合うことになってもいつまで続けられるだろう、なんて不安になる。

 

「…私の家、庭に花が沢山あるんです。いつか見に来て下さい!」

 

「……ばっかかお前。ぼっちが女子の家とか緊張するわ」

 

先輩は多分、私が本当はこんなこと言いたい訳じゃないって分かっててこんな返し方したんだろうな。だから、優しいって言わちゃうんですよ。

 

「そうですね…5月中旬が一番綺麗だと思いますから」

 

「…ま、空けといてやらん事も無い」

 

「…お願いしますね、先輩。ミニお花見と洒落こみましょう」

 

お家デートかできる。それだけで私は浮かれていた。手作りの団子作ろうかな、お茶淹れたら飲んでくれるかな?そんなこと考えていたら先輩の方から話しかけられた。

 

「な、なあ一色。俺からも、話があるんだが」

 

「な、なんですか?」

 

先輩の緊張した雰囲気が私も緊張させた。な、何言われるんだろ。雪ノ下先輩と付き合うことになった、とか結衣先輩から告られたんだけどどうしよう、とかかな。

 

「…ふぅ、俺は、お、お前のこ、ことがす『ブロロロロロロロロ』…くっ、くくくく。あっははははは!!」

 

「先輩、笑ってないで話し続けて下さいよ」

 

先輩が、言いかけた言葉の続きが、気になってしょうがなかった。何を言われるんだろうか。お前とか聞こえたから嫌いだとか言われるのかな。

 

「悪い悪い…いい感じに緊張ほぐれたわ」

 

「で、何のようですか?」

 

「な、なに。怒ってんのか?…ま、いいや」

 

口にたまった唾液が喉を通るのと、先輩がその言葉を発するのはコンマ1秒程度のズレしかなかった。

 

「好きだ」

 

「…はい?」

 

「だ、だから…俺、比企谷八幡はお前、一色いろはが好きだっつったの」

 

「え、えええええええ!!!」

 

ななななんで!?理解が追いつかない…何がどうなってるの?

 

「ドッキリかなんかですか?」

 

「…そんなに嫌だったか?」

 

「いえいえいえいえ!むしろ逆、逆です!」

 

1度深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。えっと、私が好きな人が私を好き。うん、これでいいんだよね。

 

「な、なあ。続き、言っていいか?」

 

「い、いいですよ」

 

「良かった、折角考えてきたのが無駄になるところだった」

 

私のために勉強の時間を削って、考えてくれたのがただただ嬉しくってその言葉を聞こうとした。

 

「最初はただのあざとい後輩だった。それから何故かパシリにされたみたいな扱いを受けてきた。ぶっちゃけるとそこは直して欲しいんだが…でだ、いつの間にかお前の笑った顔を見ると心が暖まった。お前が部室に来るのをそわそわして待ってた。いつ好きになったか、これが一番わかんねーんだが、大切なのは間違いなく今の気持ちだろう。

これが俺のいう『本物』かわからない。でも、それでも俺はお前が好きだ。俺と、付き合ってくれ」

 

そこまで言って先輩はそっぽを向く。耳が赤いのは、多分夕日と血流のシナジー効果かな?先輩ったら、恋愛ビギナーなんだから、ナーバスなのばればれですよ?

っといけない。私もかなりパニクってる。え、えっと返事は…。

 

「先輩!」

 

「な、なんだ」

 

「彼女を家まで送ってくれないと、嫌いになりますよ♪」

 

「…さいですか。相変わらず、あざといな」

 

「先輩は私のこういうところが好きになったんですよね?だから、私は変わりませんよ」

 

手をつないで帰ろうとするも、2人とも手汗がひどくて握っていられなかった。それすらも楽しくて2人で顔を見合わせて笑った。

先輩に家まで送ってもらうのは流石に失礼だと思ったけど嫌われたくないとにやけながら言われたら、断れない…。

自転車の2人乗りで送ってもらって、お礼を言って家に入る。リビングから見える庭に植えられているアザレアは咲いていて、心が落ち着いた。

 

「『恋の喜び』、それと『あなたに愛されて幸せ』か」

 

離れたところに植えたはずの赤いアザレアと白いアザレアの花が、1輪ずつ隣合っていた。




アザレアって庭でも育てられますよね?(笑)ツツジ科だから、問題ないよね?

と、言うわけでいろはす回ですた。

ただそれだけです。はい。

次回は誰を書きましょうか。ではでは
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